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しおりを挟む「うん……少しの間だけ。ねえ、オレンジ買っていかない?カレー食べたあとに食べたらスッキリすると思うんだ」
「いいと思います、オレンジなら果物の中でもそんなに好き嫌いないと思いますし」
「うん、そうだね」と頷きながら、秋斗はオレンジを3つ手に取り、カゴに入れる。
2人がリストを見てみると、あとは個人個人のものと思われるもののみが残っていた。
柑菜はふと『なんだか、新婚みたい』と、カートを押して歩く自分たちを見て、1人で妄想してしまう。
今日だけじゃなくて、これからもこうやって2人で何気ない時間を送ることができたら、と柑菜は密かにそう願った。
そこからはあっという間に、リストのすべてのものをピックアップした。
「あとはレジに持って行くだけだね」
柑菜は少し名残惜しい気持ちを抱えながら「そうですね」と返した。
秋斗が同じ気持ちでいてくれたらいいのにと、柑菜は思う。自分だけが彼を求めていることに、虚しさを感じる。
その頃、海では亜紀と美鈴がはしゃぐ姿があった。
その2人の姿を、椅子に座りながら見ている春樹。
ビーチパラソルが太陽の光を遮っている。
「はい」
「ありがとう」
その後ろから、氷の入った飲み物を持った櫻子が現れ、隣の空いている椅子に座った。
「美鈴さんのところに行かなくてもいいの?」
喉が渇いていたのか、春樹はお茶を一気に飲む。
「西音寺は、好きな人いないの?」
質問にはっきりと答えることなく、会話を続けた。
「どうかしら」
「西音寺って、なんか不思議だよな。なんていうか……うーん、よく分かんなくなってきたわ」
言葉に表そうとしても、適切な言葉が思い浮かばず笑ってごまかす春樹に、櫻子は「不思議なのは春樹くんも同じよ」と笑って言い返した。
「俺は、先輩の絵が好きなんだ。繊細だけど力強い。だから、そんな絵を描く人に興味を持った。自分みたいに中途半端みたいな気持ちで絵を描いている人間じゃなくて、本物に会いたかったんだよ」
「中途半端……?」
「あんまり詳しくは言えないけど、柑菜のことがあって、それで俺は絵を必死に勉強して絵画を今学んでいる。だけど、それがもしかしたら柑菜をもっと窮屈にさせてるんじゃないかって思うこともある。って、これじゃあ柑菜の話だよな。だからつまり、俺はどっちかと言うと、先輩に対しては尊敬してる方が大きいってことだ」
「春樹くんは、柑菜ちゃんのことも美鈴さんのことも好きなのね」
櫻子は、特に春樹の柑菜に対する思いが羨ましいと感じてしまった。
家族とはいえ、これほどまでに相手のことを思いやれる春樹に、櫻子はますます思いを募らせる。
しかし、美鈴に対して、人柄だけじゃなく絵に対しても好意を感じていることを知り、その大きくなる思いが、逆に櫻子を苦しめた。
自分の作品を好きだという声は、自分を好きだと言ってくれる声と同じくらい大切なものだから。絵を描くものにとって、自分の作品を褒められることは何よりも嬉しい。だからこそ、嫉妬もしてしまう。
「あ、この前廊下に飾られてた西音寺の版画見たよ」
思い出したように話し始める春樹。
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