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十七話 えっと、ご愁傷様です?
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イーサンの腕の中はとても安心が出来た。それと同時に、颯爽と自分を助けに来てくれたイーサンが、かっこよく見えて、ルナの頬は赤く染まる。
「サイラス。お前はなんと愚かなんだろうね」
「お、叔父上どうして」
「今日に限ってお前がルナ嬢に会いに来ていたとは、誤算だったよ」
「どういう意味ですか!? それに、僕達がどうすごそうと勝手では? 僕達は婚約者同士ですよ?」
「ルナ嬢とサイラスとの婚約は破棄された」
「は?」
「え?」
その言葉には、ルナもサイラスも目を丸くする。
本人達の知らない場所でまさか婚約が破棄そされるとは思ってもみなかったのである。
「今日はそのことについてルナ嬢に説明する予定だったのだが、サイラスまで私が説明することになるとは予定外だよ。けれど、お前がまさかこのような暴挙に出るとは、はぁ、王族として恥ずかしい。とにかく一度場を整える。いいな」
サイラスに圧力をかけると、サイラスは小さく頷いた。
その後、ルナはイーサンと共に馬車に乗り、サイラスは馬にて王宮へと帰る。
ルナは一体何がどうなっているのだろうかと頭の中で考えながらも、ふと、未だに繋がれる手が気になり始めた。
イーサンの手は大きく、そして少し冷たかった。
ルナは自分の手が汗をかいてくるのではないかと、不安になり、どうやって手を離そうかとも考えるが、離すのが惜しいような気もしてそわそわとし始めた。
その事にイーサンは気づくと、首を傾げた。
「どうかした? まさか、どこか怪我でも?」
「あ、いえ。違います。その……手を」
「ん?」
「だから、手を」
顔を赤らめるルナの姿を、微笑ましげに見つめるイーサンに、ルナはどうにか手を離してと言おうと思ったが恥ずかしくなり言えないのだ。
すると、そんなルナの心を見透かすように、ルナの手をぎゅっとイーサンは握ると言った。
「私が繋いでおきたいんだ。城までの間、だめかな?」
美しい顔でそう言われてしまえば、ダメとは言えない。
ルナは邪念を振り払うようにぶんぶんと頷くと、無心であろうとした。
しかし、そんな心など、すぐにイーサンに振り回されてしまう。
「ルナ嬢の手は、温かいね」
その一言で、顔はゆでだこのように赤くなり、ルナは恨みがましい目でイーサンを見た。
「殿下は、もう少しご自分の発言と行動を、その自重されるべきです。その、殿下ほど見目麗しい方にそのように言われては……その、あらぬ誤解を生みます」
イーサンはルナの言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべると、噴き出すように笑った。
「はははっ! そんなことを言うのは、君くらいのものだよ」
「? いえ、そんなことはないかと」
「そんなことあるよ。……はぁ。知ってる? 私のこの外見を見ても驚かないのも、一歩引いてしまわないのも、家族と、君くらいのものだ」
「え?」
「うん。家族以外にそんな反応されてしまえば、惹かれてしまうのは当たり前だよね」
「は?」
イーサンは両手でぎゅっとルナの手を取ると、こてんと小首を傾げて言った。
「迷惑かな?」
「いえ! そのようなことは! 滅相もないです!」
条件反射のようにルナがそう叫べば、イーサンは楽しそうに笑い声を上げる。そして一息ついた後に、小さな声で呟いた。
「もう、逃がしてあげられそうにないや……ごめんね」
「え?」
イーサンはにっこりとほほ笑むと、ルナの頭を優しく撫でた。
「そのかわり、ずっと大切にするからね?」
「? ありがとうございます?」
何のことだろうと思いながらも、ルナは頭を撫でられると言うのはこんなにも心地よい物なのだなと、そんなことを思っていた。
「サイラス。お前はなんと愚かなんだろうね」
「お、叔父上どうして」
「今日に限ってお前がルナ嬢に会いに来ていたとは、誤算だったよ」
「どういう意味ですか!? それに、僕達がどうすごそうと勝手では? 僕達は婚約者同士ですよ?」
「ルナ嬢とサイラスとの婚約は破棄された」
「は?」
「え?」
その言葉には、ルナもサイラスも目を丸くする。
本人達の知らない場所でまさか婚約が破棄そされるとは思ってもみなかったのである。
「今日はそのことについてルナ嬢に説明する予定だったのだが、サイラスまで私が説明することになるとは予定外だよ。けれど、お前がまさかこのような暴挙に出るとは、はぁ、王族として恥ずかしい。とにかく一度場を整える。いいな」
サイラスに圧力をかけると、サイラスは小さく頷いた。
その後、ルナはイーサンと共に馬車に乗り、サイラスは馬にて王宮へと帰る。
ルナは一体何がどうなっているのだろうかと頭の中で考えながらも、ふと、未だに繋がれる手が気になり始めた。
イーサンの手は大きく、そして少し冷たかった。
ルナは自分の手が汗をかいてくるのではないかと、不安になり、どうやって手を離そうかとも考えるが、離すのが惜しいような気もしてそわそわとし始めた。
その事にイーサンは気づくと、首を傾げた。
「どうかした? まさか、どこか怪我でも?」
「あ、いえ。違います。その……手を」
「ん?」
「だから、手を」
顔を赤らめるルナの姿を、微笑ましげに見つめるイーサンに、ルナはどうにか手を離してと言おうと思ったが恥ずかしくなり言えないのだ。
すると、そんなルナの心を見透かすように、ルナの手をぎゅっとイーサンは握ると言った。
「私が繋いでおきたいんだ。城までの間、だめかな?」
美しい顔でそう言われてしまえば、ダメとは言えない。
ルナは邪念を振り払うようにぶんぶんと頷くと、無心であろうとした。
しかし、そんな心など、すぐにイーサンに振り回されてしまう。
「ルナ嬢の手は、温かいね」
その一言で、顔はゆでだこのように赤くなり、ルナは恨みがましい目でイーサンを見た。
「殿下は、もう少しご自分の発言と行動を、その自重されるべきです。その、殿下ほど見目麗しい方にそのように言われては……その、あらぬ誤解を生みます」
イーサンはルナの言葉に一瞬きょとんとした表情を浮かべると、噴き出すように笑った。
「はははっ! そんなことを言うのは、君くらいのものだよ」
「? いえ、そんなことはないかと」
「そんなことあるよ。……はぁ。知ってる? 私のこの外見を見ても驚かないのも、一歩引いてしまわないのも、家族と、君くらいのものだ」
「え?」
「うん。家族以外にそんな反応されてしまえば、惹かれてしまうのは当たり前だよね」
「は?」
イーサンは両手でぎゅっとルナの手を取ると、こてんと小首を傾げて言った。
「迷惑かな?」
「いえ! そのようなことは! 滅相もないです!」
条件反射のようにルナがそう叫べば、イーサンは楽しそうに笑い声を上げる。そして一息ついた後に、小さな声で呟いた。
「もう、逃がしてあげられそうにないや……ごめんね」
「え?」
イーサンはにっこりとほほ笑むと、ルナの頭を優しく撫でた。
「そのかわり、ずっと大切にするからね?」
「? ありがとうございます?」
何のことだろうと思いながらも、ルナは頭を撫でられると言うのはこんなにも心地よい物なのだなと、そんなことを思っていた。
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