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十三話 デート・・・?
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水色と白を基調としたワンピースは爽やかな印象を与え、晴れた日にはよく映える。そしてそれをココレットが白い帽子を合わせて着れば、もはや可愛らしい人形のようである。
前日までは土砂降りであったからこそ、ココレットは全力を持って晴れるように祈り続けた。聖女に天候を操る力はないが、ココレットの執念からか、ココレットとローワンの初デートは見事な快晴となった。
これにより、この日の為に新しく買った洋服も、白い靴も、汚れることはないとココレットは満面の笑みである。
「お嬢様。大変可愛らしゅうございますぅぅ。」
シシリーはハンカチを目に当てて、ココレットの姿に涙する。今まで貧乏で、新しい洋服何て買う余裕が中々なかったが、今は財布が潤っている。
故にココレットは、ローワンとの下町デートが楽しみでならなかった。
下町には、決してお上品ではないがおいしい物が結構売っている。しかし今までのココレットは節約に節約を重ねていた為に、そうした物を買った事が無かった。
故に今日のココレットは気合に満ちているのだ。
一方、今日のデートの相手であるローワンも気合が入っていた。
今日の服装は白いシャツに茶色のベストを着け、紺色のジャケットを羽織っている。
どこからどう見ても、見事な王子様である。
何故にこのように気合が入っているのか。側近のシンがその気合の入りように若干引きながら尋ねると、ローワンは髪型を鏡で確認しながら答えた。
「ココレット嬢には、初めての事が多い。先日プレゼントを贈った時には、受け取るのも初めてだととても喜んでいたし、婚約者にプレゼントを贈るのも初めてだと言っていた。こちらの都合に巻き込む形で婚約者になってもらっているんだ。せっかくだから、ココレット嬢が喜ぶように、出来る限りしたいんだ。それに・・私も、ココレット嬢が喜ぶと嬉しい。」
胸ポケットに、ココレットからの贈り物である匂い袋を入れて、嬉しそうにそう言うローワンに、シンはなるほどと頷いた。
だがしかし、シンがチラリと見れば、明らかにどこからどう見ても王子様がそこにいる。
下町にお忍びデートだというのに、身分を隠すそぶりがない。
まぁ情勢は落ち着いているし、国民も貴族や王に対して反感を持つ者は少ない。
下町も治安は悪くないし、王子が出歩いても問題はないのだがそれにしても目立つ予感しかしない。しかももしこれでココレットがすごく地味な格好をしていたらどうするのだろうと、シンは思うが、予想は外れる。
馬車を出迎えたココレットはまさに可憐な少女。どこからどうみても、良い所のお嬢さんであり、動いていなければ人形かと見間違いそうなほどに整っている。
お忍び用の、外観は少し地味目な馬車でココレットを迎えに行ったローワンは、ココレットの姿を見て表情を緩ませると手を差し伸べて言った。
「とても可愛らしい婚約者殿。今日は楽しもうね?」
ココレットの妄想張りに甘いセリフである。ココレットはその一言で頭の中の妄想がさらに広がっていく。
「は、はひ!今日は、よろしくお願いします。」
シンは、二人が馬車に乗り込むのを後ろから馬に乗って追いながら、遠い目をしてため息をついた。
今日はかなりの数の護衛がひっそりと二人の姿を見守る予定となっている。皆が一般人に扮して二人のお忍びデートをサポートする予定なのだが、当の本人らは全く忍んでいない。
こんなにも大っぴらな王子様のデートはそれはそれは目立つだろうなと、シンはため息をつくのであった。
「ココレット嬢・・・その、ココレットと呼び捨てもいいだろうか?」
馬車の中でそう言われ、ココレットは首を勢いよく縦に振った。
「もちろんです!」
その言葉にほっとするようにローワンは爽やかな微笑を浮かべる。その笑顔が可愛らしくて、ココレットの胸は高鳴った。
二人の乗った馬車は下町の商店街の入り口で止まる。昼前ということもあって、商店街は賑わっており、行き交う人は多い。
「ココレット。行こうか?」
馬車を下りて手を差し伸べるローワンのあまりのかっこよさにココレットはすでに胸を何度も打ち抜かれている。
そしてそんな二人は言わずもがな目立っている。
商店街に買い物に来ていた人々は二人が馬車を下りてきた瞬間に、足を止め、目を丸くして二人に視線を向ける。
「ママ・・見て・・・天使がいるよ。」
「違うわ!王子様よ!」
「じゃあ横の子はお姫様?」
子ども達は無邪気にそんな事を言いあうが、大人たちはそうはいかない。
明らかに身分の高い二人の登場に、商店街中大騒ぎである。水面下で商店街の奥の方まで一気に話は広がっていき、商人らは気合を入れて、買い物客は邪魔をしてはいけないと思いつつ、あまりにきらきらとした二人の姿を野次馬的に見つめてしまう。
ほらやっぱりとシンは内心思うが、そんな事など二人には関係ない。
ココレットはローワンとの初デートに浮かれに浮かれ、ローワンはローワンでココレットを楽しませるぞと意気込んでいる。
そしてそんな二人の甘い初デートの雰囲気に、商店街の大人達も生暖かな視線を向けると、二人のデートを盛り上げてやろうなどと変な気をまわし始める。
「いらっしゃいませ!当店自慢の幸せになれるおそろいのブレスレットはいかがですか?これがあれば二人を誰も引き離せませんよ!」
「うちのカフェではカップル席をご用意しています!一休みされていきませんか?!」
「二人であっちっち!激辛チャレンジしていきませんか!?」
いつもは家族連れをターゲットとしている店が、次々のカップル用の商品を売り出しにかかり、ココレットとローワンへと声をかけていく。
そんな中、ココレットはパタパタと団扇で火加減を調節しながら肉を焼く、焼鳥屋の前で足を止めるとごくりと喉を鳴らしてローワンに言った。
「あれを、あれを食べましょう!私一度でいいから食べて見たかったのです!」
瞳をキラキラとさせながら、デートには明らかに不向きであろう肉に視線を向けるココレット。外見は甘い砂糖菓子のようなのに、中身は肉食である。実に残念。
「い、いらっしゃいませ!その・・えっと・・・か・・カップル用の特大串焼きはいかがですか!」
明らかに串焼きと言う時点でカップル用とはどういうことだと、護衛の皆が心の中で突っ込みを入れる。
「カップル用・・す、すごいですね。美味しそうです。」
うきうきとしながらも、カップル用という言葉に照れ笑いをするココレットを見て、ローワンも微笑むと、店主に言った。
「カップル用の特大串焼きを二本頼む。」
「はいよろこんでぇ~!」
カップル用なのに、別々に二本。明らかに大きすぎる串焼きを受け取ると、ローワンとココレットはベンチへと移動し腰掛ける。さりげなくローワンに奢られてしまい、自分の潤った財布を出す機会がなかったことに、ココレットは嬉しいような残念なような気がした。
ちなみに、ココレットにとっては初めての外での買い食いである。
ローワンはココレットに串を渡し、自身も肉へとかぶりついた。ココレットとは違い、ローワンはたまにお忍びでこうした所へと来ているために、かぶりつくのにも躊躇いがない。
ココレットもいいのだろうかと思いながらも、それにならって大きな口を開けて肉へとかぶりついた。
もふもふもふもふ。口いっぱいに肉をほおばって味わうのは、至福の時間である。お上品さのかけらもないが、塩コショウのきいた肉は美味い。この粗雑な感じが、たまらなく美味しい。
ローワンはもふもふと咀嚼する幸せそうなココレットの口元を、焼鳥屋の店主にもらっていた紙でふきとると楽しげに言った。
「可愛らしいな。」
決してお上品ではない。けれども、一生懸命に肉をほおばる姿は可愛らしい。いや、肉だ。うん。そう。護衛をしている者達は自国の王子に内心でツッコミを入れる。
可愛らしいかもしれない。だが、口の中に入っているのは肉である。
いい雰囲気だが、あきらかにムードは足りない。何せ香る匂いは肉の匂い。手に持っているのも、巨大な肉。
初デートとは、もう少し甘い雰囲気のものではないのかなと、護衛らも、また、商店街の人々も内心で思っている。
ただ、当の本人たちはすごく幸せそうな顔を浮かべていた。
前日までは土砂降りであったからこそ、ココレットは全力を持って晴れるように祈り続けた。聖女に天候を操る力はないが、ココレットの執念からか、ココレットとローワンの初デートは見事な快晴となった。
これにより、この日の為に新しく買った洋服も、白い靴も、汚れることはないとココレットは満面の笑みである。
「お嬢様。大変可愛らしゅうございますぅぅ。」
シシリーはハンカチを目に当てて、ココレットの姿に涙する。今まで貧乏で、新しい洋服何て買う余裕が中々なかったが、今は財布が潤っている。
故にココレットは、ローワンとの下町デートが楽しみでならなかった。
下町には、決してお上品ではないがおいしい物が結構売っている。しかし今までのココレットは節約に節約を重ねていた為に、そうした物を買った事が無かった。
故に今日のココレットは気合に満ちているのだ。
一方、今日のデートの相手であるローワンも気合が入っていた。
今日の服装は白いシャツに茶色のベストを着け、紺色のジャケットを羽織っている。
どこからどう見ても、見事な王子様である。
何故にこのように気合が入っているのか。側近のシンがその気合の入りように若干引きながら尋ねると、ローワンは髪型を鏡で確認しながら答えた。
「ココレット嬢には、初めての事が多い。先日プレゼントを贈った時には、受け取るのも初めてだととても喜んでいたし、婚約者にプレゼントを贈るのも初めてだと言っていた。こちらの都合に巻き込む形で婚約者になってもらっているんだ。せっかくだから、ココレット嬢が喜ぶように、出来る限りしたいんだ。それに・・私も、ココレット嬢が喜ぶと嬉しい。」
胸ポケットに、ココレットからの贈り物である匂い袋を入れて、嬉しそうにそう言うローワンに、シンはなるほどと頷いた。
だがしかし、シンがチラリと見れば、明らかにどこからどう見ても王子様がそこにいる。
下町にお忍びデートだというのに、身分を隠すそぶりがない。
まぁ情勢は落ち着いているし、国民も貴族や王に対して反感を持つ者は少ない。
下町も治安は悪くないし、王子が出歩いても問題はないのだがそれにしても目立つ予感しかしない。しかももしこれでココレットがすごく地味な格好をしていたらどうするのだろうと、シンは思うが、予想は外れる。
馬車を出迎えたココレットはまさに可憐な少女。どこからどうみても、良い所のお嬢さんであり、動いていなければ人形かと見間違いそうなほどに整っている。
お忍び用の、外観は少し地味目な馬車でココレットを迎えに行ったローワンは、ココレットの姿を見て表情を緩ませると手を差し伸べて言った。
「とても可愛らしい婚約者殿。今日は楽しもうね?」
ココレットの妄想張りに甘いセリフである。ココレットはその一言で頭の中の妄想がさらに広がっていく。
「は、はひ!今日は、よろしくお願いします。」
シンは、二人が馬車に乗り込むのを後ろから馬に乗って追いながら、遠い目をしてため息をついた。
今日はかなりの数の護衛がひっそりと二人の姿を見守る予定となっている。皆が一般人に扮して二人のお忍びデートをサポートする予定なのだが、当の本人らは全く忍んでいない。
こんなにも大っぴらな王子様のデートはそれはそれは目立つだろうなと、シンはため息をつくのであった。
「ココレット嬢・・・その、ココレットと呼び捨てもいいだろうか?」
馬車の中でそう言われ、ココレットは首を勢いよく縦に振った。
「もちろんです!」
その言葉にほっとするようにローワンは爽やかな微笑を浮かべる。その笑顔が可愛らしくて、ココレットの胸は高鳴った。
二人の乗った馬車は下町の商店街の入り口で止まる。昼前ということもあって、商店街は賑わっており、行き交う人は多い。
「ココレット。行こうか?」
馬車を下りて手を差し伸べるローワンのあまりのかっこよさにココレットはすでに胸を何度も打ち抜かれている。
そしてそんな二人は言わずもがな目立っている。
商店街に買い物に来ていた人々は二人が馬車を下りてきた瞬間に、足を止め、目を丸くして二人に視線を向ける。
「ママ・・見て・・・天使がいるよ。」
「違うわ!王子様よ!」
「じゃあ横の子はお姫様?」
子ども達は無邪気にそんな事を言いあうが、大人たちはそうはいかない。
明らかに身分の高い二人の登場に、商店街中大騒ぎである。水面下で商店街の奥の方まで一気に話は広がっていき、商人らは気合を入れて、買い物客は邪魔をしてはいけないと思いつつ、あまりにきらきらとした二人の姿を野次馬的に見つめてしまう。
ほらやっぱりとシンは内心思うが、そんな事など二人には関係ない。
ココレットはローワンとの初デートに浮かれに浮かれ、ローワンはローワンでココレットを楽しませるぞと意気込んでいる。
そしてそんな二人の甘い初デートの雰囲気に、商店街の大人達も生暖かな視線を向けると、二人のデートを盛り上げてやろうなどと変な気をまわし始める。
「いらっしゃいませ!当店自慢の幸せになれるおそろいのブレスレットはいかがですか?これがあれば二人を誰も引き離せませんよ!」
「うちのカフェではカップル席をご用意しています!一休みされていきませんか?!」
「二人であっちっち!激辛チャレンジしていきませんか!?」
いつもは家族連れをターゲットとしている店が、次々のカップル用の商品を売り出しにかかり、ココレットとローワンへと声をかけていく。
そんな中、ココレットはパタパタと団扇で火加減を調節しながら肉を焼く、焼鳥屋の前で足を止めるとごくりと喉を鳴らしてローワンに言った。
「あれを、あれを食べましょう!私一度でいいから食べて見たかったのです!」
瞳をキラキラとさせながら、デートには明らかに不向きであろう肉に視線を向けるココレット。外見は甘い砂糖菓子のようなのに、中身は肉食である。実に残念。
「い、いらっしゃいませ!その・・えっと・・・か・・カップル用の特大串焼きはいかがですか!」
明らかに串焼きと言う時点でカップル用とはどういうことだと、護衛の皆が心の中で突っ込みを入れる。
「カップル用・・す、すごいですね。美味しそうです。」
うきうきとしながらも、カップル用という言葉に照れ笑いをするココレットを見て、ローワンも微笑むと、店主に言った。
「カップル用の特大串焼きを二本頼む。」
「はいよろこんでぇ~!」
カップル用なのに、別々に二本。明らかに大きすぎる串焼きを受け取ると、ローワンとココレットはベンチへと移動し腰掛ける。さりげなくローワンに奢られてしまい、自分の潤った財布を出す機会がなかったことに、ココレットは嬉しいような残念なような気がした。
ちなみに、ココレットにとっては初めての外での買い食いである。
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ココレットもいいのだろうかと思いながらも、それにならって大きな口を開けて肉へとかぶりついた。
もふもふもふもふ。口いっぱいに肉をほおばって味わうのは、至福の時間である。お上品さのかけらもないが、塩コショウのきいた肉は美味い。この粗雑な感じが、たまらなく美味しい。
ローワンはもふもふと咀嚼する幸せそうなココレットの口元を、焼鳥屋の店主にもらっていた紙でふきとると楽しげに言った。
「可愛らしいな。」
決してお上品ではない。けれども、一生懸命に肉をほおばる姿は可愛らしい。いや、肉だ。うん。そう。護衛をしている者達は自国の王子に内心でツッコミを入れる。
可愛らしいかもしれない。だが、口の中に入っているのは肉である。
いい雰囲気だが、あきらかにムードは足りない。何せ香る匂いは肉の匂い。手に持っているのも、巨大な肉。
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