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四話 竜の宝物
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メルルの後ろについて歩きながら、竜の庭を見つめた。寒くも暑くもなく、咲いている花々は春のものもあれば冬の物もある。季節がめちゃくちゃに混ざり合っているような光景は、ここでしか見られないだろう。
しかも、そんな草花の中に、のっそりと日向ぼっこをする竜が幾匹も見える。
アレクサンダーの姿を見た竜達はちらりとこちらを見てはメルルを心配げに見つめる。そして、アレクサンダーの匂いを嗅ぐと納得した様子で頷き、興味が無くなった様子で視線を外すのであった。
「竜とは・・大人しいのだな。」
その言葉にメルルは肩をすくめると、アレクサンダーに言った。
「そんなわけないじゃない。ほら、あっちを見て。」
指差された方向へとアレクサンダーが視線を向けると、黒煙が上がり、上空では雷鳴が轟いた。
「あれ・・は?」
首を傾げるアレクサンダーに、メルルはにやりと笑った。
「木の実の取り合い。」
「へぇ・・ははは。」
アレクサンダーの乾いた笑い声にメルルは噴き出すように笑った。
「ははっ。竜様方ってスケールが大きいのよ。あー。今まで誰にも共感してもらった事が無いから、なんだかとても嬉しいわ。」
そんなメルルの言葉に、アレクサンダーは気になっていたことを尋ねた。
「メルルはどうしてこの庭にいるんだい?妖精では・・・ないのだろう?」
「妖精は見た事があるけれど、私とは全然違う生き物よ。そうね、妖精よりは、多分人間に似ていると思う。って言っても、私貴方以外の人間を見た事が無いし分からないけれど。」
「見た事が無い?・・親は?」
「親なんて見たことないわ。物心ついた時から、竜様方のお世話をしていたの。だから私は、竜様方のメイドとして生まれたのだと思っていたわ。」
「何もない所からは生まれないだろう?」
「そうねぇ。でも本当に分からないの。竜様達も知らないって言っていたわ。」
メルルは足を止めると、小さな丘の側面に空いている洞穴を指差した。
「ほら、あそこよ。行きましょう。」
「あぁ。」
洞穴の中に入ると、外よりもひんやりとしていた。壁には水滴がつたい、洞窟の地面は水で濡れている所が多く、滑らないように慎重に進む必要があった。
メルルは足を止めると、アレクサンダーに言った。
「貴方、高い所は平気?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。」
メルルはにっこりとほほ笑むと、アレクサンダーの手を掴んだ。
「よかった。じゃあ、行くわよ。」
「え?」
「そーっれ!」
次の瞬間、メルルに腕を引かれてアレクサンダーは体が浮き上がる感覚を味わう。
「うわぁぁぁっぁぁぁっ!」
下にきらめく黄金が見えた。けれど今はそれどころではない。地面に向かって体がどんどんと落ちていく。勇者の時には体を反転させ着地できただろうが、今はメルルに空中で抱きしめられたために身動きすら取れない。
そして訪れたのは、衝撃ではなく、ふわりとした何かに包まれる感覚であった。
目を開けると、ふわふわとした白い綿毛にうずもれていた。空中には自分達が落ちてきた衝撃で空に飛んだ綿毛が風に飛ばされていくのが見えた。
「あはははは!」
メルルの楽しそうな笑い声が響き渡る。洞窟の中だからなのか、反響してより大きく聞こえる。
アレクサンダーは体を起き上がらせると、メルルを睨みつけて言った。
「いきなり酷いじゃないか!」
「ごめんなさい。でも、楽しかったでしょう?」
悪戯が成功した子どものような表情を浮かべるメルルに、アレクサンダーは大きくため息をつく。そして視線の先に見えた物に、驚きのあまり言葉を失った。
綿毛が取り囲むのは、金銀財宝の山であった。王冠や金貨、宝石やアクセサリー。色とりどりの金銀財宝がそこにはあった。
その数は限りなく、アレクサンダーは先ほどのメルルの顔を思い出した。
「はは。そりゃあ、そんな顔も浮かべたくなるか・・・・」
アレクサンダーの呟きに、メルルも同意するように言った。
「竜は綺麗なものが好きだから、宝物はいっぱいあるのよ。」
「これ全部にキスしていくって・・・どんな苦行だ・・」
むしろ唇が大丈夫だろうかと、メルルは苦笑を浮かべるのであった。
しかも、そんな草花の中に、のっそりと日向ぼっこをする竜が幾匹も見える。
アレクサンダーの姿を見た竜達はちらりとこちらを見てはメルルを心配げに見つめる。そして、アレクサンダーの匂いを嗅ぐと納得した様子で頷き、興味が無くなった様子で視線を外すのであった。
「竜とは・・大人しいのだな。」
その言葉にメルルは肩をすくめると、アレクサンダーに言った。
「そんなわけないじゃない。ほら、あっちを見て。」
指差された方向へとアレクサンダーが視線を向けると、黒煙が上がり、上空では雷鳴が轟いた。
「あれ・・は?」
首を傾げるアレクサンダーに、メルルはにやりと笑った。
「木の実の取り合い。」
「へぇ・・ははは。」
アレクサンダーの乾いた笑い声にメルルは噴き出すように笑った。
「ははっ。竜様方ってスケールが大きいのよ。あー。今まで誰にも共感してもらった事が無いから、なんだかとても嬉しいわ。」
そんなメルルの言葉に、アレクサンダーは気になっていたことを尋ねた。
「メルルはどうしてこの庭にいるんだい?妖精では・・・ないのだろう?」
「妖精は見た事があるけれど、私とは全然違う生き物よ。そうね、妖精よりは、多分人間に似ていると思う。って言っても、私貴方以外の人間を見た事が無いし分からないけれど。」
「見た事が無い?・・親は?」
「親なんて見たことないわ。物心ついた時から、竜様方のお世話をしていたの。だから私は、竜様方のメイドとして生まれたのだと思っていたわ。」
「何もない所からは生まれないだろう?」
「そうねぇ。でも本当に分からないの。竜様達も知らないって言っていたわ。」
メルルは足を止めると、小さな丘の側面に空いている洞穴を指差した。
「ほら、あそこよ。行きましょう。」
「あぁ。」
洞穴の中に入ると、外よりもひんやりとしていた。壁には水滴がつたい、洞窟の地面は水で濡れている所が多く、滑らないように慎重に進む必要があった。
メルルは足を止めると、アレクサンダーに言った。
「貴方、高い所は平気?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。」
メルルはにっこりとほほ笑むと、アレクサンダーの手を掴んだ。
「よかった。じゃあ、行くわよ。」
「え?」
「そーっれ!」
次の瞬間、メルルに腕を引かれてアレクサンダーは体が浮き上がる感覚を味わう。
「うわぁぁぁっぁぁぁっ!」
下にきらめく黄金が見えた。けれど今はそれどころではない。地面に向かって体がどんどんと落ちていく。勇者の時には体を反転させ着地できただろうが、今はメルルに空中で抱きしめられたために身動きすら取れない。
そして訪れたのは、衝撃ではなく、ふわりとした何かに包まれる感覚であった。
目を開けると、ふわふわとした白い綿毛にうずもれていた。空中には自分達が落ちてきた衝撃で空に飛んだ綿毛が風に飛ばされていくのが見えた。
「あはははは!」
メルルの楽しそうな笑い声が響き渡る。洞窟の中だからなのか、反響してより大きく聞こえる。
アレクサンダーは体を起き上がらせると、メルルを睨みつけて言った。
「いきなり酷いじゃないか!」
「ごめんなさい。でも、楽しかったでしょう?」
悪戯が成功した子どものような表情を浮かべるメルルに、アレクサンダーは大きくため息をつく。そして視線の先に見えた物に、驚きのあまり言葉を失った。
綿毛が取り囲むのは、金銀財宝の山であった。王冠や金貨、宝石やアクセサリー。色とりどりの金銀財宝がそこにはあった。
その数は限りなく、アレクサンダーは先ほどのメルルの顔を思い出した。
「はは。そりゃあ、そんな顔も浮かべたくなるか・・・・」
アレクサンダーの呟きに、メルルも同意するように言った。
「竜は綺麗なものが好きだから、宝物はいっぱいあるのよ。」
「これ全部にキスしていくって・・・どんな苦行だ・・」
むしろ唇が大丈夫だろうかと、メルルは苦笑を浮かべるのであった。
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