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本編

Ex.大海の上にて

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「そういえばですが、イヌイ」

 遠くまで青が広がる海の上を飛んでいく船の上で、アビちゃんは急にこう切り出した。

「はい、なんでしょかアビちゃん」

「あのですね、今更なのですが、海には地上では考えられないほど巨大なモンスターが出るものとして恐れられています。が、イハワに来るまでも一度も出遭いませんでした。ということは、きっと何か対策をしてあるんですよね? 実は結構ドキドキしてたんですけど」

「いや、別に? その話、初めて知ったし」

「……え? ということは、今にもリバイアサンに襲われてもおかしくないということですか?」

「そうなるんじゃない?」

 一瞬で顔が真っ青になったアビは、ひと呼吸置いてからとんでもない大声で叫んだ。

「ど、どーするんですか! いくらちょっと海面から浮いてるとはいえ、リバイアサンならちょっと跳ねるだけで届いてしまいますよ⁉︎ あああー、そ、そうなったら、私達は伝説の預言者みたいに、リバイアサンのお腹の中に囚われてしまうかもしれません……」

「なんか聞いたことあるような伝説だな……でもその話だと、預言者は助かるんじゃなかった?」

「あれ、そういえばそうだったかも……? で、でも私達もそうなるとは限りませんから!」

「まー私は幽霊だから、食べられないけどね~」

 ここでマナが会話に割り込んできた。人が不安になってる時に茶々入れるんじゃないよ。

「まあまあアビ、これでも飲んで落ち着けよ。グイッといきな、グイッと」

「なんですかこれ? まあせっかくなので、いただきます」

 酔い覚ましとでも思ったのか、俺が差し出した瓶をやたら素直にグイッと飲み干すアビ。

「そんでマナ、リバイアサンはどんなヤツなの? 倒すのは無理?」

「リバイアサンてのはね、家よりも全然でっかいとーんでもない大きさのモンスターだから、まず魔術じゃなきゃダメよ。それもとびっきりの、魔力をメチャメチャ使うようなヤツね」

「へー、そんなの使える人ってたくさんいるの?」

「いないわよ! だから海を渡ることなんてほとんどないの。漁とかは浅瀬で済ますしねー」

 ほーん、そんなに危険なわけね。実際、特に対策してないし、いつ襲われるか分かったもんじゃないな。

「……だーかーらー! 襲われたらどうすんの?っつってるわけでふよ、あらひは! どうすんのさ! ガハハハ、どうしようもないわよね! 来るなら来なさい、どんとこい!」

「おっ、早速酒が回ってきたようだな」

 そう、不安を鎮めるには酒が一番! さっきアビに渡した飲み物は、透明だから水にも見えるけど、割とアルコール分高めの酒なのでした。
 我ながらアル中みたいな考えだとは思うが、とにかく今は上手くいったのでオールオッケー。

「それにしてもアビはホント酒に弱いな。こんな簡単に酔っ払えるのって、ある意味羨ましいわ」

「えー……分かってて飲ませたの? ちょっと引くわ……」

「何言ってんのマナ。どうしようもないことでジタバタするくらいなら、いっそ酔っ払っちゃって心配しなくなる方が楽ってもんよ」

「うーん、そうかなぁ……」

「なーにごちゃごちゃ言ってんのさー、あんた達もこれ飲みなさいよ、美味しーわよー……うっぷ」

 あ、そうだ。アビって下戸な上に悪酔いしやすいタイプだっだ。これは確かにちょっとかわいそうだったな。

「ほらあ! 気持ち悪くなっちゃんてんじゃん! どうにかしてやんなさいよ!」

「ほらこっちも飲みな、スッキリするからさ」

「ぬあんですかこれ、私はこっちのほーがいーんです! こっちもっとくらさいよー……ぐびぐび……ふあー、これもおいひいれすね、なんか、こう、うおあおえええぇぇ」

 間に合わんかったか、ポーションで回復するかなって思ったんだが。毒消しの方が良かったか?

「あーあーもう、どうすんのよこれ、あんた片付けなさいよ責任とって」

「あーめんどくさ、海にリバースしてくれれば良かったのになぁ」

 しょうがないので、なんか片付ける道具がないかと見に行こうとした時。
 ドバシャーン!と水が跳ねるとんでもない音がした。

「うお、なんだ⁉︎ まさかアビが落ちた?」

「ち、ち、違う! 本当にで、出たぁ!」

 振り返ると、そこには長い首をもたげる怪物がいた。水面から伸びた首は細長く、いわゆるエラスモサウルス的なヤツだった。角が生えてるし色は黒いしで、よりヤバそうな見た目だ。

「こいつ、ついて来やがる! やるならやってやるぞこの野郎」

「ぎゃー、アビ、起きて、ねえ! アビってば!」

「ぐー……なにいっひぇんのよ、起きてるわよ……ぐぅ」

 アビの弓で牽制して欲しかったんだが、ちと無理そうね。しゃーない、俺が相手してやるか!
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みんなの感想(1件)

ネコト
2018.04.15 ネコト

面白いので楽しみにしてます
頑張ってください

少し気になったのがマヨコハ は ヨコハマ が元になっているのでしょうか?

横山剛衛門
2018.04.15 横山剛衛門

ご感想、応援ありがとうございます。頑張ります。

はい、マヨコハ は ヨコハマ が元です。

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