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アンシェスター家の双子 五話
しおりを挟むアンシェスター家にて、三人はミラの前で神妙な顔つきのふりをして座っている。
そんな三人に向かって、ミラは一口紅茶を口に含むと、小さくため息をついてから言った。
「私、怒っているのよ?」
呟かれた言葉に、三人はびくりと肩を震わすと、おずおずとミラの顔を伺う。
ミラはエヴァン、ヘレン、ロナウドの順番に視線を走らせると、また小さくため息をついた。
「何があるのか分からないのだから、出来るだけ危ないことはしないでほしいの」
その言葉に、ヘレンは口を開いた。
「危なくないわ。ちゃんと」
「ヘレン」
「……はい」
男二人は黙り、ヘレンは母親に立ち向かおうとしている。
けれど、そんなヘレンにミラは言った。
「戦い方というのはね、一つではないのよ」
「え?」
ミラは可愛らしく微笑むと言った。
「私だって、ロン様が来ていたことは知っていたわ。けれどね、会う必要はないし、はっきり言えば、もう関係のない人だからどうでもいいの」
そのはっきりとした言いように三人は目を丸くする。
「で、でも、お母様、昔酷い目にあったって」
「そ、そうだよ」
ヘレンとロナウドの言葉に、ミラはくすくすと笑うと言った。
「まぁね。確かに傷ついたこともあったわ。でもね、私は今幸せなの」
「え?」
「どういう意味?」
「ふふ。幸せな自分であり続けることが、一番の仕返しだってこと。ふふ。ちょっと性格の悪いことを言ってしまったわね」
ミラはそう言うと、ベルを鳴らした。すると侍女らが机の上に次々に甘いケーキ屋お菓子を並べていく。
その光景に、三人が驚いていると、ミラはにっこりとほほ笑んで言った。
「でも、私の為にと行動してくれたことはとても嬉しかったから、お礼よ。今日は皆でお菓子パーティーにしましょうか」
ヘレンとロナウドは飛び上がって喜び、エヴァンは少しばかり指で頬を掻く。
「大丈夫。エヴァン様にはこちらを」
ミラがそう言うと、エヴァンのの喜びそうな小料理と、ワインが運ばれてくる。
エヴァンはそれに目を輝かせた。
ミラはくすくすと笑うと言った。
「本当に、親子って似るものねぇ」
同じように瞳を輝かせる三人を見つめ、ミラは幸せそうに微笑む。
「ある意味で、ロン様には本当に感謝だわ。だって、ロン様と結婚していたらこんな素晴らしい未来は訪れなかったもの」
その呟きに、エヴァンは肩をすくめた。
「君のような素敵な女性に出会えたことは感謝だが、あの男には感謝してほしくないな」
「まぁ」
くすくすとミラは笑い、繰り返し、笑ってばかりいる自分がおかしくなる。
家族といるとこうも幸せなものかと、心がほっこりとする。
『お母様?』
「なぁに?」
声をそろえる可愛い双子に視線を向ける。
『ごめんなさい』
上目づかいで謝るその技に、どこで覚えたのかと思いながらもミラは二人の方へと移動するとぎゅっと抱きしめた。
「大好きよ。可愛い私の天使ちゃんたち」
ミラの言葉に双子は天使のように可愛らしい微笑を浮かべる。
エヴァンはそんな三人に、自分もまぜてくれとばかりに抱きしめる。
「まぁ、可愛いのは君もだけれどね」
「ふふふ」
幸せな家族の形。
今日もアンシェスター家の双子は天使の微笑を浮かべている。
その頃、ロンは、酒場で大量の酒をあおり、その後、店の店主に違う町行の馬車に積み込まれて、パカラッパカラッと旅立って行ったそうだ。
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