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9 運命の歯車は回り始める
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ドリアーヌは、オレが魔力を暴走させないよう睨みを効かせ、「ユーリッ、今日からお前は、一切、ユーリ・アヴェーヌ・フォンを名乗る事を禁じます。『契約書』をここへ。」とキンキン声で居丈高に叫んだ。
護衛の一人が、黒い箱に収められた書類と棒状の真っ白な石を丁寧に取り出し、ゴトリッと部屋の中の古びた机の上に置く。
父の側室のドリアーヌは似合わない笑顔で、契約書へ満足そうに目を向け、「シャーロウ、こちらへ来なさい。」と、猫なで声を出した。
護衛とは違う、上品なスーツを着た、穏やかそうな一人の紳士の後ろから、真ん中分けで金髪を綺麗に整えた少年が、頬を膨らませ面倒くさそうにでてきた。
ドリアーヌは、オレを睨みながら、
「さあ、この国の王子の前で誓いなさい。」と傲慢な態度を表す。
存在は知っていたが、実際に面と向かって会ったのは初めてだった。この施設に入れられる前、シャーロウは甘やかされて育った典型的なお坊ちゃんだと、周りの使用人達は噂していた。オレにとっては、よく見かけるようなちょっとワガママな駄々っ子にしか見えなかったから、こんな出会い方でなければ、弟として仲良くなれたかもしれないとも思う。
「かあさま~つまんないよぉ。オレ、はやくかえりたい。」
シャーロウは、口を尖らせて、いかにも興味なさそうにこぼした。慣れない場所で落ち着かないのか、キョロキョロ部屋の中を見回している。
ドリアーヌは、眉間に皺を寄せ、
「シャーロウッ、その態度は何ですか? あなたはこの国の王子なのよッ!」と、背中を反らし胸を張るが、そんなに大きな声を出さなくても、この狭い部屋の中なら充分聞こえているのにと思う。
シャーロウの表情からは、王位継承権を継いで以来、毎日のように王子としての振る舞いを指摘され、うんざりしているのが手に取るように分かる。緑の目で不満そうにこちらをギロリッと見ると、「おまえ、グズグズするなよ、はやくやれよ。」と急かした。
シャーロウの言葉に目前に置かれた契約書を確認する。これまでの自分に何の未練もなかったので、契約書に同意するため、その隣に置かれた白く長細い石を手に取った。その白い石で契約書に触れると、一瞬だけ青白く紙が光るが、それで終わりだ。石が魔力を媒介し、その契約書を有効化する。
王位継承権を剥奪されたときでさえ、名前だけはそのままだった。この時は名前の剥奪がどういう結果に繋がるかあまり理解できていなかったが、今なら分かる。王族としての財産権の放棄だった。
先ほどの紳士がオレのところまで来て、目線を合わせるようにしゃがみ込む。シルバー色の髪色がとても似合う大柄な男性で、優しそうな黒目が印象的だ。
「ユーリ殿下、•••いや、ユーリ、今日から君は、ユオン・シルヴァダン・ネーヴだ。僕のことは、レオと呼んで構わないよ。君には、すごい才能があると聞いてる。時々、顔を見に来ていいかい?」
「•••ああ」
コクンッと頷いた。
あの事件以来、こうして真っ直ぐ目を合わせて、普通に話しかけてくれた大人は、母上を除けばレオが初めてだった。
後ろで成り行きを見守っていたロビーが、ドアの取っ手にブクブクと膨れた手をかけ、「レオ殿、行きますよ。」と、もう片方の手でズレたメガネを直す。
レオは背後からの声に軽く頷くと、オレの両肩に手を置き、「ユオン、ではまたね。」と、新しい呼び名でオレを呼んだ。
ロビーがドアを開けると、彼の小太りの身体のその向こうから、タタタタッと軽快に1人の女の子が、何かを両手で抱え、ちょうど走りながらこちらに向かって来るところが見えた!!
「アネラ、廊下は走るものではありませんッ。」
ロビーは、大声を出すのさえちょっとした運動かのように、言い終わるとハァッハァッと、短い息を漏らす。
彼女は、桃のように頬を蒸気させながら、青いワンピース姿で、注意を受け足を揃えて立ち止まる。
「あっ! ロビー先生、ごめんなさいっ! ••••皆さま、こんにちはっ!」
部屋の重くるしい雰囲気とは対照的な、元気な声をあげたかと思うと、ペコリッと深くお辞儀をした。ピンクのリボンがまるで蝶のように、ライラック色の髪と一緒に揺らめく。
フゥーッとロビーがため息をつき、
「こちらの部屋は危険だから近づかないようにと言ってませんでしたか?」と、一歩前に出て、ドアの前をさり気なく塞いだ。
アネラは、おずおずと部屋の前まで歩いてきて、ロビーの顔を見上げながら、一冊の分厚い本を両手で差し出した。
「その、•••この本でわからないところがあったから、おしえてもらおうとおもったのっ!!」
しばらくロビーは本のタイトルをジッと眺めていたようだったが、後ろに客人を待たせていることに気付いたのだろう。
「•••仕方ないですね。今回だけですよ。私はこちらの方々を案内しなければなりませんから、聞きたい事を聞いたら、すぐに自分の部屋に戻りなさい。」
それだけ言うと、ドアを開けたまま、自分は脇に寄り、後ろを振り返った。
アネラは本を胸の前で抱え直すと、
「は~いっ!!」
と、何度も頷いて嬉しそうに目を細めた。
「ドリアーヌ様、シャーロウ殿下、どうぞ部屋の外へ。」
ロビーの促しで、あの女が先頭に立ち、護衛をゾロゾロ引き連れ出て行く。
「•••」
彼等が先へと進んで行くのに、一向にシャーロウは動かない。真っ赤な顔をして、ボーッとただ一点を凝視している。
レオだけはシャーロウが動かないのでその後ろに立ち、様子を伺っていた。大柄な彼が、ボーッと立ち尽くすシャーロウを部屋の外へ促そうと腰を屈めかけた時、前方からあの女のトゲトゲしい、「シャーロウッ!! 」という声が響いた。
シャーロウは、ハッとした顔で慌てて、声のする方へ足を動かそうとして、足がもつれて転びかける。
レオが片腕を突差に掴んだが、シャーロウのもう片方の手は、アネラの方に伸ばされた。
彼のすぐ目の前まで来ていたアネラは、肩を押された形でバランスを崩しかけたが、何とか踏み留まり「だいじょうぶ?」と、栗色の瞳で心配そうにシャーロウを見つめ、小首を傾ける。
シャーロウは体勢を立て直す余裕もなさそうに、「う、うんっ•••おまえ、なまえは?」と、まくし立てた。
「アネラよっ!」
一瞬目を見開いた後、すぐにクシャッと顔を綻ばせた。
ドリアーヌは鋭い目でこちら側を睨み、「シャーロウッ!!! そんな子に構うんじゃありませんッ! 行きますよッ。」と、ますます苛ついている。
「アネラ•••」と呟き首の後ろまで赤くなったシャーロウは、レオに促され、やっと部屋から出て行った。
彼らが去った後、大きな本を抱えてる彼女に、「ごめん。オレのせいで怒られて•••。」と声をかける。
「ううん、わたしがやくそくをやぶって、かってに来ちゃったから•••。」
アネラは待合せ場所に来ないオレを心配して、見に来てくれたのだろう。
オレは、今の今までドリアーヌたちがいた部屋を振り返り、「この部屋でよければ、今、教えるけど•••。」と言いつつ、こんな簡素な部屋に、お嬢様のアネラを招いて大丈夫か??? と、内心ドキドキしていた。
彼女は気にする素振りも見せず、むしろ目を輝かせて、「ありがとうっ!!」ウフフッと嬉しそうに声を弾ませた。
抱えていた本を机の上に置き、椅子に腰掛ける。その隣に椅子を持ってきてオレも座る。外にいる時も並んで座る時は、これぐらいの距離なのに、部屋の中では少し緊張した。彼女の息遣いも、甘い香りも、普段より意識してしまう。
「これね、ここがよくわからなかったの。」と、真剣にノートに書き写す姿を横から盗み見る。
落ちてくる葡萄色の髪を耳にかけながら、華奢な手で一文字一文字を丁寧に書いている。彼女の可憐な雰囲気に、真っ青なワンピースはよく似合っていた。
少し椅子が高いのか、つま先だけちょこんと床につけ、たまに気が抜けると、つま先が滑るように足をブラブラさせている。
一度はドン底に突き落とされてしまった。いや、自ら突き進んでいったのか?? 何も感じない”フリ” をした方が楽だと、心を閉ざし、生への意欲を失っていた乾いた日々に、突然現れた可愛らしい女の子。
こんな日々がずっと続けば良いのに•••。願わずにはいられなかった。他に何も要らない。胸の奥がこんなにも満ちてあたたかくなるような、この幸せな時間が続きさえすれば•••。
(彼女がいればもう何も要らない!!)
けれど、そんな日々が突然終わりを告げるのは、すぐそこまで来ていた。
護衛の一人が、黒い箱に収められた書類と棒状の真っ白な石を丁寧に取り出し、ゴトリッと部屋の中の古びた机の上に置く。
父の側室のドリアーヌは似合わない笑顔で、契約書へ満足そうに目を向け、「シャーロウ、こちらへ来なさい。」と、猫なで声を出した。
護衛とは違う、上品なスーツを着た、穏やかそうな一人の紳士の後ろから、真ん中分けで金髪を綺麗に整えた少年が、頬を膨らませ面倒くさそうにでてきた。
ドリアーヌは、オレを睨みながら、
「さあ、この国の王子の前で誓いなさい。」と傲慢な態度を表す。
存在は知っていたが、実際に面と向かって会ったのは初めてだった。この施設に入れられる前、シャーロウは甘やかされて育った典型的なお坊ちゃんだと、周りの使用人達は噂していた。オレにとっては、よく見かけるようなちょっとワガママな駄々っ子にしか見えなかったから、こんな出会い方でなければ、弟として仲良くなれたかもしれないとも思う。
「かあさま~つまんないよぉ。オレ、はやくかえりたい。」
シャーロウは、口を尖らせて、いかにも興味なさそうにこぼした。慣れない場所で落ち着かないのか、キョロキョロ部屋の中を見回している。
ドリアーヌは、眉間に皺を寄せ、
「シャーロウッ、その態度は何ですか? あなたはこの国の王子なのよッ!」と、背中を反らし胸を張るが、そんなに大きな声を出さなくても、この狭い部屋の中なら充分聞こえているのにと思う。
シャーロウの表情からは、王位継承権を継いで以来、毎日のように王子としての振る舞いを指摘され、うんざりしているのが手に取るように分かる。緑の目で不満そうにこちらをギロリッと見ると、「おまえ、グズグズするなよ、はやくやれよ。」と急かした。
シャーロウの言葉に目前に置かれた契約書を確認する。これまでの自分に何の未練もなかったので、契約書に同意するため、その隣に置かれた白く長細い石を手に取った。その白い石で契約書に触れると、一瞬だけ青白く紙が光るが、それで終わりだ。石が魔力を媒介し、その契約書を有効化する。
王位継承権を剥奪されたときでさえ、名前だけはそのままだった。この時は名前の剥奪がどういう結果に繋がるかあまり理解できていなかったが、今なら分かる。王族としての財産権の放棄だった。
先ほどの紳士がオレのところまで来て、目線を合わせるようにしゃがみ込む。シルバー色の髪色がとても似合う大柄な男性で、優しそうな黒目が印象的だ。
「ユーリ殿下、•••いや、ユーリ、今日から君は、ユオン・シルヴァダン・ネーヴだ。僕のことは、レオと呼んで構わないよ。君には、すごい才能があると聞いてる。時々、顔を見に来ていいかい?」
「•••ああ」
コクンッと頷いた。
あの事件以来、こうして真っ直ぐ目を合わせて、普通に話しかけてくれた大人は、母上を除けばレオが初めてだった。
後ろで成り行きを見守っていたロビーが、ドアの取っ手にブクブクと膨れた手をかけ、「レオ殿、行きますよ。」と、もう片方の手でズレたメガネを直す。
レオは背後からの声に軽く頷くと、オレの両肩に手を置き、「ユオン、ではまたね。」と、新しい呼び名でオレを呼んだ。
ロビーがドアを開けると、彼の小太りの身体のその向こうから、タタタタッと軽快に1人の女の子が、何かを両手で抱え、ちょうど走りながらこちらに向かって来るところが見えた!!
「アネラ、廊下は走るものではありませんッ。」
ロビーは、大声を出すのさえちょっとした運動かのように、言い終わるとハァッハァッと、短い息を漏らす。
彼女は、桃のように頬を蒸気させながら、青いワンピース姿で、注意を受け足を揃えて立ち止まる。
「あっ! ロビー先生、ごめんなさいっ! ••••皆さま、こんにちはっ!」
部屋の重くるしい雰囲気とは対照的な、元気な声をあげたかと思うと、ペコリッと深くお辞儀をした。ピンクのリボンがまるで蝶のように、ライラック色の髪と一緒に揺らめく。
フゥーッとロビーがため息をつき、
「こちらの部屋は危険だから近づかないようにと言ってませんでしたか?」と、一歩前に出て、ドアの前をさり気なく塞いだ。
アネラは、おずおずと部屋の前まで歩いてきて、ロビーの顔を見上げながら、一冊の分厚い本を両手で差し出した。
「その、•••この本でわからないところがあったから、おしえてもらおうとおもったのっ!!」
しばらくロビーは本のタイトルをジッと眺めていたようだったが、後ろに客人を待たせていることに気付いたのだろう。
「•••仕方ないですね。今回だけですよ。私はこちらの方々を案内しなければなりませんから、聞きたい事を聞いたら、すぐに自分の部屋に戻りなさい。」
それだけ言うと、ドアを開けたまま、自分は脇に寄り、後ろを振り返った。
アネラは本を胸の前で抱え直すと、
「は~いっ!!」
と、何度も頷いて嬉しそうに目を細めた。
「ドリアーヌ様、シャーロウ殿下、どうぞ部屋の外へ。」
ロビーの促しで、あの女が先頭に立ち、護衛をゾロゾロ引き連れ出て行く。
「•••」
彼等が先へと進んで行くのに、一向にシャーロウは動かない。真っ赤な顔をして、ボーッとただ一点を凝視している。
レオだけはシャーロウが動かないのでその後ろに立ち、様子を伺っていた。大柄な彼が、ボーッと立ち尽くすシャーロウを部屋の外へ促そうと腰を屈めかけた時、前方からあの女のトゲトゲしい、「シャーロウッ!! 」という声が響いた。
シャーロウは、ハッとした顔で慌てて、声のする方へ足を動かそうとして、足がもつれて転びかける。
レオが片腕を突差に掴んだが、シャーロウのもう片方の手は、アネラの方に伸ばされた。
彼のすぐ目の前まで来ていたアネラは、肩を押された形でバランスを崩しかけたが、何とか踏み留まり「だいじょうぶ?」と、栗色の瞳で心配そうにシャーロウを見つめ、小首を傾ける。
シャーロウは体勢を立て直す余裕もなさそうに、「う、うんっ•••おまえ、なまえは?」と、まくし立てた。
「アネラよっ!」
一瞬目を見開いた後、すぐにクシャッと顔を綻ばせた。
ドリアーヌは鋭い目でこちら側を睨み、「シャーロウッ!!! そんな子に構うんじゃありませんッ! 行きますよッ。」と、ますます苛ついている。
「アネラ•••」と呟き首の後ろまで赤くなったシャーロウは、レオに促され、やっと部屋から出て行った。
彼らが去った後、大きな本を抱えてる彼女に、「ごめん。オレのせいで怒られて•••。」と声をかける。
「ううん、わたしがやくそくをやぶって、かってに来ちゃったから•••。」
アネラは待合せ場所に来ないオレを心配して、見に来てくれたのだろう。
オレは、今の今までドリアーヌたちがいた部屋を振り返り、「この部屋でよければ、今、教えるけど•••。」と言いつつ、こんな簡素な部屋に、お嬢様のアネラを招いて大丈夫か??? と、内心ドキドキしていた。
彼女は気にする素振りも見せず、むしろ目を輝かせて、「ありがとうっ!!」ウフフッと嬉しそうに声を弾ませた。
抱えていた本を机の上に置き、椅子に腰掛ける。その隣に椅子を持ってきてオレも座る。外にいる時も並んで座る時は、これぐらいの距離なのに、部屋の中では少し緊張した。彼女の息遣いも、甘い香りも、普段より意識してしまう。
「これね、ここがよくわからなかったの。」と、真剣にノートに書き写す姿を横から盗み見る。
落ちてくる葡萄色の髪を耳にかけながら、華奢な手で一文字一文字を丁寧に書いている。彼女の可憐な雰囲気に、真っ青なワンピースはよく似合っていた。
少し椅子が高いのか、つま先だけちょこんと床につけ、たまに気が抜けると、つま先が滑るように足をブラブラさせている。
一度はドン底に突き落とされてしまった。いや、自ら突き進んでいったのか?? 何も感じない”フリ” をした方が楽だと、心を閉ざし、生への意欲を失っていた乾いた日々に、突然現れた可愛らしい女の子。
こんな日々がずっと続けば良いのに•••。願わずにはいられなかった。他に何も要らない。胸の奥がこんなにも満ちてあたたかくなるような、この幸せな時間が続きさえすれば•••。
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