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続 線香花火
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私は学校が終わるやいなや、家に向かってダッシュした。何と言っても、算数で百点取ったのだ。お母さんに自慢するしかない。家に帰り着くと、靴を脱ぐのももどかしくリビングへ向かった。ドアをバーンと開けた途端、私は凍り付いた。
お母さんとあの男がハグしていたのだ。その当時の私の性知識は、男性と女性がハグすると赤ちゃんができる、と言う程度のものだった。
この男は、お父さんを追い出すだけでは飽き足らず、今度は赤ちゃんを作って、私を追い出す気だ。
「フケツ」
私は叫び外へ飛び出していた。そして、そのハグ事件は私を谷底へ突き落とした。命に関わる程、私を打ちのめした。
身体は機能不全を起こし日に日に衰弱して行く。この原因が心因性である事に、医師はすぐに気が付いた。
心理的プログラムが組まれたが、何ひとつ問題は解決しなかった。差し伸べられる手を、私は全て払い除けた。
後になって知った事だが、あの当時、
お父さんは闇金からお金を借りまくり、
女を作って行方不明になっていたこと。闇金の取り立て屋が、自宅やお母さんの勤めていた会社に押しかけていたと言うこと。
そんなお母さんの姿を見かねて、白馬の王子様があらわれたと言う訳だ。
私が目撃した場面は、お母さんが取り立て屋の事でパニックなり、なだめてる最中の出来事。そして、白馬の王子様が奔走して、問題を解決してくれたのだ。それは、姫様の心を射抜いた。
今こうして、お継父さんが私の赤ちゃんを抱っこしているなんて、信じられないことだ。
それには、二つのターニングポイントがあった。ひとつは何と言っても、あの夏の線香花火。私に生きる執念を植え付けてくれた。
二つ目は、あのお兄さんに出会えたこと。初めて彼の歌を聞いた時の感想。ハッキリ言って、へたくそ。でも、歌を聞いているうちに分かったんだ。この人は歌手じゃない、吟遊詩人なのだと。彼の歌の一節が、私の心を貫いた。
生きることのこの苦しみ
この世は魂の流刑地なのか
空飛ぶ鳥よ強く羽ばたけ
高く登れど尽きぬ空
私の頬に涙が伝う。そして思った。こんな歌詞じゃみんなに受けないよ。でも好き。
私はずっと、ずっと彼を見ていた。高校も卒業して就職もした。二人だけで過ごす時間も持てるようになった。私の性知識も完璧なものになった。
「私 決めた。会社を作るの。名前は、プロダクションi i (愛愛)」
彼のキョトンとした顔。そんなこと構わず私は続けた。
「社長はあなたよ。私はマネージャー。最初に社長がやることは、資金作り。働いて稼いできてね。私は売れない歌手のマネージャーじゃないのよ、あなたの人生のマネージャー」
「ひょっとして、それって、僕はプロポーズされてるわけ?」
私は顔が真っ赤になった。
「そうよ。何か文句ある」
「ないよ。嬉しいだけだよ。仕事探すよ。社員に給料払わないといけないか
らな」
プロダクションi iには、もうひとつの意味が隠されている。"いつまでも 一緒"
このプロダクションにも新人が入社した。まだ使いものにならない。何かあると、すぐピーピー泣く。今は社長に抱かれて、スヤスヤと眠っている。将来有望な大型新人だ。
彼も時々吟遊詩人になる。私だけの
歌を歌ってくれる。
朝目を覚ますと
ぼくの横で君が寝ている
今までは応える人もいない部屋
小さな寝息をたてて
寝むる君を抱きしめて
これからは一人じゃないと思った
それぞれ歩んできた人生が
出会ってひとつに結ばれる
どんなに辛く悲しいことがあっても
キョロキョロせず僕だけを
まっすぐ見ててよ
僕は必ず君のそばにいるからね
生命の草原を二人で駆けて行こう
虹の向こうに輝く夢を追いかけて
喜び哀しみ幾たび繰り返すだろうか
それでも僕を信じて
ついてきておくれ
遠い道のりだけど宜しく頼むよ
そしてきっと良かった言える人生を
これからも、社員をどんどん増やさないといけないし、どんなプロダクションになるか先が楽しみね。
お母さんとあの男がハグしていたのだ。その当時の私の性知識は、男性と女性がハグすると赤ちゃんができる、と言う程度のものだった。
この男は、お父さんを追い出すだけでは飽き足らず、今度は赤ちゃんを作って、私を追い出す気だ。
「フケツ」
私は叫び外へ飛び出していた。そして、そのハグ事件は私を谷底へ突き落とした。命に関わる程、私を打ちのめした。
身体は機能不全を起こし日に日に衰弱して行く。この原因が心因性である事に、医師はすぐに気が付いた。
心理的プログラムが組まれたが、何ひとつ問題は解決しなかった。差し伸べられる手を、私は全て払い除けた。
後になって知った事だが、あの当時、
お父さんは闇金からお金を借りまくり、
女を作って行方不明になっていたこと。闇金の取り立て屋が、自宅やお母さんの勤めていた会社に押しかけていたと言うこと。
そんなお母さんの姿を見かねて、白馬の王子様があらわれたと言う訳だ。
私が目撃した場面は、お母さんが取り立て屋の事でパニックなり、なだめてる最中の出来事。そして、白馬の王子様が奔走して、問題を解決してくれたのだ。それは、姫様の心を射抜いた。
今こうして、お継父さんが私の赤ちゃんを抱っこしているなんて、信じられないことだ。
それには、二つのターニングポイントがあった。ひとつは何と言っても、あの夏の線香花火。私に生きる執念を植え付けてくれた。
二つ目は、あのお兄さんに出会えたこと。初めて彼の歌を聞いた時の感想。ハッキリ言って、へたくそ。でも、歌を聞いているうちに分かったんだ。この人は歌手じゃない、吟遊詩人なのだと。彼の歌の一節が、私の心を貫いた。
生きることのこの苦しみ
この世は魂の流刑地なのか
空飛ぶ鳥よ強く羽ばたけ
高く登れど尽きぬ空
私の頬に涙が伝う。そして思った。こんな歌詞じゃみんなに受けないよ。でも好き。
私はずっと、ずっと彼を見ていた。高校も卒業して就職もした。二人だけで過ごす時間も持てるようになった。私の性知識も完璧なものになった。
「私 決めた。会社を作るの。名前は、プロダクションi i (愛愛)」
彼のキョトンとした顔。そんなこと構わず私は続けた。
「社長はあなたよ。私はマネージャー。最初に社長がやることは、資金作り。働いて稼いできてね。私は売れない歌手のマネージャーじゃないのよ、あなたの人生のマネージャー」
「ひょっとして、それって、僕はプロポーズされてるわけ?」
私は顔が真っ赤になった。
「そうよ。何か文句ある」
「ないよ。嬉しいだけだよ。仕事探すよ。社員に給料払わないといけないか
らな」
プロダクションi iには、もうひとつの意味が隠されている。"いつまでも 一緒"
このプロダクションにも新人が入社した。まだ使いものにならない。何かあると、すぐピーピー泣く。今は社長に抱かれて、スヤスヤと眠っている。将来有望な大型新人だ。
彼も時々吟遊詩人になる。私だけの
歌を歌ってくれる。
朝目を覚ますと
ぼくの横で君が寝ている
今までは応える人もいない部屋
小さな寝息をたてて
寝むる君を抱きしめて
これからは一人じゃないと思った
それぞれ歩んできた人生が
出会ってひとつに結ばれる
どんなに辛く悲しいことがあっても
キョロキョロせず僕だけを
まっすぐ見ててよ
僕は必ず君のそばにいるからね
生命の草原を二人で駆けて行こう
虹の向こうに輝く夢を追いかけて
喜び哀しみ幾たび繰り返すだろうか
それでも僕を信じて
ついてきておくれ
遠い道のりだけど宜しく頼むよ
そしてきっと良かった言える人生を
これからも、社員をどんどん増やさないといけないし、どんなプロダクションになるか先が楽しみね。
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