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夏井いつきの超カンタン!俳句塾
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1.『プレバト』
最も好きなテレビ番組のひとつに『プレバト』がある。
『消しゴムはんこ』『黒板アート』『和紙ちぎり絵』『水彩画』……
芸能人がそれぞれ作品を制作し、完成した作品を先生が『才能あり』『凡人』『才能なし』と評価する番組である。様々な芸術に触れることができて、なかなか面白い。
その中でも、夏井いつき先生の『俳句』のコーナーが面白くて、いつも楽しみにしている。『俳句』のコーナーはほぼ毎週あるので、視聴者からも人気のコーナーなのだろう。
夏井いつき先生のYouTubeをチャンネル登録し、Twitterもフォローして、たまに覗いたりしていたが、実際に俳句を勉強してみたり、作ってみたりしたことはなかった。
そんな時、夏井いつき先生の『超カンタン!俳句塾』の本を見つけた。
2.第1部 対談
この本は、3部制になっている。
第1部は、脳科学者の茂木健一郎氏と夏井いつき先生との「対談」が書かれている。
非常に面白いことがたくさん書かれていたが、最も印象に残った部分を挙げるとするならば、「発見や気づきというのは脳にとって最大の喜びである。A10神経を中心とするドーパミンの回路というのは、自分が認知していることと出会ったこととの差異に反応する」という部分である。
夏井先生が、ある夜、空を見ていると、月がとても明るく、月の後ろの空が明確に見えたそうだ。そのとき、「夜なのに空って青いんだ」と当たり前のことにはっと気づいて、その気づき、発見が面白い、と思われたそうである。
俳句というのは、些細な日常を丁寧に観察すること。
先週のプレバトの千原ジュニアさんの俳句、「とぅるとぅるの求肥に透けている苺」という句を思い出した。
そしてこれは、俳句だけに言えることではないのではないだろうか。
私は「熱しにくく冷めやすい」人間であると公言している。つまり、飽きっぽい性格なのだ。
何事も始めてしばらくすると、モチベーションが下がってしまい、長続きしないのだ。
何事も初めは、目新しく新鮮で、わくわくと楽しいが、極めていくと新しい発見も少なくなり、やる気が消え失せてしまう。『限界効用逓減の法則』とでも言おうか。
若いうちは何事にも感動し、感受性が豊かであるが、歳をとると経験したことが増え、新鮮な感動が減っていく、というのも同じであろう。
おそらく、勉強や読書というものが楽しいと感じるのも、このA10神経のおかげであろう。今まで知らなかった知識や考え方を、知ることによる喜びである。
というわけで、飽き性の私が、同じ分野の本を何冊も読めないのも、この『限界効用逓減の法則』的なものが原因ではないかと考えた。
何か1つのことを深く学ぶためには、同じ分野の本を4冊、5冊と読む必要がある。ところが私の場合、初めの1冊はなるほど面白いと、すいすい読み進めることができるのだが、2冊目になるとどうも読む気がなくなってしまう。
この性格のせいで、趣味も勉強も、何事も中途半端である。
茂木氏は、「俳句は『オープンエンド』。どこまで行っても終わりがない。どんなに学んでも終わりがない」と述べている。
俳句とは、極度の飽き性である私でも続けることができるほど、新鮮な感動を与え続けてくれるのであろうか。
3.第2部 俳句道場
第2部は、一般の方から募集した「仕事」をテーマにした句を、夏井先生が添削されている。
夏井先生が添削されて、俳句たちが確かに趣を持ち始める。これを見ると、良い句をつくるのにも修練が必要であると実感させられる。
特に私の印象に残った句を3つ選ぶ。
・ライオンにえさやるしごと春の風
・木枯や出過ぎた杭は磨かれる
・霜降り白菜しゃきしゃき洗う水はしゃぐ
まず、「ライオンにえさやるしごと春の風」だが、これは小学1年生の子の作品を夏井先生が添削されたものだ。
「ライオンにえさやるしごと」という部分は、大人ではつくれないであろう。非常に面白いフレーズだと感心した。
次に、「木枯や出過ぎた杭は磨かれる」。「出る杭は打たれる」ということわざから想起されたものだと思うが、これも非常にユーモアがあって面白い。
最後に、「霜降り白菜しゃきしゃき洗う水はしゃぐ」という句。
「しゃきしゃき」という擬態語が、いきいきとみずみずしい印象を与えてくれる。そして、その後の「水はしゃぐ」によって、そのいきいきとみずみずしい印象が、より強調されて感じられる。
4.第3部 秀句を味わう
第3部では、夏井先生が応募句の中から秀句を選ばれ、春夏秋冬に分けて掲載されている。
ここでも私の好きな句を3つ、選ばせて頂くとする。
・黒南風や鱗のへばりつく紙幣
・北風や文化ちりとり閉まる音
・夫はまだ街に居るらし火事の音
まず、「黒南風や鱗のへばりつく紙幣」という句であるが、「黒南風」と「へばりつく」という言葉で、梅雨のあの湿った空気が広がる。「鱗のへばりつく紙幣」というのも、普通見つけることができない。感心する。
次に、「北風や文化ちりとり閉まる音」。冬の強く冷たい風に、文化ちりとりがぱたんと閉まる情景が目に浮かぶ。
「文化ちりとり」というのも、もはや一般的なアパートやマンションに住む人は、使うことがないのではないか。「文化ちりとり」という言葉自体にも風情を感じる。
最後に、「夫はまだ街に居るらし火事の音」という句。
いつもプレバトで夏井先生が、感情は書かなくても伝わる、とおっしゃっていたが、本当に「心配」などと書かなくても、妻の心配そうな不安げな表情が浮かんでくる。素晴らしい技術であると感心した。
5.まとめ
いつも、プレバトやYouTubeで拝見している夏井いつき先生の俳句について、この本で少なからず知識をつけることができた。
知識という面では、基礎的なことで恥ずかしい限りであるが、「に」という助詞は、後ろに静的な動詞がくるときに、「で」という助詞は、後ろに動的な動詞がくるときに使うということを知った。
まずは作ってみること、と夏井先生もおっしゃっていたので、ここで一句。
五月病 紫陽花の庭園にひとり
どうだろうか……? 今日勉強をしたことを踏まえ、ここは「庭園でひとり」ではなく、「庭園にひとり」であろう。
私の初俳句。誰か評価してくれる人はいまいか……
※学者でも専門家でもない筆者の、学生の読書感想文に毛が生えたような、大人の読書感想文である。
俳句についても、本日はじめて勉強したばかりであるので、季語の解釈など、何かと誤っている部分があるかもしれない。
その場合、暖かく指摘していただけるとありがたい。
夏井いつき(2016)『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』,株式会社世界文化社
最も好きなテレビ番組のひとつに『プレバト』がある。
『消しゴムはんこ』『黒板アート』『和紙ちぎり絵』『水彩画』……
芸能人がそれぞれ作品を制作し、完成した作品を先生が『才能あり』『凡人』『才能なし』と評価する番組である。様々な芸術に触れることができて、なかなか面白い。
その中でも、夏井いつき先生の『俳句』のコーナーが面白くて、いつも楽しみにしている。『俳句』のコーナーはほぼ毎週あるので、視聴者からも人気のコーナーなのだろう。
夏井いつき先生のYouTubeをチャンネル登録し、Twitterもフォローして、たまに覗いたりしていたが、実際に俳句を勉強してみたり、作ってみたりしたことはなかった。
そんな時、夏井いつき先生の『超カンタン!俳句塾』の本を見つけた。
2.第1部 対談
この本は、3部制になっている。
第1部は、脳科学者の茂木健一郎氏と夏井いつき先生との「対談」が書かれている。
非常に面白いことがたくさん書かれていたが、最も印象に残った部分を挙げるとするならば、「発見や気づきというのは脳にとって最大の喜びである。A10神経を中心とするドーパミンの回路というのは、自分が認知していることと出会ったこととの差異に反応する」という部分である。
夏井先生が、ある夜、空を見ていると、月がとても明るく、月の後ろの空が明確に見えたそうだ。そのとき、「夜なのに空って青いんだ」と当たり前のことにはっと気づいて、その気づき、発見が面白い、と思われたそうである。
俳句というのは、些細な日常を丁寧に観察すること。
先週のプレバトの千原ジュニアさんの俳句、「とぅるとぅるの求肥に透けている苺」という句を思い出した。
そしてこれは、俳句だけに言えることではないのではないだろうか。
私は「熱しにくく冷めやすい」人間であると公言している。つまり、飽きっぽい性格なのだ。
何事も始めてしばらくすると、モチベーションが下がってしまい、長続きしないのだ。
何事も初めは、目新しく新鮮で、わくわくと楽しいが、極めていくと新しい発見も少なくなり、やる気が消え失せてしまう。『限界効用逓減の法則』とでも言おうか。
若いうちは何事にも感動し、感受性が豊かであるが、歳をとると経験したことが増え、新鮮な感動が減っていく、というのも同じであろう。
おそらく、勉強や読書というものが楽しいと感じるのも、このA10神経のおかげであろう。今まで知らなかった知識や考え方を、知ることによる喜びである。
というわけで、飽き性の私が、同じ分野の本を何冊も読めないのも、この『限界効用逓減の法則』的なものが原因ではないかと考えた。
何か1つのことを深く学ぶためには、同じ分野の本を4冊、5冊と読む必要がある。ところが私の場合、初めの1冊はなるほど面白いと、すいすい読み進めることができるのだが、2冊目になるとどうも読む気がなくなってしまう。
この性格のせいで、趣味も勉強も、何事も中途半端である。
茂木氏は、「俳句は『オープンエンド』。どこまで行っても終わりがない。どんなに学んでも終わりがない」と述べている。
俳句とは、極度の飽き性である私でも続けることができるほど、新鮮な感動を与え続けてくれるのであろうか。
3.第2部 俳句道場
第2部は、一般の方から募集した「仕事」をテーマにした句を、夏井先生が添削されている。
夏井先生が添削されて、俳句たちが確かに趣を持ち始める。これを見ると、良い句をつくるのにも修練が必要であると実感させられる。
特に私の印象に残った句を3つ選ぶ。
・ライオンにえさやるしごと春の風
・木枯や出過ぎた杭は磨かれる
・霜降り白菜しゃきしゃき洗う水はしゃぐ
まず、「ライオンにえさやるしごと春の風」だが、これは小学1年生の子の作品を夏井先生が添削されたものだ。
「ライオンにえさやるしごと」という部分は、大人ではつくれないであろう。非常に面白いフレーズだと感心した。
次に、「木枯や出過ぎた杭は磨かれる」。「出る杭は打たれる」ということわざから想起されたものだと思うが、これも非常にユーモアがあって面白い。
最後に、「霜降り白菜しゃきしゃき洗う水はしゃぐ」という句。
「しゃきしゃき」という擬態語が、いきいきとみずみずしい印象を与えてくれる。そして、その後の「水はしゃぐ」によって、そのいきいきとみずみずしい印象が、より強調されて感じられる。
4.第3部 秀句を味わう
第3部では、夏井先生が応募句の中から秀句を選ばれ、春夏秋冬に分けて掲載されている。
ここでも私の好きな句を3つ、選ばせて頂くとする。
・黒南風や鱗のへばりつく紙幣
・北風や文化ちりとり閉まる音
・夫はまだ街に居るらし火事の音
まず、「黒南風や鱗のへばりつく紙幣」という句であるが、「黒南風」と「へばりつく」という言葉で、梅雨のあの湿った空気が広がる。「鱗のへばりつく紙幣」というのも、普通見つけることができない。感心する。
次に、「北風や文化ちりとり閉まる音」。冬の強く冷たい風に、文化ちりとりがぱたんと閉まる情景が目に浮かぶ。
「文化ちりとり」というのも、もはや一般的なアパートやマンションに住む人は、使うことがないのではないか。「文化ちりとり」という言葉自体にも風情を感じる。
最後に、「夫はまだ街に居るらし火事の音」という句。
いつもプレバトで夏井先生が、感情は書かなくても伝わる、とおっしゃっていたが、本当に「心配」などと書かなくても、妻の心配そうな不安げな表情が浮かんでくる。素晴らしい技術であると感心した。
5.まとめ
いつも、プレバトやYouTubeで拝見している夏井いつき先生の俳句について、この本で少なからず知識をつけることができた。
知識という面では、基礎的なことで恥ずかしい限りであるが、「に」という助詞は、後ろに静的な動詞がくるときに、「で」という助詞は、後ろに動的な動詞がくるときに使うということを知った。
まずは作ってみること、と夏井先生もおっしゃっていたので、ここで一句。
五月病 紫陽花の庭園にひとり
どうだろうか……? 今日勉強をしたことを踏まえ、ここは「庭園でひとり」ではなく、「庭園にひとり」であろう。
私の初俳句。誰か評価してくれる人はいまいか……
※学者でも専門家でもない筆者の、学生の読書感想文に毛が生えたような、大人の読書感想文である。
俳句についても、本日はじめて勉強したばかりであるので、季語の解釈など、何かと誤っている部分があるかもしれない。
その場合、暖かく指摘していただけるとありがたい。
夏井いつき(2016)『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』,株式会社世界文化社
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