独り言コーナー

星楽

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短編

心と風船屋

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私達は、一人一人〈風船〉を持っている。
色も、形も、浮かび方も、
似た者はあれど全く同じ風船はない。

時々風船は萎む。
そして時々大きく膨らむ。
私達はその空気を調節しながら、
風船を連れて歩いていく。

風船を直すのは時間が掛かる。
どんな風船も、直すことは持ち主にしかできない。
私にできるのは直し方の例を教えることだけだ。


今日も静かに扉が開いた。


いらっしゃい。
「こんばんは、風船屋さんはここですか?」
いかにも。君は風船を直しに来たんだね。
「そうかもしれません」
そうかも…というのは?
「えっと、それがわからないんです。自分の風船が見えなくて」
ふむ、ではこちらに来てくれないかな。

なるほど、君の風船は元は別の色だったが…
沢山の色を吸収し過ぎて無色になったみたいだ。
「元どおりになりますか?」
大丈夫。けれども、その為には君の力も必要だよ。




──今日は、風船の色を抜く日。‬
色を抜いた後は入れ直した空気が漏れないように急いで口を結び、
そっと手を離す。

‪不器用だから、風船はすぐに別の色を吸って透明になってしまう。
でもわたしは諦めない。
風船の本当の色が分かったら、
あなたに最初に教えに行くって約束したから。
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