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一話
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暗い部屋に閉じ込められ、手足に鎖をつけられてただただ生きていた。
じめっとした空気も当たり前、苔の生えた地面に虫が這うのも当たり前。
ワンピースのような、元は白い布だった服はずっと着たままであり、すでに真っ黒になっている。
母が生きていた頃は、どうにか守られて食事も与えられて生きていた。けれど母が死に、兄が国王にとってかわった時から私はこの牢獄へと閉じ込められた。
それでも、死にたくないと思って、必死で生きていた。
ただただ、毎日を重ね、ただただ生きていた。
怖い。
死にたくない。
最初は毎日出ていた食事も、今では時々思い出したかのように持ってこられる。
水は牢獄に備え付けられているから、どうにかそれを飲んで、生を繋いでいた。
指先から次第に感覚はなくなっていった。
自分の体に触れれば、かさかさとしていて、まるで干からびているようだと思った。
そんな繰り返される日々が終わりを告げたのは、何の予告も無く突然の事であった。
人々の叫び声が聞こえ、そしてたくさんのけたたましい音が響き渡る。
鋼が鳴り、罵声が飛び交う。
それは今まで感じた何よりも恐ろしく、身をひそめて震えるしかなかった。
そして、鉄格子の鍵が空き、きらびやかな衣服を身に纏った兄と一時は慕っていた人が現れ、私を虫けらのようにして見ると、いら立ちをぶつけるようにして私を蹴り飛ばした。
「っく・・・ふ・・・・」
痛みで目がちかちかとした。
床に打ち付けられた瞬間に、肺から空気が押し出されて息が苦しい。
「うぅ・・・う・・・」
「お前のせいで・・・お前のせいで!俺の国はめちゃくちゃだ!」
男はわめきながら何度も何度も私を蹴り、そして私の首に手を当てた。
「ふふふ。絶対にお前を見つけさせない。絶対にだ。」
首に痛みが走ったかと思うと、何かが焼き付くのが分かった。
「あぁぁっぁぁぁぁぁ!」
苦しみもがく私の体の上に男は馬乗りになると更に手を押し付け、そしてぎらぎらとした瞳で言った。
「これでやつはお前を見つけられない。ふふふ。ははははは!さぁ、逃げようか。まだ殺さない。お前はまだ利用価値があるからな。行くぞ。」
男がそう言うと、後ろに控えていた別の男に袋をかぶせられてから担ぎ上げられた。
そのまま馬車の中へと押し込められたが、周りの状況が見えず、私は震えるしかなかった。
悲鳴が聞こえる。
鋼の音も聞こえる。
きっと恐ろしい事が見えないところで起こっている。それがとても怖くて、ただただ震えていると次第に静かになって行った。
終わったのだろうかと思った時であった。
馬車が揺れ、そして大きく反転すると体が宙を舞った。
死ぬ。
そう直感した瞬間、馬車は回転しながら落ち、そして岩にぶつかるとそのまま川に落ちた。
冷たい水が体を濡らし、濁流が自分を飲み込んでいくのが分かる。
死ぬのか。
それでもいい。もう、いいのかもしれない。
苦しい。
辛い。
お母様。
早くお傍に行きたいです。
けれど、私の意識は浮上し、生ある世界へと引き戻される。
「目が覚めたか。」
光が見えた。けれど、その光の中にいた生き物は、今まで見た事のない顔をしていた。
「大丈夫だ。もう。大丈夫だからね。」
恐怖よりも、温かなもふもふとした腕に抱かれて、私はいつぶりかの温かさに包まれ意識をまた飛ばした。
じめっとした空気も当たり前、苔の生えた地面に虫が這うのも当たり前。
ワンピースのような、元は白い布だった服はずっと着たままであり、すでに真っ黒になっている。
母が生きていた頃は、どうにか守られて食事も与えられて生きていた。けれど母が死に、兄が国王にとってかわった時から私はこの牢獄へと閉じ込められた。
それでも、死にたくないと思って、必死で生きていた。
ただただ、毎日を重ね、ただただ生きていた。
怖い。
死にたくない。
最初は毎日出ていた食事も、今では時々思い出したかのように持ってこられる。
水は牢獄に備え付けられているから、どうにかそれを飲んで、生を繋いでいた。
指先から次第に感覚はなくなっていった。
自分の体に触れれば、かさかさとしていて、まるで干からびているようだと思った。
そんな繰り返される日々が終わりを告げたのは、何の予告も無く突然の事であった。
人々の叫び声が聞こえ、そしてたくさんのけたたましい音が響き渡る。
鋼が鳴り、罵声が飛び交う。
それは今まで感じた何よりも恐ろしく、身をひそめて震えるしかなかった。
そして、鉄格子の鍵が空き、きらびやかな衣服を身に纏った兄と一時は慕っていた人が現れ、私を虫けらのようにして見ると、いら立ちをぶつけるようにして私を蹴り飛ばした。
「っく・・・ふ・・・・」
痛みで目がちかちかとした。
床に打ち付けられた瞬間に、肺から空気が押し出されて息が苦しい。
「うぅ・・・う・・・」
「お前のせいで・・・お前のせいで!俺の国はめちゃくちゃだ!」
男はわめきながら何度も何度も私を蹴り、そして私の首に手を当てた。
「ふふふ。絶対にお前を見つけさせない。絶対にだ。」
首に痛みが走ったかと思うと、何かが焼き付くのが分かった。
「あぁぁっぁぁぁぁぁ!」
苦しみもがく私の体の上に男は馬乗りになると更に手を押し付け、そしてぎらぎらとした瞳で言った。
「これでやつはお前を見つけられない。ふふふ。ははははは!さぁ、逃げようか。まだ殺さない。お前はまだ利用価値があるからな。行くぞ。」
男がそう言うと、後ろに控えていた別の男に袋をかぶせられてから担ぎ上げられた。
そのまま馬車の中へと押し込められたが、周りの状況が見えず、私は震えるしかなかった。
悲鳴が聞こえる。
鋼の音も聞こえる。
きっと恐ろしい事が見えないところで起こっている。それがとても怖くて、ただただ震えていると次第に静かになって行った。
終わったのだろうかと思った時であった。
馬車が揺れ、そして大きく反転すると体が宙を舞った。
死ぬ。
そう直感した瞬間、馬車は回転しながら落ち、そして岩にぶつかるとそのまま川に落ちた。
冷たい水が体を濡らし、濁流が自分を飲み込んでいくのが分かる。
死ぬのか。
それでもいい。もう、いいのかもしれない。
苦しい。
辛い。
お母様。
早くお傍に行きたいです。
けれど、私の意識は浮上し、生ある世界へと引き戻される。
「目が覚めたか。」
光が見えた。けれど、その光の中にいた生き物は、今まで見た事のない顔をしていた。
「大丈夫だ。もう。大丈夫だからね。」
恐怖よりも、温かなもふもふとした腕に抱かれて、私はいつぶりかの温かさに包まれ意識をまた飛ばした。
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