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1stエピソード 「愛の三人組」 Aパート

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 ~無双~ そういう言葉に、憧れを抱いている人々がいることだろう。
 しかし、それを成せる者は、そうそう居ない。居てもらっては困る。
 社会とは、そういった者たちを受け入れてくれるほど度量が広いわけではない。
 そして、それは、この世界に限ったことではない。そう、これから語るある世界の物語もだ。

 ここに、ある犯罪者集団があった。最初は、それぞれ細々と活動していた集団であった。
 しかし、ある日、一人の吸血鬼がこの地に降り立った時から、そのパワーバランスに著しい変動が起きた。かの吸血鬼は強すぎたのである。次々に配下の者たちをバンパイアに屠られた。

 やがて、死んだはずの配下たちが復活してバンパイアに忠誠を誓い、それまで仲間であったはずの者たちに襲われだしたときに、ああ、もう駄目だ。と、その時の統領ヒルツは、バンパイアに皆殺しにされる覚悟で無条件降伏したのだ。

 しかし、自らをザンゲ公爵と名乗ったバンパイアは、

「領民を召し抱えずして、何が貴族か。よいよい。貴様らを我が臣民として召し抱えてくれようぞ」

 と、鷹揚に応えた。その日から、人と、吸血鬼による悪の領地経営がはじまった。

 ヒルツは、まず本拠地となる廃棄された砦に改修の為の人員と、内部を飾るための調度品を集めることにした。最初は、近隣の都市でかどわかして連れてきたり、旅商人のキャラバンを襲撃したりしていた。

 やがて、羽振りの良い盗賊団という評判が立ち始めると、同業者が標的として狙いはじめた。その頃には、持っている武器も、喰っているものも、他の弱小盗賊たちとは比較にならない程差がついていた。
 負けるわけがない。そう確信したとたん、襲って来たもの達が憐れになった。恭順を示したもの達には、命と、幾ばくかの金を提供して配下になるようにした。
 すると、噂を聞きつけて次々に配下に加えて欲しいと盗賊団がやってきた。気が付けば、「ザンゲ公国」は、近隣の都市に居る騎士団よりも強い組織になっていた。

 わが世の春である。最初に敗北して、生きながらえたのは、このバンパイアに仕えるためだったと思うようになってきた。兵力1736人の大兵団誕生である。しかし、この時既に滅亡へのカウントダウンは始まっていた。

 まずは、組織の綻びである。所詮は与太者の集まりである下部組織には、指揮すれど従わずといった連中が増えてきた。
 中でも最悪なのが、女魔導士シャル=インサーン率いる盗賊団である。彼女は、ヒルツに従順なふりをし、重要な役割を振られるまでになったが、近隣都市の中でも最大の城塞都市「アルカン」の領主や役人に収める賄賂をあろうことか、使い込み、自ら都市で贅沢三昧をし、はっちゃけた。

 己の取り分を使い込まれたと、怒り狂った領主が討伐しようと前線に出ると、これを得意の炎魔法で壊滅させた。結果、組織全体の知名度と脅威度は上がったが、最大の味方も無くし、組織全体としては全く収支が合わない結果となった。

 更に悪いことに、次の領主として赴任するのが、「ルティナス子爵夫人」噂に名高い「暴風子爵」である。若い女性ゆえ、ハニートラップも賄賂攻勢も効かず、攻めあぐねていたら、逆に彼女の攻撃を受けるはめになった。

 「ルティナス子爵夫人」は、近隣の都市に檄文を送り、挙兵のための準備を始めた。
 始めたのであったが……


「ガッデム!」

 ルナマリア=ドメーヌ=ルティナス=サムシングロイヤル子爵夫人は、大層おかんむりであった。
 ブルネットのストレートヘアーも凛々しい彼女が、珍しく荒ぶっている。

「大盗賊集団〝ザンゲ公国〟に対して、一斉に反攻せよ!」

 と、近隣の各都市(マカン、ラカン、ウラカンの各姉妹都市)に派遣した「檄文」を持たせた使者が、軒並み手ぶらで帰ってきたのだ。
 曰く、

「これから収穫期に入るため、人手を割く余裕が無い」

 と、挙兵の誘いを断られたのだ。そんなこと、百も承知だ。収穫を横取りされない為、この時期に挙兵しようとしているのに、こいつら危機管理能力に問題があるんじゃないのか? それとも、黙っていれば誰かが解決してくれるから。とでも思ってるのか? いずれにしても、頼りにならないことは確定である。

「プランBに移行する必要があるわね」

「冒険者たちを集めるのでゴザルな」

 アヤメは優秀な間者である。自分のパーティーメンバーが不在の今、一番の手札かも知れない。
 今回も、きっと期待に応えてくれるであろう、頼もしい味方に尋ねてみた。

「候補者選びは進んでいるかしら?」

「まず、サムズアップ ジェラの四人は、いつでも動ける状態でゴザル。それから、シュガーレイ ワークスがこちらに向け出立しているそうでゴザル」

「この辺はいつものメンバーね。あなたのお父さま達は?」

「既に期待の新人候補を選出して交渉中だそうでゴザルよ」

「それと、あの連中とは、接触できたかしら?」

「スパイダーネストでござるな。エージェントを名乗る男と接触して、良い返事をもらっているでゴザル」

 大体の体裁は整いそうである。あとは、報酬の面で色がつくと思わせるだけで良い。

「スー。ギルドを介して今回の報酬は神聖帝国大金貨で支払われるかも、と噂を流してもらいましょう」

 スーと呼ばれた少女は、今年の文官のエースである。昔馴染みでもあるため、自分の傍仕えとして鍛えている最中であるが、最近では、こちらがしてやられる事もある位優秀である。
 そんな彼女は、やわらかふわふわの金髪をぷるぷるさせて、

「そんなことしたら、後で大変なことになりませんか? 支払の時にどうするんです?」

「手形!」

 間髪入れずルティナス子爵夫人は答えた。噂なのだから、守る道理も無いのだと、強弁することも出来る。が、支払いが汚いと噂が立つのも困ったものである。後々の事を考えると頭が痛くなることは避けてほしい。スーは言外にそういっているのだ。

「いざとなれば、実家から取り寄せれば文句はないでしょう。切り札のアレもあることだし」

「ああ、アレですね。もう、最初からそっちを出すことを公表したらどうですか?」

「それでしょぼい戦果しかなかったら嫌じゃない。働かない奴に出す報酬はなるべく少なくしたいわよ」

 完全成果主義のドメーヌ様らしいなと、スーなどは思うのだが、

「ま、それを出す時は、ザンゲ公国が全滅した時の話よ。いくらなんでも一回で全滅させられるとも思わないわ」

 曲がりなりにも吸血鬼の集団である。きっと、ザンゲや四天王くらいは逃げおおせると思う。その時の為に追撃部隊も配備しなければならない。金はいくらあっても足りないのだ。

「そうそう、父上からの報告書で、接触した相手のぷろふが上がってきてるでゴザル」

 アヤメから手渡された報告書を見て、ドメーヌは眉に唾つけた。ばっちい。スーが顔をしかめる。

「Dランク冒険者パーティー、〝プロジェクトG〟 ね。この装備、本当?」

「実際、竜の如く巨大な無生物馬車が街道沿いを移動していると報告があったでゴザル。なんでも、凄い音とスピードで農民たちが腰を抜かして困っているとか」

「これ、実戦で役に立つのかしら?」

「彼の者たちは、神聖帝国を騎士団の包囲網を突破して東上を続けているとか。十分役に立つのでは?」

「神聖帝国を敵に回しているという事は」

「お察しの通り、〝落ちもの様〟三人のパーティーでゴザル」

 そこで、報告書の二枚目に目を通す。そこには、以下の事が記されていた。


 フカ=コオリヤク(センジ=シラオキ)
 ロサの迷宮を史上初の単独制覇。黒一色の全身鎧を装備し、基本無手で闘うスタイル。時により、正体不明の武器を使用することもあり。天歴4312年5月7日、ロサの迷宮の詳細な報告書を提出し、聖人認定を受け、同時に騎士叙勲。準男爵となる。家名はフッカー。これは、詐欺師、ひっかける者、絞め殺す者という異世界の言葉らしい。

 アコ=ナグリ
 この世界に落ちてきた時に教会に囚われた少女。牢内で神託を授かり、聖女認定を受け、身柄を解放された。基本無手で闘うスタイル。同時に神から授かったギフトにより高位の神聖魔法を使用する。現状、死者蘇生の魔法は確認されていないが、四肢損壊の重傷を完全に復活させる魔法は、聖王都で確認済。

 ヒロシ=サナダ(プロフェッサー博士)
 前述、アコ=ナグリの高位神聖魔法により四肢損壊の重傷より生還した男。その後は精力的に活動しており、天歴4312年7月12日アサヒチョウで、協力者と共に魔水の燃料化に成功。安全で移送に向いた燃料を大量に製造出来るようになる。毒物、劇物の専門家にして、プロジェクトGの発案者。



「三人共方向性の違う人材なのね。プロジェクトGって何かしら?」

「それだけが皆目見当がつかないのでゴザル。或いは単に名称なのかも知れぬでゴザルが」

「面白いわ。彼らにしましょう」

「え? いきなりでゴザルか?」

「こんな面白い連中、有名になる前に抑えないと、いくら請求されるか分からないわ。また、サムズの時みたいに抱え込まないと先々高くつくわよ。そうだわ、スー!」

「はい?」

「あなた、この方と結婚なさいな」

「「ええええっ!」」

「家格的にも丁度いい位よ。なんなら、アヤメも付けてあげようかしら」

「「ええええっ!!」」

 こっちに飛び火させないで欲しいでゴザル~と言いたげな視線である。

「ドメーヌ様が結婚すれば宜しいでしょう!? なぜ拙者まで?」

「わたくしでは、家格が違い過ぎて無理ですわね。せめて辺境伯位にはなってもらわないと」

 流石にそれがほぼ不可能事である位は理解できる。貴族家を減らしている昨今、準男爵とはいえ、一人増えている事のほうが珍しいのだ。もっとも、こういう新参の輩が成り上がれない様に出来た爵位が、一代貴族、準男爵である。つまり、飼い殺しの為の地位である。勝手に上級貴族と結婚など出来ないのだ。

「いずれにしても、彼らが戦果を上げられたら、の話よ。今の段階では絵にかいた餅ですわね」

 勿論餅など、ドメーヌは食べたことも無い幻の食材なのだが。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 収穫間際の黄金色の麦穂を横目に見ながら、車は一路東の辺境へと向かっている。

 ボア&ストロークアップして6500ccまで排気量アップしたレンジローバーは後ろに大荷物を抱えながらも快調に飛ばしている。

 俺達は、前に逗留したマカンという町で依頼を受け、アルカンという小都市国家に向かっている。
 この辺りの地名に~カンと付くのは、何でも、昔は遊牧民の大親分がこの地を治めていた名残りらしい。カンは、王の土地とかいう意味で、マカンは、中心の土地と言う意味。アルカンは最辺境の土地という意味らしい。その遊牧民を三百年程前に滅ぼして土地を奪ったのが、神聖帝国パーパスである。今走っているこの道路も当時の神征の為に作られた道路だそうだ。そうそう、関係ないが、マカンの更に前の地名が「エロトピア」らしい。どうでもいい話だがな。

「不可。そろそろ交代しようか?」

「ん、わかった」

 後席でなにやらごにょごにょ弄ってたヒロシが運転交代をしてくれるらしい。

「さっきから、何を作ってたんだ?」

「ゴーリガンスーツに仕込むLEDなんだけど、今回のは威圧用にチョイワルにしてみたよ」

「最近、ネタばっかだな。鼻風船といい、自演BGMといい、この間のコーヒーミルといい」

「ゴーリガンの役割を間違えてもらっちゃ困るにぃ。闘いだけやればいいなら、国に売り込んで量産すれば簡単だよ。でも、ゴーリガンは子供たちのヒーローなんだからねぃ。それより、仮眠取るかい。なんなら後ろに行くかねぃ?」

 おれは、助手席のアコを見て嘆息した。完全に熟睡してる。

「悪いけどそうさせてもらうよ。こいつもつれていくから」

 そう言って路肩に車を止め、寝ているアコを抱えて後ろのキャンピングトレーラーまで連れていく。
ボディ横面の GOLLY VOGUE と大きく書かれた部分の横に入り口がある。アコを抱えながらやや苦労して中に入る。

 エアストリーム社製の北米モデル、クラシック リミテッド。全長約10m全幅2.6mの巨体は、日本では牽引して走行できない。元のオーナーは輸入してから、そのことに気付いたらしく、固定式の屋台として改造しようとしていた所、転移災害で異世界に持っていかれたらしい。踏んだり蹴ったりであるが、おかげで俺達は異世界生活をしながらも、空調の効いた寝床を手に入れられた。後付けされたポップアップ式の二階を展開すると、全高4m近くになるが、最大で10人程度の大人が生活できる。しかも、キッチンは、既に改造済みで、プロ用高出力のコンロや、大型冷蔵庫も装備されているので、飯もうまいものが作れる。しかも、シャワー、トイレ付だ。
 しかも、カーゴルームだけでも1tトラック並にある。アルミ地むき出しの蒲鉾型の外観は、最高にクールな印象を見るものに与えるし、内装の豪華さも、高級ホテル並で、住む者には最高だぜ。おかげで、こっちの宿屋は使う気にならないがな。

 アコをベッドに寝かし、俺は、シャワーを浴びてから着替えて寝ることにした。何もなければあと五時間ほどで到着するだろう。しかし、大盗賊団相手の戦闘か。新装備のレーザーキャノンとか、どれくらい役に立つのかね? 確かに乾期に入って物は燃えやすいらしいが。

 それに報酬だ。こんな辺境まで出張ってきて、実際支払が滞ったら俺たちに復路の燃料代も無いんだよなぁ。せめて、金貨で十枚位は出ないと立ち往生だ。領主がどんな人かは知らないが、気前の良い金払いのいい人であることを願うばかりだ。
 ふにゃぁ~。眠くなってきた。流石に十二時間連続は堪える。アコと一緒に寝るのは、とても危険な為、二階に昇って寝る。このまま、無事に起きたらアルカンに着いていますように……zzz


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あれから、五時間、特に問題なくアルカンに到着。すぐに、ブリーフィングが始まるそうで、一足先にMXに乗って領主様の館へと入る。

 米国製 ゼロ社の電動オフロードバイク ZERO MX は、現在市販されているオフロード電動バイクの中で、最大のトルクを誇る。このトルクを武器に階段だろうが、クリーク(小川)だろうが、完全走破できるのだ。

 今回来た辺境の都市アルカンは、擂鉢状の土地で、中心街に行くほど下がっている。大型車両のゴーリーヴォーグは周回コースを延々螺旋状に下がっていかねばならない。それも、道幅が街道と違い細い。ならば、階段を直接下って行かれるMXの出番である。ここを真っ直ぐなら中心部の領主の館まで五分とかからない。すぐに到着すると、門番に名乗りを上げる。

「マカンで依頼を受けたプロジェクトGのフカ=コオリヤクだ!」



 話は通っていたようで、すぐにブリーフィング会場へ通される。いるいる、腕っぷしの強そうなお兄さん、お姉さん。そして、黒髪の少女、と言って良いくらいの年頃の女の子が、りりしく発言する。

「注目(アテンション)! 今回の作戦の指揮をとります、ルティナス子爵夫人 です」

驚いた。領主様が直々に指揮するというのか? それにしても、随分若い。

「今回の作戦の肝は、最大機動力を持ち、最大火力を持つパーティーに、敵陣深くまで先行してもらい、その途上で敵の混乱を作り上げる。その隙をついて後発組が、混乱状態の敵を殲滅する。先発組のパーティーには、危険が伴うが、これが、最も確実な戦術であると確信している。それでは、その、先発組と後発組の振り分けであるが」

 周囲を見渡し、

「先発組は、Dランク プロジェクトGの三人にお願いする。残りのものは、後発組だ」

 周囲がどよめく。

「何か質問事項はあるか?」

 そう問いかけられ、一人の女性が挙手した。

「それは、先発組を使い捨ての捨て駒として使用するということでしょうか?」

「いいや、違う。生還率が一番高くなる方法を考慮した結果である。彼らは、特殊な装備を所有しており、今回の作戦は、正にその装備の活躍の場となるであろうからだ。現に、私は今回の作戦にあたり、諸君らと一本釣りで契約を行ったが、まず一番最初に声をかけたのが彼らだ」

 そこで、俺を見やり、続ける。嘘も方便、黙ってろ、か。

「今回の作戦決行は、彼らが了承して初めて成立したものである。この決定に異議があるものは、今からでもかまわない。契約を取り消して退室していただいて結構だ。それで、異議のある者はいるか?」

 しーん、と室内は静まり返っている。ここまで言われてかえって俺らへの興味がわいたってとこか?

 「宜しい。それでは作戦の詳細について説明する。まずは……」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ブリーフィングが終わってすることが無くなった俺は、城内の修練場で、人型の的を借りてMXに載せていたインパルスで撃ってみることにした。消防団を兼ねていた伝手で、地元消防署で廃棄物として入手したのをヒロシが直して使っている。と、いっても実戦投入は初めてなので、場所を借りられたら撃ってみてくれ、とヒロシから言われていたのだ。騎士団の人がやたらとフレンドリーだったのが、印象的だ。

「こんな辺境だと、退屈しのぎを提供する奴にはいつもこんなもんさ親切にするようにしてるんだよ。みんな娯楽に飢えてるからな」

 と、フォン ディガーと名乗った騎士は、自ら、チャージ練習用の人型をセットしてくれた。
 いつのまにか、ギャラリーが増えている。騎士連中はおろか、さっきのブリーフィングに来てた女の子たちや、男パーティー(なんと、Sランクとのこと。俺を試すような視線がいやん)、城づとめの女中たちまで集まってきた。

「いつでもいいぞーっ!」

 ディガー氏の合図で撃ってみる。果たして?

『バシュッ!』

 思ってた以上の反動があった。ちと強いかも、と思ったら、人型は中央部分でぽっきんと折れた。直撃部分は粉々になっている。水は、後方二十mの所まで放射状に飛び散っている。ギャラリーも、ここまでは想定してなかったようで、口あんぐりだ。
 とりあえず、的の後片付を始めたディガー氏の所まで行って謝罪する。

「すまん、まさかこんな壊れ方するとは」

「ああ、洒落で 俺に向かって撃て! とか、やらなくて良かった」

 そんな事を言いながら片付けていると、後方から、なんか美人がやってきた。

「素晴らしい威力だな。成程、只のDランクでは無いと思っていたが」

「ああ、さっき、ブリーフィングで俺達の心配してくれた人だな。俺は、フカ=コオリヤク。プロジェクトGのリーダーをしている」

 と、握手を求めてみた。

「ダニエラ=シュガーレイ。シュガーレイ ワークスのリーダーだ。ところで」

 と、そこで一旦区切り、後ろで「リーダー狡い」とか「抜駆け」とか言ってる仲間を睨み付けると、本題を切り出した。

「確かに良い武器で、今回の作戦にも向いてるとは思うが、それだけで大軍の中を突破できるものでもあるまい。君達の自信の根拠を教えてくれたら、私達も安心できるのだがね」

 ああ、これだけ見ればこれが俺たちの切り札だと思うよな。

「別に隠してるわけでもないがね、ああ、丁度迎えがきた」

 と、言って後ろを指さした。すると、

「にゃにゃにゃんだありはぁぁぁぁっ!?」

 噛んだ。他の人たちも目が点だ。
 ようやく、ヒロシたちが追いついたようだ。道幅が狭いせいでひときわ大きく見えるんだよな。
 それが、馬並の速さで迫ってくる。なじみのない人が見れば、怪物である。その圧迫感たるや。こわー。

「あれが、俺らの移動基地『ゴーリーヴォーグ』だ。あれで奴らの砦をぶち破る!」

 しーん。言葉もない。とはこういうことか……。

 「成程、よく判った」

 それだけいうと、絶句してしまった。

「おおい、インパルスの試射はどうだったねぃ?」

「いま、お前のせいで全部吹っ飛んだよ! さて、皆様、大変お世話になりました。俺たちはこれで。また、作戦のときに。アディオス アミーゴ」

 と、言いながらUターンしたゴーリーヴォーグに乗って遁走した。何とか、的の代金は請求されなかったな。

 そして、翌日の夕刻、作戦は実行された。
 
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