2 / 25
2 美しき獣
しおりを挟む
(殺されるッ!!! )
底冷えのする目に全身から放たれる殺気、獰猛な獣に囚われたように思うように身体が動かない!!! 血の気が引いたように、身体が急速に冷えていく感覚がする•••。
突然男は瑠璃の瞳を大きく見開き、「あなたは•••!?」と、呟くと、一気に拘束を解いたッ!
私のことを知っている???
男は腰を屈め自ら羽織っていた騎士の白いマントを、自分で踏みつけていた私の背中に掛けてくれ、「失礼ッ•••、大丈夫か?」と、そのまま背中にそっと片手を当て、優しく抱き起こしてくれた。そして、心配そうな瞳でジッと私を見つめる。
「あ、あの•••」
ーーーーこの人、抱き起こしてくれたのは良いけれど、もう片方の手で私の腰を押さえつけて、身動きできないほどに寄ってきてるんだけれど??? そんなに強く掴まなくても逃げないわよっ!!
私は、自分の腰を強く押さえつけている彼の手に、視線をやり、退けてくれるよう促す。
私の視線に気づいて、少し手を緩めてくれたが、相変わらず距離が近いっ!! 背中を支える逞しい腕を離す気配はないみたいだし、綺麗な白い肌にサラサラと掛かる黒髪から覗く美しい顔は、相変わらず私のすぐ目の前にある。
「失礼ッ! アネラ・バイオレット・サン嬢。オレは、、騎士団長のユオン・シルヴァダン•••だ。オレのことはユオンと•••。あなたは現在、城で軟禁されてると聞いているが、なぜここに?」
!?
この人、やっぱり私のこと知ってた?? 騎士団長??? 騎士団長なら、妃候補のことぐらいは知っていてもおかしくはないけれど、、、でも、どうしよう、、私、今度こそ牢屋に入れられてしまうの??
先ほどから逸らさずに私を見つめてくる瞳には、なぜか私を労わるような優しさを感じるけれど、、同情してくれてるのかしら???
「私は、•••本当の犯人を探すためにここに来たのよ。お願いっ!! 犯人を見つけるまでは見逃して欲しいのっ!!! 逃げる気なんてないわ。ただ、真実を知りたいの•••。」拳を握り締め、息を詰めて相手の反応を伺う。
犯人、と言う言葉を呟いた途端、
「犯人を見つける? やはり他に犯人がッ??」と、声を低めギリッと唇を噛むと、一瞬でユオンと名乗る男の気配が、再び鋭いものになった! ボワッと炎が足元に立ち上がり、テーブルの端が一瞬で消し炭になる。鋭い刃で刺されているわけでもないのに、心臓がキュウッと捻れゾワリとするような得体の知れない恐怖が迫り上がってくる。思わず肩を震わせ身震いすると、彼が目を見開きハッとした途端炎は消えた。
(この人、火の魔力使いなんだわ。)
「怖がらせて、すまない•••。」と、長い睫毛を揺らす。そして、抱きしめられると勘違いするほどに、私の腰に触れていた手に力を込め、私を自分の胸元へと引き寄せた。私の顔を覗き込みながら、「犯人を探すのは、あなたがやらなくても良いのでは? あなたに何かあっては大変だ。」と心配そうに眉を垂らす。
さすがに騎士の力で拘束されたら抵抗できない。逆鱗に触れないよう緊張しながら、出来るだけ落ち着いた声をだす。
「ユオンッ!! 逃げないっ、私逃げないから、離してっ!!」
そっと表情を窺うと、「ユオン?? 」と呟き、なぜか紺碧の瞳を嬉しそうに細め、「失礼ですが、もう一度言ってもらっても•••?」と、有無を言わさぬ様子で迫ってくる。
「えっ•••!?」
私、名前間違えてたかしら•••???
「ユオン???」たしか、こう名乗っていたはずだけれど•••。
目前の男性は何やら噛み締めるように「ユオン•••」と、頷きながらその形の良い唇に微笑みを浮かべている。よ、良かったッ!!とりあえず、名前は間違えていないようだ。
その後彼は、機嫌良さそうに白いマントごと私を抱き抱え、近くの椅子にとても丁寧に下ろしてくれた。そして、私の手を握ったまま、自分は片膝を床について、私の近くに跪いた。(まるで私の騎士みたい。私は彼にとって監視対象のはず•••。まだ私が逃げると心配してる??? )
彼の真意が分からず混乱するままに、とりあえず疑問をぶつけてみた。
「ユオン、あなたは、、、あなたこそ、なぜここにいたの??」
彼は私の手を握ったまま顔を上げ、片手を胸に当て話す。これは騎士の誓いとして、嘘をつかない、正直に話す、という証だ。
「あなたと同じです。真犯人を探すため•••。現在、シャーロウ殿下の妃候補に起こった事件は、殿下の私兵たちが担当してるが、実際は捜査はほとんどされていない。だから、悪いとは思ったがここに忍び込み、何か犯人に繋がる証拠はないかと探していたら、あなたが窓から飛び込んできたんだ。」
彼も犯人を探していたっ!!! 真っ直ぐと私を見つめる姿からは、嘘を話しているようには思えない。
「そうだったの•••。」
(だとしたらユオンは、私が犯人だとは思っていないのかしら??? )
突然、ユオンがもう離さないとでも言うように、「あなたがよければ、オレと一緒に犯人を探しませんか?」と、ギュッと私の手を握り、甘く響くような声を出す。
「へっ??」反射的に手を引こうとしたが、ビクとも動かない。
(これ、私に断る選択肢があるのかしら???)
引き締まった身体に騎士の服を纏い、艶のある黒髪から覗く瑠璃色の瞳で真っ直ぐと私を見つめる姿は、とても色っぽい。
これではまるで恋の告白だ。もっともその内容は、相当殺伐としているけれど•••。
「1人より2人の方が心強いでしょう? 何かあればオレがあなたを守ってあげられますし•••。」見た目はスマートな美青年だけれど、先ほど実際に見せつけられた強さは本物だ。
確かに一緒に探してくれる人がいるのは心強いけれど、、、せっかく自由を満喫できるかと思ったのにっ、、!!!
「で、でも•••」と、言葉に詰まる。騎士団長からしたら、監視対象が身近にいる方がいいと考えてるのかもしれない。
考えあぐねてる私を見て、
「オレはあなたを危険なところに行かせたくない。だからもしあなたが、それでも1人で真犯人探しをすると言うなら、あなたを鎖で拘束し、城に閉じ込めていた方がマシだとオレは思うかもしれない。」と茶化すような笑みを向ける。
!?
(今の軟禁状態より、酷いんですけど•••!?)
冗談だろうけど、本気でやりそうな気もする。だって目の前のユオンは、今は私に対して比較的優しく接してくれてるけど、、最初に不審者と思われて拘束された時、殺されると本気で思うほど恐ろしかったものッ!!!
それにしても、とユオンの端正な顔を見る。この人、何としても私を監視したいのね。まあ、職務に忠実なのは良いことだわ。監視されるのはあまり良い気分ではないけれど、監視ついでに、危険から守ってくれるだろうし、、
「分かったわ•••。では、私のことはアネラと呼んで下さって構わないわ。私、あなたのこと何も知らないけれど、信用しても良いわよね?」
本人に聞いても意味ないかもしれないけど、、でも、少なくても、彼の耳を飾る騎士団での高位の序列を示す金細工は本物だ。
「もちろんです。アネラ。」
瑠璃色の瞳を輝かせ、私の片手を大切そうに持ち上げたかと思うと、手の甲に優しく口付けをした。騎士団長に、ここまでされては、信用しないわけにもいかない。
(ハァー、束の間の自由よ、さようならっ!!! )
「何、、かしら•••?」
気づくと、私の顔を、頬を緩ませ安堵したようにジッと見つめている。
「あなたが元気そうで良かった。オレが、国境近くまで野盗討伐へしばらく行っていたから、大変な時に力になれずすまなかった。帰ってきたら、すでにあなたは城に軟禁された状態だった。居ても立っても居られず、ここに来たんだ。」
この人に謝ってもらうことは何もないけれど、、シャーロウ王子のお目付役か何かなのかしら??? 正義感が強い人なのね。
ユオンは不意に立ち上がり、もう一つの椅子を引いて腰掛ける。少し前屈みになりながら、膝の上で両手を組み、
「いったい妃候補だったあなたが、なぜこんな事に•••?」と、紺碧の瞳を私に向けた。
私が、城でシャーロウ王子に言われたことや彼の私兵にされた事などを、かいつまんで話すと、ユオンは爪が食い込み血が滲むほど自らの拳を固く握り締め、眉を吊り上げ、「あの王子、殺すッ!! いや、殺すだけじゃ飽きたらない。剣で八つ裂きにでもしてやろうか。」と不穏なことを言い出したッ!!!
えっ??? 何っ??? この人、王子を厳しく指導する系???
「ダ、ダメよ。そんな事しても何の解決にもならないわ。止めてっ!」慌てて前に座っていたユオンの拳の上に、自分の手を重ねる。高い位置で1つに結い上げていた髪が、流れるようにユオンの鎖骨の辺りに落ちた。
「この髪型も似合うな。薔薇のような唇と美しい瞳が際立つ••••。」
ユオンが何事かを小さな声で囁いたがうまく聞き取れず、「えっ•••?」と聞き返そうと顔を上げると、頬をうっすらと朱に染めながら、穏やかな笑みを浮かべ、「いえ、••••あなたが望むままに•••。」と答える姿はとても品がある。
とりあえず、王子がユオンによって血まみれになることは避けられそう。
ユオンと話してるうちに本来の目的を忘れそうだわ。私は重ねていた手を離し、椅子から立ち上がると、「それよりも、この部屋を調べましょう。何か気づいた事はあるかしら?」と、部屋のあちこちを点検する。
ユオンは頷くと、「微量な魔力が、使われていた形跡がある。だが、鋭利な刃物で背中から一突きだったと言うから、その魔力がどういう目的で使用されたかは分からない•••。」と、部屋を見渡す。
魔力と言っても、遠いところにいる人に何か危害加えたり、そんな魔法みたいに何でもできるわけではない。自分に得意な属性、水や火、風などを、魔力でそれらを作り出したりその性質を増幅させたりすることができるくらいだ。けれど、この国ではそれが決定的に重要なファクターとなっていて、魔力量が高いと出世や結婚に有利となる。
「魔力の痕跡など、、、もともとの魔力量がほとんどない私には、全く感知できないわ。」そう言いながら、私はユオンを横目でチラリと見る。魔力量がほぼない私でさえ、目の前のユオンからは強い魔力を感じる事が出来る。
(先ほどの足元から突然立ち上がった炎と言い、この人、どれだけ強いのかしら???)
この部屋は死体以外は、まだそのままの状態で保存されていた。「あとは、グラスが2つ残されていたことから考えても、王城のこんなところまで入り込めるのだから内部の、そしてある程度近しい者の犯行よね。今のところ大きな謎は2つ。凶器はどこに消えたか?密室はどうやって作られたか?」
発見された時、窓もドアも鍵が掛かっていたと言う事だけれど、ドアはシンプルな鍵穴タイプ。ドアからの侵入の方が可能性は高そう。もちろんこの段階では全ての可能性を排除は出来ないけど•••。
これ以上ここにいても、私では何も分からないだろう。朝になれば人も来る。そろそろ戻ろうとユオンに促す。
「それならあなたを送って行こう。城の中で軟禁と聞いているが今はどこに•••??」
◇◇◇◇
ユオンに送り届けてもらった日の翌朝、窓から陽が差し込み、目が覚める。美味しそうなスープの香りがする。
「アネラ様、起きましたか?朝食の準備ができてます。」
「クレール!美味しそうな匂いがここまで漂って来て、お腹が空いちゃったわ!それにしても、あのユオンって人、今日も来るって言っていたけれど何時くらいにくるのかしら???」
昨晩は大変だった。小屋を見たユオンが怒り狂い、今にもシャーロウ王子を殺しに行きそうな勢いだった。私がここで充分満足していることを説いても、自分の屋敷に連れて行くだとか言って聞かなかった。たまらず私が、犯人探しは1人でやると言ったら、慌てて渋々了承したけれど、、、。
ーーーー私を監視したいけれど、こんなボロボロの小屋に来るのは嫌と言うことなのかしら??
あんなに美しい人だから、密かにプライドが高いとか?? あまりそういうことは気にしなさそうな感じだけれど、人は見かけによらないのね。
???
何だかクレールの様子がおかしい。すごく疲れてるような•••!?
「???•••クレール•••???」
クレールは、荒い息を吐きながら、
「実は、、ユオン様がこの屋敷の見張りの座をかけて、門の外の衛兵と決闘をしようと言い出しまして、、衛兵が恐ろしさに拒否しても、ユオン様は聞き届けず、、私がアネラ様に迷惑がかかるとアネラ様の名を出してやっと止めて下さったのですが、、すでに衛兵は危うく半殺しという状態でございました•••。」と、ハンカチで汗を拭った。
(えっ?!そこまでして監視したかったの???)
底冷えのする目に全身から放たれる殺気、獰猛な獣に囚われたように思うように身体が動かない!!! 血の気が引いたように、身体が急速に冷えていく感覚がする•••。
突然男は瑠璃の瞳を大きく見開き、「あなたは•••!?」と、呟くと、一気に拘束を解いたッ!
私のことを知っている???
男は腰を屈め自ら羽織っていた騎士の白いマントを、自分で踏みつけていた私の背中に掛けてくれ、「失礼ッ•••、大丈夫か?」と、そのまま背中にそっと片手を当て、優しく抱き起こしてくれた。そして、心配そうな瞳でジッと私を見つめる。
「あ、あの•••」
ーーーーこの人、抱き起こしてくれたのは良いけれど、もう片方の手で私の腰を押さえつけて、身動きできないほどに寄ってきてるんだけれど??? そんなに強く掴まなくても逃げないわよっ!!
私は、自分の腰を強く押さえつけている彼の手に、視線をやり、退けてくれるよう促す。
私の視線に気づいて、少し手を緩めてくれたが、相変わらず距離が近いっ!! 背中を支える逞しい腕を離す気配はないみたいだし、綺麗な白い肌にサラサラと掛かる黒髪から覗く美しい顔は、相変わらず私のすぐ目の前にある。
「失礼ッ! アネラ・バイオレット・サン嬢。オレは、、騎士団長のユオン・シルヴァダン•••だ。オレのことはユオンと•••。あなたは現在、城で軟禁されてると聞いているが、なぜここに?」
!?
この人、やっぱり私のこと知ってた?? 騎士団長??? 騎士団長なら、妃候補のことぐらいは知っていてもおかしくはないけれど、、、でも、どうしよう、、私、今度こそ牢屋に入れられてしまうの??
先ほどから逸らさずに私を見つめてくる瞳には、なぜか私を労わるような優しさを感じるけれど、、同情してくれてるのかしら???
「私は、•••本当の犯人を探すためにここに来たのよ。お願いっ!! 犯人を見つけるまでは見逃して欲しいのっ!!! 逃げる気なんてないわ。ただ、真実を知りたいの•••。」拳を握り締め、息を詰めて相手の反応を伺う。
犯人、と言う言葉を呟いた途端、
「犯人を見つける? やはり他に犯人がッ??」と、声を低めギリッと唇を噛むと、一瞬でユオンと名乗る男の気配が、再び鋭いものになった! ボワッと炎が足元に立ち上がり、テーブルの端が一瞬で消し炭になる。鋭い刃で刺されているわけでもないのに、心臓がキュウッと捻れゾワリとするような得体の知れない恐怖が迫り上がってくる。思わず肩を震わせ身震いすると、彼が目を見開きハッとした途端炎は消えた。
(この人、火の魔力使いなんだわ。)
「怖がらせて、すまない•••。」と、長い睫毛を揺らす。そして、抱きしめられると勘違いするほどに、私の腰に触れていた手に力を込め、私を自分の胸元へと引き寄せた。私の顔を覗き込みながら、「犯人を探すのは、あなたがやらなくても良いのでは? あなたに何かあっては大変だ。」と心配そうに眉を垂らす。
さすがに騎士の力で拘束されたら抵抗できない。逆鱗に触れないよう緊張しながら、出来るだけ落ち着いた声をだす。
「ユオンッ!! 逃げないっ、私逃げないから、離してっ!!」
そっと表情を窺うと、「ユオン?? 」と呟き、なぜか紺碧の瞳を嬉しそうに細め、「失礼ですが、もう一度言ってもらっても•••?」と、有無を言わさぬ様子で迫ってくる。
「えっ•••!?」
私、名前間違えてたかしら•••???
「ユオン???」たしか、こう名乗っていたはずだけれど•••。
目前の男性は何やら噛み締めるように「ユオン•••」と、頷きながらその形の良い唇に微笑みを浮かべている。よ、良かったッ!!とりあえず、名前は間違えていないようだ。
その後彼は、機嫌良さそうに白いマントごと私を抱き抱え、近くの椅子にとても丁寧に下ろしてくれた。そして、私の手を握ったまま、自分は片膝を床について、私の近くに跪いた。(まるで私の騎士みたい。私は彼にとって監視対象のはず•••。まだ私が逃げると心配してる??? )
彼の真意が分からず混乱するままに、とりあえず疑問をぶつけてみた。
「ユオン、あなたは、、、あなたこそ、なぜここにいたの??」
彼は私の手を握ったまま顔を上げ、片手を胸に当て話す。これは騎士の誓いとして、嘘をつかない、正直に話す、という証だ。
「あなたと同じです。真犯人を探すため•••。現在、シャーロウ殿下の妃候補に起こった事件は、殿下の私兵たちが担当してるが、実際は捜査はほとんどされていない。だから、悪いとは思ったがここに忍び込み、何か犯人に繋がる証拠はないかと探していたら、あなたが窓から飛び込んできたんだ。」
彼も犯人を探していたっ!!! 真っ直ぐと私を見つめる姿からは、嘘を話しているようには思えない。
「そうだったの•••。」
(だとしたらユオンは、私が犯人だとは思っていないのかしら??? )
突然、ユオンがもう離さないとでも言うように、「あなたがよければ、オレと一緒に犯人を探しませんか?」と、ギュッと私の手を握り、甘く響くような声を出す。
「へっ??」反射的に手を引こうとしたが、ビクとも動かない。
(これ、私に断る選択肢があるのかしら???)
引き締まった身体に騎士の服を纏い、艶のある黒髪から覗く瑠璃色の瞳で真っ直ぐと私を見つめる姿は、とても色っぽい。
これではまるで恋の告白だ。もっともその内容は、相当殺伐としているけれど•••。
「1人より2人の方が心強いでしょう? 何かあればオレがあなたを守ってあげられますし•••。」見た目はスマートな美青年だけれど、先ほど実際に見せつけられた強さは本物だ。
確かに一緒に探してくれる人がいるのは心強いけれど、、、せっかく自由を満喫できるかと思ったのにっ、、!!!
「で、でも•••」と、言葉に詰まる。騎士団長からしたら、監視対象が身近にいる方がいいと考えてるのかもしれない。
考えあぐねてる私を見て、
「オレはあなたを危険なところに行かせたくない。だからもしあなたが、それでも1人で真犯人探しをすると言うなら、あなたを鎖で拘束し、城に閉じ込めていた方がマシだとオレは思うかもしれない。」と茶化すような笑みを向ける。
!?
(今の軟禁状態より、酷いんですけど•••!?)
冗談だろうけど、本気でやりそうな気もする。だって目の前のユオンは、今は私に対して比較的優しく接してくれてるけど、、最初に不審者と思われて拘束された時、殺されると本気で思うほど恐ろしかったものッ!!!
それにしても、とユオンの端正な顔を見る。この人、何としても私を監視したいのね。まあ、職務に忠実なのは良いことだわ。監視されるのはあまり良い気分ではないけれど、監視ついでに、危険から守ってくれるだろうし、、
「分かったわ•••。では、私のことはアネラと呼んで下さって構わないわ。私、あなたのこと何も知らないけれど、信用しても良いわよね?」
本人に聞いても意味ないかもしれないけど、、でも、少なくても、彼の耳を飾る騎士団での高位の序列を示す金細工は本物だ。
「もちろんです。アネラ。」
瑠璃色の瞳を輝かせ、私の片手を大切そうに持ち上げたかと思うと、手の甲に優しく口付けをした。騎士団長に、ここまでされては、信用しないわけにもいかない。
(ハァー、束の間の自由よ、さようならっ!!! )
「何、、かしら•••?」
気づくと、私の顔を、頬を緩ませ安堵したようにジッと見つめている。
「あなたが元気そうで良かった。オレが、国境近くまで野盗討伐へしばらく行っていたから、大変な時に力になれずすまなかった。帰ってきたら、すでにあなたは城に軟禁された状態だった。居ても立っても居られず、ここに来たんだ。」
この人に謝ってもらうことは何もないけれど、、シャーロウ王子のお目付役か何かなのかしら??? 正義感が強い人なのね。
ユオンは不意に立ち上がり、もう一つの椅子を引いて腰掛ける。少し前屈みになりながら、膝の上で両手を組み、
「いったい妃候補だったあなたが、なぜこんな事に•••?」と、紺碧の瞳を私に向けた。
私が、城でシャーロウ王子に言われたことや彼の私兵にされた事などを、かいつまんで話すと、ユオンは爪が食い込み血が滲むほど自らの拳を固く握り締め、眉を吊り上げ、「あの王子、殺すッ!! いや、殺すだけじゃ飽きたらない。剣で八つ裂きにでもしてやろうか。」と不穏なことを言い出したッ!!!
えっ??? 何っ??? この人、王子を厳しく指導する系???
「ダ、ダメよ。そんな事しても何の解決にもならないわ。止めてっ!」慌てて前に座っていたユオンの拳の上に、自分の手を重ねる。高い位置で1つに結い上げていた髪が、流れるようにユオンの鎖骨の辺りに落ちた。
「この髪型も似合うな。薔薇のような唇と美しい瞳が際立つ••••。」
ユオンが何事かを小さな声で囁いたがうまく聞き取れず、「えっ•••?」と聞き返そうと顔を上げると、頬をうっすらと朱に染めながら、穏やかな笑みを浮かべ、「いえ、••••あなたが望むままに•••。」と答える姿はとても品がある。
とりあえず、王子がユオンによって血まみれになることは避けられそう。
ユオンと話してるうちに本来の目的を忘れそうだわ。私は重ねていた手を離し、椅子から立ち上がると、「それよりも、この部屋を調べましょう。何か気づいた事はあるかしら?」と、部屋のあちこちを点検する。
ユオンは頷くと、「微量な魔力が、使われていた形跡がある。だが、鋭利な刃物で背中から一突きだったと言うから、その魔力がどういう目的で使用されたかは分からない•••。」と、部屋を見渡す。
魔力と言っても、遠いところにいる人に何か危害加えたり、そんな魔法みたいに何でもできるわけではない。自分に得意な属性、水や火、風などを、魔力でそれらを作り出したりその性質を増幅させたりすることができるくらいだ。けれど、この国ではそれが決定的に重要なファクターとなっていて、魔力量が高いと出世や結婚に有利となる。
「魔力の痕跡など、、、もともとの魔力量がほとんどない私には、全く感知できないわ。」そう言いながら、私はユオンを横目でチラリと見る。魔力量がほぼない私でさえ、目の前のユオンからは強い魔力を感じる事が出来る。
(先ほどの足元から突然立ち上がった炎と言い、この人、どれだけ強いのかしら???)
この部屋は死体以外は、まだそのままの状態で保存されていた。「あとは、グラスが2つ残されていたことから考えても、王城のこんなところまで入り込めるのだから内部の、そしてある程度近しい者の犯行よね。今のところ大きな謎は2つ。凶器はどこに消えたか?密室はどうやって作られたか?」
発見された時、窓もドアも鍵が掛かっていたと言う事だけれど、ドアはシンプルな鍵穴タイプ。ドアからの侵入の方が可能性は高そう。もちろんこの段階では全ての可能性を排除は出来ないけど•••。
これ以上ここにいても、私では何も分からないだろう。朝になれば人も来る。そろそろ戻ろうとユオンに促す。
「それならあなたを送って行こう。城の中で軟禁と聞いているが今はどこに•••??」
◇◇◇◇
ユオンに送り届けてもらった日の翌朝、窓から陽が差し込み、目が覚める。美味しそうなスープの香りがする。
「アネラ様、起きましたか?朝食の準備ができてます。」
「クレール!美味しそうな匂いがここまで漂って来て、お腹が空いちゃったわ!それにしても、あのユオンって人、今日も来るって言っていたけれど何時くらいにくるのかしら???」
昨晩は大変だった。小屋を見たユオンが怒り狂い、今にもシャーロウ王子を殺しに行きそうな勢いだった。私がここで充分満足していることを説いても、自分の屋敷に連れて行くだとか言って聞かなかった。たまらず私が、犯人探しは1人でやると言ったら、慌てて渋々了承したけれど、、、。
ーーーー私を監視したいけれど、こんなボロボロの小屋に来るのは嫌と言うことなのかしら??
あんなに美しい人だから、密かにプライドが高いとか?? あまりそういうことは気にしなさそうな感じだけれど、人は見かけによらないのね。
???
何だかクレールの様子がおかしい。すごく疲れてるような•••!?
「???•••クレール•••???」
クレールは、荒い息を吐きながら、
「実は、、ユオン様がこの屋敷の見張りの座をかけて、門の外の衛兵と決闘をしようと言い出しまして、、衛兵が恐ろしさに拒否しても、ユオン様は聞き届けず、、私がアネラ様に迷惑がかかるとアネラ様の名を出してやっと止めて下さったのですが、、すでに衛兵は危うく半殺しという状態でございました•••。」と、ハンカチで汗を拭った。
(えっ?!そこまでして監視したかったの???)
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~
柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。
そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。
クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。
さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!
前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます
由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。
だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。
そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。
二度目の人生。
沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。
ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。
「今世は静かに生きられればそれでいい」
そう思っていたのに――
奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。
さらにある日。
皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。
「沈薬は俺の妃だった」
だが沈薬は微笑んで言う。
「殿下、私は静王妃です」
今の関係は――
皇叔母様。
前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。
それを静かに守る静王。
宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる