我が魂よ最強を求むることなかれ。ただ自由の限界を汲み尽くせ!

横山剛衛門

文字の大きさ
33 / 39
本編

33.天使狩り3

しおりを挟む
 右から左から襲ってくる剣や槍を、俺は最小限の動きで躱していく。
 このくらいなら何人いようが相手にならんな。敵とはいえ、命令に従って襲ってくるだけの兵士を殺すのも忍びない。今は徒手空拳なのも考えようによってはちょうどいい、腹なり顎なりに打撃を与えて気絶させるだけにしといてやる。
 三十人ほどいたのを、あっという間に半分まで減らす。おらおら、キメラでもなんでも出してこんかい。

「役立たずども、何をしているのです! キメラを放ちなさい!」

「し、しかし、今放っては、兵士達まで巻き添えにーー」

「役立たずがどうなろうと知ったことではありません! それより奴を早く殺すのです!」

 おー、はっきり部下を見捨てるって言っちゃったよ。ギョッとした顔になった側近は、それでもメズの言う通りにすることにしたらしい。奥の方の暗がりに走っていき、すぐにそっちから獣の咆哮が聞こえてきた。

「キ、キメラだ! 逃げろ!」

 案の定、まだ律儀に俺を囲んでいた兵士達が散り散りになっていく。
 が、そのうちの一人の身体が、いきなり暗闇の中で宙に持ち上がった。逃げる方向を誤ったらしい。
 どデカイ馬のキメラの口にくわえられたそいつは、断末魔の悲鳴を上げながら牙に食い千切られて死んでしまった。ついてない、かわいそうに。
 現れたキメラは五体。全て馬のタイプで、普通の三倍はあろうかという真っ白い体に翼、加えて草食動物らしからぬ牙と、謎のツノが生えている。
 あれだ、ペガサスとユニコーンを足して更に化け物にしたような感じ。はっきり言ってキモい。センスないな。

「ふははは、どうですか、我々が得た秘術によって生み出されたキメラは。獣の体に天使様のお力が加わったこのモノ達にかかれば、お前などすぐにバラバラです。その死体からゆっくりと、光の腕輪を探してやりますよ。ここまで手をかかずらわせた罰です、楽に死ねると思わないことですね」

 自ら鉄の檻に入って身の安全を確保したメズの遠吠えがやかましい。
 でも、なるほど確かに、前に倒した鹿と牛よりかなり強そうだ。うーん、面倒だから魔剣が欲しいところだけど。どっかにないかな……
 そもそも、見た目は古ぼけた感じだったあの剣を、まだこいつらが持ってるかは分からん。あーくそ、結構気に入ってたんだけどな、アレ。

「あーもう、魔剣よ魔剣、俺の手に帰ってこい……」

 思わず口に出して呟いてしまう。
 ……と、近くにあった馬車の中から、なにやらゴトゴト音がし始めた。
 何かと思っていると、幌を突き破って何かが飛び出してきて、俺の目の前に突き刺さる。

「……魔剣ちゃん? 魔剣ちゃんなの?」

 なんと、それはまごう事なき俺の愛剣だった。呼んだら飛んできてくれるとは……そういえばそういう魔剣の伝説もあったな。こいつにもそんな力があったとは。
 なーんだよー、もっと早く言葉にしとけばよかった。やっば願いは常々口に出さないとな。予言の自己成就って言葉もあることだしさ……これはちょっと違うか。
 ともかく、襲いかかってきたキメラを躱しがてら魔剣を掴んで飛びすさり、久々の感触を確かめて頷く俺。

「うーん、この感じ、やっぱこいつは最高だな。メズよ、後生大事に運んでくれといてありがとよ」

 これでやっと俺も本気を出せる。素手も悪くなかったけど、俺の本分はやっぱ剣士なんだろう。異世界に来たからには、こういうファンタジー感を味わいたいのだ。
 続いて間合いに飛び込んで来た一体の角を、魔剣で受け止める。ここまで徒手空拳でやってきたおかげで、より感覚が鍛えられたな。そこはよかったぜ。

「なかなか速いな、これまでで一番スピードのある攻撃だったかも。でも、まだまだそんなもんじゃ俺はやれないよ」

 鍔迫り合いしていたキメラの角を、剣を軸にくるりと回転させ、バランスを崩させたところで無防備な首筋を斬り裂く。
 さすがは我が愛剣、スパンとなんの抵抗もなくぶっとい首を刎ね飛ばすことができた。
 というか、前より切れ味がだいぶ上がってるような……? もしかして、この前マリードとかイフリートを斬った時に得た魔力でパワーアップしてるとか?
 こんな感じで強くなるんなら、いずれどんな剣になるっていうのか。

「面白い、次、来いよ!」

 と、俺が声をかけるまでもなく、二体同時にキメラが突っ込んでくる。やはり速い、が、さっきとそう変わりゃしない。二匹になった分だけ手間はかかるが、これくらいあってないようなもんだ。

「へい、せい、よ!」

 一体目の角をギリギリでしゃがんで躱してからその足を斬り飛ばし、続いて踏み潰そうとかけてくる二体目に対して直角に剣を突き出し、顎から頭に剣を貫通させる。
 それから、引き抜いた剣を後ろで転けてる一体目の心臓に突き刺して、三体上がり。
 さあ、残り二体。どうしてくれようかね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...