BOTTLE UP!

海野真水

文字の大きさ
3 / 3

3 開けてびっくり! じいちゃんの日記

しおりを挟む
 パポー……パポー……
 リビングからかすかに聞こえてきた鳩時計の音で、俺ははっと我に帰った。
 やべ。これ、なんとかしなきゃあ。
 膨大な量のガラクタの中から立ち上がろうとした時、俺の膝から一冊の古ぼけた本がどさっと落ちて、またもやホコリをもうもうと舞い上げた。
 もぉぉ……かんべんしてくれよぉ。
 ため息をつきながら、その本を拾いあげる。
 ん? そんなに厚みがないくせになんか、ずしっとくるんだよな?
 革表紙は、相当使い込んであって、何か文字が書いてあるんだけどほとんど読めなかった。
 その本には、1枚のボロボロの紙切れがはさみこんであって、何気なしにそこを目安に本を開けてみると、中のページが丸く深くくりぬいてあって、手のひらで包みこめるくらいの大きさのガラス玉が入っていた。
 俺はその玉をそうっとつかんで取り出して、窓から差し込む光に透かして見てみた。
 そのガラス玉は、薄い青で氷に気泡が入ってるみたいに不透明で、大きな亀裂がひとつ、ピシッと入っていた。
 な、なんなんだ?これは?
 「それは、おまえのじいちゃんの[マジカル・オーブ]だ」
 「げげっ!」
 不意に頭の真上から声がしたので心臓が口から飛び出しそうになった。
 おそるおそる上を見ると、年はじいちゃんと同じぐらいみたいだけど背はもっと高く、体格もがっしりしてる。
 そして長めのシルバーの髪を革で無造作にくくっている、この掃除のモト。
 つまりじいちゃんの知り合いであろう人が、ニマニマしながら俺を見下ろしていた。
 「とうとう、それを見つけてしまったな」
 「え? こ、これっすか?」
 ガラス玉をつかんだまま、俺はしどろもどろに聞き返した。
 「そう。それだよ」
 その人はしゃがみこんで、ガラス玉を目を細めて懐かしそうに見つめて呟いた。
 「あいつめ、こんな所に隠しておったのか」
 まだドキドキしている心臓を落ち着かせようと、2~3回深呼吸してから、ごくっと唾を飲んで、俺は自分から話しかけてみた。

「あんた……じゃなくって、あなたはじいちゃんの知り合いの方っすよね?」
 その人は、視線を玉から俺の方に向けて言った。
「おお、自己紹介が遅れてすまんな。私はシーガル・スタインメッツ。おまえのじいちゃんとは実は幼馴染でな」
 へぇ。知り合いとだけしか聞いてなかったのに、そんな間柄だったんだぁ。
 実は俺、じいちゃんの事、あんまりよく知らないんだ。大の冒険好きだから、1週間以上家に居た試しがない。
帰ってきても、この書庫にこもってたりしてて。
 そんな訳でじいちゃんとなかなか話す機会がなかったんだ。
 でもそんなじいちゃんだけど俺はすっごく好きなんだ。男として、人生の先輩として。
 だから俺はじいちゃんの事、もっと知りたいと思ってたので、思い切ってシーガルさんに聞いてみた。
「あの……じいちゃんの事、もっと聞かせて欲しいんですけど」 
 シーガルさんは大きなごつい手で俺の頭をくしゃっと撫でた。
「俺もそのつもりだ。だがその前に、おまえのかあさんの手料理をごちそうにならないとな」
 そう言って、よっこらしょ、と立ち上がった。
「お、そうだ。おまえのかあさんが、『どうせさぼってるでしょうから、あまり掃除は行き届いてないですけど』って言ってたぞ。それと、『早く終わらせないと、大好物のノア魚とハーブのパイ包み焼き、みんな食べちゃうよ』だとさ」
 シーガルさんは笑いながら部屋を出ていった。やば!まだ掃除途中じゃん!さっきの鳩時計、お昼の時間だったんだぁ。
 かあさん、がさつに見えるけど完璧主義だからなぁ。ううう、あとどれくらいかかるかなぁ。
 じいちゃんの本棚もまだとっちらかってるし。
 とりあえず、速攻でやっつけるしか、俺が昼飯にありつける方法は残されてなかった。
 仕方なしに、気を取り直してハタキを手に再び掃除を再開。
 あぁあ、腹へったぁ……



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...