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傾向と対策
しおりを挟む「智…?」
見慣れたスーツに見慣れたネクタイ。
そして見慣れた笑顔。
私がよく知っているいつもの智なのに…1つだけ見慣れない物が彼の顔を彩っていた。
「一体どうしたの?そのメガネ」
「んー、たまにはいいかなぁって」
なんだかよく分からない答えではぐらかされた気分になって、私は智を見上げた。
「なんか新鮮じゃない?こういう俺」
言われてみれば、智がメガネをかけている所なんて見た事がない。
「目、悪かったの?」
「いいや、全然。
両方とも1.5だし、これだって度は入ってないぜ」
笑いながらフレームを中指で押し上げる仕草が、何だか決まってて思わずドキリとした。
「あれ、悠香さん?」
「え……え?」
無意識のうちに、彼の顔を凝視していたらしい。
見惚れてた、なんてバレたら一体何を言われるか分からないので、怪訝そうな視線を向ける智に、慌てて取り繕った笑顔を向ける。
そんな私の顔を覗き込み、智は顎に手を当ててうーんと考え込む仕草をした。
「…ナニ?」
「イヤ、まさかと思うけれど」
「だから、何?」
「だからさ、予想以上の効果があったのかな…と思ってね」
予想以上の…効果?
ますます訳が分からない。
首を傾げた私の額をツンと突付き、智はニヤリと笑いながら
「だって悠香、実はメガネフェチだろ?」
と、とんでもない爆弾を落とした。
「メ…メガネ、フェチ?誰が」
「悠香」
——だから、即答しないでってば。
ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべる智に、いいようにからかわれている事に気付き
「私がメガネフェチだなんて誤解です」
出来るだけ素っ気なく事実だけを告げる。
「……ほんとに?」
「本当に」
「ドキドキしたりしないの?」
「…!」
ネクタイの結び目に指をかけ、引っ張りながら緩める仕草に再び心臓がドクンと跳ねる。
「ほら、やっぱりドキドキしてる」
——あぁ…ダメだわ。
何だかとっても負けた気分。
だって…本当に、メガネをかけた男性に惹かれるとか、そういう傾向がある訳ではないのに。
今日の智はいつもの3割増かっこよく見えるんですもの。
これも……やっぱり、メガネフェチって事なのかしら。
頬に両手を当て真剣に考え込んでしまった私に、智はやたら爽やかな笑顔を向け
「それとも悠香が好きなのは、メガネじゃなくて俺って事?」
やたら確信めいた口調でそう聞いてきた。
……絶句。
降参です、ハイ。
メガネにも、そして智にも。
「…バカ」
「そのバカが良いくせに。
正直に認めなさい」
ホント、どうしてそう卑怯なくらいカッコいいのか解らないけれど。
初めて見たメガネをかけた智に、不覚にもトキめいてしまったのは、紛れもない事実で。
私は心の中で白旗をあげながら、智の逞しい首に両手を絡めた。
「…そんなの決まってるでしょう?」
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