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九話 呪いの解ける方法
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結局アレクサンダーの呪いは不完全に溶けたらしく、子どものままでも聖剣は使えるようになったものの、元の大きさに戻る為には、メルルのキスが必要なようであった。
しかし、アレクサンダーはそれを直接メルルに言うのを恥ずかしがり、メルルから逃げ回っている。
「ちょっとアレクサンダー。貴方だって自分の国に戻りたいのでしょう?それに、魔女のいう事が本当なら、その宝を手に入れれば貴方は幸せになるらしいじゃない。宝って一体何だったのか教えて頂戴よ。」
暗黒竜はその様子を喉をゴロゴロと鳴らして笑い、アレクサンダーはそれを恨めしげに睨みつけた。
「ねぇ、暗黒竜様。アレクサンダーは困っているの。暗黒竜様は宝物をいっぱい持っているのだから、一つくらいアレクサンダーにあげたら?」
メルルの言葉に暗黒竜は悲しげに目を細めると答えた。
「そうだなぁ。その宝はアレクサンダーが自ら手に入れなければならないものなのだ。アレクサンダーが実力で手に入れれば、もちろん祝福してやろう。」
その言葉にメルルは瞳を輝かせると、アレクサンダーの方を見て言った。
「ほら、暗黒竜様もこう言っているわ。アレクサンダー。手伝ってあげるから、宝が何なのか教えて頂戴?」
アレクサンダーはげんなりとした様子で、メルルにバケツを手渡すと、自らは絞ったタオルで暗黒竜の体の鱗を磨き始めた。
「メルル。今日は暗黒竜の鱗磨きをした後に、銀竜の住処の掃除をするんだろう。早くしないと日が暮れるぞ。」
「あ、そうだった。でも、ちゃんと教えてよ?」
「はいはい。」
そう言いながら、アレクサンダーはメルルの仕事を手伝う。何だかんだ、竜様方のメイドというのも忙しい物なのだ。
暗黒竜はその様子を見ながら楽しそうに目を細めた。
「まぁ、お前もたまにはここでのんびりしたらいい。国の英雄はお前一人ではないのだから、大丈夫だろう?」
アレクサンダーは何だかんだ国の情勢にも詳しいこの暗黒竜は何者なのだろうと思いながら、ため息をつく。
「そういうものなの?」
メルルが尋ねると、アレクサンダーは頷いた。
「ああ。勇者以外にも、魔法使いやら、聖騎士団長やら他にもいろいろいるからな。」
「ふーん。そっか。そうなんだ。」
その言葉に何故かほっとしている自分にメルルは首を傾げた。何故自分は今安心したのだろうかと思いながら、きっとアレクサンダーと一緒にいるのに慣れ過ぎて、一人になるのが寂しいのだなと結論付ける。
「それなら、ずっとここにいてくれればいいのに。」
思わずメルルはそう口にして、それから、何故か急に恥ずかしくなって顔を赤らめた。
アレクサンダーはメルルの言葉に目を丸くして固まりながらも、どうにか、その口をゆっくりと動かした。
「め、メルル?それって・・どういう意味で・・・」
メルルは慌てた様子で顔を真っ赤にすると言った。
「分かんない!何で、私、こんなに恥ずかしいの?もう!アレクサンダーのせいよ!」
「ええぇ?!ごっごめん。」
そんな二人の様子を、暗黒竜は微笑ましげに眺めると、空に飛びあがって呟いた。
「子どもは、男の子も女の子も見たいものだなぁ。」
暗黒竜の言葉に、アレクサンダーは聖剣を引き抜くと、暗黒竜との鬼ごっこが始まったのであった。
メルルはそんな姿にため息をつくと、苦笑を浮かべるのであった。そしてふと思い出す。
「あ、そういえば、泉でおぼれた時の助けてくれたお礼、まだ言っていなかったな。あの時・・唇に何か・・・あたったような、そうでなかったような。」
メルルがアレクサンダーの呪いがどうやって解けるのかを知るのは、そう遠くない未来である。
おしまい
★★★★★
この物語はこれで終わりとなります。二人はその後、もちろんハッピーエンドでしょうが、メルルが気づくまでに時間がかかりそうです。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。また、よければ、作者の名前も憶えていただけると、嬉しいです。
読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
しかし、アレクサンダーはそれを直接メルルに言うのを恥ずかしがり、メルルから逃げ回っている。
「ちょっとアレクサンダー。貴方だって自分の国に戻りたいのでしょう?それに、魔女のいう事が本当なら、その宝を手に入れれば貴方は幸せになるらしいじゃない。宝って一体何だったのか教えて頂戴よ。」
暗黒竜はその様子を喉をゴロゴロと鳴らして笑い、アレクサンダーはそれを恨めしげに睨みつけた。
「ねぇ、暗黒竜様。アレクサンダーは困っているの。暗黒竜様は宝物をいっぱい持っているのだから、一つくらいアレクサンダーにあげたら?」
メルルの言葉に暗黒竜は悲しげに目を細めると答えた。
「そうだなぁ。その宝はアレクサンダーが自ら手に入れなければならないものなのだ。アレクサンダーが実力で手に入れれば、もちろん祝福してやろう。」
その言葉にメルルは瞳を輝かせると、アレクサンダーの方を見て言った。
「ほら、暗黒竜様もこう言っているわ。アレクサンダー。手伝ってあげるから、宝が何なのか教えて頂戴?」
アレクサンダーはげんなりとした様子で、メルルにバケツを手渡すと、自らは絞ったタオルで暗黒竜の体の鱗を磨き始めた。
「メルル。今日は暗黒竜の鱗磨きをした後に、銀竜の住処の掃除をするんだろう。早くしないと日が暮れるぞ。」
「あ、そうだった。でも、ちゃんと教えてよ?」
「はいはい。」
そう言いながら、アレクサンダーはメルルの仕事を手伝う。何だかんだ、竜様方のメイドというのも忙しい物なのだ。
暗黒竜はその様子を見ながら楽しそうに目を細めた。
「まぁ、お前もたまにはここでのんびりしたらいい。国の英雄はお前一人ではないのだから、大丈夫だろう?」
アレクサンダーは何だかんだ国の情勢にも詳しいこの暗黒竜は何者なのだろうと思いながら、ため息をつく。
「そういうものなの?」
メルルが尋ねると、アレクサンダーは頷いた。
「ああ。勇者以外にも、魔法使いやら、聖騎士団長やら他にもいろいろいるからな。」
「ふーん。そっか。そうなんだ。」
その言葉に何故かほっとしている自分にメルルは首を傾げた。何故自分は今安心したのだろうかと思いながら、きっとアレクサンダーと一緒にいるのに慣れ過ぎて、一人になるのが寂しいのだなと結論付ける。
「それなら、ずっとここにいてくれればいいのに。」
思わずメルルはそう口にして、それから、何故か急に恥ずかしくなって顔を赤らめた。
アレクサンダーはメルルの言葉に目を丸くして固まりながらも、どうにか、その口をゆっくりと動かした。
「め、メルル?それって・・どういう意味で・・・」
メルルは慌てた様子で顔を真っ赤にすると言った。
「分かんない!何で、私、こんなに恥ずかしいの?もう!アレクサンダーのせいよ!」
「ええぇ?!ごっごめん。」
そんな二人の様子を、暗黒竜は微笑ましげに眺めると、空に飛びあがって呟いた。
「子どもは、男の子も女の子も見たいものだなぁ。」
暗黒竜の言葉に、アレクサンダーは聖剣を引き抜くと、暗黒竜との鬼ごっこが始まったのであった。
メルルはそんな姿にため息をつくと、苦笑を浮かべるのであった。そしてふと思い出す。
「あ、そういえば、泉でおぼれた時の助けてくれたお礼、まだ言っていなかったな。あの時・・唇に何か・・・あたったような、そうでなかったような。」
メルルがアレクサンダーの呪いがどうやって解けるのかを知るのは、そう遠くない未来である。
おしまい
★★★★★
この物語はこれで終わりとなります。二人はその後、もちろんハッピーエンドでしょうが、メルルが気づくまでに時間がかかりそうです。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。また、よければ、作者の名前も憶えていただけると、嬉しいです。
読んで下さり、ありがとうございました。
作者 かのん
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勇者様、早く竜の宝が、メルルちゃんだと気がついて〜