深い森の彼方に

とも茶

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第五章 出会い いったいこの国は1

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彼女は続けた。
「それに、子供達や若い娘たちが男という存在を知らないならまだ分かる。未成年の処女から男を隔離するようにしていたり、大人になるまで男の存在を秘密にしているかもしれないから。でも、出産を経験した母親が男というものを知らないなんて考えられる?  どうやって妊娠したというの? どう考えてもシラバックレテル様子は見えないし、本当に男という存在をものを知らないようなの。男と交わることだけだったら、例えば、この国の女性が寝ているうちに、あるいは集団催眠にかけられて知らないうちに男性が来て強姦していくっていうことも考えられるんだけど。でも、男の子も生まれないっていうのは絶対あり得ないと思うの。」
私は無い知恵を絞って聞いてみた。
「たとえば、男が生まれないような物質とか、環境ホルモンのようなものがこの世界に蔓延しているなんてことは?」
「でもあたしは、猫の交尾は見た事あるの。それに、セミやコウロギ、鳴いてるでしょ。」
「そういえば、昆虫で鳴くのはオスだけね。でも、人間にしかきかない物質とか・・・」
「ひょっとしたら、その可能性もあるわ。だからもっと多くの人に聞いてみようと思うんだけど、あたしだけじゃちょっと交際範囲が狭いみたいだし。」
「私にも協力してっていうわけね。」
「そう、お願いできる?」
「わかった。でも私なんか、知ってる人はあなたよりずっと少ないけど。」
「いいの、お願い。来週また同じ時間に流しにいてね、様子を聞かせてね。」
私が聞けそうな人といったら、今のところあの厚化粧くらいしかいなかった。あ
と、あのリーダーだったら。
「そういえば、あの人は男の存在を知ってる。あのリーダーは。」
「リーダー? あの居丈高の態度で、ガンガン指図してくる人のこと?」
「そう、何かといえばすぐ殴りつける。あの人は男を知っていた。」
「そうか、リーダーか。あたしはここのところ会っていないけど。確かに男のことを知っている人ね。」
「じゃあ、今のところあなたと私と、それとリーダー、男を知っているのはその3人だけ。」
「あっ、そうだ。あと二人男を知っている人がいた。二人ともいっしょにいたのではないはずなんだけど、この宿舎に暮していていた。」
「今でもいるの?」
「いない。二人とも「自分は昔、男だった」ってことを言っていたの。でも、そのことを聞いてから二人の姿を見た事ないの。」
「二人とも元は男? リーダーが女にした・・・」
「その二人のことをリーダーに話した。そうしたら、「そういう人と接触するな」と言われてそれからその人を会ったことがない。リーダーがあやしい。ひょっとしたらあの人が仕組んでるような気がして。でも、そのリーダーなのか他に仕組んでいる人がいるのか、それがわからない。だから、あなたをこんな暗い目立たない場所に連れてきたのよ。」
「そうね、私もリーダーには気をつけるようにする。」
「じゃあ、あまり長くここにいたら皆に不思議に思われちゃうから、部屋に戻りましょう。あなた先に戻って。」
「うん、わかった。じゃあ、また来週ね。」
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