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46 井川と原田 その2
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原田がCT検査室前に来たのは、小宮がCT検査を終えて、脳波の検査のため検査室に入った後だった。
「CT検査では異常はないそうだ」
原田が問うより先に井川が答えた。
「そうですか。よかった」
「今は脳波の検査をしてる」
検査室前の長椅子に座った井川が原田にも座るように勧め、看護師に頼んで借りた毛布を原田に着せかけた。病弱な原田が体を冷やして風邪を引かないよう、気を回してくれたのだ。
原田が礼を言うと、「今の時期の受験生に風邪を引かせたら、一生恨まれるからな」と井川はぶっきらぼうに言って顔を逸らせたが、優しい色が自分の方へ流れてくるのが原田にははっきり見えていた。
「で、気になることってのはなんだ?」
「あの刑事さん、えっと、小宮さん、でしたよね。三週間前くらいだったかな。私、コンビニで小宮さんに会ったんです。そしたら」
原田はそこで言葉を切り、少し逡巡した後、
「事件の日の久住君と、そっくりでした」
恐怖が滲む声で言った。
「そっくりって、どういうことだ? 何が似てたんだ?」
「感情も意識も見えなかったんです。近づいて見たらようやく見えるくらいに薄くありはしたんですけど、どこにも、誰にも、意識が向いていない。目の前に私がいて会話もしているのに。小宮さんはマネキンみたいでした」
あの日の久住を思い出し、彼のように自殺してしまうのではないかと不安になって小宮を引き止め、感情や意識が動きそうな話題を懸命に考えた。
「小宮さんがとっても好きなことかすごく嫌なことを話して感情を刺激するのが一番いいんだけど、小宮さんの趣味や好みなんて知らないから、小宮さんと一緒に仕事をしている人の話はどうだろうと思って」
井川と一緒ではないのかと聞くと、感情と意識が少しは濃くなった。
「でも、何ていうか、被さる……んん、違うな……あ、そうだ、ダブって見えたんです。二重になって揺れてるような感じ」
小宮はあまり感情が顔に出ないタイプだが、表に出さない分、内に秘めたものは濃く強い。それが学校での事情聴取の時に見た彼と比べれば別人のようだったという。
「小宮はもうその頃から変だったのか」
「何か原因に思い当たることってありますか?」
「分からねえ。元々飄々とした奴で、怒ってても喜んでても見た目はそう変わらんからな」
ため息をついた井川がふと顔を強張らせ、原田に向き直った。
「嬢ちゃん、小宮が晴彦と異常さが似てたって言ったな」
「え、ええ、はい」
井川が知る限りの情報の中で、二人にははっきりした共通点があった。
二人とも羽崎宅を訪れ、戻った後おかしくなった。
井川は羽崎に会った後のことを思い出す。
羽崎宅を出て、フェンスの外に駐車していた車のキーをどのポケットに入れたか探していると、小宮がいきなり防風林の中へ走って行った。
すぐに後を追ったのにどこへ行ったのか姿が見えなくなり、名前を呼びながら探し回ると、獣道のような細い道から少し外れた所で突っ立っているのを見つけた。
呼びかけると勢いよく小宮は振り向いた――初めて見る、怯えた表情で。
山中で首を吊ったまま腐敗した自殺死体や踏切事故でのバラバラ死体、最近では自宅で滅多差しにされた晴彦の両親の遺体を見てもさほど表情を変えなかった男が恐怖に顔を歪ませていた。
振り向きざまに何か口走ったのだが聞こえず、問い直すと野良犬がいたようだったからこちらに来ないうちに追い払おうと思ったと言う。
下手な嘘だった。が、会話している内に小宮は落ち着きを取り戻したため、問い詰める必要もなかったので聞き流した。
あの時、おそらく小宮は井川に正直に言えない何かを見たのだ。
それは何だ?
何故言えなかった?
もしも、見たものが言っても到底信じてもらえないものだったとしたら。
他人に嗤われることより、自身の正気を疑わなければならない恐怖の方が強かったとしたら。
「……あそこには人を狂わす何かがあるのか?」
それなら小宮と共に行った自分に異常がないのはおかしい。
「あそこってどこですか?」
頭の中での疑問をうっかり口に出して、原田に聞かれてしまった。舌打ちしたい気持ちだったが、良い機会だと思い直した。
「詳しくは言えないが、晴彦も小宮も行った後変になった場所がある。でもな、そこは俺も行ったんだ。俺は特におかしくなってはいないと思うんだが」
「ええ、井川さんは初めて会ったときと変わってないです」
感情と意識がはっきりしていて見えやすいと、原田は頷いた。
「俺は自分が単純な性格だっていう自覚はあるよ。で、もう少し踏み込んで言うと、そこである人物に会ってる。もしかしたらそいつに晴彦も小宮も気づかないうちに催眠術をかけられて――って考えそうになったが、そんなバカな話はさすがにないか」
「ええ、ありえませんね。催眠術で他人の精神を狂わせたり重大犯罪を犯させたりすることは不可能と言われてます。人間には防衛本能があるので、自分や他人の命に関わったり倫理を大きく逸脱したりするような命令には従わないそうですから」
原田は周りを見回し、毛布を被り直すふりをして少し井川に体を寄せて囁いた。
「その人物って、家出した久住君を保護して滞在させた人ですか?」
「……捜査機密の部類だから、イエスとは答えられんな」
井川も小声で返してきた。
「それは答えたも同然じゃないですか」
「捜査上の重要機密を捜査員以外の人間に漏らしたと発覚すれば、俺は即刻クビだ。多分懲戒免職で退職金も出ない」
「私、誰にも言いませんよ」
原田が口を尖らせると、井川は悪そうな顔で笑った。
「そこは嬢ちゃんを信用してる。共感覚のことを俺たちに話してくれたのと同じ信頼を俺も嬢ちゃんに対して持ってるよ」
そして井川は表情を引き締め、前を向いたまま小声で話し始めた。
「俺はな、どうもその人間が気にくわねえんだ。家出して行き倒れた晴彦を助けて、イジメから避難させるように自宅に住まわせて、色々と世話をしてた。ちゃんと仕事もしているし、晴彦の両親にも信頼されていた善人なんだが」
「なのに気に入らないんですね?」
「善人面してる人間の中には裏の顔がある奴がいるっていう偏見を俺が持ってるせいかもしれん。本当に見た目通りの人格者である可能性の方が大だ。もしも悪党だったとしても、俺が持ってる情報だけじゃあどんな種類の悪意を持ってるのか見当もつかない」
「ああ、だから私にその人を見て欲しいんですね?」
原田の答えに、井川はバネ仕掛けのように勢いよく彼女の方を向いた。
「実はこれが本題ですよね。さっきから何か不安と心配の中に変な遠慮がチラチラユラユラしてると思ったら、これが言いたかったんですか? そんなに言い難いことでもないと思うんですけど」
原田が笑うと、井川はとんでもないと首を振った。
「そいつが住んでるのは県外なんだ。受験前の、しかも心臓病持ちの女子中学生にそこまで行ってくれと簡単には頼めん。署からの正式要請じゃない、俺の個人的な考えなんだ。嬢ちゃんはいいと言っても、まず保護者が許さんよ」
「そんなことありません。私が本気でやりたいと言えば、私の両親は駄目とは言いませんから。気兼ねなく捜査協力して欲しいって言ってください」
「いや、しかしだな」
「井川さん」
原田は井川に柔らかく笑いかけた。
「私、生まれたときには一年も生きられないだろうって言われたそうです。それでも色んな人のおかげで生き延びて、一歳の時には三歳までの命、三歳になったら五歳までだって、小刻みにリミットを宣言されながらも生きて、今は次の手術を乗り越えて成人するのが目標です。そんなだから、両親は私にすごく甘くて、大抵のことなら私がやりたいと言ったら止めないんですよ」
「だったら尚更無理をさせる訳には」
「無理はしません。私もその人に会ってみたいんです」
原田はもう一段階声をひそめた。
「小宮さんは分からないけど、何日も滞在してた久住君は催眠術じゃなくて洗脳って可能性もありますよね」
原田の言葉に井川は目を見開いた。
「新興宗教のカリスマ教祖は、信者に対して最初はこの上なく優しい理解者であると示すことが多いそうです。その人がそういうタイプならまず親切にして久住君を手なずけてから、ゆっくり洗脳していく方法を取ると思います」
「それで両親やイジメ犯を害するよう仕向けたとして、洗脳する側に何の得があるんだ? 自分にとって邪魔な人間を排除するためというなら分かるが」
「さあ? それは本人に聞いてみないと。支配欲を満たしたいのかも知れないし、意味なんかないのかもしれない。逆に洗脳なんてこっちの勝手な疑いで、本当に裏表のない良い人かも知れない。だからその人に会ってみたいんです」
そうか、と井川は深く頷いた。
「近々御両親がいる時に頼みに行く。だから体調を崩さないように気をつけておいてくれ」
原田に小声でそう言うと井川は立ち上がり、正面玄関の方からこちらに歩いてくる男性に「課長、こっちです」と呼びかけながら足早に歩み寄って行った。
課長と呼ばれた男性は自らも井川の方へ歩み寄り、井川が来るとそこに立ち止まって二人で話し始めた。彼は井川の話を聞きながら、原田に怪訝な視線を向けた。彼の視線に気づいた井川がどんな説明をしたのかは聞こえなかったが、軽く頷いた彼は原田から視線を外し、再び井川の話に聞き入っていた。
二人が揃って検査室の前まで戻ってきた時、検査室の扉が開いた。
同刻。
高田西警察署刑事課に、一人の女性の訪問者があった。
課長と捜査員は出払っていて、調べ物があって一人で残っていた早瀬が応対に当たった。
「高田西中学の元教師の山口と申します。中学校の事件後、母がこちらで大変なご迷惑をおかけしたそうで、遅くなりましたがお詫びに伺いました」
捜査資料の写真で嫌ほど見た晴彦の担任教師が、深々と頭を下げた。
「それと、実はお伺いしたいこともあって」
頭を上げた彼女は、受け持ちだった男子生徒の多くが「かわいい」と褒めた笑顔を早瀬に向けた。
「CT検査では異常はないそうだ」
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原田が礼を言うと、「今の時期の受験生に風邪を引かせたら、一生恨まれるからな」と井川はぶっきらぼうに言って顔を逸らせたが、優しい色が自分の方へ流れてくるのが原田にははっきり見えていた。
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「あの刑事さん、えっと、小宮さん、でしたよね。三週間前くらいだったかな。私、コンビニで小宮さんに会ったんです。そしたら」
原田はそこで言葉を切り、少し逡巡した後、
「事件の日の久住君と、そっくりでした」
恐怖が滲む声で言った。
「そっくりって、どういうことだ? 何が似てたんだ?」
「感情も意識も見えなかったんです。近づいて見たらようやく見えるくらいに薄くありはしたんですけど、どこにも、誰にも、意識が向いていない。目の前に私がいて会話もしているのに。小宮さんはマネキンみたいでした」
あの日の久住を思い出し、彼のように自殺してしまうのではないかと不安になって小宮を引き止め、感情や意識が動きそうな話題を懸命に考えた。
「小宮さんがとっても好きなことかすごく嫌なことを話して感情を刺激するのが一番いいんだけど、小宮さんの趣味や好みなんて知らないから、小宮さんと一緒に仕事をしている人の話はどうだろうと思って」
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呼びかけると勢いよく小宮は振り向いた――初めて見る、怯えた表情で。
山中で首を吊ったまま腐敗した自殺死体や踏切事故でのバラバラ死体、最近では自宅で滅多差しにされた晴彦の両親の遺体を見てもさほど表情を変えなかった男が恐怖に顔を歪ませていた。
振り向きざまに何か口走ったのだが聞こえず、問い直すと野良犬がいたようだったからこちらに来ないうちに追い払おうと思ったと言う。
下手な嘘だった。が、会話している内に小宮は落ち着きを取り戻したため、問い詰める必要もなかったので聞き流した。
あの時、おそらく小宮は井川に正直に言えない何かを見たのだ。
それは何だ?
何故言えなかった?
もしも、見たものが言っても到底信じてもらえないものだったとしたら。
他人に嗤われることより、自身の正気を疑わなければならない恐怖の方が強かったとしたら。
「……あそこには人を狂わす何かがあるのか?」
それなら小宮と共に行った自分に異常がないのはおかしい。
「あそこってどこですか?」
頭の中での疑問をうっかり口に出して、原田に聞かれてしまった。舌打ちしたい気持ちだったが、良い機会だと思い直した。
「詳しくは言えないが、晴彦も小宮も行った後変になった場所がある。でもな、そこは俺も行ったんだ。俺は特におかしくなってはいないと思うんだが」
「ええ、井川さんは初めて会ったときと変わってないです」
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「そこは嬢ちゃんを信用してる。共感覚のことを俺たちに話してくれたのと同じ信頼を俺も嬢ちゃんに対して持ってるよ」
そして井川は表情を引き締め、前を向いたまま小声で話し始めた。
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「だったら尚更無理をさせる訳には」
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原田はもう一段階声をひそめた。
「小宮さんは分からないけど、何日も滞在してた久住君は催眠術じゃなくて洗脳って可能性もありますよね」
原田の言葉に井川は目を見開いた。
「新興宗教のカリスマ教祖は、信者に対して最初はこの上なく優しい理解者であると示すことが多いそうです。その人がそういうタイプならまず親切にして久住君を手なずけてから、ゆっくり洗脳していく方法を取ると思います」
「それで両親やイジメ犯を害するよう仕向けたとして、洗脳する側に何の得があるんだ? 自分にとって邪魔な人間を排除するためというなら分かるが」
「さあ? それは本人に聞いてみないと。支配欲を満たしたいのかも知れないし、意味なんかないのかもしれない。逆に洗脳なんてこっちの勝手な疑いで、本当に裏表のない良い人かも知れない。だからその人に会ってみたいんです」
そうか、と井川は深く頷いた。
「近々御両親がいる時に頼みに行く。だから体調を崩さないように気をつけておいてくれ」
原田に小声でそう言うと井川は立ち上がり、正面玄関の方からこちらに歩いてくる男性に「課長、こっちです」と呼びかけながら足早に歩み寄って行った。
課長と呼ばれた男性は自らも井川の方へ歩み寄り、井川が来るとそこに立ち止まって二人で話し始めた。彼は井川の話を聞きながら、原田に怪訝な視線を向けた。彼の視線に気づいた井川がどんな説明をしたのかは聞こえなかったが、軽く頷いた彼は原田から視線を外し、再び井川の話に聞き入っていた。
二人が揃って検査室の前まで戻ってきた時、検査室の扉が開いた。
同刻。
高田西警察署刑事課に、一人の女性の訪問者があった。
課長と捜査員は出払っていて、調べ物があって一人で残っていた早瀬が応対に当たった。
「高田西中学の元教師の山口と申します。中学校の事件後、母がこちらで大変なご迷惑をおかけしたそうで、遅くなりましたがお詫びに伺いました」
捜査資料の写真で嫌ほど見た晴彦の担任教師が、深々と頭を下げた。
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