ケーキ屋の彼

みー

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4話

7

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「お前は人のこと考えてないで、自分のこと考えろ。好きなんだろ? あの人のこと」

「ま、まあ」

「取られるぞ」

 目の前で何かを考えている柑菜に対して、春樹はそう言う。

 そして「ほら」と、柑菜を櫻子と秋斗の元へ連れて行った。

「柑菜ちゃん、仲直りはできた?」

「うん」

「そう、よかったわ」

「ねえ、そろそろ誕生日プレゼント渡さない?」

 一旦散らばっていた6人を集めることも兼ねて、櫻子と柑菜は今からプレゼントタイムにすることにした。

 なんと、春樹と美鈴と秋斗もそれぞれプレゼントを持ってきていた。

「亜紀ちゃん、これ私たちから」

 櫻子と柑菜は、可愛らしい包装がされたあの腕時計を亜紀に渡した。

 受け取った亜紀は早速その中身を見ると、顔に笑顔を咲かせる。

「ありがとうっ、すごく嬉しいっ」

 秋斗と美鈴と春樹は、それぞれお菓子の詰め合わせ、画集、紅茶セットをプレゼントした。

「わざわざありがとうございます」

 亜紀は、嬉しそうに渡されたプレゼントを抱える。

「あ、そうだ」

 亜紀は、プレゼントを置いて「そろそろ、このケーキ食べませんか?」と、櫻子と柑菜が選んで秋斗が作ったホールケーキを指差した。

 皆はそれに対して首を縦に振る。

 秋斗がケーキを丁寧に切ると、まずは今日の主役の亜紀から、その味を味わう。

「ううん…………甘さと酸味がちょうどよいハーモニーになっていて、本当に美味しいです。甘すぎなくてフルーツの酸味と甘味もちょうどいい」

 秋斗は、その言葉を聞いて目尻を下げて口角を上げた。

 それは、柑菜の好きな笑顔。

 柑菜は、迷っていた、今日を逃したらまたこうしていつ会えるかわからない。

 せめて、後悔する前に連絡先くらいは交換したいと。

「秋斗さんのケーキ、柑菜がハマるのが分かります、だって本当に美味しいから。ケーキが好きなんだなって、伝わってきます。ね、柑菜?」

「うん、本当にそう思う」

 亜紀の言葉を聞いて、柑菜は亜紀が羨ましいと思った。

 ーー私が伝えたいことを、緊張して直接顔を見て言えないことをこうして本人に伝えているのだから。

 柑菜は、何かを決意したようにぎゅっと右手を握った。

 亜紀以外の人たちも、ケーキをそれぞれ取る。

「美鈴、半分にする?」

「ううん、そのままで大丈夫」

 秋斗が美鈴に話しかけているのを見て柑菜はこういった小さなことで壁を感じてしまう自分に腹が立った。

 今まで一緒にいた時間を考えれば当たり前のことなのに、美鈴に嫉妬をしてしまう。

 もしかしたら秋斗は美鈴のことが好きなんじゃないかとさえ思い始めた。

 ーーここにいる人、それぞれが片思いしてるのかな……。

「柑菜ちゃん?」

 櫻子が、ぼーっとしている柑菜の名前を呼んだ。

「ごめんごめん、ケーキ食べよっか」

「柑菜ちゃん、せっかく自由に恋できるのだから、少しだけ勇気出してもいいんじゃないかしら」

 柑菜の心を呼んだかのように、櫻子が柑菜の背中を押す。

 柑菜は、櫻子の口から出てきた『自由』という言葉に、少しだけ罪悪感を覚えた。

 

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