【完結】犯人にされた落ちこぼれ令嬢ですが、イケメン騎士団長に四六時中監視(プロポーズ)されてます•••!!!

来海ありさ

文字の大きさ
11 / 25

11 騎士は、苦悩する、、、

しおりを挟む
(まさか、自分の遠征中に、アネラが殺人事件の犯人にされていたとは•••。)

女性の煌びやかなドレスで埋め尽くされた店内から目を背け、窓の外を眺めた。城下でも高級な店が多いこの通りでは、従者などを連れた身なりの良い人が行き交う。



18歳と言う史上最年少で騎士団長となったオレの最初の仕事は、国境近くで野盗討伐のための10日間の遠征だった。遠征に行く直前に、元気そうな彼女の顔を見ていたはずなのにッ! オレはその時のことを思い出す。



◇  ◇  ◇


「エドゥ、とうとうお前•••、隠し子までいたのか??? 」
朝、隊長たちの報告を聞き終わり、ゾロゾロと皆が出て行った後、二番隊副隊長のエドワードが、泥で汚れた服を着た少年を連れてきた。


「そんなわけないでしょ、団長、今朝、来る途中、こいつが店からパンを盗もうとして逃げたから捕まえてきたんっすよ。」
ツンツンと立った短めの赤髪が、少し濡れてるが、こいつ•••また朝まで飲んでから、慌てて水浴びをしてきたなっ。

少年が逃げようと、暴れてエドワードの足を蹴飛ばしている。だが、副隊長の証である片耳を飾る金細工の防御魔法が、ことごとくはね返す。

「なんだよっ離せよ!パンぐらいいいだろっ、ケチケチするなよっ。」
エドワードに両腕を掴まれた少年は、少し伸びたクリーム色の髪の毛を振り乱し、暴れる。


「パンだろうが宝石だろうが、店で売ってるものを勝手に持ちさるのは、犯罪だッ!」
少年は一生懸命に何とか逃げようとするが、エドゥは、慣れた手つきで少年の動きを封じ、もう片方の手で、少年が盗んだものだろう。破けた紙に包まれた丸パンを無造作に机の上に置いた。

(朝からこいつら、ほんっと騒々しいな。側から見てると、まるで兄弟喧嘩だ。)


「うるせっ~なっ! ジョンの奴が、給金わたさねえのが悪いんだろっ! 」
少年は逃げるのを諦めたのか、暴れるのをやめ、代わりに拳を握り締め、肩をいからせ、エドゥを睨みつけた。

エドゥは、驚いたように目を見開き、
「ジョンって、•••あの工場長のジョンか??」と、息をつめる。


「他に誰がいるっッてんだよっ!」
へッ!!!、と吐き捨てるように叫ぶと、腕を組んでオレたちを睨む。

誰だ??? 聞いたことがある名前だ。「ジョン???」と、エドゥに目で問いかけた。


エドゥは、ギリッと歯を食い縛り、鋭い目をして、「以前も子どもたちを、金を渡さず不当に働かせていた奴です。」と、怒りを滲ませた。


「なるほど。」
あいつか•••。椅子の背もたれに寄りかかり、手を組んで、以前にも似たようなことがあったと記憶を辿る。前回きっちり払わせたはずだが、また同じことをしてるのか??
懲りないなっ。


「は、な、せ、よ!」
少年は、エドゥに、背中の後ろでずっと拘束されていた腕を振り解こうともがく。今度はエドゥも、すんなりと放した。


「おい、エドゥ!!」
指でクイッと手招きすると、エドゥは、高い背を折り曲げて、耳をこちらへ向けた。

オレは、早口で声を潜めて、「ジョンとか言う奴のこともう一度調べろっ。ーーーあとそいつだが、朝飯でも食わせながら話聞いてやれ。二度と同じ事しないよう約束させたら解放しろ。」と、少年の顔を見ながら指示する。


エドゥは大きく頷くと、「はいよ!」と、肩をすくめた。



ガチャッ



「団長ッ!」
ノックもそこそこに、新兵が息を切らせ慌てた様子でドアを開けた。

「んっ?今、いそがし•••!」
そこまで言いかけたオレの目は、ドアの向こうから現れた人物に釘付けとなった。


「シャーロウ殿下が、アネラ様と一緒に視察をお望みです。」
新兵は、ドアを押さえるため脇に立つ。そして正面には、自慢の金髪を整え、顎を反らして偉そうに立つあいつがいた!!

(ッシャーロウッ、なぜっここに??? これまで一度も騎士団に来たことなどなかったくせにっ!!)

シャーロウの背後に、見慣れたライラック色の髪が見え隠れしている。ドクンッと心臓の音が鳴った気がした。

エドゥが、ゆっくりとドアの方へと向き直り、片手を胸に当て爽やかな笑みを浮かべる。
「シャーロウ殿下、突然どうされたのですか?」
よそ行きの笑顔だ。礼儀正しく見えるが、目が笑ってない。エドゥは、前からアネラに片想いしてると言って憚らなかったから、あんまりシャーロウに良い印象はもってないだろうな。まあ、オレもだが•••。


シャーロウは、胸を張り自慢げに、後ろにいるアネラの方へ一度振り返った。「アネラに仕事場を見せてやろうと思ってな。•••その子どもは?」ジロッと緑の瞳が、少年を睨む。

(んっ•••? いっしょにオレも睨まれた気がするが、気のせいか???)


シャーロウの後ろには、光沢のある優美な水色のドレスを着たアネラがいた。華美な装飾はしていないが、きちんと揃えられた髪と、背筋を伸ばした上品な佇まいは、それだけで目を惹いた。彼女は、エドゥの腕の中にいる少年を、一心に見つめている。心配そうに栗色の瞳を揺らし、いつもは笑顔を浮かべている口元も、今は緊張気味に引き結んでいる。




~~やっぱり可愛すぎる•••ンじゃなくてっ•••、オレは、努めて事務的な口調を意識する。
「ああ、•••パンを盗んだとかで連れてきたんだが、とくに問題はない。すぐにこちらで対応する。」


シャーロウは、鼻を鳴らし、
「フンッ、些細なことでも風紀の乱れは、すぐに街の治安を悪化させるからなッ! そいつはしばらく地下牢にでもぶち込んどくんだろうな?」と、声を低めた。

ンじゃ、まずお前の女遊びを止めろッ!! と、喉まででかかる。
「いや、まず話を聞いてからだが•••。それに、地下牢は、極悪な犯罪人でもない限りは使用できない。」
頭に血が上りそうだ。窓から入ってくるヒンヤリとした風が、身体の熱を冷ましてくれる。


シャーロウは、オレの言葉に目をむき出しにして、眉を吊り上げた。
「なっ••••、そんな事は言われなくても知ってるッ!!! 知ってて•••敢えて言ったんだッ!!! 俺の言うことの方が優先されるはずだッ!この国の最高権力を継ぐ者だぞッ!」


声を荒げすぎだっ!! こンのバカ王子•••。どうせアネラに良いところでも見せようとして、何も知らなかったくせに、指摘されて大恥かいたのが嫌で、逆ギレしてやがるっ。プライドだけは何よりも高いな。

(一発、殴ってやろうか•••?)

拳を握り締めた時、凛とした声が響いた。

「シャーロウ殿下、厳しく裁くのも良いかもしれませんが、寛容なのもまた王の器ですわ! 殿下は根は純粋でお優しい方•••。私、今は殿下と外でお茶でもしたい気分なの。ここは、騎士の方たちにお任せしましょう。ねっ?」

アネラは透き通るようなブラウンの瞳でシャーロウの目を見つめて手を取り、ギュッと握りしめた。彼女の白くて柔らかそうな手が、あいつの手を包む。気を抜くと、あンのッバカ王子を殺してしまいそうだッ!



•••ッ•••!?


エドゥが、靴の踵でオレの足を思いっきし踏みつけたッ•••!

横目でチラリとエドゥを見ると、ジトリッと呆れた視線が返ってきた。そういうお前も、鼻息荒いぞっ。


ドアを開け出て行く直前、一瞬だけアネラが振り返り、茶目っ気たっぷりの笑顔を、騎士団の部屋に振り撒いて去っていった。


バタンッ


扉が閉まった途端、
「はぁあ~可愛すぎるっ••••。何であんな可憐な美女が、あんなバカ王子の妃候補なんだぁ???」

耳まで赤く染まったエドゥが、頭を抱えるようにして、一人叫んでいる。


「エドゥ、お前、そのうち不敬罪でしょっ引かれるぞ。」
まあ、同感だが•••。


◇  ◇   ◇

大人になったアネラは美しく成長していた。腰まで伸びたライラック色の髪は、長い手足を引き立たせ、女性らしさを強調していた。好奇心に溢れる大きな栗色の瞳は、幼い頃の面影を感じさせたが、薄く色づいた頬と艶々の唇は、色っぽさも感じさせた。

アネラは、その愛らしい容姿と偉ぶらない態度で、騎士たちの間でも人気だった。また、魔力がほぼないにも関わらず堂々とした姿が健気だという声もあれば、歴戦の騎士たちにとっては、魔力の無さが逆に庇護欲をかき立てられるという者もいた。





「~っ••••。」

あの日は本当に夢かと思った! まさか殺害現場に令嬢が忍び込んでくるなど、普通は思わないだろう。この腕で彼女を抱きとめ、その柔らかさに初めて触れた時、心臓がドキドキとずっと音を立てていた。性格もその笑顔も幼い時の面影のままなのに、どこか魅惑的で男心を刺激する。
「ッんとにっ、あの人はっ•••。」



アネラは、オレが彼女を好きだからではなく、たんに監視と女避けで結婚したと本気で信じているようだ。それはまだいい。彼女を繋ぎ止めるために自ら望んだことなのだから•••。

(けれど、、異性として認識されていないのは問題では???)


結婚も一泊旅行も、もっと断られるかと思っていたのに、わりとあっさりと受け入れてもらえた。彼女の頭の中は、生家のことと犯人探しでいっぱいだからだろう。


結婚を約束した年頃の男女が、一緒に一泊旅行へ行くと言うその意味を、彼女は果たして分かっているのだろうか?? 今、隣の部屋では、オレが先ほど選んだ紫色のドレスを試着している彼女がいる。







「ひょっとして、オレの理性が試されてるのか???」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~

柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。 そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。 クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。 さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます

由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。 だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。 そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。 二度目の人生。 沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。 ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。 「今世は静かに生きられればそれでいい」 そう思っていたのに―― 奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。 さらにある日。 皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。 「沈薬は俺の妃だった」 だが沈薬は微笑んで言う。 「殿下、私は静王妃です」 今の関係は―― 皇叔母様。 前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。 それを静かに守る静王。 宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

処理中です...