四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~

幹谷セイ

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第一部 四季姫覚醒の巻

二章interval~椿の不満~

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 とある日の、放課後。
 荷物を纏めた如月 椿は、隣の席で鞄を弄っている、いとこの水無月 榎に声を掛けた。
「えのちゃん、部活終わったら一緒に帰りましょう」
 椿は吹奏楽部、榎は剣道部に所属している。
 だが、榎は少し焦った表情で、断ってきた。
「あっ、ごめんね! たぶん、あたしのほうが遅くなると思うから、椿は先に帰って」
「少しくらいなら、待ってるよ?」
「うーん、少しじゃないと思うんだ。いつも、練習が長引くからさ」
「そうなの。運動部って、大変なのね」
 運動部の活動内容は、文化部の椿にはよく分からない。榎の話に納得して、身を引いた。

 * * *
 榎は現在、家の都合で椿の家に居候している。
 一緒に暮らしてはいるものの、学校が始まってからは二人でゆっくり話をする暇もなかったから、椿は榎について、あまり詳しく知らない。
 もっと色々とお話をして、榎のことをたくさん知りたい。
 実家のある名古屋での生活や、榎の趣味や好きなもの。
 いとこであり、友達でもあるのだから、もっと距離を縮めたかった。
 二人で話をするなら、帰宅の時が気兼ねもせず、格好のタイミングだと思う。
 だからいつも、一緒に帰ろうと誘うのだが、なぜか一度も、榎と下校ができなかった。
「えのちゃ……」
「ごめん、今日も遅くなるから!」
 放課後になって声を掛けると、榎はいつも忙しいと理由を付けて、椿をすり抜けて行ってしまう。
「えのちゃんは、椿と一緒に帰るのが嫌なのかな……」
 あまりに同じ調子が続くので、避けられているのではないかと感じ、椿は少し悲しくなった。
 だが、ちょっと拒まれたくらいで身を引く程、椿は謙虚な性格でもない。
 むしろ、逃げられると俄然、やる気が出る。椿は妙な闘志を燃やし始めていた。

 * * *
 翌日。
 椿は意地でも、榎と一緒に帰ろうと、部活が終わってから体育館で待ち伏せを決行した。
 体育館をこっそり覗き込むと、卓球部やバレー部の部員たちが、後片付けを始めているところだった。
 だが、剣道部らしき部員は、一人も見当たらない。
 椿は側を通った卓球部員に訊ねた。
「あの、剣道部の部活って、体育館でやってるんですよね?」
「剣道部やったら、みんな練習終わって帰ったけどー?」
「何それ、どういうことよ?」
 今日はいつもより、早く練習が終わったのだろうか。じゃあ、榎は先に帰ったのか。
 だったら、待っていてくれてもいいのに。
 榎は少し怒りながら、ふてくされて一人で帰宅した。
 文句を言ってやろうと、榎の部屋の襖を開いたが、榎の姿はない。鞄も制服もないから、まだ帰宅していないのだろう。
 部活は終わっているのだから、既に学校は出たはずだ。
 だとすると、どこかに寄り道しているに違いない。
「えのちゃん、椿に嘘ついて、外でコソコソと何かやってる……?」
 椿はようやく、榎の異変に気付いた。
「いったい、どこに行って何をしているの? 怪しすぎるわ」
 こんな田舎で、学生が毎日立ち寄れる場所なんて、そうそうないはずだが。
 椿の中で、榎に対する疑惑と疑いが、最大限に濃くなった。
 何とかして真実を突き止めようと、再び闘志を燃やし始めた。
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