君が幸せな世界線

リコピンブラウザー

文字の大きさ
1 / 1

第三次世界大戦線①

しおりを挟む
パラレルワールド、という概念を皆々様はご存じだろうか。
実は自分たちの住む”ここ”はいくつもある世界の中の一つである、という考え方のことだ。
世界は今自分が認識している”ここ”だけではなく、多種多様な、様々なパターンの世界が同時並行的にこの世に存在していて。
一秒後にはどこかの世界線の地球が滅亡していたり、なんてこともあるのかもしれない。
もちろんそれが、この世界線でないと言い切ることはできないが。
なぜそんな話をって?
いい質問をするではないか。
それはーーー

「行ったり来たりできるってことー?」
疑わしいと言わんばかりの眼差しで僕を見つめてくる。
この僕を疑るなんて、罰当たりもいいところだ。
「いくら私たちが”相思相愛”でみんなが羨む”パーフェクトカップル”だからって、流石にそんな冗談には騙されないぞ~」
彼女はニヤニヤとしながら僕の脇腹のあたりをつんつんしてくる。
ちなみにこの場合の”彼女”とは、恋人を意味する言葉ではない。
「なにがパーフェクトカップルだ、どっから突っ込んでいいかわからないよ、まったく…」
彼女はただの幼馴染である。
それ以上でもそれ以下でもない。
「え、いやいや待って待って、まるで私がおかしなことを言っているみたいになってるけども!」
「まるでお前がおかしなことを言っているんだよ」
「まるで私もおかしなことを言っているけども!」
認めるのか。
「なかなかヤバいこと言ってるよ?きみ、気づいてない?もしかして」
「あぁ、そうだな。行き来できるわけじゃない。行って、行ったっきり」
「ちっがうんだよなぁ、そこじゃないんだよなぁ。ねぇ、もしかしてマジ?」
「まぁ、信じられないよな普通」
パラレルワールドを移動できるなんてこと。
そう、僕はパラレルワールドを移動することができる。
まだ二回しか経験はないけれども。
「なんで私にそんな話をしたの?」
日曜の昼間からわざわざ公園なんかに呼び出して、と続けた。
いいじゃないか、暇そうにしていたじゃないか。
そもそもこの世界線で曜日だの時間だのを気にするほうがおかしい。
「お前が…、いや、何でもない。信じるかなーと思ってさ」
「ふーん、まっ信じるけどね!だって将来の旦那様がそう言っているのだもの~」
「…。そろそろ帰るか」
遠くからサイレンの音が聞こえる。
「そうだね~。そろそろだもんね」
僕らは公園の入り口を目指して歩き出した。
「きみがひとつ前にいた世界線は、どんな感じだったの?」
「あー、あまり思い出したくはないけど」
ガラガラ。
足元のガレキが踏みしめられる音がする。
「”ここ”よりは、安全なところだったかな」

この世界線は、今まで経験してきた2つの世界とは比較にならないほど混沌としていた。
第三次世界大戦なるものの真っ最中で、どこもかしこも戦火にまみれている。
怒号、悲鳴に銃声、サイレン。
犯罪、薬物、まさに地獄絵図。
先程居た公園も崩れた建物の残骸や運ばれて来たガレキでぐちゃぐちゃだ。
そんな、混沌とした世界。

人々はシェルターと呼ばれる地下施設で生活している。
基本的に外出はできない、し、しようと思う人はほぼいない。
シェルターの外ではリアルタイムで戦争が行われており、民間人、軍人問わず見つかり次第殺されるから。
シェルターの外に出るような奴は非合法な働きを行うものか自殺願望者かの二通りだ。
僕たちはそのどちらでもないけれど。
パラレルワールドを移動できるなんて周りの人に聞かれようものなら気が狂ってしまったと思われかねないため危険を冒して外に出た次第である。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

2021.12.29 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
如月 琥珀
2021.07.15 如月 琥珀

というかあらすじ見て気づきました。幼なじみめっちゃ死ぬんですね、、、

2021.07.15 リコピンブラウザー

あらすじでめちゃくちゃネタバレしてますよね笑笑
これ何度も何度もパラレルワールド移動して主人公が狂ってく、っていうストーリーにするつもりだったんで笑

解除
如月 琥珀
2021.07.15 如月 琥珀

新しい話だ!!
やったぁぁぁ!
めっちゃ好きな世界観です!
リコブラ様が途中で辞めたとしても私はずっとファンですのでご安心ください!

2021.07.15 リコピンブラウザー

嬉しすぎるですよぉぉぉ😭
もう頑張れちゃいますそんな嬉しいこと言われたら笑

このお話は1年前くらいにちょろんと書いて秒で途切れちゃったやつなんで、続きは絶望的なんですよねぇ、笑
でも如月さんが読んでくれるなら書いてみようかしら!って思ったりしますぅ

解除

あなたにおすすめの小説

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。