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黄金竜駆ける

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 今日は、クロード殿下を独り占めした。
思う存分楽しんだ3ヶ月だった。
 我が人生悔いなし。

 クロード殿下に話してから留学するようにと、家族が止めたけど、とっとと隣国へ出立しよう。
身体はくたくたに疲れていたけど…。
 隣国までは、交通網が整備されており夜でも安全な有料道路がある。
 夜は空いているから、スムーズに到着するだろう。


 もうすぐ国境に差し掛かる。
ここはアンドレアが断罪後、黄金竜に喰われる舞台だ。
 私はアンドレア最後地を馬車から眺めた。

遠くから、空をつんざくような咆哮が聞こえた。

 空を見上げると、キラキラと月明かりを反射して煌めく黄金竜が空を駆けていた。
 美しい黄金竜を最後にしっかり見たくて馬車を止めてもらった。
 馬車の窓から顔を出して、煌めく竜を見た。
黄金竜が、急降下して目の前に降りてきた。
 
「クロード殿下。」

 間違いない。
そこに愛おしい番がいた。
 馬車から飛び出し竜に抱きついた。
煌めく鱗を撫でる。

黄金竜に喰われる未来に怯えていたけど、美しい竜を見ていたらそれもいいとさえ思えてしまった。

「クロード殿下、私を食べても、いいですよ。」

「…。」

 クロード殿下、やはり食べようとしてました?
私はもふもふの美しい白虎。
 旨そうだなって思いながらブラッシングしてました?

「私から、離れなければ、喰わない。」

今から留学に行く。やはり喰われるのかな?

「私、隣国に留学します。しばらく離れますが、卒業したら戻ります。」

卒業しても戻るとは限らないけどね。

「わかった。」

やっぱり食べる?謝っておこうか。
「何も言わずに、勝手に出ていってごめんなさい。」

「わかったのなら、大丈夫だ。」

大丈夫なんだね。喰われなくてすんだー。

 馬車が無事隣国のアカデミーへ到着するまで、クロード殿下は空から見守ってくれた。
 クロード殿下の美しい竜化の姿も見れたし、家族が心配してたクロード殿下への報告もできたし。結果オーライね!
 
 ゲーム開始まであと14日。
新しい生活が始まる。
 素敵な伴侶が見つかるといいなあ。

さよなら、クロード殿下!

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