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第5章 時は隔てる
第9話 ジネルウァとの再会
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5-9
「ね、ねぇ、二人とも? 魚、好きよね? 東へ行けば魚が沢山漁れる国があるわよ?」
「はぁぁぁぁ…………。まったく。もう一年は先延ばしにしてるじゃん。往生際が悪いよ!」
そんなこと言われましても……。
「姉様」
私の天使なら分かってくれますよね!
「諦める」
「……」
「あら? マスター? ……目の前で手を振っても反応がありません」
「そんなにショックなの!?」
「……はっ!」
何故、私がこのまま進むのを渋っているのか。それは、次の目的地が『吸血族』の国だからです。散々抵抗したのですが、もうですよ……。
「いや、だって、ね?」
「告白されて意識しだした結果会うことすら恥ずかしくなるって……お姉ちゃん、ホントだったら高校卒業する歳だよね?」
「ほら! こっち来るまでは男だった訳だし!」
前回はスズの事があったので、その辺はあまり考える余裕がありませんでしたし。そりゃあ正面からプロポーズ……(カァ……)……プロポーズされたので! 査定の様な事はしましたが。模擬戦を受けたのだって、スズを助けるのに最適解だったから以外にありませんし。
「ダウト! 絶対自分が戦いたかったのもある!」
「な、何のことかしら?」
「じとー……」
スズ、口で言ってます……可愛い。
「なっ! んんっ……。まぁいいけどさ、プロポーズされたって考えて顔真っ赤にしちゃって。お姉ちゃんももう乙女だね!」
にししっとスズは笑います。反撃ですか? 反撃ですね? 顔赤いですよ?
「マスター、スズ様。イチャイチャされるのは構いませんが、間もなく到着ですよ」
「はーい」
「……コスコル。あなたにはイチャイチャ云々を言われたくなかったわ…………」
「ははは。それもそうですね」
くっ、この爽やか聖騎士め!
茶番はこの辺りにしておいて。
「茶番?」
茶番はこの辺りにしておいて。
前回は『大地の裂け目』から行くルートで『吸血族』の国に入りましたが、今回は地上にある街から入るルートです。
というか、本来はこっちが正規ルートですね。あっちは『吸血族』用の、謂わば勝手口ですから。
今回は、眷属と血約者とは言え、他種族が多いですからね。一応正面玄関から入るのです。
「我らが同胞よ。歓迎する」
「お疲れ様」
勝手口の時とはセリフが違いますが、此処でもちょっと特別扱いですね。
「さて、普通なら人を訪ねる時間ではないのだけれど、相手は夜に生きる種族よ。このまま王宮を目指しましょう」
私を同胞と言ったことから察せるように、門番は『吸血族』でした。つまり今は夜です。
「うん。わかった」
「りょーかーい」
眷属二人はお辞儀して続きます。……優雅です。
なお、馬車は既に預けてあります。〈ストレージ〉に入れてもよかったのですが、折角なのでお金を落として行くことにしたのです。
しかし、このお金が世界共通と言うのは本当に謎ですね……。
「それで、どこから行くの? その……」
「下の街よ。『吸血族』の国は街が此処と地下の一つしか無いから、『上の街』と『下の街』で事足りるの」
因みに、『吸血族』の国と先程から言っているように国名もありません。『吸血族』自体が少ないのと『始祖』を崇めるが故に、他に国を作ろうしないので十分なのです。だから『吸血族』には地名をつける習慣がないのだとか。
閑話休題。
「……姉様。諦めた?」
「アッサリ王宮目指しちゃうもんね」
「……もう、来たことは伝わっている筈よ。宿なんて取ろうものなら、直ぐに迎えが来るわ…………」
「あー早く会いたくて?」
……。
「??」
「図星だってさ」
……ノーコメントです!
「――て感じだったんだよね」
「ふふふ。アルジェの意外な一面だな。良い話が聞けた」
「ジル義兄さん、今度はお祖父ちゃんの話聞かせて!」
「……姉様、大丈夫?」
「…………少し、休ませてください」
はい。スズがジネルウァ様に私のありとあらゆる事――此処に来るまでの話から前世での話まで――話すものですから、精神ダメージ甚大です。恥ずか死にそうです。
口調? そんな物気にする余裕がないです。ジネルウァ様もハイドさんも何も言いませんし、問題ありません。
「……顔から湯気出てる。姉様、可愛い」
はぅ!?
何ですか今の天使の、いえ座天使(上から三番目)級の微笑みは!? こんなブランが居たなんて……!!
「あ、倒れた?」
「あー、うん。気にしなくていいよ、ブランちゃん」
「相変わらず、妹にメロメロの様だな」
「うーん、向こうにいた頃より重症化してる?」
「ジル義兄様。妹、達」
「おっと、そうであった」
◆◇◆
……ここは?
「あ、お姉ちゃん起きた」
「スズ……」
「ここはジル義兄が貸してくれた部屋だよ」
「……ああ。そう言えばブランの可愛さにやられたんだった」
というか、ジネルウァ様を義兄と呼ぶのは気が早いと思うですが……。
「気が早い、ね~。っと、これ以上は危険危険」
「……はぁ。後でジネルウァ様には謝らなくちゃね」
「そうだね。相変わらずって言われてたよ」
うっ……ま、まぁ、いえ、やはり何でもないです。
「それにしても、なんかシスコンが重症化してない?」
「仕方ないじゃない。突然死んで、スズや父さん母さんと引き離されたんだもの」
「まーね」
「そういうスズは、変わってないわね?」
「そりゃそうだよ。お姉ちゃん……お兄ちゃんが消えたって気づく前にこっちに召喚されたんだから」
ここにも、タイムラグ…………。
「そう……ブラン達は?」
「ブランちゃんはジル義兄さんと稽古してるよ。アリスとコスコルもそっちに行ってもらってる」
「ならそっちへ行きましょ」
「ん、おっけー」
さて、ジネルウァ様は前言ったこと、どれくらい直せてますかね。……今はあの事は考えない様にしましょう。その方が、良い筈です。
そう言えば、ブランもジネルウァ様のこと義兄様って呼んでましたね……。よし、千年位はフルボッコにしましょう。そうしましょう。まだそう呼ぶのは認めません!
「ね、ねぇ、二人とも? 魚、好きよね? 東へ行けば魚が沢山漁れる国があるわよ?」
「はぁぁぁぁ…………。まったく。もう一年は先延ばしにしてるじゃん。往生際が悪いよ!」
そんなこと言われましても……。
「姉様」
私の天使なら分かってくれますよね!
「諦める」
「……」
「あら? マスター? ……目の前で手を振っても反応がありません」
「そんなにショックなの!?」
「……はっ!」
何故、私がこのまま進むのを渋っているのか。それは、次の目的地が『吸血族』の国だからです。散々抵抗したのですが、もうですよ……。
「いや、だって、ね?」
「告白されて意識しだした結果会うことすら恥ずかしくなるって……お姉ちゃん、ホントだったら高校卒業する歳だよね?」
「ほら! こっち来るまでは男だった訳だし!」
前回はスズの事があったので、その辺はあまり考える余裕がありませんでしたし。そりゃあ正面からプロポーズ……(カァ……)……プロポーズされたので! 査定の様な事はしましたが。模擬戦を受けたのだって、スズを助けるのに最適解だったから以外にありませんし。
「ダウト! 絶対自分が戦いたかったのもある!」
「な、何のことかしら?」
「じとー……」
スズ、口で言ってます……可愛い。
「なっ! んんっ……。まぁいいけどさ、プロポーズされたって考えて顔真っ赤にしちゃって。お姉ちゃんももう乙女だね!」
にししっとスズは笑います。反撃ですか? 反撃ですね? 顔赤いですよ?
「マスター、スズ様。イチャイチャされるのは構いませんが、間もなく到着ですよ」
「はーい」
「……コスコル。あなたにはイチャイチャ云々を言われたくなかったわ…………」
「ははは。それもそうですね」
くっ、この爽やか聖騎士め!
茶番はこの辺りにしておいて。
「茶番?」
茶番はこの辺りにしておいて。
前回は『大地の裂け目』から行くルートで『吸血族』の国に入りましたが、今回は地上にある街から入るルートです。
というか、本来はこっちが正規ルートですね。あっちは『吸血族』用の、謂わば勝手口ですから。
今回は、眷属と血約者とは言え、他種族が多いですからね。一応正面玄関から入るのです。
「我らが同胞よ。歓迎する」
「お疲れ様」
勝手口の時とはセリフが違いますが、此処でもちょっと特別扱いですね。
「さて、普通なら人を訪ねる時間ではないのだけれど、相手は夜に生きる種族よ。このまま王宮を目指しましょう」
私を同胞と言ったことから察せるように、門番は『吸血族』でした。つまり今は夜です。
「うん。わかった」
「りょーかーい」
眷属二人はお辞儀して続きます。……優雅です。
なお、馬車は既に預けてあります。〈ストレージ〉に入れてもよかったのですが、折角なのでお金を落として行くことにしたのです。
しかし、このお金が世界共通と言うのは本当に謎ですね……。
「それで、どこから行くの? その……」
「下の街よ。『吸血族』の国は街が此処と地下の一つしか無いから、『上の街』と『下の街』で事足りるの」
因みに、『吸血族』の国と先程から言っているように国名もありません。『吸血族』自体が少ないのと『始祖』を崇めるが故に、他に国を作ろうしないので十分なのです。だから『吸血族』には地名をつける習慣がないのだとか。
閑話休題。
「……姉様。諦めた?」
「アッサリ王宮目指しちゃうもんね」
「……もう、来たことは伝わっている筈よ。宿なんて取ろうものなら、直ぐに迎えが来るわ…………」
「あー早く会いたくて?」
……。
「??」
「図星だってさ」
……ノーコメントです!
「――て感じだったんだよね」
「ふふふ。アルジェの意外な一面だな。良い話が聞けた」
「ジル義兄さん、今度はお祖父ちゃんの話聞かせて!」
「……姉様、大丈夫?」
「…………少し、休ませてください」
はい。スズがジネルウァ様に私のありとあらゆる事――此処に来るまでの話から前世での話まで――話すものですから、精神ダメージ甚大です。恥ずか死にそうです。
口調? そんな物気にする余裕がないです。ジネルウァ様もハイドさんも何も言いませんし、問題ありません。
「……顔から湯気出てる。姉様、可愛い」
はぅ!?
何ですか今の天使の、いえ座天使(上から三番目)級の微笑みは!? こんなブランが居たなんて……!!
「あ、倒れた?」
「あー、うん。気にしなくていいよ、ブランちゃん」
「相変わらず、妹にメロメロの様だな」
「うーん、向こうにいた頃より重症化してる?」
「ジル義兄様。妹、達」
「おっと、そうであった」
◆◇◆
……ここは?
「あ、お姉ちゃん起きた」
「スズ……」
「ここはジル義兄が貸してくれた部屋だよ」
「……ああ。そう言えばブランの可愛さにやられたんだった」
というか、ジネルウァ様を義兄と呼ぶのは気が早いと思うですが……。
「気が早い、ね~。っと、これ以上は危険危険」
「……はぁ。後でジネルウァ様には謝らなくちゃね」
「そうだね。相変わらずって言われてたよ」
うっ……ま、まぁ、いえ、やはり何でもないです。
「それにしても、なんかシスコンが重症化してない?」
「仕方ないじゃない。突然死んで、スズや父さん母さんと引き離されたんだもの」
「まーね」
「そういうスズは、変わってないわね?」
「そりゃそうだよ。お姉ちゃん……お兄ちゃんが消えたって気づく前にこっちに召喚されたんだから」
ここにも、タイムラグ…………。
「そう……ブラン達は?」
「ブランちゃんはジル義兄さんと稽古してるよ。アリスとコスコルもそっちに行ってもらってる」
「ならそっちへ行きましょ」
「ん、おっけー」
さて、ジネルウァ様は前言ったこと、どれくらい直せてますかね。……今はあの事は考えない様にしましょう。その方が、良い筈です。
そう言えば、ブランもジネルウァ様のこと義兄様って呼んでましたね……。よし、千年位はフルボッコにしましょう。そうしましょう。まだそう呼ぶのは認めません!
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