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11 騎士は、苦悩する、、、
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(まさか、自分の遠征中に、アネラが殺人事件の犯人にされていたとは•••。)
女性の煌びやかなドレスで埋め尽くされた店内から目を背け、窓の外を眺めた。城下でも高級な店が多いこの通りでは、従者などを連れた身なりの良い人が行き交う。
18歳と言う史上最年少で騎士団長となったオレの最初の仕事は、国境近くで野盗討伐のための10日間の遠征だった。遠征に行く直前に、元気そうな彼女の顔を見ていたはずなのにッ! オレはその時のことを思い出す。
◇ ◇ ◇
「エドゥ、とうとうお前•••、隠し子までいたのか??? 」
朝、隊長たちの報告を聞き終わり、ゾロゾロと皆が出て行った後、二番隊副隊長のエドワードが、泥で汚れた服を着た少年を連れてきた。
「そんなわけないでしょ、団長、今朝、来る途中、こいつが店からパンを盗もうとして逃げたから捕まえてきたんっすよ。」
ツンツンと立った短めの赤髪が、少し濡れてるが、こいつ•••また朝まで飲んでから、慌てて水浴びをしてきたなっ。
少年が逃げようと、暴れてエドワードの足を蹴飛ばしている。だが、副隊長の証である片耳を飾る金細工の防御魔法が、ことごとくはね返す。
「なんだよっ離せよ!パンぐらいいいだろっ、ケチケチするなよっ。」
エドワードに両腕を掴まれた少年は、少し伸びたクリーム色の髪の毛を振り乱し、暴れる。
「パンだろうが宝石だろうが、店で売ってるものを勝手に持ちさるのは、犯罪だッ!」
少年は一生懸命に何とか逃げようとするが、エドゥは、慣れた手つきで少年の動きを封じ、もう片方の手で、少年が盗んだものだろう。破けた紙に包まれた丸パンを無造作に机の上に置いた。
(朝からこいつら、ほんっと騒々しいな。側から見てると、まるで兄弟喧嘩だ。)
「うるせっ~なっ! ジョンの奴が、給金わたさねえのが悪いんだろっ! 」
少年は逃げるのを諦めたのか、暴れるのをやめ、代わりに拳を握り締め、肩をいからせ、エドゥを睨みつけた。
エドゥは、驚いたように目を見開き、
「ジョンって、•••あの工場長のジョンか??」と、息をつめる。
「他に誰がいるっッてんだよっ!」
へッ!!!、と吐き捨てるように叫ぶと、腕を組んでオレたちを睨む。
誰だ??? 聞いたことがある名前だ。「ジョン???」と、エドゥに目で問いかけた。
エドゥは、ギリッと歯を食い縛り、鋭い目をして、「以前も子どもたちを、金を渡さず不当に働かせていた奴です。」と、怒りを滲ませた。
「なるほど。」
あいつか•••。椅子の背もたれに寄りかかり、手を組んで、以前にも似たようなことがあったと記憶を辿る。前回きっちり払わせたはずだが、また同じことをしてるのか??
懲りないなっ。
「は、な、せ、よ!」
少年は、エドゥに、背中の後ろでずっと拘束されていた腕を振り解こうともがく。今度はエドゥも、すんなりと放した。
「おい、エドゥ!!」
指でクイッと手招きすると、エドゥは、高い背を折り曲げて、耳をこちらへ向けた。
オレは、早口で声を潜めて、「ジョンとか言う奴のこともう一度調べろっ。ーーーあとそいつだが、朝飯でも食わせながら話聞いてやれ。二度と同じ事しないよう約束させたら解放しろ。」と、少年の顔を見ながら指示する。
エドゥは大きく頷くと、「はいよ!」と、肩をすくめた。
ガチャッ
「団長ッ!」
ノックもそこそこに、新兵が息を切らせ慌てた様子でドアを開けた。
「んっ?今、いそがし•••!」
そこまで言いかけたオレの目は、ドアの向こうから現れた人物に釘付けとなった。
「シャーロウ殿下が、アネラ様と一緒に視察をお望みです。」
新兵は、ドアを押さえるため脇に立つ。そして正面には、自慢の金髪を整え、顎を反らして偉そうに立つあいつがいた!!
(ッシャーロウッ、なぜっここに??? これまで一度も騎士団に来たことなどなかったくせにっ!!)
シャーロウの背後に、見慣れたライラック色の髪が見え隠れしている。ドクンッと心臓の音が鳴った気がした。
エドゥが、ゆっくりとドアの方へと向き直り、片手を胸に当て爽やかな笑みを浮かべる。
「シャーロウ殿下、突然どうされたのですか?」
よそ行きの笑顔だ。礼儀正しく見えるが、目が笑ってない。エドゥは、前からアネラに片想いしてると言って憚らなかったから、あんまりシャーロウに良い印象はもってないだろうな。まあ、オレもだが•••。
シャーロウは、胸を張り自慢げに、後ろにいるアネラの方へ一度振り返った。「アネラに仕事場を見せてやろうと思ってな。•••その子どもは?」ジロッと緑の瞳が、少年を睨む。
(んっ•••? いっしょにオレも睨まれた気がするが、気のせいか???)
シャーロウの後ろには、光沢のある優美な水色のドレスを着たアネラがいた。華美な装飾はしていないが、きちんと揃えられた髪と、背筋を伸ばした上品な佇まいは、それだけで目を惹いた。彼女は、エドゥの腕の中にいる少年を、一心に見つめている。心配そうに栗色の瞳を揺らし、いつもは笑顔を浮かべている口元も、今は緊張気味に引き結んでいる。
~~やっぱり可愛すぎる•••ンじゃなくてっ•••、オレは、努めて事務的な口調を意識する。
「ああ、•••パンを盗んだとかで連れてきたんだが、とくに問題はない。すぐにこちらで対応する。」
シャーロウは、鼻を鳴らし、
「フンッ、些細なことでも風紀の乱れは、すぐに街の治安を悪化させるからなッ! そいつはしばらく地下牢にでもぶち込んどくんだろうな?」と、声を低めた。
ンじゃ、まずお前の女遊びを止めろッ!! と、喉まででかかる。
「いや、まず話を聞いてからだが•••。それに、地下牢は、極悪な犯罪人でもない限りは使用できない。」
頭に血が上りそうだ。窓から入ってくるヒンヤリとした風が、身体の熱を冷ましてくれる。
シャーロウは、オレの言葉に目をむき出しにして、眉を吊り上げた。
「なっ••••、そんな事は言われなくても知ってるッ!!! 知ってて•••敢えて言ったんだッ!!! 俺の言うことの方が優先されるはずだッ!この国の最高権力を継ぐ者だぞッ!」
声を荒げすぎだっ!! こンのバカ王子•••。どうせアネラに良いところでも見せようとして、何も知らなかったくせに、指摘されて大恥かいたのが嫌で、逆ギレしてやがるっ。プライドだけは何よりも高いな。
(一発、殴ってやろうか•••?)
拳を握り締めた時、凛とした声が響いた。
「シャーロウ殿下、厳しく裁くのも良いかもしれませんが、寛容なのもまた王の器ですわ! 殿下は根は純粋でお優しい方•••。私、今は殿下と外でお茶でもしたい気分なの。ここは、騎士の方たちにお任せしましょう。ねっ?」
アネラは透き通るようなブラウンの瞳でシャーロウの目を見つめて手を取り、ギュッと握りしめた。彼女の白くて柔らかそうな手が、あいつの手を包む。気を抜くと、あンのッバカ王子を殺してしまいそうだッ!
•••ッ•••!?
エドゥが、靴の踵でオレの足を思いっきし踏みつけたッ•••!
横目でチラリとエドゥを見ると、ジトリッと呆れた視線が返ってきた。そういうお前も、鼻息荒いぞっ。
ドアを開け出て行く直前、一瞬だけアネラが振り返り、茶目っ気たっぷりの笑顔を、騎士団の部屋に振り撒いて去っていった。
バタンッ
扉が閉まった途端、
「はぁあ~可愛すぎるっ••••。何であんな可憐な美女が、あんなバカ王子の妃候補なんだぁ???」
耳まで赤く染まったエドゥが、頭を抱えるようにして、一人叫んでいる。
「エドゥ、お前、そのうち不敬罪でしょっ引かれるぞ。」
まあ、同感だが•••。
◇ ◇ ◇
大人になったアネラは美しく成長していた。腰まで伸びたライラック色の髪は、長い手足を引き立たせ、女性らしさを強調していた。好奇心に溢れる大きな栗色の瞳は、幼い頃の面影を感じさせたが、薄く色づいた頬と艶々の唇は、色っぽさも感じさせた。
アネラは、その愛らしい容姿と偉ぶらない態度で、騎士たちの間でも人気だった。また、魔力がほぼないにも関わらず堂々とした姿が健気だという声もあれば、歴戦の騎士たちにとっては、魔力の無さが逆に庇護欲をかき立てられるという者もいた。
「~っ••••。」
あの日は本当に夢かと思った! まさか殺害現場に令嬢が忍び込んでくるなど、普通は思わないだろう。この腕で彼女を抱きとめ、その柔らかさに初めて触れた時、心臓がドキドキとずっと音を立てていた。性格もその笑顔も幼い時の面影のままなのに、どこか魅惑的で男心を刺激する。
「ッんとにっ、あの人はっ•••。」
アネラは、オレが彼女を好きだからではなく、たんに監視と女避けで結婚したと本気で信じているようだ。それはまだいい。彼女を繋ぎ止めるために自ら望んだことなのだから•••。
(けれど、、異性として認識されていないのは問題では???)
結婚も一泊旅行も、もっと断られるかと思っていたのに、わりとあっさりと受け入れてもらえた。彼女の頭の中は、生家のことと犯人探しでいっぱいだからだろう。
結婚を約束した年頃の男女が、一緒に一泊旅行へ行くと言うその意味を、彼女は果たして分かっているのだろうか?? 今、隣の部屋では、オレが先ほど選んだ紫色のドレスを試着している彼女がいる。
「ひょっとして、オレの理性が試されてるのか???」
女性の煌びやかなドレスで埋め尽くされた店内から目を背け、窓の外を眺めた。城下でも高級な店が多いこの通りでは、従者などを連れた身なりの良い人が行き交う。
18歳と言う史上最年少で騎士団長となったオレの最初の仕事は、国境近くで野盗討伐のための10日間の遠征だった。遠征に行く直前に、元気そうな彼女の顔を見ていたはずなのにッ! オレはその時のことを思い出す。
◇ ◇ ◇
「エドゥ、とうとうお前•••、隠し子までいたのか??? 」
朝、隊長たちの報告を聞き終わり、ゾロゾロと皆が出て行った後、二番隊副隊長のエドワードが、泥で汚れた服を着た少年を連れてきた。
「そんなわけないでしょ、団長、今朝、来る途中、こいつが店からパンを盗もうとして逃げたから捕まえてきたんっすよ。」
ツンツンと立った短めの赤髪が、少し濡れてるが、こいつ•••また朝まで飲んでから、慌てて水浴びをしてきたなっ。
少年が逃げようと、暴れてエドワードの足を蹴飛ばしている。だが、副隊長の証である片耳を飾る金細工の防御魔法が、ことごとくはね返す。
「なんだよっ離せよ!パンぐらいいいだろっ、ケチケチするなよっ。」
エドワードに両腕を掴まれた少年は、少し伸びたクリーム色の髪の毛を振り乱し、暴れる。
「パンだろうが宝石だろうが、店で売ってるものを勝手に持ちさるのは、犯罪だッ!」
少年は一生懸命に何とか逃げようとするが、エドゥは、慣れた手つきで少年の動きを封じ、もう片方の手で、少年が盗んだものだろう。破けた紙に包まれた丸パンを無造作に机の上に置いた。
(朝からこいつら、ほんっと騒々しいな。側から見てると、まるで兄弟喧嘩だ。)
「うるせっ~なっ! ジョンの奴が、給金わたさねえのが悪いんだろっ! 」
少年は逃げるのを諦めたのか、暴れるのをやめ、代わりに拳を握り締め、肩をいからせ、エドゥを睨みつけた。
エドゥは、驚いたように目を見開き、
「ジョンって、•••あの工場長のジョンか??」と、息をつめる。
「他に誰がいるっッてんだよっ!」
へッ!!!、と吐き捨てるように叫ぶと、腕を組んでオレたちを睨む。
誰だ??? 聞いたことがある名前だ。「ジョン???」と、エドゥに目で問いかけた。
エドゥは、ギリッと歯を食い縛り、鋭い目をして、「以前も子どもたちを、金を渡さず不当に働かせていた奴です。」と、怒りを滲ませた。
「なるほど。」
あいつか•••。椅子の背もたれに寄りかかり、手を組んで、以前にも似たようなことがあったと記憶を辿る。前回きっちり払わせたはずだが、また同じことをしてるのか??
懲りないなっ。
「は、な、せ、よ!」
少年は、エドゥに、背中の後ろでずっと拘束されていた腕を振り解こうともがく。今度はエドゥも、すんなりと放した。
「おい、エドゥ!!」
指でクイッと手招きすると、エドゥは、高い背を折り曲げて、耳をこちらへ向けた。
オレは、早口で声を潜めて、「ジョンとか言う奴のこともう一度調べろっ。ーーーあとそいつだが、朝飯でも食わせながら話聞いてやれ。二度と同じ事しないよう約束させたら解放しろ。」と、少年の顔を見ながら指示する。
エドゥは大きく頷くと、「はいよ!」と、肩をすくめた。
ガチャッ
「団長ッ!」
ノックもそこそこに、新兵が息を切らせ慌てた様子でドアを開けた。
「んっ?今、いそがし•••!」
そこまで言いかけたオレの目は、ドアの向こうから現れた人物に釘付けとなった。
「シャーロウ殿下が、アネラ様と一緒に視察をお望みです。」
新兵は、ドアを押さえるため脇に立つ。そして正面には、自慢の金髪を整え、顎を反らして偉そうに立つあいつがいた!!
(ッシャーロウッ、なぜっここに??? これまで一度も騎士団に来たことなどなかったくせにっ!!)
シャーロウの背後に、見慣れたライラック色の髪が見え隠れしている。ドクンッと心臓の音が鳴った気がした。
エドゥが、ゆっくりとドアの方へと向き直り、片手を胸に当て爽やかな笑みを浮かべる。
「シャーロウ殿下、突然どうされたのですか?」
よそ行きの笑顔だ。礼儀正しく見えるが、目が笑ってない。エドゥは、前からアネラに片想いしてると言って憚らなかったから、あんまりシャーロウに良い印象はもってないだろうな。まあ、オレもだが•••。
シャーロウは、胸を張り自慢げに、後ろにいるアネラの方へ一度振り返った。「アネラに仕事場を見せてやろうと思ってな。•••その子どもは?」ジロッと緑の瞳が、少年を睨む。
(んっ•••? いっしょにオレも睨まれた気がするが、気のせいか???)
シャーロウの後ろには、光沢のある優美な水色のドレスを着たアネラがいた。華美な装飾はしていないが、きちんと揃えられた髪と、背筋を伸ばした上品な佇まいは、それだけで目を惹いた。彼女は、エドゥの腕の中にいる少年を、一心に見つめている。心配そうに栗色の瞳を揺らし、いつもは笑顔を浮かべている口元も、今は緊張気味に引き結んでいる。
~~やっぱり可愛すぎる•••ンじゃなくてっ•••、オレは、努めて事務的な口調を意識する。
「ああ、•••パンを盗んだとかで連れてきたんだが、とくに問題はない。すぐにこちらで対応する。」
シャーロウは、鼻を鳴らし、
「フンッ、些細なことでも風紀の乱れは、すぐに街の治安を悪化させるからなッ! そいつはしばらく地下牢にでもぶち込んどくんだろうな?」と、声を低めた。
ンじゃ、まずお前の女遊びを止めろッ!! と、喉まででかかる。
「いや、まず話を聞いてからだが•••。それに、地下牢は、極悪な犯罪人でもない限りは使用できない。」
頭に血が上りそうだ。窓から入ってくるヒンヤリとした風が、身体の熱を冷ましてくれる。
シャーロウは、オレの言葉に目をむき出しにして、眉を吊り上げた。
「なっ••••、そんな事は言われなくても知ってるッ!!! 知ってて•••敢えて言ったんだッ!!! 俺の言うことの方が優先されるはずだッ!この国の最高権力を継ぐ者だぞッ!」
声を荒げすぎだっ!! こンのバカ王子•••。どうせアネラに良いところでも見せようとして、何も知らなかったくせに、指摘されて大恥かいたのが嫌で、逆ギレしてやがるっ。プライドだけは何よりも高いな。
(一発、殴ってやろうか•••?)
拳を握り締めた時、凛とした声が響いた。
「シャーロウ殿下、厳しく裁くのも良いかもしれませんが、寛容なのもまた王の器ですわ! 殿下は根は純粋でお優しい方•••。私、今は殿下と外でお茶でもしたい気分なの。ここは、騎士の方たちにお任せしましょう。ねっ?」
アネラは透き通るようなブラウンの瞳でシャーロウの目を見つめて手を取り、ギュッと握りしめた。彼女の白くて柔らかそうな手が、あいつの手を包む。気を抜くと、あンのッバカ王子を殺してしまいそうだッ!
•••ッ•••!?
エドゥが、靴の踵でオレの足を思いっきし踏みつけたッ•••!
横目でチラリとエドゥを見ると、ジトリッと呆れた視線が返ってきた。そういうお前も、鼻息荒いぞっ。
ドアを開け出て行く直前、一瞬だけアネラが振り返り、茶目っ気たっぷりの笑顔を、騎士団の部屋に振り撒いて去っていった。
バタンッ
扉が閉まった途端、
「はぁあ~可愛すぎるっ••••。何であんな可憐な美女が、あんなバカ王子の妃候補なんだぁ???」
耳まで赤く染まったエドゥが、頭を抱えるようにして、一人叫んでいる。
「エドゥ、お前、そのうち不敬罪でしょっ引かれるぞ。」
まあ、同感だが•••。
◇ ◇ ◇
大人になったアネラは美しく成長していた。腰まで伸びたライラック色の髪は、長い手足を引き立たせ、女性らしさを強調していた。好奇心に溢れる大きな栗色の瞳は、幼い頃の面影を感じさせたが、薄く色づいた頬と艶々の唇は、色っぽさも感じさせた。
アネラは、その愛らしい容姿と偉ぶらない態度で、騎士たちの間でも人気だった。また、魔力がほぼないにも関わらず堂々とした姿が健気だという声もあれば、歴戦の騎士たちにとっては、魔力の無さが逆に庇護欲をかき立てられるという者もいた。
「~っ••••。」
あの日は本当に夢かと思った! まさか殺害現場に令嬢が忍び込んでくるなど、普通は思わないだろう。この腕で彼女を抱きとめ、その柔らかさに初めて触れた時、心臓がドキドキとずっと音を立てていた。性格もその笑顔も幼い時の面影のままなのに、どこか魅惑的で男心を刺激する。
「ッんとにっ、あの人はっ•••。」
アネラは、オレが彼女を好きだからではなく、たんに監視と女避けで結婚したと本気で信じているようだ。それはまだいい。彼女を繋ぎ止めるために自ら望んだことなのだから•••。
(けれど、、異性として認識されていないのは問題では???)
結婚も一泊旅行も、もっと断られるかと思っていたのに、わりとあっさりと受け入れてもらえた。彼女の頭の中は、生家のことと犯人探しでいっぱいだからだろう。
結婚を約束した年頃の男女が、一緒に一泊旅行へ行くと言うその意味を、彼女は果たして分かっているのだろうか?? 今、隣の部屋では、オレが先ほど選んだ紫色のドレスを試着している彼女がいる。
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