四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~

幹谷セイ

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第一部 四季姫覚醒の巻

第六章 対石追跡 11

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十一
 白神石。
 人類の脅威となりかねない妖怪、宵月夜を再び封印するために必要な、重要な鍵となる秘石。中には、宵月夜と対を成す妖怪、朝月夜が封印されている。
 封印を阻止するために、妖怪たちも石を捜し求めている。
 誰が最初に、その石を発見して、手中に収めるか。
 その結果次第で、今後の榎たちと妖怪たちとの関係図も、大きく変化しそうだ。
 妖怪たちよりも先に白神石を手に入れるために、榎たちは月麿の暮らす庵に集まった。
 庵から出てきた月麿は、ヘリコプターで空をかっ飛ばされた後遺症から、いまだに顔色が悪かった。
 だが、気合を振り絞って、榎たちの前に立った。
「主らに、この玉を授ける。〝白光勾玉(はっこうまがたま)〟と呼ばれる、特殊な石を磨いて作られたものじゃ」
 月麿が差し出してきたものは、真っ白な、おたまじゃくしみたいな形をした、不思議な石だった。中央に穴が開けられ、紐が通されて首飾りになっている。
「似た石を、前に見たな。……宵月夜も、こんな首飾りを持っていた」
 月麿は紐の先端を持って、振り子みたいに石を宙にぶら下げて見せた。ゆらゆらと揺れる石を、榎たちは、まじまじと見つめた。
「なんだか、ぼんやりと光っているわ」
 椿の言う通り、白光勾玉は、青味がかった光を放っている。人魂を連想させるおぼろげな光も、宵月夜のものと同じだった。
「なんか、特別な呪文とか唱えたら、もっと光るんと違うんか!? ロボットと連動したり、空に浮かんだり! いやー、テンションあがるわー!!」
 突然、柊が一人ではしゃぎ始めた。意外と理屈の分からない、不可思議なものが好きな性格らしい。
「そんな現象が起こるかよ。テレビの見過ぎだ」
 だが、現実味のない発想に、榎は呆れて突っ込んだ。
「白光勾玉には、特殊な力が込められておる。白神石の力を探り、共鳴する力じゃ。白神石に接近するほど、激しく光を放つ」
「じゃあ、微かに光っているから、近くに白神石があるのか?」
 月麿は大きく頷いた。
「おそらくは。はっきりとした場所までは分からぬが、確かに近いのでおじゃる。麿も時間を見つけては探しておるが、まだ在り処は掴めておらぬ」
「とりあえず、光が強くなっていく方角に進んで行けばいいのかな?」
 首飾りを受け取った榎は、光り具合に変化がないか、四方八方に石を向けてみた。
『――けて。誰か、助けて……』
 東の方角に向けた直後、頭の中に声が流れ込んできた。
 どこかで聴いた声。榎はふと、思い出した。
 四季山の中に閉じ込められていたとき、宵月夜が持っていた石から聞こえた声だ。以前は空耳かと思っていたが、間違いなく、人の声だ。
 声は、この白光勾玉から、榎の頭の中に直接、発せられていた。
「えのちゃんにも、聞こえたの? 助けて、って……」
 榎の反応する姿を見て、椿が言った。椿にも、声が聞こえたらしい。
「誰の声だろう? どこかで、誰かが囚われているのか?」
 助けを求めるからには、声の主は、何らかの危機に晒されているのではないか。榎は少し、心配になった。
「麿は、知っているのか? この声の主を」
「声とは、何でおじゃるか?」
 月麿に尋ねたが、逆に訊き返された。周囲を見ると、柊や、一緒に来ていた周(あまね)と奏も、よく分からないといった顔をしている。
「麿たちには、聞こえないのか? あたしと椿だけ……?」
「二人にだけ聞こえる声とな。この石からか?」
 不思議がる月麿に、榎たちは漠然と、説明した。
「男の子の声よね? たぶん」
「何となく、宵月夜の声にも似ている。凄く、弱々しいけれど」
 腕を組み、月麿は考え込む。思い当たる節が、いちおう、あるみたいだ。
「……もしかすると、朝月夜の精神から放たれておる声かもしれぬな。宵月夜の封印が解けたから、外の異変を察知して、早く封印を解いて欲しいと、訴えておるのかも知れぬ」
 朝月夜が、封印の外に出たがっている。榎たちに向かって、必死で訴えているのか。
 どうして榎と椿にしか感じ取れないのかは謎だが、榎たちは、朝月夜に必要とされている。
 白神石の封印を解除できる存在は、四季姫だけなのだから。
「せやったら、早(はよ)う助けたらなあかんな」
 柊も、分からないなりに、榎たちと同じ意見を述べた。
 封印は、四季姫が揃わなければ解けない。最後の一人が覚醒するまでは無理だが、すぐに封印を解ける状態にしておきたい。
 そのためにも、白神石を確実に手元においておく必要がある。
 何としても探そうと、榎たちは決心した。
「その勾玉、椿に預からせてくれない?」
 椿が、榎に催促した。首飾りを手渡すと、椿の手に触れた瞬間、白光勾玉が強烈な光を放った。
 榎たちは、思わず目を覆う。光はすぐに消え、元の状態に戻った。
「大丈夫か? 椿!」
「めっちゃ光ったで、その石」
 椿は瞬きもせずに、呆然としたまま、石を見つめていた。声を掛けると我に返り、顔を上げる。上気して、頬が赤く染まっていた。
「うん。……何だか一瞬、脳裏に人の姿が見えた気がするの。真っ白な、人だった……」
 漠然と呟いて、なんだか呆然としている。よく分からないが、椿と朝月夜の間に、通じるものがあったのか。
「春姫の神通力と、強く共鳴しておるのかもしれぬな。変身するのじゃ、椿。春姫の姿のほうが、力も感じ取りやすかろう」
 月麿に指示され、椿は春姫に変身した。
 白光勾玉に神経を注ぎながら、椿はゆっくりと、山道を歩いて行く。
 榎たちも、後を追いかけた。
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