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調査依頼

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あれから自分は、三者三様の下山の仕方を見た。

ナタリー嬢の「最終試験は後日」
と言う言葉で思い思いに下山の準備をしていた。

マスターヒバナは、荷物を持って新しい洋服に着替えて雑木林の奥に向かう。

王族直属精鋭部隊のエルサレム様も同じように新しい洋服に
着替えてマントをひる構えし、奇獣専用の口笛で自分の奇獣を呼び颯爽と駆けていく。

あっという間に背中が小さくなる

軍隊の大隊長であるクリス様も着替えていて、
歩いて下山していく。

自分も下山ルートはこちらと言う矢印で看板を見て歩いていく。

こちらのコースはクリス大隊長と同じ道だ。

ただ、クリス大隊長は途中から岩と岩の間を飛んでいく。
降りる時も強行軍みたいだ、そう思った。

人間ってあんなに跳躍凄かったか?
と疑問に思う。

いや、お三方を自分と同じ基準に考えてはいけない。

自分はゆっくり降りたら良いだけだ。
そう、自分のペースでゆっくりと。

ただ夏の間でまだ日が高いとはいえ
気をつけつつ
このままのスピードでも充分間に合うはずだ。

それにしても、取材の成果が何一つ果たせてない事に落胆する。

クソっ
思わず、心の中で毒を吐く。

今度こそ、今度こそナタリー嬢の最終試験で良い成果をあげるんだ、と
ぐっと握り拳を作る。

はぁ、その前に下山したら一旦帰ってお風呂だなっと気持ちを高める。

それからナタリー嬢の依頼をもう一度確認しよう




⭐︎





同時刻

専属侍女メアリーside


クロレッチ家、ナタリー嬢の私室にて

「お嬢様、紅茶をお持ちしました」

侍女メアリーが紅茶セットを持って現れるも
ナタリーからの返事はない。

あの時間か、とメアリーはナタリーの私室に入室する。

勝手知る侍女のメアリーは、ナタリーの返事がない時は勝手に入室することを許されている。

勿論、主であるナタリーの返事がない時は下がるのが一般的だが、メアリーだけはナタリーの専属侍女で
あの時間とは、なんて事はない
ナタリーお嬢様の読書の時間と言う事だ。

ナタリーは、趣味の部屋にいる時だけは返事がない。

他のところは完璧なのに、と思うメアリーだが
ナタリーの唯一の心休まる時間があることは嬉しいのでなるべく邪魔はしたくないと言う気持ちからどうしても邪魔はしたくない。


だが、ほっておいては食事をしないナタリーの為に趣味の部屋に、紅茶セットを持っていく。

ベッドの上で
寝転がって本を読むお嬢様は、公爵令嬢としては好ましくない。

だが、趣味部屋にいる時だけは
本当に普通の可憐なお嬢様だ。


ナタリーお嬢様のこのギャップをあのお三方が受け入れてくれるだろうか
せめて
ナタリーお嬢様の、心を守ってくれるだろうか
そう思いながらも、どうすることも出来ないもどかしさにさいまれながらも紅茶をナタリーお嬢様に差し出す。

「お嬢様....紅茶が入りました」

「お嬢様」

反応がない。生きた屍のようだ。

もう一度、ナタリーお嬢様の耳元で

「ふぅ~~~~~~~~~お 嬢 様」


「きゃあああ!?」

ナタリーお嬢様の耳元に息を吹き掛けると真っ赤になりながら、耳元を押さえるお嬢様。

ふふ....可愛い。


「め、メアリーびっくりさせないでよ」

びっくりしたと言いながら、それでも本を落とさないお嬢様は、流石です。


「私は何度もお呼びしましたよ」

ニコッと微笑む私に、うっと苦しそうな表情になるお嬢様。

そこも可愛いです。仕方ないですね、許してあげます。

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