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アンドレア12歳

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ひなたで、まどろみながら、ブラッシングされる。
ブラッシング歴7年の実力者は、ブラッシングしながら、顎の下を撫でてくる。
このゴールデンフィンガーめ。
あー、喉のゴロゴロが止められない。


気持ちいいところを確実にブラッシングされながら、もふられて。番の匂いを吸い込む、いい匂い。
首筋舐めちゃおう。極上のひとときにくったりしてしまう。

「殿下、アンドレア様そろそろお勉強会の時間ですよ。」

私はあれからご学友として、王宮に通っている。

そして、何故か到着時、昼休み、帰宅時の三回クロード殿下にブラッシングされている。ノミなんていないのに。もう、12歳だし、そろそろ距離を置くべきなのはわかってる。全身をブラッシングしてもらうなんて前世の私からしたらとんでもないもの。でも、クロード殿下がブラシを持ってると、本能からすぐに獣化してしまうのよね。パブロフの犬、恐るべし。

お陰で私の毛並みはベルベットのように艶やかで最高に美しく、獣人的にはかなり美人な部類だと思う。お顔もさすが悪役令嬢なだけあって、めっちゃ綺麗だしね。

なのに、縁談が全く来ないみたい。五歳のあれきり。悪役令嬢っていうだけあってかなり美人なのよ。顔がきつめだからなのかな?全くモテない。中身に問題ありなのかな?前世からモテない歴更新なんて。


ふうー。

ため息をついていると、ユリウスが首を傾げた。サラサラの銀の髪が揺れる。大きめのお耳がぴくりと動く。くぅー可愛いー。狼なのに、この可愛さって何?

「アンドレア、何か悩みあるの?」

はい。ユリウスの可愛さがきゅんです。
わたくし、きゅん死にいたします。

「私、全然縁談がこないみたいで、なんでモテないのかなって」

ユリウスの顔が青くなった。ごめんよ。
ユリウス。困らせたね。
答えたくないことは無理に答えなくていいよ。
横でエドワードも聞かないふりをした。
いや、してくれた…。
私、そんなにモテないのね。

「それなら行き遅れたら、私の後宮に入れてあげても…」

「アルバート第二王子。私、一夫多妻は嫌いです。いつか私だけを愛してくれる人と幸せになります。」

大好きなクロード殿下は、私以外の人を好きになる。
私も、早くいい人をみつけないと。
獣人はだいたい、15歳くらいまでに相手を見つける。
ゲーム開始が15歳。早く見つけないと行き遅れるわ。

こんなに可愛い白虎いないよー。今ならお買い得だよー。

ん?

アルバート第二王子が固まっている。
ユリウスもエドワードも固まっている。

後ろに、無表情のクロード殿下がいた。
少年から、大人になりつつある今の時期特有のアンバランスさから目が離せない。
二人きりの時の甘い顔も素敵だけど、無表情も素敵すぎって思う私はクロードという甘い毒に侵されているにちがいない。もう致死量かも。死んでも本望です。

主人公レンが出てきたら、シナリオ以上の酷いことしてしまいそう。だって、今も本能をおさえられないもの。

クロード殿下にぎゅうーっと、抱きついた。

推しが好きすぎる自分が怖い。
番の本能に逆らえない自分がこわい。

クロード殿下。私を離さないで。ずっと、側にいて。

ゲーム開始まであと、3年。
彼の側にはいられない。


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