109 / 145
第6章 アーカウラの深き場所
第5話 混沌の守護者
しおりを挟む
6-5
時は進み、九十階層。立ちはだかるのは、Sランク下位の精霊獣。この階層の守護者です。
迫る白光を闇で打ち消し、光でヤツの手足を縛ります。
「ブランっ!」
「っ!」
精霊獣に抜群の相性を持つ『白梅』が閃き、カウンターの一撃は『黒月』が受け流しました。
私の声に反応してブランが斬りつけたのは、光と闇が出鱈目に入り混じった六本腕の人形で、名は『混沌半御霊』。
「さて、そろそろ本気でやろうかしら。ブラン、少し下がってなさい」
「……うん」
前方でこちらを警戒する混沌の身長は三メートルほどで魔物としては大きくはありません。
しかしその威圧感は大型の竜種に劣るものではなく、この無機質な水晶洞窟全体を己の威で塗りつぶさんとしているようです。
「お姉ちゃん頑張れー!」
八十階層で嵐の体を持った亀、『嵐亀御霊』と戦ったスズは今回見物。ブランにある程度経験を積ませたら、私たちどちらかの番というのが前回と今回ですね。
自然体で立ち、目の前の人形を睥睨します。
そして意識を切り替え、『ソード・オブ・ムーン=レンズ』を抜きました。
♰♰♰
混沌半御霊が動き出そうとした瞬間、刀を薙ぎながら後ろへ飛ぶ。
感じたのは、何かを斬り裂く感触と頬に水晶が当たる痛み。
そしてすぐ目の前には白黒斑模様の人形だ。
「ほんと速いね」
スズの声の言うように、コイツは速い。文字通り光の速さだ。
初動を見極めカウンターを叩き込むか、先ほどの様にどうにかして拘束しなければ威力のある攻撃は当てられないだろう。
地面を殴りつけた最下部の腕はそのままに、真ん中の腕が掴みかかってくる。
その腕を斬りつけつつ、左前へ。
そして斬り上げ。
一番上の腕が宙を舞った。
すぐさましゃがみ込んで足元を払う。
しかし一瞬で距離をとられてしまった。
払った足の勢いで立ち上がり、障壁で人形の拳を止める。
そして空間を固定。
コレによる拘束は一瞬が限界だ。だがその一瞬が欲しかった。
光と闇の杭がヤツの両足を穿って地に縫いとめる。
拘束力を向上する光属性と、奴自身の抵抗力を奪う闇属性。
そう簡単には抜け出せない。
ブランとスズには、今のままこの人形の核の位置を探知する事は不可能だろう。
だが私には『理外スキル』がある。
理外の力となった私の〈魔力視〉には、ハッキリと混沌半御霊の核の位置が映っている。
それでも、光速を持つこの人形の核を一撃で斬り裂く事は、難しい。
だからこの技を選ぶ。
――川上流 乱吹雪
横に縦に斜めにそしてまた縦に。
冷たい多重の剣線が人形の体を斬り刻み、核を誘導する。
四方を雪で固められたかの様に逃げ場を無くし、ヒト所に留まる核。
そして、その閃きが十を数えようとした時、遂に刀は人形の核を捉えた。
♰♰♰
「……ふぅ」
核が完全に消滅した事を確認して残心を解きます。
いやぁ、疲れました。
時間としてはごく僅かですが、めちゃくちゃ速いですからね。
ブランメインでやってる間からずっとこの勝ち筋を考えていた甲斐がありましたよ。
ひとまずブランをぎゅっとして癒されましょ「お姉ちゃん後ろ!!」
♰♰♰
スズの声と同時に〈超直感〉が働き、即座に斜め方向へ跳ぶ。
「くっ……!」
今私の片足を吹き飛ばした光線には見覚えがある。
消し飛んだ右足を再生しながら先ほどまで混沌半御霊が倒れていた位置を見れば、なるほど。確かにヤツは自身の足で立ち、此方へ両の手を突き出している。
(半御霊……。物質体と精神体両方を持ってるって事ね。油断したわ)
右膝をついたまま、接近して殴り掛かってきた人形の腕を捌く。
闇を纏った五本の腕による猛攻を何とか逸らし続けている内に右足の再生が終わった。
立ち上がる勢いで右膝を突き出し、人形の腹に入れる。
感触は明らかに違う。
人形はよろめき、そして次の瞬間には頭上で魔法を構築しているのだから始末に追えない。
相殺するよりは回避を選ぶ。
「っ!?」
魔法が完成する前に地を蹴りその場を離れようとしたが、それ叶わなかった。
見れば、私の足を斬り飛ばしたヤツの腕が掴み押さえつけている。
更に、頭上の人形の数が増えた。幾十もの極光が私を襲おうとしている。
――Sランクは伊達じゃないって事ね。
障壁は恐らく間に合わない。ならば耐えて見せよう。
刀を大剣形態に変形して盾にし、〈制魂解放〉で出力を上げた身体強化を防御力に全て回す。
その瞬間、幾重の光がふりそそいだ。
視界が消える。
時間としては刹那に満たない時間。
防御力を強化したとは言え、Sランククラスの切り札だ。
剣を持つ腕が焼け、その威力に少しずつ後退してしまう。
だが、耐え切った。
傷もすぐに再生できる範囲。
増えていた人形の数も元に戻っている。
ならばここで決めるより他にない。
頭上で技後の硬直状態にある混沌半御霊の体を拘束し、身動きを封じる。
器をある程度破壊すればそれで良いのだろうが、念には念を入れておこう。
刀形態に戻し、一つの術式を発動する。
「付与、[破壊]」
いつか迷宮の底で放った〈神聖魔法〉、[破壊]。
破壊の理を押し付ける魔法。
そして、放つ。
――川上流 龍神天翔
破壊の龍は獲物目掛けて駆け上がり、その全てを、噛み砕いた。
時は進み、九十階層。立ちはだかるのは、Sランク下位の精霊獣。この階層の守護者です。
迫る白光を闇で打ち消し、光でヤツの手足を縛ります。
「ブランっ!」
「っ!」
精霊獣に抜群の相性を持つ『白梅』が閃き、カウンターの一撃は『黒月』が受け流しました。
私の声に反応してブランが斬りつけたのは、光と闇が出鱈目に入り混じった六本腕の人形で、名は『混沌半御霊』。
「さて、そろそろ本気でやろうかしら。ブラン、少し下がってなさい」
「……うん」
前方でこちらを警戒する混沌の身長は三メートルほどで魔物としては大きくはありません。
しかしその威圧感は大型の竜種に劣るものではなく、この無機質な水晶洞窟全体を己の威で塗りつぶさんとしているようです。
「お姉ちゃん頑張れー!」
八十階層で嵐の体を持った亀、『嵐亀御霊』と戦ったスズは今回見物。ブランにある程度経験を積ませたら、私たちどちらかの番というのが前回と今回ですね。
自然体で立ち、目の前の人形を睥睨します。
そして意識を切り替え、『ソード・オブ・ムーン=レンズ』を抜きました。
♰♰♰
混沌半御霊が動き出そうとした瞬間、刀を薙ぎながら後ろへ飛ぶ。
感じたのは、何かを斬り裂く感触と頬に水晶が当たる痛み。
そしてすぐ目の前には白黒斑模様の人形だ。
「ほんと速いね」
スズの声の言うように、コイツは速い。文字通り光の速さだ。
初動を見極めカウンターを叩き込むか、先ほどの様にどうにかして拘束しなければ威力のある攻撃は当てられないだろう。
地面を殴りつけた最下部の腕はそのままに、真ん中の腕が掴みかかってくる。
その腕を斬りつけつつ、左前へ。
そして斬り上げ。
一番上の腕が宙を舞った。
すぐさましゃがみ込んで足元を払う。
しかし一瞬で距離をとられてしまった。
払った足の勢いで立ち上がり、障壁で人形の拳を止める。
そして空間を固定。
コレによる拘束は一瞬が限界だ。だがその一瞬が欲しかった。
光と闇の杭がヤツの両足を穿って地に縫いとめる。
拘束力を向上する光属性と、奴自身の抵抗力を奪う闇属性。
そう簡単には抜け出せない。
ブランとスズには、今のままこの人形の核の位置を探知する事は不可能だろう。
だが私には『理外スキル』がある。
理外の力となった私の〈魔力視〉には、ハッキリと混沌半御霊の核の位置が映っている。
それでも、光速を持つこの人形の核を一撃で斬り裂く事は、難しい。
だからこの技を選ぶ。
――川上流 乱吹雪
横に縦に斜めにそしてまた縦に。
冷たい多重の剣線が人形の体を斬り刻み、核を誘導する。
四方を雪で固められたかの様に逃げ場を無くし、ヒト所に留まる核。
そして、その閃きが十を数えようとした時、遂に刀は人形の核を捉えた。
♰♰♰
「……ふぅ」
核が完全に消滅した事を確認して残心を解きます。
いやぁ、疲れました。
時間としてはごく僅かですが、めちゃくちゃ速いですからね。
ブランメインでやってる間からずっとこの勝ち筋を考えていた甲斐がありましたよ。
ひとまずブランをぎゅっとして癒されましょ「お姉ちゃん後ろ!!」
♰♰♰
スズの声と同時に〈超直感〉が働き、即座に斜め方向へ跳ぶ。
「くっ……!」
今私の片足を吹き飛ばした光線には見覚えがある。
消し飛んだ右足を再生しながら先ほどまで混沌半御霊が倒れていた位置を見れば、なるほど。確かにヤツは自身の足で立ち、此方へ両の手を突き出している。
(半御霊……。物質体と精神体両方を持ってるって事ね。油断したわ)
右膝をついたまま、接近して殴り掛かってきた人形の腕を捌く。
闇を纏った五本の腕による猛攻を何とか逸らし続けている内に右足の再生が終わった。
立ち上がる勢いで右膝を突き出し、人形の腹に入れる。
感触は明らかに違う。
人形はよろめき、そして次の瞬間には頭上で魔法を構築しているのだから始末に追えない。
相殺するよりは回避を選ぶ。
「っ!?」
魔法が完成する前に地を蹴りその場を離れようとしたが、それ叶わなかった。
見れば、私の足を斬り飛ばしたヤツの腕が掴み押さえつけている。
更に、頭上の人形の数が増えた。幾十もの極光が私を襲おうとしている。
――Sランクは伊達じゃないって事ね。
障壁は恐らく間に合わない。ならば耐えて見せよう。
刀を大剣形態に変形して盾にし、〈制魂解放〉で出力を上げた身体強化を防御力に全て回す。
その瞬間、幾重の光がふりそそいだ。
視界が消える。
時間としては刹那に満たない時間。
防御力を強化したとは言え、Sランククラスの切り札だ。
剣を持つ腕が焼け、その威力に少しずつ後退してしまう。
だが、耐え切った。
傷もすぐに再生できる範囲。
増えていた人形の数も元に戻っている。
ならばここで決めるより他にない。
頭上で技後の硬直状態にある混沌半御霊の体を拘束し、身動きを封じる。
器をある程度破壊すればそれで良いのだろうが、念には念を入れておこう。
刀形態に戻し、一つの術式を発動する。
「付与、[破壊]」
いつか迷宮の底で放った〈神聖魔法〉、[破壊]。
破壊の理を押し付ける魔法。
そして、放つ。
――川上流 龍神天翔
破壊の龍は獲物目掛けて駆け上がり、その全てを、噛み砕いた。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる