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第2章 お城の外へ。常識を知る
フィアの魔法
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フィアは自信を失っている!
フィアは期待を込めた視線でディニッサを見ている!
魔法の訓練を続けるうちに、フィアのコンプレックスが爆発した。
親切に教えてもらったこともある。なんとか励ましてやらないといけない。
「そうだ、肉体操作があるじゃろ! たとえばわらわに硬化の魔法をかけて、それを永続化してくれれば──」
「私の肉体操作は自分限定。だから肉体操作魔法を使えるとは言わなかった。魔族なら誰でも自分への強化はできるから」
「……。」
……ぶっちゃけ、使えねえ。
この子、物体操作も使えないようだから、ゲームでよくあるような氷の攻撃魔法も難しいだろう。たぶん、自分が真っ先に氷漬けになっちまう。
「そうだ! 魔力固定はマジックアイテムを作れるのじゃろ。だったら、水作成の魔法を込めればすごく便利じゃぞっ。きっと、コレットが喜ぶじゃろう」
「無理。魔法具を使うには魔力が必要。しかも普通の10倍くらいの魔力を消費する」
自分が使えない系統の魔法が使えるようになるだけなのか……。
オレもユルテも水は使えるし、意味ないな。
「常時効果を発揮し続ける魔法具は作れんのか? 力が強くなる腕輪とか」
「作れる人はいる。けど、私は無理。私の肉体操作は自分限定だから」
ホントに、もう少しのところで使えない子だな……。
肉体強化系のパッシブでも付けられたら、すごい便利だったんだけど。
「ならば、常を水作成し続けるアイテムを作ったらどうじゃ。飲料水、農業用水……。いやまて、それどころか無限に生まれる水流を動力にすれば、すごいことになるんじゃないか。あらゆることを自動化できるかもしれないぞ。これは夢が広がるな!」
興奮のあまり口調がすこしおかしくなってしまった。
しかし、こちらの昂ぶりとは逆にフィアは沈んだ顔をしていた。
「たぶん、あなたの想像と違う。まず、常時化した魔法具は、止めることができない」
「そういえば、寝る時も天井の明かりがついたままじゃったな。けどそれぐらいどうってことないじゃろ」
「それに、無限でもない。魔法具は、周囲のマナを水に変えるだけ。マナが無くなれば水も出なくなる」
「マナってなんじゃ?」
「魔法の残りカス。たとえば、水を作る。時間がたつと消える。その、魔法の効果が切れるときに、ほんのちょっとあふれる魔力がマナ」
「う~ん。水の魔法具を作った場合、具体的にはどうなるのじゃ」
フィアは頬に手をあてて少し考えこんだ。
「城に置くと、ちょろちょろと水が湧き続ける。ただしマナを使いきってしまうから、あたりの明かりは全部消える。また、どこか田舎に置いた場合、魔族が少なくてマナがあまりないから、水滴がちょっとづつこぼれるくらいの効果になる」
「……。」
微妙。オレの頭では良い使い道が思いつかない。
期待が大きかった分、ちょっとガッカリした。その気持ちはフィアにも伝わってしまったようで、彼女は涙目になっていた。いかん。
「そ、そうじゃ、フィア自身への強化はっ!?」
「肉体硬化、筋力強化、器用さ強化、柔軟性強化、五感強化、反射神経強化、毒耐性、病気耐性、熱耐性、電撃耐性、高速治癒、魔力回復力強化、パランス感覚強化──」
フィアが早口言葉のように、自分への強化項目を並べ立てた。
「たいしたことはないけど、この程度の常時強化はしている」
ものすごいドヤ顔だった。
これが、というよりこれだけが彼女の自慢なんだろう。
「すごいんじゃな! とっても感心したのじゃ!」
「……そう? 姫様の役に立つと思う?」
「間違いなく役にたつのじゃ!!」
「そう、なんだ……!」
盾役や囮役としては、だけど……。
病弱そうな見かけと反して、彼女はタンクだったらしい。
まあ、真実を知らせて落ち込ませる必要もないだろう。
表情に乏しいフィアが、飛び上がらんばかりに喜んでいるのだから。
「そうだ。魔力固定魔法を教えてくれぬか」
「わかった。でも、私の指導は、厳しい。泣かないように」
フィアが両手を腰にあてて、偉そうにした。
なんか微笑ましい。
──この後、オレは三分程度で魔法を習得し、フィアが泣くことになったのであった。
フィアは期待を込めた視線でディニッサを見ている!
魔法の訓練を続けるうちに、フィアのコンプレックスが爆発した。
親切に教えてもらったこともある。なんとか励ましてやらないといけない。
「そうだ、肉体操作があるじゃろ! たとえばわらわに硬化の魔法をかけて、それを永続化してくれれば──」
「私の肉体操作は自分限定。だから肉体操作魔法を使えるとは言わなかった。魔族なら誰でも自分への強化はできるから」
「……。」
……ぶっちゃけ、使えねえ。
この子、物体操作も使えないようだから、ゲームでよくあるような氷の攻撃魔法も難しいだろう。たぶん、自分が真っ先に氷漬けになっちまう。
「そうだ! 魔力固定はマジックアイテムを作れるのじゃろ。だったら、水作成の魔法を込めればすごく便利じゃぞっ。きっと、コレットが喜ぶじゃろう」
「無理。魔法具を使うには魔力が必要。しかも普通の10倍くらいの魔力を消費する」
自分が使えない系統の魔法が使えるようになるだけなのか……。
オレもユルテも水は使えるし、意味ないな。
「常時効果を発揮し続ける魔法具は作れんのか? 力が強くなる腕輪とか」
「作れる人はいる。けど、私は無理。私の肉体操作は自分限定だから」
ホントに、もう少しのところで使えない子だな……。
肉体強化系のパッシブでも付けられたら、すごい便利だったんだけど。
「ならば、常を水作成し続けるアイテムを作ったらどうじゃ。飲料水、農業用水……。いやまて、それどころか無限に生まれる水流を動力にすれば、すごいことになるんじゃないか。あらゆることを自動化できるかもしれないぞ。これは夢が広がるな!」
興奮のあまり口調がすこしおかしくなってしまった。
しかし、こちらの昂ぶりとは逆にフィアは沈んだ顔をしていた。
「たぶん、あなたの想像と違う。まず、常時化した魔法具は、止めることができない」
「そういえば、寝る時も天井の明かりがついたままじゃったな。けどそれぐらいどうってことないじゃろ」
「それに、無限でもない。魔法具は、周囲のマナを水に変えるだけ。マナが無くなれば水も出なくなる」
「マナってなんじゃ?」
「魔法の残りカス。たとえば、水を作る。時間がたつと消える。その、魔法の効果が切れるときに、ほんのちょっとあふれる魔力がマナ」
「う~ん。水の魔法具を作った場合、具体的にはどうなるのじゃ」
フィアは頬に手をあてて少し考えこんだ。
「城に置くと、ちょろちょろと水が湧き続ける。ただしマナを使いきってしまうから、あたりの明かりは全部消える。また、どこか田舎に置いた場合、魔族が少なくてマナがあまりないから、水滴がちょっとづつこぼれるくらいの効果になる」
「……。」
微妙。オレの頭では良い使い道が思いつかない。
期待が大きかった分、ちょっとガッカリした。その気持ちはフィアにも伝わってしまったようで、彼女は涙目になっていた。いかん。
「そ、そうじゃ、フィア自身への強化はっ!?」
「肉体硬化、筋力強化、器用さ強化、柔軟性強化、五感強化、反射神経強化、毒耐性、病気耐性、熱耐性、電撃耐性、高速治癒、魔力回復力強化、パランス感覚強化──」
フィアが早口言葉のように、自分への強化項目を並べ立てた。
「たいしたことはないけど、この程度の常時強化はしている」
ものすごいドヤ顔だった。
これが、というよりこれだけが彼女の自慢なんだろう。
「すごいんじゃな! とっても感心したのじゃ!」
「……そう? 姫様の役に立つと思う?」
「間違いなく役にたつのじゃ!!」
「そう、なんだ……!」
盾役や囮役としては、だけど……。
病弱そうな見かけと反して、彼女はタンクだったらしい。
まあ、真実を知らせて落ち込ませる必要もないだろう。
表情に乏しいフィアが、飛び上がらんばかりに喜んでいるのだから。
「そうだ。魔力固定魔法を教えてくれぬか」
「わかった。でも、私の指導は、厳しい。泣かないように」
フィアが両手を腰にあてて、偉そうにした。
なんか微笑ましい。
──この後、オレは三分程度で魔法を習得し、フィアが泣くことになったのであった。
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