【完結】うちの家の玄関はたまに異世界に繋がります。

かのん

文字の大きさ
14 / 14

今日はお刺身にしよう!

しおりを挟む
 あ、そうだ!今日はお刺身にしよう。

 確か近くのスーパーが水曜日にはお魚セールをしているはずだから、少しお値段が張るけれどたまには贅沢もいいでしょう。

 田舎のばあちゃんの家に行けばただで釣って食べていた魚に、スーパーでかなりの値段がついていた時の衝撃は今でも忘れない。

 魚って高いんだなぁとしみじみ思った。

 そんな事を考えながら玄関を出たのがいけなかったのか。

「え?」

 一歩出た先は、海であった。

 勢いよく海に落ち、全身が海水で濡れた。

 突然の事に動揺しながらも力を抜いて海に浮かぶと、青い空と、さんさんと照りつける太陽が見えた。

「ここ、どこ?」

 思わず海に浮かびながら辺りを見回すと、すぐ近くに島が見えて、そちらへと懸命に泳いだ。

 その時であった。

 突然船が目の前に現れると、自分目がけて網が降ろされて魚と共に引き上げられてしまう。

 溺れそうになりながらもどうにか息を止めて巻き上げられた私は、船の上に上がった瞬間にむせ、口から海水を吐いた。

「ひ!人だ!」

「まさか魚人か!」

「うわぁぁぁ!」

 人々が悲鳴を上げる中、どうにか網からもがいて出た私は、呼吸を整えて言った。

「いえ、ただの主婦です。すみません。突然こんな登場をして。」

 冷静にそう言うと、船に乗っていた人々も私を見て冷静を取り戻すと、本当に人間かどうか確かめてから大きく息を吐いた。

「おめー、どうしてあんな海の真ん中にいたんだ?」

「えっと、それは私にもなんでだかさっぱりで。」

 その時であった。

 船が大きく揺れて、何かが船にぶつかったのが分かった。

「なっ!?」

 次の瞬間見えたのは、島だと思ったものに乗り上げる船である。

「え?!」

「ここが俺たちの島だ。とにかく、休んで行け。」

「え?」

 どうやら島だと思ったものは、巨大な船だったようであり、この船は小型船だと言う。

 大きな船に小型船をドッキングさせて大きな船に映ると、なんともきらびやかなネオンの輝く町が続いていた。

 言われなければここが海の上だとは思わなかっただろう。

 漁師達は言った。

「お前さん、ダンスは踊れるか?」

 突然の言葉に私は目を丸くしたが、漁師達はいたって真面目に言った。

「この船にはな、おかしな掟があってな、船に乗る時は必ず踊らなきゃならねーんだ。」

「え?」

「ほらお前行って来い。頑張るんだぞ。」

 突然の展開に驚きながら、呆然としたままお立ち台のような場所に立たされる。

 スポットライトが辺り、人々が自分を見ているのが分かった。

 よし、女は度胸だ。

 だが、言っておこう。

 私はダンスなんてしゃれたものは出来ない。

 ならば、やるものは一つだ。

「花は霧島ーたばぁこーはー国分~。あれに見えるはおはらはぁ桜島!はよいよいよいやさ!」

 私が踊れるのは小学校の時に参加したおはら節のみ!

 全力で歌いながら踊ると、なんと皆から拍手喝さいがあり、そしてその後は皆でおはら節を踊った。

 あぁ、おはら節って、皆で踊ると本当に楽しい!

 よかった。踊れて!

 その後、漁師さんたちにお魚を分けてもらって家に帰りました。


「わぁ、今日のごはんはお刺身なんだぁ。カラフルな魚って・・・初めて刺身で見たよ。」

 色とりどりの刺身に若干旦那さんが引き気味になっていましたが、大丈夫ですよ。

「すごく美味しいから。今日もお疲れ様。ビールも冷やしてあるよー。飲む?」

「飲む飲むー!」

 今日もお仕事おつかれさま。

 その日の夜は、二人でどんちゃんしながらおはら節を踊りました。




しおりを挟む
感想 11

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(11件)

ちゃっぺ
2021.08.23 ちゃっぺ

これはユル楽しい!
話の繋がりが無くても似たような話になってもまた楽しいに違いない!
不定期で待っています。続きが欲しいです。

解除
道産子
2021.04.13 道産子

メチャクチャ面白かったです♪ぜひ、続きが読みたいです♪(* ´ ▽ ` *)

2021.04.13 かのん

ありがとうございます。
そう言っていただけて、感謝です!

解除
通りがかり
2019.06.29 通りがかり

星進一の「ノックの音が」で始まるショートショートを連想させられます。今回は、そっちもありでした。

2019.06.30 かのん

そう言っていただけると、なんだかありがたいです。

そっちも、ありでしたね(笑)

解除

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。