ピエロのサイコロ

花角瞳

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♦︎第1章

サイコロの目『4』

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「皆死んでしまえばいいのに」


「この世界は私一人だけのものになればいいのに」


「憎い」


「殺したい」


「死んでしまえ」



君の影から僕は生まれた


君のその憎しみ


もっともっと頂戴よ


憎しみが大きければ大きいほど


僕は強くなれるから・・・・



「どうして私だけじゃないの?」


一人の女がいつも思っていること。


自分以外の人間は受け入れない。


自分だけがこの世界の主人公。


他は誰もいらない。


私だけでいい。


私さえいればそれでいいの―――――




「ねぇ、ちょっと聞いてる?」


ここは名門の桜高等学校。

休み時間に席に座っていると、一人の女が私に問いかける。


この女は私の唯一の友達。


だけどこの女さえも消えてなくなって欲しいと思っている。


友達なんていらない。


人はすぐに裏切り、妬み、都合が悪くなれば離れていく。

だから私がいればそれでいい。




「ねぇってば!!」




私の肩に手を当てて、耳元で女が問いかける。


「何?」


蛇が獲物を睨みつけるかのような目つきで、私は相手に問い返す。


女は蛇に睨まれ、身動きが取れなくなった蛙のような表情で、もう一度私に問いかける。



「だ、だから、ピエロの暗黒堂の話だよ!!」



目をそらしながら、額から出ている冷や汗をポケットから出したハンカチでふき取る。


しばらく沈黙が続いた後、彼女は話を進めだした。



「噂で聞いたんだけど、夢の中に赤い大きな口を尖らせた男の子が出てくるんだって。

その子はオレンジ色のセミロングヘアーでいつも小さな袋を腰にかけているらしいよ。」



「それがどうしたの」



そっけなく彼女に言葉を返すと、私を見下したような口調で手を組み替えてから言った。



「そのピエロは心に憎しみを抱いている人の前にしか現れないらしいよ。

ピエロはその人に問いかけるんだって。

何人殺して欲しい?って。」



「それで?」



「お望みどおりの数だけ殺してくれるらしいよ」



「何が言いたいの」



「貴女の所にもくるかもね」



彼女は歪な目で私を見て、不機嫌そうに教室の外に出て行った。


あんな奴が私の友達?


笑わせる。


やっぱり私は私が一番よ。

そうよね?


貴女も私が好きよね?


ねぇ、貴女もこう思わない?





「みんな死んでしまえばいいのに・・・」




夜になり、紫色の水玉模様のパジャマに着替え、いつも家の中では必ず履いている紫色のスリッパを脱ぎ捨てベッドに横になる。


いつもならすぐに眠りに付くことが出来るのに、なぜか今日は頭に何かが引っかかったような感じがしてなかなか眠りに付くことができなかった。



「あの女が言っていたピエロの暗黒堂。

本当に私のところに来てくれるなら、私は何人殺して欲しいと言うだろうか。

誰を殺してもらおうかな。

あの女?嫌、ちがう。

誰を殺してもらうかではなく、まずは何人殺してもらうかを考えるべきね。」



寝付けず、布団を放り出し起き上がると充血した真っ赤な目に、いつも愛用としている目薬を鞄から取り出し一滴、また一滴と入れていった。


そして再び布団の中に潜り込む。


すると部屋の明かりが急に消え、あたり一面が真っ暗になった。


停電でもしたのかと思い、私は何も考えずにそのまま横になっていた。


そのまま眠りにつこうと目を閉じた瞬時に、体が急にしびれて動かなくなった。


私は次第に恐怖に襲われ、ガタガタと震える体を必死で押さえつけ、大きく深呼吸をし心を落ち着かせた。


そして助けを呼ぼうと声を出そうとしたとき、喉に何かがつっかえているかのように声を出すことができなかった。



(こ、声が出ない・・・・)



下にいる親に助けてもらおうと何度も声を出そうとしたが、声が出なかった。


私は暗闇の中、体を震わせ必死で声を出そうとしていたその時、何かが私の耳をよぎった。





「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」




(だ、誰!?)


恐怖と不安に押しつぶされそうになりながらも、喉元を押さえつけ、出てこない声を必死に出そうとした。


数秒後、扉の近くでドンッという大きな音が響き渡る。


静まり返る私の部屋に、誰かが飛び降りてきた。


すぐにでも誰がそこにいるのか確認したい気持ちだったが怖くて目を開けることができなかった。


少しずつこっちへ近づいてくる何者かは、私の真横で足を止め、耳元でこうささやいた。



「お嬢さん、早く眠ってよ」



かすれた高い男の子の声。


その声の主は急に歌を歌いだし、優しく穏やかで暖かい子守り歌を聞きながら、薄く瞼を開けその人の顔の方に目線を向けた。


そこには赤い大きな口にオレンジ色のセミロングヘアーの男の子が立っていた。


もしかして、これがあの噂の―――――





「ようこそピエロの暗黒堂へ」


気がつくと私は暗闇の中を歩いていた。


真っ暗な闇の中を手探りで歩いていると、何か人のようなものとぶつかって、私は地面に倒れた。


すると勢いよく明かりがつき、目の前にはあの女が言っていたとおりの男の子が立っていた。



「ここが暗黒堂・・・?」


ピエロは倒れている私の手をとり、優しく引っ張りあげた。



「大丈夫?」



倒れたときに付いた汚れを丁寧にはらいのけてくれた。


そして私の手をとり、王子様がお姫様にするような挨拶代わりのキスを手にする。



「やぁ やぁ 綺麗なお嬢さん。僕と一緒にゲームをしよう」



頬を赤くした私の前でピエロは逆立ちをしながら楽しそうに言った。



「ゲームって??」



両手で赤くなった頬を押さえながら問いかけると、ピエロは姿勢を整えなおし、袋を取り出した。


そして私の前にその袋を突き出すと、にっこりと微笑み問いかける。



「君は何人殺したい?」



急な質問にあせった私は、考えることなく適当に数を口にした。



その数は――――






100




「やぁ やぁ それは多すぎる。そんなに殺してどうするの」



「私は一人がいいの」



そう答えると、ピエロの顔がみるみるうちに紫色に染まり、壁から紫色の液体が流れ出てきた。


それは私の鼻を刺激し、息を吸うのも苦しくなるくらいの酷い悪臭だった。




「く、苦しい・・・・」



ピエロが私の前に立つと、首元を掴み私の体を中に浮かせた。




「苦しいかい?死ぬことはもっと苦しいよ。

君は少しよくばりすぎた。

君にはもっとふさわしいゲームを用意しよう」



紫色の門の前に連れていかれ、そこに放り投げられた。


門の前には紫色の家より大きなサイコロが転がっていた。



「これは・・・?」



何が起こるかも分からない恐怖で震えている重い唇を小さく開け問いかけると、ピエロは私に紫色のボタンが埋め込まれている一つの箱を手渡す。



「最後に聞くよ。君は何人殺したい?」



その言葉を聞き、もう一度深く考え直す。


あの女が言っていたように、ピエロはお望みどおりの数だけ殺してくれる。


けれどさっき言われたとおり、よくばるのを嫌うピエロのことだから・・・。


私はさっきより少し少なめの数を口にした。


その数は――――








50





「あーあー残念。48より多い場合は君が数になっちゃうよ」



ピエロは意味が分からないことを言い出して、私にスイッチを押すようにと命じた。


ピエロの言うとおりに渋々ボタンを押すと、壁からたくさんの白い手が出てきた。


その手は私の体を持ち上げると、大きなサイコロの方にめがけて移動をし始める。



「何これ!?離してよ!!」




精一杯の力で暴れたけれど、手は私を離すことはなかった。


サイコロに近づくにつれ、私は吐き気に襲われていく。


紫色の大きなサイコロにはところどころに黒い物体が埋め込まれている。


それはサイコロの数を意味しているようにも思える。


魚が腐ったような血なまぐさい臭い。


その黒い物体は腐った人の生首だった―――。




「君でやっと49マス目。

あと一人で巨大サイコロの完成さ。

よくばりな人間はサイコロのマス目になってもらう。

それがもう一つのゲームのルールさ。」



49人が埋め込まれた巨大サイコロを、ピエロはにやにやと楽しそうに笑いながら門の中にしまった。


そのうちの一人にあの女の子も埋め込まれている。


ピエロがこの巨大サイコロを何に使うのかは誰も知らない。


知っているのはピエロのみ。




「さぁ、完成まであと一人だよ。僕と一緒にゲームをするかい?」
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