月の都の花嫁

城咲美月

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アネッタとアレックス

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あれから中断していた、食事を続ける事にした私達。

だが、ナイフとフォークを持つ前に
皇帝陛下から、アルベルト団長を紹介された。

「奏に栞
カインゼノの横に座っているのが
龍騎士のアルベルト団長だ」

「恐れ入ります、皇帝陛下」

「皇帝陛下より、恐れ多くもご紹介がありました
龍騎士の団長の職に就いている、アルベルト.ヒューストンです
お嬢様方、以後お見知りおきを」

フッと微笑むアルベルト団長。

食事を再開して

残っていた半分くらいの量をゆっくり食べて、完食した。
食事の終わりを示す、ナイフとフォークを揃えて六時の方向に置く。

私達が食べ終わるのを待っていたように

皇帝陛下から

「食後の紅茶をどうだ?と言いたいところだが
これ以上疲れさせてもな、名残り惜しいがこれでお開きだな」の言葉に

「ありがとう存じます、こうしてご夕食の時間を過ごせた事を嬉しく思いますわ」
にっこりと微笑むリーデルさん

「こちらこそ有意義な時間を過ごせた事に感謝する
花嫁候補生の奏に栞
2人とも、共に学び笑い合い共に励めば良い
ライバル同士であっても其方達は、同じ学園で同じ学年の
2人がこうして縁ついたのだ
明日から試練に挑戦せよ、次に逢える日を楽しみにしている
ではな」

フッと微笑む皇帝陛下。

そんな皇帝陛下に私達も「承知致しました」と
頷く。

皇帝陛下、並びに皇后陛下が席を立つ。

殿下が「送ろう」と何故か私を見ながら声をかけてくれる。
「ありがとう存じます」と了承し
リーデルさん達と一緒に席を立つ。

アルベルト龍騎士団長が殿下に「自分は先に帰るぞ」
「ああ」と短いやり取りをする。

アルベルト団長からも「お嬢様方もまたな」と何故か私を見ながら微笑む。

チャラい印象を受けたのは私だけかしら?と
リーデルさんや朝陽さんの様子を見てしまうわけにはいかず

サロンを後にする私達。

執事頭が先回りしていて、ホールにずらりと執事と侍女達が並んで私達を見送りする。

「気をつけてお帰りくださいませ
リーデル公爵夫人並びに花嫁候補生様方」

そんなに大きな声ではないのに、良く通るなと感心する。

玄関の入り口を執事さん達が開けて、ドアが開くと
ショーファーさんが帽子を手に持っていて
私達に頭を下げる。

それからニコリと微笑むと、車のドアを開けて
ショーファーさんから手を差し出すと、リーデルさんが軽く自分の手をショーファーさんの手のひらにそっとおき、もう片手のほうはドレスを少しだけ持ち上げシートにゆっくり後ろから座って身体を横向きにしながら足を最後まで揃えて乗り込む。
なかなかの至難の技を、軽々しく出来るように見せかける
リーデルさんは、本当にすごいと思う。

最初の
リーデルさんの乗り込む姿を見ていて、ああそういう乗り方だったなと軽く目を瞬いた。

エスコートされ慣れていない私は、普通に足から乗り込みそうだったから、セーフ。

生粋の貴族はやはり違うなと変なところで感心していた。
朝陽さんも同様に、朝陽グループのお嬢様なのだ。

私達が順番に乗り込むと、ショーファーさんがドアを閉めて帽子を被り直し見送りに来てた殿下に左手を胸に添えて略式の挨拶をし運転席に行く

「では出発しますよ」の声で車がゆっくりと発進した。

私達の侍女と護衛騎士も来た時と同じように
奇獣に乗って、私達が出発した数秒後に後を追いかける。

最後まで殿下は私達を見送っていたけど、殿下がどんな表情でいるのかが分からなかった。

私は帰りの車の中で、生徒手帳を確認してみようと思っている。

「何事もなく、食事会が終わって良かったですわ」と微笑むリーデルさん

「ええ、そうですね」と同意をする朝陽さん

私は、ただ2人の会話を聞いていた。

それから無事に女子寮へと着き、「到着しました」と
ショーファーさんの声がかかる。


ショーファーさんが車のドアを開けていると、ドアの隙間から執事頭のレイニーさんと侍女頭のサマンサさんが
出迎えしてくれているのが見えた。

私達が降り終わったら、「ご苦労様」とリーデルさんが微笑みながらショーファーさんにお礼を言う。

ショーファーさんは私達に深く礼を返す。
そして
私達が玄関に入るのを待って、帽子を被り直し
運転席に行く。


私達は女子寮へと帰ってきた。

レイニーさんとサマンサさんが
「お帰りなさいませ、奥様並びに栞様、奏様」
そう言うと「お帰りなさいませ!奥様並びに栞様、奏様」と復唱する声が聞こえてきた。

クスッと微笑むリーデルさんは
「ただいま」と安心したように言う。

私達も「ただいま戻りました」と言って微笑む。

それぞれの専属侍女と護衛騎士が目の前までやってきて
声をかける。
アネッタが私に
「奏様、おかえりなさいませ!お疲れ様でした♪」と笑って言ってくれたから
私も「ただいま
アネッタこそ、お疲れ様そしておかえりなさい」と笑って言う。
侍女のアネッタも頑張ってくれたのだ
アネッタの花が咲くような笑顔を見るだけで、少しホッとできた。

リーデルさんが私達に振り返って
「お2人とも今日はお疲れ様でした。
明日から試練が始まりますので、今日はもう私室に戻って
ごゆるりとおやすみなさいませ」

「はい」私達はそう返事をすると、それぞれ自分の私室に戻っていく。
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