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第6章 アーカウラの深き場所
第7話 谷の底へ
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6-7
◆◇◆
♰♰♰
蒼く光る炎の矢が巨大な粘体生物の身体を穿ち、その背後の黒白斑模様をした大蜥蜴の頭部を焼き尽くす。
大渓谷の底を目指して崖沿いに進むこの階層は、百五階層。百階層の守護者であるライオンの姿をしたスライム、『粘体獣王』を降したその先だ。
「ブランちゃん、そっち行ったよ!」
視界の端でブランが大蜥蜴こと死毒大蜥蜴に仕込み針を投げたのが見えた。
アレは様々な術式を組み込んだ品。A+ランクの死毒大蜥蜴にも十分に効果があるだろう。
後方に、おそらくブランが投げた針が起こしたであろう爆発音を聞きながら私は大剣を振る。
振り上げられた白い巨剣は翼のある蛇、翼蛇の首を確かに捉え、引き裂いた。
谷の底へと翼蛇が落ちていくのを確認する暇もなく、迫りくる死毒大蜥蜴に向き直る。
そして振り上げたままの大剣を少し身体をずらしながら振り下ろせば、大蜥蜴の左側の足が胴から別たれた。
片側の足を無くした蜥蜴は、走る勢いのまま後方にすり抜けていく。
「スズ」
「まっかせて! っと」
♰♰♰
「……ふぅ」
後続は無さそうなので、剣を〈ストレージ〉にしまいます。
「これは次の守護者も厄介そうね」
「スライムなのは確定でしょ? その時点でうへぇって感じだよ」
振り返ってそう声をかければ、双剣に[浄化]を掛けながらスズが近づいてきます。
「それはそうね」
ブランも同様に近づいてきたので、労っておきましょう。
「ブランもお疲れ様。もうAランク相手なら大丈夫そうね」
「うん。でも、姉様たちみたいに一撃は無理」
確かに、ブランが死毒大蜥蜴を倒すのに、仕込み針を含めて複数発の攻撃を必要としています。
「あなたの歳から考えたら十分よ。武器の性質もあるのだし」
「その内小太刀だけで真っ二つにできるようになるって!」
この世界ならスキルによる補正もありますし、それほど遠い未来ではないでしょう。
「……うん」
「魔法を使って工夫した方が早いかもしれないけどね」
「そうね。まぁとにかく、移動しましょう。次の階層も遠くはないわ」
◆◇◆
百一階層から谷の底、つまり百十階層を望む事は叶いませんでした。
そして今、崖の下を覗き込むと、青い流れと疎らに存在する緑が確かに見えます。
やっと来ましたね。百九階層です。
「なんか飛び降りれそうなんだけどね」
「止めておきなさい。階層の境は時空が歪んでるから、いつの、どこに飛ばされるかわかったもんじゃないわ」
「はーい」
同様に渓谷の底を覗き込んでいた二人を連れ、黒土色の道を進みます。
先頭は〈罠察知〉のスキルを持つブラン。
迷宮の仕掛けた罠は彼女に任せ、私たちは頭上に意識を向けます。時たま、壁を這う死毒大蜥蜴が岩を落としてきますからね。
魔物に対する警戒は、訓練を優先してそれぞれで行なっています。
道中出会う敵に真新しいモノはいません。
殆ど作業の様に千切っては投げ、千切っては投げです。
ブランも動きに慣れたのか、急所を的確につける様になり、必要手数が減っています。
左手に薄ら霧の立ち籠める渓谷の底を眺めること数時間。渓谷最後の階段に到着です。
戦闘を挟みながらとは言え、一本道なのですぐでしたね。
この階層になるとブランのスキルレベルでは対応しきれない事もありますが、その時は漢解除するだけでしたし。
「一旦休憩して行く?」
「んー、ボス部屋の前で良いんじゃないかな」
「うん。私も平気」
「ならそのまま行きましょうか」
崖の高さより明らかに低い階段を降りると、川の始点。滝壺のすぐ側に出てきました。
滝壺はテニスコートが二面入る程度の大きな池になっており、周囲には数本の木が生えています。
「こんな滝あったっけ?」
「無かった」
ブランが首を振って否定します。
「まぁ気にしても仕方ないわ。迷宮の中だもの。それより今は……」
「そうだね」
「ん、頑張る」
その瞬間、池は大きな水柱を上げ、地にいくつもの影が降ります。
「数は……各属性の巨大粘体が六、死毒大蜥蜴五、翼蛇が九。隠れている個体無し!」
「正解よ、ブラン」
「一人六、七体? 余裕!」
どうやらボスの部屋はあの滝の向こう側にあるようですが、そこに行くにはコイツらが邪魔です。
ならば斬り捨てて行くのみ。
それぞれが剣を取り出し、構えます。
「さぁ、行くわよ!」
その声と共に私は、魔物の群れの中へと飛び込んで行くのでした。
◆◇◆
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蒼く光る炎の矢が巨大な粘体生物の身体を穿ち、その背後の黒白斑模様をした大蜥蜴の頭部を焼き尽くす。
大渓谷の底を目指して崖沿いに進むこの階層は、百五階層。百階層の守護者であるライオンの姿をしたスライム、『粘体獣王』を降したその先だ。
「ブランちゃん、そっち行ったよ!」
視界の端でブランが大蜥蜴こと死毒大蜥蜴に仕込み針を投げたのが見えた。
アレは様々な術式を組み込んだ品。A+ランクの死毒大蜥蜴にも十分に効果があるだろう。
後方に、おそらくブランが投げた針が起こしたであろう爆発音を聞きながら私は大剣を振る。
振り上げられた白い巨剣は翼のある蛇、翼蛇の首を確かに捉え、引き裂いた。
谷の底へと翼蛇が落ちていくのを確認する暇もなく、迫りくる死毒大蜥蜴に向き直る。
そして振り上げたままの大剣を少し身体をずらしながら振り下ろせば、大蜥蜴の左側の足が胴から別たれた。
片側の足を無くした蜥蜴は、走る勢いのまま後方にすり抜けていく。
「スズ」
「まっかせて! っと」
♰♰♰
「……ふぅ」
後続は無さそうなので、剣を〈ストレージ〉にしまいます。
「これは次の守護者も厄介そうね」
「スライムなのは確定でしょ? その時点でうへぇって感じだよ」
振り返ってそう声をかければ、双剣に[浄化]を掛けながらスズが近づいてきます。
「それはそうね」
ブランも同様に近づいてきたので、労っておきましょう。
「ブランもお疲れ様。もうAランク相手なら大丈夫そうね」
「うん。でも、姉様たちみたいに一撃は無理」
確かに、ブランが死毒大蜥蜴を倒すのに、仕込み針を含めて複数発の攻撃を必要としています。
「あなたの歳から考えたら十分よ。武器の性質もあるのだし」
「その内小太刀だけで真っ二つにできるようになるって!」
この世界ならスキルによる補正もありますし、それほど遠い未来ではないでしょう。
「……うん」
「魔法を使って工夫した方が早いかもしれないけどね」
「そうね。まぁとにかく、移動しましょう。次の階層も遠くはないわ」
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百一階層から谷の底、つまり百十階層を望む事は叶いませんでした。
そして今、崖の下を覗き込むと、青い流れと疎らに存在する緑が確かに見えます。
やっと来ましたね。百九階層です。
「なんか飛び降りれそうなんだけどね」
「止めておきなさい。階層の境は時空が歪んでるから、いつの、どこに飛ばされるかわかったもんじゃないわ」
「はーい」
同様に渓谷の底を覗き込んでいた二人を連れ、黒土色の道を進みます。
先頭は〈罠察知〉のスキルを持つブラン。
迷宮の仕掛けた罠は彼女に任せ、私たちは頭上に意識を向けます。時たま、壁を這う死毒大蜥蜴が岩を落としてきますからね。
魔物に対する警戒は、訓練を優先してそれぞれで行なっています。
道中出会う敵に真新しいモノはいません。
殆ど作業の様に千切っては投げ、千切っては投げです。
ブランも動きに慣れたのか、急所を的確につける様になり、必要手数が減っています。
左手に薄ら霧の立ち籠める渓谷の底を眺めること数時間。渓谷最後の階段に到着です。
戦闘を挟みながらとは言え、一本道なのですぐでしたね。
この階層になるとブランのスキルレベルでは対応しきれない事もありますが、その時は漢解除するだけでしたし。
「一旦休憩して行く?」
「んー、ボス部屋の前で良いんじゃないかな」
「うん。私も平気」
「ならそのまま行きましょうか」
崖の高さより明らかに低い階段を降りると、川の始点。滝壺のすぐ側に出てきました。
滝壺はテニスコートが二面入る程度の大きな池になっており、周囲には数本の木が生えています。
「こんな滝あったっけ?」
「無かった」
ブランが首を振って否定します。
「まぁ気にしても仕方ないわ。迷宮の中だもの。それより今は……」
「そうだね」
「ん、頑張る」
その瞬間、池は大きな水柱を上げ、地にいくつもの影が降ります。
「数は……各属性の巨大粘体が六、死毒大蜥蜴五、翼蛇が九。隠れている個体無し!」
「正解よ、ブラン」
「一人六、七体? 余裕!」
どうやらボスの部屋はあの滝の向こう側にあるようですが、そこに行くにはコイツらが邪魔です。
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