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「そなたのために作ったのに、そなたが使わないなど、考えもしなかった」
金色の香水を、マシレが憮然として見詰めている。マシレ曰く、今までで一番難航した依頼だったのに、とのこと。
「前の僕みたいに困っているオメガは沢山いますよ。そのひとたちに提供すればいいじゃないですか」
「そうだが……量産するには少しばかり難しくてな。ここの植物だけでは足らぬ」
そうして溜息を吐く番に、リュカは思案した。きっと世の中にはこの魔法の香水を待っている者が多く居るはずだ。
「あ」
ぴんと閃いたことをマシレに話すと、彼は激昂して「そなたの姿はもう誰にも見せぬ」と腕の中にしまわれてしまった。過保護だと思うが、そんなところも好きなので、擦り寄って彼の香りを堪能していると。
「おい、結局香水、どうするんだ」
フレバリーが白い目でこちらを見ていた。ちょっと恥ずかしくなって離れようとするが、腕の力が強くて離れられない。
「王子に頼みましょう。民をしあわせにする喜びを知れば、あの方も賢王になるかも」
マシレに手紙の中身を厳重に確認されつつも、王都へと手紙を出した。正式な方法を以て、改めて求婚はお断りさせていただくこと、マシレという番を得たこと、そして、世界中のオメガを救って欲しいことを書いた。
リュカの手紙への返事はすぐに来た。王子本人が返信を持って、シズと、それと王都の調香師を勢揃いさせて、やって来たのだ。その目にリュカへの未練があるのが自分で分かる。だがリュカはもう、心揺らされない。それにマシレが、背に隠してくれたから、平気なのだ。
「この馬鹿たれ、手紙書いた意味ないでしょうが」
シズがぐちぐちと言うのも聞かず、王子は泣き腫らしたような真っ赤な目許で高らかに言った。
「マシレ・グラースの発明品を、王都で製造流通することを援助する」
そのため、マシレが忙しくなった。調香師たちに香水の製法を伝えるのと、材料の香料の確保させるための書状を王子に書かせるのと。それに、最後のパーツたる香りの魔法をシズに伝授するのとで、てんやわんやだ。
かくして、一気にイェナン王国の特産品に上り詰めた香水は、苦しむオメガを沢山救っているらしい。リュカは、自分の依頼がこんなことにまでなるなんて、想像もしていなかった。
リュカ自身は香水を使わないが、マシレとの絆だから、小さな香水瓶を首に掛け、いつも持ち歩くことにした。それでマシレの溜飲はやっと下がったらしい。
*
この件で、マシレ・グラースの名前は売れに売れ、国境を越えて、あちらこちらから『香りの魔術』の依頼が絶えない。
「私は好きな研究がしたいのに!」
そう言いながらも、困っているひとには必ず手を差し伸べるのだから、ひと嫌いだなんてきっと嘘だとリュカは思う。
だが、不満はあった。実験室に籠もりきりになり、それまで一緒に行うこともあった畑仕事にマシレが一切顔を出さなくなったのだ。食事もばらばらになりがちで、リュカは寂しい。
それでも、深夜には寝室に帰ってきてくれるので、リュカは笑顔でこう言うのだ。
「お帰り、マシレ」
それで一気に顔をほころばせる番が、リュカは大好きでたまらない。そうして口付けをして、彼の腕の中に飛び込む毎日はとても、しあわせだ。
金色の香水を、マシレが憮然として見詰めている。マシレ曰く、今までで一番難航した依頼だったのに、とのこと。
「前の僕みたいに困っているオメガは沢山いますよ。そのひとたちに提供すればいいじゃないですか」
「そうだが……量産するには少しばかり難しくてな。ここの植物だけでは足らぬ」
そうして溜息を吐く番に、リュカは思案した。きっと世の中にはこの魔法の香水を待っている者が多く居るはずだ。
「あ」
ぴんと閃いたことをマシレに話すと、彼は激昂して「そなたの姿はもう誰にも見せぬ」と腕の中にしまわれてしまった。過保護だと思うが、そんなところも好きなので、擦り寄って彼の香りを堪能していると。
「おい、結局香水、どうするんだ」
フレバリーが白い目でこちらを見ていた。ちょっと恥ずかしくなって離れようとするが、腕の力が強くて離れられない。
「王子に頼みましょう。民をしあわせにする喜びを知れば、あの方も賢王になるかも」
マシレに手紙の中身を厳重に確認されつつも、王都へと手紙を出した。正式な方法を以て、改めて求婚はお断りさせていただくこと、マシレという番を得たこと、そして、世界中のオメガを救って欲しいことを書いた。
リュカの手紙への返事はすぐに来た。王子本人が返信を持って、シズと、それと王都の調香師を勢揃いさせて、やって来たのだ。その目にリュカへの未練があるのが自分で分かる。だがリュカはもう、心揺らされない。それにマシレが、背に隠してくれたから、平気なのだ。
「この馬鹿たれ、手紙書いた意味ないでしょうが」
シズがぐちぐちと言うのも聞かず、王子は泣き腫らしたような真っ赤な目許で高らかに言った。
「マシレ・グラースの発明品を、王都で製造流通することを援助する」
そのため、マシレが忙しくなった。調香師たちに香水の製法を伝えるのと、材料の香料の確保させるための書状を王子に書かせるのと。それに、最後のパーツたる香りの魔法をシズに伝授するのとで、てんやわんやだ。
かくして、一気にイェナン王国の特産品に上り詰めた香水は、苦しむオメガを沢山救っているらしい。リュカは、自分の依頼がこんなことにまでなるなんて、想像もしていなかった。
リュカ自身は香水を使わないが、マシレとの絆だから、小さな香水瓶を首に掛け、いつも持ち歩くことにした。それでマシレの溜飲はやっと下がったらしい。
*
この件で、マシレ・グラースの名前は売れに売れ、国境を越えて、あちらこちらから『香りの魔術』の依頼が絶えない。
「私は好きな研究がしたいのに!」
そう言いながらも、困っているひとには必ず手を差し伸べるのだから、ひと嫌いだなんてきっと嘘だとリュカは思う。
だが、不満はあった。実験室に籠もりきりになり、それまで一緒に行うこともあった畑仕事にマシレが一切顔を出さなくなったのだ。食事もばらばらになりがちで、リュカは寂しい。
それでも、深夜には寝室に帰ってきてくれるので、リュカは笑顔でこう言うのだ。
「お帰り、マシレ」
それで一気に顔をほころばせる番が、リュカは大好きでたまらない。そうして口付けをして、彼の腕の中に飛び込む毎日はとても、しあわせだ。
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