Day and KNight

星楽

文字の大きさ
上 下
4 / 11
アザレア編

旅立ち

しおりを挟む
「殿下…って事はもしかしてあなたは…」
「シトラス王女~⁉︎…ですか?」
双子が揃って言った。
「…ええ、騙すような真似をしてごめんなさい。私はシトラス…
このアザレアの王女です」
「うーん、ますます訳が分からなくなって来たぞ…」
リヒトは頭を抱えた。
「俺が光の騎士、リルが闇の騎士で…
リルとネルをここに呼んだのは“シトリンさん”じゃなくて実は王女様で…俺たちは神殿を周って均衡の神殿に行かなきゃならない…
これで合ってますか…?」
「簡潔に言うとそういう事ね…」
シトリンはそこまで言うと…
「⁉︎」
なんとリヒト達に跪いた。
「アザレア王女シトラス・フラーヴァ、二人の若き騎士に使命を助く道具を授けます。さあ、こちらに…」
当人達は訳が分からず顔を見合わせた。
「とりあえず行ってみようよ!」
ルーシーは何故かノリノリだ。
「お、おお…」

 四人が王女に連れられた先は、神殿の奥にある祭祀場だった。
七体の石像とステンドグラスが厳かな雰囲気の中、
「今からお二人に剣を授ける儀式を行います。やった事ないから緊張するけど…」
シトラスからぼそりと聞き捨てならない言葉が聞こえたが、四人とも気を遣って聞かなかった事にした。
…ルーシーは最後まで何か言いたげだったが。
王女は古びた魔導書を持って、呪文を唱え始めた。
「〈使命を継ぐ魂の器に相応しき者達よ。困難に立ち向かえる様に、使命を果たせる様に、今此処で汝らの器に使命を注ごう〉…こうだったよね?」
 すると、中央の両脇にたたずむ石像の手にそれぞれ剣と盾が現れた。
「この剣を使う事が少ないのを願っているわ。しかし、均衡の神殿には、魔宝玉を持っていかなければなりません。魔宝玉には膨大な魔力が封じられているから、悪用する者も少なからずいて…」
「あの、ちょ、ちょっと待って下さい!魔宝玉とは…?」
王女の話を遮ってリルが質問する。
「ええと…説明が難しいから実物を見てもらう方が早いわね、シャイニー?」
「は、はい、少々お待ちを…」
魔導師が持ってきたのは、太陽の様に輝く滑らかな楕円をした宝石だった。
「何これ…すっごく綺麗!」
「ルーシー、変な事考えるなよ…?」
リヒトが深刻な顔で言う。
——彼女ならやりかねない。
「あーのーねえー⁉︎」
「これが光の魔宝玉。貴方達にはこれを含めて6つの宝玉を均衡の神殿まで届けて欲しいの」

 王女に武具と目的地への地図(さすがに魔宝玉は心配なので神殿に置いてきた)を渡された光と闇の騎士、そして騎士の同行人達は…
…ルーシーの父親を説得していた。
「そうは言ってもだな、君達を信頼していない訳じゃないが…そんな大切なものを子供四人だけで届けるとは無謀だ、断った方が良い」
「あたしたち子供じゃないし!無謀でもないし!あーもう!なんで分かってくれないかなあー!」
ちなみに双子とリヒトの家族は「四人(と魔宝玉)が安全に旅を終えられるように神殿及び魔導師は全面的にサポートする」を条件に既に了承していた。
 そこへ。
「…あら、いいんじゃない?」
ルーシーの母がやってきた。
「……⁉︎」
「可愛い子には旅をさせろって言うし」
「……」
「四人なら大丈夫よ」
「…………」
「みんなの親御さんも納得されたのでしょう?」
「…………………………仕方ない」
四人はルーシーの性格の出所が分かった気がした。
「よーし!そうと決まれば準備よ‼︎」

 次の日。
「では、くれぐれも気を付けて。魔宝玉も大切だけれど、自分の命が最優先です。何かあった時は“逃げる”選択肢もある事を忘れないで」
王女は光の魔宝玉が入った箱を渡し言った。
その場にいるほぼ全員がルーシーを横目で見ている事に本人は気付いていないらしい。
「ここから一番近いのは森の国、マグノリア。関所と樹の神殿には通達を出しているから着きさえすれば魔宝玉は貰えるはずよ」

「よし!
…何がなんだか俺もまだ分かんないけど、とりあえず出発だ!」
騎士達は隣国へ続く街道を歩き出した。
しおりを挟む

処理中です...