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おまけ 二話
しおりを挟むローレン家に到着したミラは、久しぶりの実家を見上げて大きくため息をついた。
昔のような美しさが薄れているように感じ、また、自分の家という感じがしない。自分の家はもうエヴァンの傍なのだなと改めて思う。
「ロナウド。ヘレン。いい?馬車の中でも話したように、おりこうさんにね?あと、もし何かされたり、嫌な事があったら、すぐに言うのよ?」
双子の手をぎゅっと握りながらミラがそう言うと、二人はミラをはさんでぎゅっと抱き着くと天使のような笑顔で言った。
「分かったよ。お母様。」
「お母様だーいすき!」
「ちゃんとおりこうさんにするからね?」
「私も!」
そんな可愛らしい二人の頭を撫で、ミラは温かい気持ちになりながら屋敷の門をたたく。
中から現れた執事は見覚えのないものであり、服装も少しばかり粗末なもので、何と言うか、ローレン家の衰退を感じざるを得ない。
屋敷の中に入ると客間へと通され、ミラは少しばかり緊張する。
あの頃の自分ではないと思ってはいるが、やはり、昔に引き戻されそうで不安がよぎる。
「お母様?大丈夫?」
「気分悪い?」
しかし、そんな不安も双子を見れば吹き飛んでいく。
「大丈夫よ。お母様は、大好きなあなた達が一緒にいてくれれば、強くなれるの。」
その時であった。
扉が開いたかと思うと、入ってきた人物を見て、ミラは目を丸くした。
そこには、両親とロンの姿があった。
「・・なんで・・」
思わずミラがそう口にすると、父と母はミラを睨みつけて言った。
「お前のせいで、我が家はおかしくなったというのに、なんでとは・・」
「本当に・・なんていう女かしら。」
ミラは震えそうになるのをぐっと堪えると、まっすぐに両親を睨みつけて言った。
「それは、自業自得と言う物でしょう。私には関係のない事です。」
挨拶もなしに、睨み合いが始まり、ロンは慌てて声を上げた。
「お義父さんお義母さん、落ち着いて下さい。今日は・・そんな話じゃないでしょう?」
二人は大きくため息をつくと頷いた。
「サマンサが、お前に会いたいと言っている。」
「私は嫌だけれど・・あの子のお願いは聞いてあげるべきでしょう。」
二人の言葉に、ミラは小さくため息をついた。何だかんだと言ってやはりサマンサの事は可愛いのであろう。最初からサマンサのお見舞いに来たのだから会うに決まっているのだが、何故わざわざ来たのだろうか。
「分かっています。それで、サマンサは?」
ミラの質問には、ロンが答えた。
「今、病院に入院しているんだ。王立病院だから、明日サマンサを見舞ってやってくれ。」
ミラはその言葉にうなずくとすぐに席を立ちあがり、三人に向かって言った。
「明日サマンサを見舞ったらすぐに帰ります。では、つかれているので失礼します。部屋は、どこを使えばいいですか?」
ミラが尋ねると、ロンは執事へと視線を向けた。
執事はミラを先導するように扉の前へと立ち言った。
「客室へとご案内します。どうぞこちらへ。」
「ええ。」
結局、挨拶することも、子どもを紹介することもなくミラは部屋へと下がり、ソファへと座ると大きくため息をついた。
「はぁ・・もう、家へ帰りたいわ。」
双子はそんな母の様子を見て、お互いに顔を見合わせると、にやりと笑ってこっそりと喋る。
「ねぇ、あいつらだよね。」
「うん。あいつらだね。」
疲れているミラは気づかない。二人の天使が、悪魔のような笑顔でおしゃべりしている事に。
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