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第四話 花見 わたし
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朝、カーテンの隙間から光が差し込み眩しさに身をよじると、キッチンの方から何かの音がした。
カッカッカッカッと、卵をかき混ぜる音。ジュッとフライパンで焼く音。
あれ、今日は遠足だったかなと夢うつつに母の事を思い出す。久しぶりに、母の卵焼きが食べたいなと思い目を覚ます。
目をこすり、ゆっくりと意識が覚醒しだすと今日は花見に行こうと蓮と話をしていた事を思い出して慌てて起き上がるとキッチンへ向かった。
「おはよう!ごめん。もうお弁当作り始めてる!?」
顔も洗わないでシャツにズボン姿のままでそう言うと、蓮は驚いたように目を丸くして言った。
「ごめんなさい。起こしましたか?」
「え?いや、起こしてくれたら手伝うのに!」
「いや、ちほさん仕事頑張っているし、、その、、ぼくは何も出来ないから。」
その言葉に胸が苦しくかる。なんでそんな事を言うのだろうか。
「蓮くんは、、何も出来ないなんてことはない。わたしより確実に良いお嫁さんになれるよ。」
「え?」
見当違いのことを言ってしまい、なんと伝えればいいのかと困ると蓮はクスクスと笑った。
「良いお嫁さんか。、、なれるかな?」
その笑顔が可愛らしくて、胸がきゅんとなる。この可愛らしい子はなんなのだろうか。この子が親戚をたらい回された意味がわからない。
「なれるよ!わたしが保証する。」
「ふふ。ありがとうございます。ちほさん、お弁当もうすぐ出来ますから、先に顔とか洗ってきていいですよ。ふふ。ここ、寝癖がついてます。重力無視してますね。」
「え?うそ。わぁ。本当だ。爆発してる。」
わたしは蓮の言葉に甘えて身嗜みを整えると服を着替える。
今日は春らしくワンピースを着るとうっすらとメイクをする。
鏡の前で一周くるりと回ってみてニコッと笑って出来上がりだ。今日のわたしのテーマは『春の妖精』ふふ。自分の心の中では正直にいよう。他人にはそんな乙女チックな内心は言えない。
「蓮くん。本当にありがとうね。」
キッチンに戻り蓮に笑顔を向けると、こちらを見た蓮が動きを止めた。
じっとわたしを見て、はっとしたように顔をそらす。
「き、、今日は、天気が良くて良かったですね。」
「うん。楽しみだね。」
二人でその後は簡単に朝食を済ませた。
せっかく蓮が早くにお弁当を作ってくれたので、蓮にこの近辺を散歩がてら紹介して歩くことになった。
お弁当等は家においたまま、二人で外に出た。
柔らかな太陽の日差しも、温かな風も心地よく、ピクニック日和である。
家の周りや、ご近所さんの話、近くにある公共施設などを紹介して歩き、家帰る。
そして、お弁当にシート、水筒などを持って公園へと向かった。
公園には葉桜になっても同じように花見をしている人々はいて、少しほっとした。わたし達だけだとなんだか恥ずかしい。
「ちほさん、あっちの桜、まだ残ってますよ。」
公園の奥の方に、少し小さめの桜の木があり、その木にはまだ桜がかなり残っていた。奥の方の小さな木だからあまり人もいない。
二人でその木の下にシートを敷き、お弁当やこの日の為に事前に買っておいたお菓子や飲み物なども準備する。
二人でコップに炭酸のジュースを入れ乾杯をする。
「ちほさんはお酒は飲まないんですか?」
「ん?うん。あんまり飲まない。飲めないこともないけど、ジュースの方が美味しいねぇ。」
「へぇ。大人は皆お酒が好きなのかと思ってました。」
その言葉に、自分は大人認定されているこだと苦笑を浮かべた。
「確かに。わたしも昔は思ってた。けど、お酒はそんなにかなぁ。だから、ビールを美味しそうに飲む人が羨ましい。」
「え?」
「なんか、かっこよくない?ビール飲んで、っか~!って言ってるおっさんとか見ると、なんか羨ましくなる。」
「そう?ですか?」
「ならない?」
「その、、あまり。」
「そっかぁ。」
目線を上げて桜を見ると、風に揺れて花弁が舞った。
「綺麗だねぇ。」
「落ちたらぐちょぐちょですけどね。」
その言葉に、わたしは笑った。
「確かに。雨の日の後の桜は、地面で凄い事になっているもんね。」
「、、、はい。」
わたしは思わず考えが口に出た。
『誰が掃除してるんだろう。』
蓮と言葉が重なり、二人で笑った。
その後も他愛ない会話を続けながら、なんて素敵な休日なのだろうかと思った。
カッカッカッカッと、卵をかき混ぜる音。ジュッとフライパンで焼く音。
あれ、今日は遠足だったかなと夢うつつに母の事を思い出す。久しぶりに、母の卵焼きが食べたいなと思い目を覚ます。
目をこすり、ゆっくりと意識が覚醒しだすと今日は花見に行こうと蓮と話をしていた事を思い出して慌てて起き上がるとキッチンへ向かった。
「おはよう!ごめん。もうお弁当作り始めてる!?」
顔も洗わないでシャツにズボン姿のままでそう言うと、蓮は驚いたように目を丸くして言った。
「ごめんなさい。起こしましたか?」
「え?いや、起こしてくれたら手伝うのに!」
「いや、ちほさん仕事頑張っているし、、その、、ぼくは何も出来ないから。」
その言葉に胸が苦しくかる。なんでそんな事を言うのだろうか。
「蓮くんは、、何も出来ないなんてことはない。わたしより確実に良いお嫁さんになれるよ。」
「え?」
見当違いのことを言ってしまい、なんと伝えればいいのかと困ると蓮はクスクスと笑った。
「良いお嫁さんか。、、なれるかな?」
その笑顔が可愛らしくて、胸がきゅんとなる。この可愛らしい子はなんなのだろうか。この子が親戚をたらい回された意味がわからない。
「なれるよ!わたしが保証する。」
「ふふ。ありがとうございます。ちほさん、お弁当もうすぐ出来ますから、先に顔とか洗ってきていいですよ。ふふ。ここ、寝癖がついてます。重力無視してますね。」
「え?うそ。わぁ。本当だ。爆発してる。」
わたしは蓮の言葉に甘えて身嗜みを整えると服を着替える。
今日は春らしくワンピースを着るとうっすらとメイクをする。
鏡の前で一周くるりと回ってみてニコッと笑って出来上がりだ。今日のわたしのテーマは『春の妖精』ふふ。自分の心の中では正直にいよう。他人にはそんな乙女チックな内心は言えない。
「蓮くん。本当にありがとうね。」
キッチンに戻り蓮に笑顔を向けると、こちらを見た蓮が動きを止めた。
じっとわたしを見て、はっとしたように顔をそらす。
「き、、今日は、天気が良くて良かったですね。」
「うん。楽しみだね。」
二人でその後は簡単に朝食を済ませた。
せっかく蓮が早くにお弁当を作ってくれたので、蓮にこの近辺を散歩がてら紹介して歩くことになった。
お弁当等は家においたまま、二人で外に出た。
柔らかな太陽の日差しも、温かな風も心地よく、ピクニック日和である。
家の周りや、ご近所さんの話、近くにある公共施設などを紹介して歩き、家帰る。
そして、お弁当にシート、水筒などを持って公園へと向かった。
公園には葉桜になっても同じように花見をしている人々はいて、少しほっとした。わたし達だけだとなんだか恥ずかしい。
「ちほさん、あっちの桜、まだ残ってますよ。」
公園の奥の方に、少し小さめの桜の木があり、その木にはまだ桜がかなり残っていた。奥の方の小さな木だからあまり人もいない。
二人でその木の下にシートを敷き、お弁当やこの日の為に事前に買っておいたお菓子や飲み物なども準備する。
二人でコップに炭酸のジュースを入れ乾杯をする。
「ちほさんはお酒は飲まないんですか?」
「ん?うん。あんまり飲まない。飲めないこともないけど、ジュースの方が美味しいねぇ。」
「へぇ。大人は皆お酒が好きなのかと思ってました。」
その言葉に、自分は大人認定されているこだと苦笑を浮かべた。
「確かに。わたしも昔は思ってた。けど、お酒はそんなにかなぁ。だから、ビールを美味しそうに飲む人が羨ましい。」
「え?」
「なんか、かっこよくない?ビール飲んで、っか~!って言ってるおっさんとか見ると、なんか羨ましくなる。」
「そう?ですか?」
「ならない?」
「その、、あまり。」
「そっかぁ。」
目線を上げて桜を見ると、風に揺れて花弁が舞った。
「綺麗だねぇ。」
「落ちたらぐちょぐちょですけどね。」
その言葉に、わたしは笑った。
「確かに。雨の日の後の桜は、地面で凄い事になっているもんね。」
「、、、はい。」
わたしは思わず考えが口に出た。
『誰が掃除してるんだろう。』
蓮と言葉が重なり、二人で笑った。
その後も他愛ない会話を続けながら、なんて素敵な休日なのだろうかと思った。
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