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本編
29.裏切りの歌2
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牢に閉じ込めていい気になってたようだが、もはや俺とアホどもを隔てるものはない。存分に痛い目見せてやるぜ。
見たところさっきの槍以外に武器はないけど、油断はしない。徹底的に思い知らせてやるのが俺の目的だからな、そのための努力は惜しまんつもりだ。
「来い、貴様なんぞ素手で十分だ。ぶっ潰してやる!」
威勢のいいことを言うゴズ。お前、体がちょいとばかりデカいからってナメんなよ。
ゴズは両拳を構えてファイティングポーズをとる。ボクシングスタイルか? いや異世界だからボクシングじゃないにしても、とにかく打撃重視っぽい感じなのは間違いない。
「面白い、乗ってやろうじゃないの」
こっちも拳を握り、軽い前傾姿勢をとる。地球で格闘技を習ってたわけじゃないが、こっちの世界だとなんとなく体をどう動かせばいいか分かる。
それに、戦いなんだから、大事なことは剣を持ってる時と一緒に違いない。
目線は定めず全体を見て、体の力みを抜いた軽い足取りでどんな動きにも対応できる自由な構え。それが俺のスタイルだ。
【イヌイは 拳の理 を身に付けた】
お、久々のテクネ習得。こんな感じで正解だってわけね。
「ふん! ふんふん!」
ゴズがいきなり力一杯殴ってくるのを避け、下から右の鉤打ちを一発かます。ドゴォッと鈍い音がして、ゴズは壁に体ごと突っ込んだ。
「ほら立て、そんなもんか?」
声をかけるも、動きがない。あれ? ホントに終わり? これだけ?
デカい図体して情けねえなぁ。
「しゃーない。さあ、次はお前……あれ」
メズを見ると、すでに逃げた後だった。早えな、いつの間に。
アビを放っぽり出して追うわけにもいかず、いったん牢の中に戻って様子を見る。すると、わずかに目を開いて浅く呼吸しているのが分かった。よしよし、大丈夫そうだ。
アビを担いで牢を出て、通路を歩いていく。ちなみに両手が塞がってるので槍は持ってきてない。
暗い岩壁の中を少し進むと、光が見えてきた。外だ。
太陽の高さを見ると、すぐ日が暮れて暗くなりそうだった。うーん、どうすっか。夜の森を行くのは危険なような……いや、ここにいる方が危険だな。つうか面倒そうだ。
俺はアビを背負ったまま、森の中へと入っていった。
***
襲ってくるのは鳥や獣といった、いかにも森の生き物っぽい奴ら……ではなく、やたらワイルドさのない不自然な生き物だった。
それどころか、自然のままの生き物じゃないっていうか、白い毛の狼に翼が生えてたり、牛に牙があったりと、ここが異世界にしてもなんか人為的な感じがする……いわばキメラ的なのだ。
魔剣を奪われたままなので、素手で相手することになったが、まあ余裕でなんとかなってる。
「アビ、まだ起きねえなぁ。どうしよか」
ひと休みしながら独り言つ俺。医者に見せなきゃかもな。
待てよ、そういや、そもそも医者を探してこの森に来たんだった。メズ達は俺らを誘い出すためにそれを利用したんだったけど、ホントにこの森に回復魔法の使い手はいんのかな。
そろそろ暗くなってきていて、歩き回るのも難しくなる。焚き火でもするかと周りを見渡したその時。
遠くの方がボンヤリと明るくなっているのが見えた。
「あれは……明かりか?」
もしそうなら、誰かがいることになる。それはメズかもしれないし……例の治療師かもしれない。どっちだ?
「ま、行きゃ分かるわな」
ここでじっとしてるより、新しい変化が起こる可能性は高い。メズならブッチめてやるだけだ。そして治療師だったなら、アビを診てもらえるだろう。
そう決心して、俺はその明かりの方に歩いていく。やがて辿り着いたのは、さっき立ち寄ったようなログハウス風の家で、それでいて全然古くて大きなものだった。
こんな所に住んでいるのは果たして何者なのか……
「ごめんくださーいよー……誰か~いますか~?」
扉を見つけて中に入ってみると、割合キチンと片付いていて、人がいる気配がある。それなら次に重要になるのは、どんな奴が住んでるのかってことになるのだがーー
「はいはい、どなたでしょう?」
奥から現れたのは、気のよさそうなーー熊だった。
おお、ある日、森の中で、クマさんに出会ったぁ。的な? てか、獣人だろうな。常識的に考えて。
「すみません、連れが具合悪くて、休ませたいのです」
「おや大変、見せてみなさい、私に治せるかも」
ん、まさか、本当に治療師なのか!
「……この子、どうしてこんなことに? この症状から見て、原因は毒じゃないの?」
その通り、正しい見立てだ。これは間違いなさそうだぞ。
「その通りです。ある人にやられました。実は俺達、治療師を探してここまで来たんです」
正直に話してみる。さて、どうなるかな?
見たところさっきの槍以外に武器はないけど、油断はしない。徹底的に思い知らせてやるのが俺の目的だからな、そのための努力は惜しまんつもりだ。
「来い、貴様なんぞ素手で十分だ。ぶっ潰してやる!」
威勢のいいことを言うゴズ。お前、体がちょいとばかりデカいからってナメんなよ。
ゴズは両拳を構えてファイティングポーズをとる。ボクシングスタイルか? いや異世界だからボクシングじゃないにしても、とにかく打撃重視っぽい感じなのは間違いない。
「面白い、乗ってやろうじゃないの」
こっちも拳を握り、軽い前傾姿勢をとる。地球で格闘技を習ってたわけじゃないが、こっちの世界だとなんとなく体をどう動かせばいいか分かる。
それに、戦いなんだから、大事なことは剣を持ってる時と一緒に違いない。
目線は定めず全体を見て、体の力みを抜いた軽い足取りでどんな動きにも対応できる自由な構え。それが俺のスタイルだ。
【イヌイは 拳の理 を身に付けた】
お、久々のテクネ習得。こんな感じで正解だってわけね。
「ふん! ふんふん!」
ゴズがいきなり力一杯殴ってくるのを避け、下から右の鉤打ちを一発かます。ドゴォッと鈍い音がして、ゴズは壁に体ごと突っ込んだ。
「ほら立て、そんなもんか?」
声をかけるも、動きがない。あれ? ホントに終わり? これだけ?
デカい図体して情けねえなぁ。
「しゃーない。さあ、次はお前……あれ」
メズを見ると、すでに逃げた後だった。早えな、いつの間に。
アビを放っぽり出して追うわけにもいかず、いったん牢の中に戻って様子を見る。すると、わずかに目を開いて浅く呼吸しているのが分かった。よしよし、大丈夫そうだ。
アビを担いで牢を出て、通路を歩いていく。ちなみに両手が塞がってるので槍は持ってきてない。
暗い岩壁の中を少し進むと、光が見えてきた。外だ。
太陽の高さを見ると、すぐ日が暮れて暗くなりそうだった。うーん、どうすっか。夜の森を行くのは危険なような……いや、ここにいる方が危険だな。つうか面倒そうだ。
俺はアビを背負ったまま、森の中へと入っていった。
***
襲ってくるのは鳥や獣といった、いかにも森の生き物っぽい奴ら……ではなく、やたらワイルドさのない不自然な生き物だった。
それどころか、自然のままの生き物じゃないっていうか、白い毛の狼に翼が生えてたり、牛に牙があったりと、ここが異世界にしてもなんか人為的な感じがする……いわばキメラ的なのだ。
魔剣を奪われたままなので、素手で相手することになったが、まあ余裕でなんとかなってる。
「アビ、まだ起きねえなぁ。どうしよか」
ひと休みしながら独り言つ俺。医者に見せなきゃかもな。
待てよ、そういや、そもそも医者を探してこの森に来たんだった。メズ達は俺らを誘い出すためにそれを利用したんだったけど、ホントにこの森に回復魔法の使い手はいんのかな。
そろそろ暗くなってきていて、歩き回るのも難しくなる。焚き火でもするかと周りを見渡したその時。
遠くの方がボンヤリと明るくなっているのが見えた。
「あれは……明かりか?」
もしそうなら、誰かがいることになる。それはメズかもしれないし……例の治療師かもしれない。どっちだ?
「ま、行きゃ分かるわな」
ここでじっとしてるより、新しい変化が起こる可能性は高い。メズならブッチめてやるだけだ。そして治療師だったなら、アビを診てもらえるだろう。
そう決心して、俺はその明かりの方に歩いていく。やがて辿り着いたのは、さっき立ち寄ったようなログハウス風の家で、それでいて全然古くて大きなものだった。
こんな所に住んでいるのは果たして何者なのか……
「ごめんくださーいよー……誰か~いますか~?」
扉を見つけて中に入ってみると、割合キチンと片付いていて、人がいる気配がある。それなら次に重要になるのは、どんな奴が住んでるのかってことになるのだがーー
「はいはい、どなたでしょう?」
奥から現れたのは、気のよさそうなーー熊だった。
おお、ある日、森の中で、クマさんに出会ったぁ。的な? てか、獣人だろうな。常識的に考えて。
「すみません、連れが具合悪くて、休ませたいのです」
「おや大変、見せてみなさい、私に治せるかも」
ん、まさか、本当に治療師なのか!
「……この子、どうしてこんなことに? この症状から見て、原因は毒じゃないの?」
その通り、正しい見立てだ。これは間違いなさそうだぞ。
「その通りです。ある人にやられました。実は俺達、治療師を探してここまで来たんです」
正直に話してみる。さて、どうなるかな?
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