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十一話 静かな出立
ミラはアンシェスター家を出立する前、今まで世話になってきた使用人、侍女、庭師などに挨拶をして回り、そして一人一人に礼を伝えて言った。
門の前で屋敷を見上げれば、これまで十七年間の間過ごしてきた、厳かな屋敷が見える。
良い思い出ばかりが思い浮かべばいいが、思い出すものは、辛いものばかりである。
勉強ばかりの毎日は苦痛に思う事も多かった。
自分の誕生日は簡易に、妹の誕生日は盛大に行われた時には中庭で密かに泣いた。
毎月のように、新しいドレスを妹へとプレゼントする両親の姿に、何故自分には愛情を向けてくれないのだろうかと悩んだこともあった。
けれど、もうそんな日々は終わるのだ。
-もう、ここに帰って来ることはないわね。
そうミラは思い、小さく息を吐くと門を開き、馬車の前で従者の前へと進み出た。
「おはようございます。ミラ・ローレン様。本日より、アンシェスター家まで護衛兼従者としてお世話をさせていただく、レンと申します。よろしくお願いいたします。」
銀色の髪をした青年は、腰に剣を携え、優しげな笑みをミラへと向けた。その瞳は珍しく黒色をしている。
-黒色の瞳は忌避されるけれど、アンシェスター辺境伯様はそのような偏見を持たない方なのね。
それはミラにとっては好感の持てるものであり、実際に会う事が少し楽しみになり微笑を浮かべた。
「はい。よろしくお願いします。」
一瞬レンが少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑みを携えると言った。
「荷物はすでに積んであります。お嬢様付の侍女にも挨拶をしたいのですが・・・・」
使用人達はミラの出発を見送る為に集まっており、皆がミラが屋敷を出て行くことに寂しさを感じているようであった。
けれど、その中にミラについていくものはいない。
ミラの父であるザックが嫌がらせのようにミラには誰もついていくことを許可しなかったのである。
それを正直にレンに言う事も出来ず、ミラは曖昧に笑みを浮かべると言った。
「侍女は連れて行かない事にしたのです。」
レンはその言葉に少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに気を取り直すと数人の女性をミラの前へと呼んだ。
「では、アンシェスター家に使える侍女で本日よりお嬢様のお世話をさせてもらいます。アンシェスター家についてから、専属の侍女を選んでいただくと思いますので、よろしくお願いします。」
あくまでも深くは尋ねないレンに、内心ミラは感謝しながら頷き、そして侍女に促されて馬車へと乗った。
使用人らは頭を下げ、ミラの出発を見送る。中には涙を流すものの姿も見えた。
-ありがとう。貴方達がいてくれたから、私はこれまであの屋敷でやってこれた。
心の中で感謝しながら、ミラは使用人らに小さく手を振った。
小窓から、レンが小さな声でミラに尋ねた。
「お嬢様、その、ご家族へのご挨拶はよろしいのですか?」
「ええ。昨日すませてありますから、出発して下さい。」
「・・そうですか。はい。かしこまりました。」
馬車はゆっくりと走り出し、屋敷が遠ざかっていく。
レンは馬に乗っており、荷物を積んだ馬車や護衛の者達へと声をかけている。
馬車は大層立派なものであり、座っている椅子も柔らかく、クッションなども準備されていた。
初めての長旅であるミラの為を思って準備されているのが分かり、侍女らもミラにとても優しく接し、事細かに気遣ってくれる。
小窓から見える景色が次第に変わり始め、ミラはその景色を見つめながら小さく笑みを浮かべた。
鳥のさえずりが聞こえ、少し開けた小窓から風が入る。
「天気、晴れてよかったわ。」
家族からの見送りはなくても、天気は自分の門出を祝福してくれているようで、それだけでミラは嬉しくなった。
★★★★★
たくさんの感想ありがとうございます!!
読みながら、にやにやしてます。
お返事がたくさんで、返せなくてもうしわけないです!ですが、全て読んでにやにやしてます。
ありがとうございます!!
門の前で屋敷を見上げれば、これまで十七年間の間過ごしてきた、厳かな屋敷が見える。
良い思い出ばかりが思い浮かべばいいが、思い出すものは、辛いものばかりである。
勉強ばかりの毎日は苦痛に思う事も多かった。
自分の誕生日は簡易に、妹の誕生日は盛大に行われた時には中庭で密かに泣いた。
毎月のように、新しいドレスを妹へとプレゼントする両親の姿に、何故自分には愛情を向けてくれないのだろうかと悩んだこともあった。
けれど、もうそんな日々は終わるのだ。
-もう、ここに帰って来ることはないわね。
そうミラは思い、小さく息を吐くと門を開き、馬車の前で従者の前へと進み出た。
「おはようございます。ミラ・ローレン様。本日より、アンシェスター家まで護衛兼従者としてお世話をさせていただく、レンと申します。よろしくお願いいたします。」
銀色の髪をした青年は、腰に剣を携え、優しげな笑みをミラへと向けた。その瞳は珍しく黒色をしている。
-黒色の瞳は忌避されるけれど、アンシェスター辺境伯様はそのような偏見を持たない方なのね。
それはミラにとっては好感の持てるものであり、実際に会う事が少し楽しみになり微笑を浮かべた。
「はい。よろしくお願いします。」
一瞬レンが少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑みを携えると言った。
「荷物はすでに積んであります。お嬢様付の侍女にも挨拶をしたいのですが・・・・」
使用人達はミラの出発を見送る為に集まっており、皆がミラが屋敷を出て行くことに寂しさを感じているようであった。
けれど、その中にミラについていくものはいない。
ミラの父であるザックが嫌がらせのようにミラには誰もついていくことを許可しなかったのである。
それを正直にレンに言う事も出来ず、ミラは曖昧に笑みを浮かべると言った。
「侍女は連れて行かない事にしたのです。」
レンはその言葉に少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに気を取り直すと数人の女性をミラの前へと呼んだ。
「では、アンシェスター家に使える侍女で本日よりお嬢様のお世話をさせてもらいます。アンシェスター家についてから、専属の侍女を選んでいただくと思いますので、よろしくお願いします。」
あくまでも深くは尋ねないレンに、内心ミラは感謝しながら頷き、そして侍女に促されて馬車へと乗った。
使用人らは頭を下げ、ミラの出発を見送る。中には涙を流すものの姿も見えた。
-ありがとう。貴方達がいてくれたから、私はこれまであの屋敷でやってこれた。
心の中で感謝しながら、ミラは使用人らに小さく手を振った。
小窓から、レンが小さな声でミラに尋ねた。
「お嬢様、その、ご家族へのご挨拶はよろしいのですか?」
「ええ。昨日すませてありますから、出発して下さい。」
「・・そうですか。はい。かしこまりました。」
馬車はゆっくりと走り出し、屋敷が遠ざかっていく。
レンは馬に乗っており、荷物を積んだ馬車や護衛の者達へと声をかけている。
馬車は大層立派なものであり、座っている椅子も柔らかく、クッションなども準備されていた。
初めての長旅であるミラの為を思って準備されているのが分かり、侍女らもミラにとても優しく接し、事細かに気遣ってくれる。
小窓から見える景色が次第に変わり始め、ミラはその景色を見つめながら小さく笑みを浮かべた。
鳥のさえずりが聞こえ、少し開けた小窓から風が入る。
「天気、晴れてよかったわ。」
家族からの見送りはなくても、天気は自分の門出を祝福してくれているようで、それだけでミラは嬉しくなった。
★★★★★
たくさんの感想ありがとうございます!!
読みながら、にやにやしてます。
お返事がたくさんで、返せなくてもうしわけないです!ですが、全て読んでにやにやしてます。
ありがとうございます!!
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