母から娘へ

はなこ

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出産。

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母から娘へ。


わたしがあなたと
出会ったときの事
なんて伝えよう。

いつか、あなたも大人になって。
母は消えたとしても

つづく続く。
わたしたちはずっと続いている。

言葉もなにもないむかしから
知っていたことだから。
おんなは、おとこから
命の火の玉をもらって
産み落とすロマンチック。


痛くなんかないよ。
心配しないで。

自分の中の
もう一つの心臓。
強くなれる。

あたしは、
あたし以上に
あなたを愛した。

子宮をかき回してたあなたはついに。

嵐のように。
竜巻のように。
あたしの中で
お腹の皮膚を突き抜け
子宮の壁を、時に
蹴り上げて。。
骨盤を砕き


あなたは、火の玉
トゲトゲの火の玉になり
子宮を焼き
膣を破り。
鳴き声、泣き声をあげながら
あなたもまた、
自分の骨を、軋ませながら
わたしを信じて。
私の呼吸にあわせ、
私のからだを破り出てくる




未だに
命をかける
それは、あなたがいるから
できること。

ひとつだった肉体が
ふたつにわかれ

あなたは、
水を吐き
空気を吸いこむ。


柔らかくて
暖かくて
いたいけに泣いていた
あなたの全部
覚えてる。


ここにいるのは
もうすでに、

つよいから

いるのであって

そして
まだ、
ふたつになった
肉体に慣れず
わたしは
あなたをずっと
抱きしめて過ごしていた。





あたしは
愛する人のいのちの
火の玉をつないだ。


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