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「綾姉には、相談出来なかったんです」

日高さんはパスタをクルクルと回したがら答えた。

「言ったように、祖父は綾姉に対しては少し、態度が違います。でも綾姉は、そんな態度を取られても気にせず、祖父に接していました。私同様、祖父の事が大好きなんです。だからこそ、そんな祖父に秘密があるなんて分かると‥」

俺には、よく分からない感覚だ。

「綾姉は俺に相談するようにって言ったのは、どういう流れで?」

「綾姉が通っていた高校を落ちた時に綾姉から話があったんですよ。綾姉が住んでいた家に居候しないか?って。綾姉も仕事の関係で地元に戻ると聞いていたんで、丁度よかったんです。‥いや、言い訳かもです。祖父の近くにいるのが辛くなったのかもしれません」

俺はどう言うことかを再度尋ねる。

「私の住んでいる家はこの近くなんです。そして、この店の隣にある大きな病院。そこに祖父はいます」

彼女は隣の病院を見て口にした。

「私は、この街をただ出たかった。母は同じく祖父の事が大好きで、毎日のように病院に行ってます。家にいると、母は一緒に病院に来るようにと声をかけてきます。色々と言い訳を並べて、それを回避してきましたが、そろそろ限界でした。‥話が逸れましたね。綾姉の実家から近くの高校に合格した私は、それから偶に綾姉と顔を合わせることになりました。そんなある日、「何か悩みでもあるの?」と声をかけられて。顔に出ていたんでしょうね。私もカンジョーくんの事、言えないです。相談に乗るよ、とは言われましたが、先ほどの理由でどうしても相談に乗れなくて。それで、悩みがあるなら、隣のカンジョーくんに相談したらいい、と綾姉が言ったんです」

「なんで、俺?」

「綾姉が、きっと、話を聞いてくれるからって。あと、必ず、解決するからって」

あんな絶対的な自信を持って言う綾姉は初めてです。と日高さんは言う。

「でも、俺にできる事なんて何も‥」

「あの、ダメ元で聞いてみるんですけど、祖父に会ってもらえませんか?」

「は、はぁ?」

何でそうなるんだ。
ただでさえ、ここまで俺がやる理由はないのに。

「お願いします。会ってみて、カンジョーくんがそれでも何も出来ないのならもう諦めますから」

彼女は頭を下げた。

「会って、どうなるか分からないよ?」

「はい。お願いします」

彼女は、再度頭を下げる。
何でこんなことになっているのだろう。
そうか、全ては、綾姉のせいだ。

俺は初めて心の中で綾姉に不満をぶつけたのだった。
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