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第五章 出会い いったいこの国は1
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私のブラジャーの中は、大勢の人が目にしていた。着替えるのに人の目は気にしないというこの国の習慣にしたがって、宿舎の同部屋の人たちはもちろん、外で平然と着替える人もいるので、ほとんど全員がお互いに全裸の姿を晒していた。厚化粧の胸はふくよかで美しかった。それとは対照的に浅黒い娘は胸が小さかった。Aカップのブラジャーでも余ってしまいそうなほど貧弱だったが、それでも本来男である私の胸よりは大きかった。年寄も中年も大小様々だが、私のように「乳房がない」という人はいなかった。しかし、誰もが私の胸を見て「まだ子供のような身体だね」という反応しか示さなかった。私の服を剥ぎ取った兵士と同じ反応だった。
長身の娘も同じような反応を示すものと思った。それで触らせていたが反応が違った。「あなたは胸がまだない」が何を意味するのか。私が女の胸がない男ということがわかったのか、あるいは女のように胸がまだ成長していないという意味だろうか。「やっぱりそう」って何がそうなのか。彼女はかなり「この国の秘密」を知っているのではないだろうか。
この国の暮らしも1ヶ月を超えると、最初は四苦八苦していた仕事もかなり余裕を持ってこなせるようになってきた。もっとも、四苦八苦といっても清掃の手順に悩んでいたわけでなく、トイレに入ってきて股間を露出する女たちに対する下半身の反応に四苦八苦してたわけだから、生理ナプキンをショーツにつけて体液なんていくら放出してもいいや、と割り切ってしまえば何ということもなかった。
それにこの一週間ほど、徐々に存在しない陰茎が硬直することが少なくなり、放出に至ることはほとんどなくなってしまった。せいぜい、カウパー腺液でショーツが湿る程度のものだった。女になったのだろうかとは思ってみたものの、自分の体を女性化する何らかの処置はないはずだ。陰茎を切断したといっても、男性ホルモンの供給源である睾丸や前立腺は無傷だ。「女に常に囲まれていて女性らしさが浸透した」とか「陰茎を失って男としてのアイデンティティを失くした」とかいうのは、ひょっとして長期的には何らかの影響はあるかもしれないが、こんな理由で短期間に女性化するようなことはないはずだ。
それに体毛だ。もともと髭や体毛は薄いほうだったが、半月も髭を剃らなかったら密生はしないものの産毛のような髭がかなり伸びるはずだった。でも生えていない。「髭剃り」という行為をすっかり忘れてしまっていたが、女でいることに何の支障もなかった。体毛や髭はかなり薄くなってほとんどないといってもいいような状態だった。
女性ホルモンを投与されているのだろうか。思い浮かんだのがリーダーから非常食といって渡される異臭のするカンパンや握り飯だ。食事がとれないだろうからと渡されたが、食べられるようになったといってもいつもわずかな残り物なので、結局いつも非常食で補充している。これに女性ホルモンが入っているということだろうか。特にその異臭が気になってならない。はっきりいって小便の臭いのようなのだ。
女性の尿には多量の女性ホルモンが含まれているという。下水に含まれるホルモンの変化で水生生物が異常になったという事実も前の世界で聞いたことがある。ひょっとしたら女の尿が入った食べ物ではないかとも思う。でも臭いだけで味には特に問題はないし、今のところ腹をこわしたこともない。
胸も少し大きくなってきたような気がする。バストがというより、乳輪と乳首が大きくなっているようなのだ。特にブラジャーをせずにブラウスを着ると乳首が服に摺れてどうにもならなかった。感じてしまうのだ。最初はついうっかりブラジャーをせずに仕事に行き、それをリーダーに見られると激しく殴られた。しかし、今ではブラジャーが必需品になり、忘れるということはなくなった。
女に欲情しなくなってきたというのは、女性化してきたということなのだろうか。
長身の娘も同じような反応を示すものと思った。それで触らせていたが反応が違った。「あなたは胸がまだない」が何を意味するのか。私が女の胸がない男ということがわかったのか、あるいは女のように胸がまだ成長していないという意味だろうか。「やっぱりそう」って何がそうなのか。彼女はかなり「この国の秘密」を知っているのではないだろうか。
この国の暮らしも1ヶ月を超えると、最初は四苦八苦していた仕事もかなり余裕を持ってこなせるようになってきた。もっとも、四苦八苦といっても清掃の手順に悩んでいたわけでなく、トイレに入ってきて股間を露出する女たちに対する下半身の反応に四苦八苦してたわけだから、生理ナプキンをショーツにつけて体液なんていくら放出してもいいや、と割り切ってしまえば何ということもなかった。
それにこの一週間ほど、徐々に存在しない陰茎が硬直することが少なくなり、放出に至ることはほとんどなくなってしまった。せいぜい、カウパー腺液でショーツが湿る程度のものだった。女になったのだろうかとは思ってみたものの、自分の体を女性化する何らかの処置はないはずだ。陰茎を切断したといっても、男性ホルモンの供給源である睾丸や前立腺は無傷だ。「女に常に囲まれていて女性らしさが浸透した」とか「陰茎を失って男としてのアイデンティティを失くした」とかいうのは、ひょっとして長期的には何らかの影響はあるかもしれないが、こんな理由で短期間に女性化するようなことはないはずだ。
それに体毛だ。もともと髭や体毛は薄いほうだったが、半月も髭を剃らなかったら密生はしないものの産毛のような髭がかなり伸びるはずだった。でも生えていない。「髭剃り」という行為をすっかり忘れてしまっていたが、女でいることに何の支障もなかった。体毛や髭はかなり薄くなってほとんどないといってもいいような状態だった。
女性ホルモンを投与されているのだろうか。思い浮かんだのがリーダーから非常食といって渡される異臭のするカンパンや握り飯だ。食事がとれないだろうからと渡されたが、食べられるようになったといってもいつもわずかな残り物なので、結局いつも非常食で補充している。これに女性ホルモンが入っているということだろうか。特にその異臭が気になってならない。はっきりいって小便の臭いのようなのだ。
女性の尿には多量の女性ホルモンが含まれているという。下水に含まれるホルモンの変化で水生生物が異常になったという事実も前の世界で聞いたことがある。ひょっとしたら女の尿が入った食べ物ではないかとも思う。でも臭いだけで味には特に問題はないし、今のところ腹をこわしたこともない。
胸も少し大きくなってきたような気がする。バストがというより、乳輪と乳首が大きくなっているようなのだ。特にブラジャーをせずにブラウスを着ると乳首が服に摺れてどうにもならなかった。感じてしまうのだ。最初はついうっかりブラジャーをせずに仕事に行き、それをリーダーに見られると激しく殴られた。しかし、今ではブラジャーが必需品になり、忘れるということはなくなった。
女に欲情しなくなってきたというのは、女性化してきたということなのだろうか。
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