23 / 82
4話
7
しおりを挟む「お前は人のこと考えてないで、自分のこと考えろ。好きなんだろ? あの人のこと」
「ま、まあ」
「取られるぞ」
目の前で何かを考えている柑菜に対して、春樹はそう言う。
そして「ほら」と、柑菜を櫻子と秋斗の元へ連れて行った。
「柑菜ちゃん、仲直りはできた?」
「うん」
「そう、よかったわ」
「ねえ、そろそろ誕生日プレゼント渡さない?」
一旦散らばっていた6人を集めることも兼ねて、櫻子と柑菜は今からプレゼントタイムにすることにした。
なんと、春樹と美鈴と秋斗もそれぞれプレゼントを持ってきていた。
「亜紀ちゃん、これ私たちから」
櫻子と柑菜は、可愛らしい包装がされたあの腕時計を亜紀に渡した。
受け取った亜紀は早速その中身を見ると、顔に笑顔を咲かせる。
「ありがとうっ、すごく嬉しいっ」
秋斗と美鈴と春樹は、それぞれお菓子の詰め合わせ、画集、紅茶セットをプレゼントした。
「わざわざありがとうございます」
亜紀は、嬉しそうに渡されたプレゼントを抱える。
「あ、そうだ」
亜紀は、プレゼントを置いて「そろそろ、このケーキ食べませんか?」と、櫻子と柑菜が選んで秋斗が作ったホールケーキを指差した。
皆はそれに対して首を縦に振る。
秋斗がケーキを丁寧に切ると、まずは今日の主役の亜紀から、その味を味わう。
「ううん…………甘さと酸味がちょうどよいハーモニーになっていて、本当に美味しいです。甘すぎなくてフルーツの酸味と甘味もちょうどいい」
秋斗は、その言葉を聞いて目尻を下げて口角を上げた。
それは、柑菜の好きな笑顔。
柑菜は、迷っていた、今日を逃したらまたこうしていつ会えるかわからない。
せめて、後悔する前に連絡先くらいは交換したいと。
「秋斗さんのケーキ、柑菜がハマるのが分かります、だって本当に美味しいから。ケーキが好きなんだなって、伝わってきます。ね、柑菜?」
「うん、本当にそう思う」
亜紀の言葉を聞いて、柑菜は亜紀が羨ましいと思った。
ーー私が伝えたいことを、緊張して直接顔を見て言えないことをこうして本人に伝えているのだから。
柑菜は、何かを決意したようにぎゅっと右手を握った。
亜紀以外の人たちも、ケーキをそれぞれ取る。
「美鈴、半分にする?」
「ううん、そのままで大丈夫」
秋斗が美鈴に話しかけているのを見て柑菜はこういった小さなことで壁を感じてしまう自分に腹が立った。
今まで一緒にいた時間を考えれば当たり前のことなのに、美鈴に嫉妬をしてしまう。
もしかしたら秋斗は美鈴のことが好きなんじゃないかとさえ思い始めた。
ーーここにいる人、それぞれが片思いしてるのかな……。
「柑菜ちゃん?」
櫻子が、ぼーっとしている柑菜の名前を呼んだ。
「ごめんごめん、ケーキ食べよっか」
「柑菜ちゃん、せっかく自由に恋できるのだから、少しだけ勇気出してもいいんじゃないかしら」
柑菜の心を呼んだかのように、櫻子が柑菜の背中を押す。
柑菜は、櫻子の口から出てきた『自由』という言葉に、少しだけ罪悪感を覚えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる