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リナリーの悪巧み22
しおりを挟む父と別れた後、シバはリナリーに飲み物をとってくると声をかけ、その場を離れた。
数カ月前までは、ここでの舞踏会も見慣れた景色だったのに、今では早く魔王城に帰りたくて仕方ないなんて、おかしなものね。
そう思っていた時であった。
アランが後からリナリーに声をかけてきた。
「リナリー。少しいいか?」
「第二王子殿下。」
「バルコニーに行こう。」
リナリーは腰に手を回され、仕方なく一緒にバルコニーに出た。
「なんですか?」
「、、、リナリーは何故、あのように馬鹿な事をしたのだ?ずっと聞きたかったのだ。」
そういえばこの人は私が嘘八百で魔王の元へ送られた事を知らないのだ。
「私は何もしておりませんよ。」
「?、、、どういう事だ?」
リナリーは可愛そうなものを見る目で、幼子を諭すように言った。
「目に見えるものだけが真実ではないという事です。」
「な、、、ならば、やはり俺の事をリナリーは今でも思っているのだな?」
「は?」
「だってそうだろう。リナリーは嘘をついておらず、魔王の元へ無理やり送られた。なら俺の事が好きだという事だろう?」
リナリーは唖然とし、大きくため息をついた。
「どうしてそうなるのですか。」
「違うのか?」
「違います。最初は無理やりでも、私はシバ様を今お慕い申し上げております。」
「何故だ?」
何故?
なぜ、何故?
リナリーは顔を真っ赤に赤らめながら、小さな声で呟き始めた。
「初めてお会いした時に、あまりの美しさに驚きましたの。そしたら、シバ様、、、素敵な愛の言葉を囁いて下さいました。そ、、、それにお出かけした時には剣技会に出て、力強く戦う姿がとても勇ましくて素敵でしたの。シバ様、痩せているように見えて、しっかり筋肉がついていて、引き締まっていますの。抱きしめられると、、こう、、守られているっていう感じがして、、心から安心できますの。あ、それに声も素敵ですわ。耳元で囁かれるとなんだか、きゅんってなります。それに、良い匂いがします。あら、何だか私変態ちっくかしら。どう思いまして?」
アランは呆気に取られていたが、次第に笑みがこみ上げ、声を出して笑った。
「本当にシバ殿が好きなんだな!なんだ、俺なんかまったく好かれてないじゃないか。俺は馬鹿だな!とんだ勘違いだ!」
馬鹿なことは知っております。
「でも、婚約者の時は私なりにあなたの為を思っておりましたのよ?」
それを聞き、アランは真剣な表情に変わった。
「リナリー、俺はどうしたらいい?クレアはリナリーのようには答えてくれないんだ。」
今までは、困ったことがあればリナリーが答えてくれた。だが、今では迷ってばかりで、クレアに尋ねても笑みが帰ってくるだけだ。
リナリーは苦笑を浮かべた。
「もう、私は助けてあげられませんわ。」
「手紙を君に出したのは、本当はもう一度会って話をしたかったからなんだ。不快な事を書いたことは申し訳なかった。君なら、何かしらで返えしてくれるって分かっていたから。」
リナリーがアランの事をわかっているように、アランもリナリーを分かっているのだ。
一緒に過ごしてきた月日は消えない。
馬鹿で愚鈍な第二王子。それでも一緒にずっといたのは、悪い人ではないと分かっていたから。この人は良くも悪くも純粋すぎるのだ。
「ご自分で考えて下さいませ。考え、調べ、知り、答えを探して下さいませ。」
アランは頷いた。
「ありがとうリナリー。これまで、俺はきみに甘えっぱなしだった。これからはクレアを俺が支えられるように頑張るよ。それに、、、嘘とは気づかずに断罪してしまいすまなかった。あの時も俺は周りから聞かされた事をただ信じたが、そんなわけはなかったのに、、、、すまなかった。」
リナリーは大きく頷いた。
二人の道は違えてしまったけれど、後悔はない。
二人は小さな頃に戻ったかのように笑いあった。
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