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第6章 アーカウラの深き場所
第8話 理を生む魔眼
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7-8
♰♰♰
薙ぎ払われたその前脚によって何十本もの木がなぎ倒される。
「自然破壊がどうとか言ってたのはどうしたのよ……」
そんな事を呟いてみたが、やはり種としての強さ、体の大きさというのは侮れない。まともに食らえばただでは済まないだろう。
レテレノが振り切ろうとしている左脚を水蒸気爆発で押し、バランスを崩させようとする。
目論見は、成功半分失敗半分と言ったところか。
多少押し込めたから次の動作は遅らせられたが、バランスを崩したと言う程ではない。
まぁ十分だ。
その隙に走って追いついていたスズとブランが攻撃を仕掛ける。
初撃はブラン。
白と黒の二太刀はもたげられた首と胴体の付け根を斬りつける。
跳び上がりながらの一太刀目は確かにその巨体を引き裂いたが、二太刀目は上半分を覆う鱗に阻まれ、ダメージにならない。
唯一肉を引き裂いた一太刀目の傷も浅く、既に治り始めている。
それを見ていたスズは[光輝く剣]を発動してブランの二太刀目と同じ場所を切りつけた。
「カッタい!」
つけられた傷の深さは、剣の長さ程。
コレは骨が折れそうだ。
「ブラン! アナタはサポートに回りなさい!」
「うんっ……!」
次の瞬間全身を襲った悪寒。
これは、〈隠蔽〉を抜いて鑑定されている時の感覚だ。
「我の鱗を切りさくのは何者かと思って視てみれば、貴様ら、【吸血族の始祖】とその契約者ではないか! 何故人間の味方をする!?」
(ふむ……?)
「アナタと同じような理由よ!」
「フンッ戯言を!」
向かって右側、始めに魔力が集まっていた眼の隣の眼が光ると、私のいる場所に竜巻が発生した。
巻き込まれては面倒だ。転移して避ける。
あの九つの眼は全て違う能力なのだろうか?
〈鑑定眼〉で探りたい所だが、スキルではない魔眼を調べるなら少し時間がかかる。今はその余裕が無い。
転移した先は、右前脚に三本ある指の内の、その一本の真上。
本気で強化した一撃を叩き込む。
「キィィィァァアアッ!?」
流石に神話級に進化しただけの事はある。
私の愛剣はレテレノの大木三本分はある指を、その三分の二程まで深く切り裂いた。
更に小規模で[恒星の怒り]を発動する。
座標は、分断したばかりの指の裂け目。
小規模とは言え、核爆発だ。
その爆風は、辛うじて繋がるだけの指を引き千切るのに十分な威力があった。
吹き飛んだヤツの指を〈ストレージ〉に収納して即時再生を防ぐ。
粘体のように切れ端が抵抗してくる事が無いから出来る事だ。
指一本落としただけだが、それだけでもバランスは大きく狂う。これで機動面は潰せたと考えて良いだろう。
「小癪な真似を!」
そんな声と共にまたヤツの目の一つが光り、私目掛けて炎の雨が襲いかかって来た。
今度は額にある内の右の眼の力のようだ。
不思議な事だが、炎が森の木々に燃え移る事はない。
しかしこれはそういうモノだと思うしかない。体質の魔眼の力というのは世の理そのモノだからだ。
魔眼の燃費は頗る良い。殆どノーコストと言って良い。
このまま避け続けていても途切れる事は無いだろう。
だからレテレノの巨体のすぐ下に入り込み、視界から外れる。
スズとブランの姿は見えないが、気配を探る限り後ろ脚の方にいる様だ。徹底的に足を潰す気だろう。
それに協力するか。
スズ達がいるのと反対側の脚を目指して走る。
私を覆っていた影が突然消えた。
レテレノが後脚で立ち上がっていく。
そして一歩を踏み出し、尾で薙ぎ払って来た。
跳んで躱すには太すぎて、そして速すぎる。
また転移をして躱す。
スズとブランの気配が尾の進む方向に高速で移動している。
吹き飛ばされたらしい。
だが障壁で直撃は免れている筈。
そちらへ意識を向けさせない為にも攻撃を優先しよう。
転移した地点で翼を展開し、薙ぎ倒された木々のはるか上空を行く。
またレテレノの向かって右側の、真ん中の眼が光った。
暴風が私を阻む。
更にレテレノが次々と大木を投げつけて来た。
上へ下へと躱し、時には両断してレテレノに接近する。
「フッ」
レテレノの魔力が動いた。
私に向かって来ていた木々が伸び、私を包み込む。
後ろを見ると、先程躱した木が絡み合って繋がり、檻の一部となっている。
初めからコレが狙いだったようだ。
木の檻の隙間からレテレノの尾が叩きつけられようとしているののが見えた。
転移は……封じられている。木に対して転移封じの効果を〈付与〉しているらしい。
仕方がない。
脱出を諦め、回復の準備を整えながら大剣を盾に防御体勢を取る。
と、目の前で尾が逸れた。
木の檻の左半分を破壊しながら地面へと向かっていく。
魔力の痕跡を見るにブランの魔法か。
「助かったわ!」
障壁だけに関して言えば、私たち三人の中でブランが一番の使い手だ。
不安のあった魔力量も迷宮攻略で十分に伸びた。
今のブランならただ尾を叩きつけるだけの攻撃を逸らすくらい訳ないだろう。
私はレテレノ自身の手で破壊された部分から飛び出す。
その時スズが尾を連続で切りつけているのが見えた。
ヤツの脚二本を合わせたよりも太い尾を切り飛ばすには至らないが、再生にはそれなりに魔力を使う。加えて血も流すので体力も奪える筈だ。
殆ど更地になってしまった樹海の上空を飛び、更に迫る。
恐らく、レテレノのランクとしては始祖粘体皇より少し上くらい。
実戦経験のある分厄介さは格段に上だが、粘体ほどの再生力はない。
地道に削れる以上、焦らなければどうにかなるだろう。
牽制に[恒星の裁き]を放ち、その隙にヤツの胸元へと辿り着いた。
核爆発による砲撃は岩の障壁で防がれてしまったが、想定内だ。
一瞬だけ〈制魂解放〉の出力を上げ、『建御雷』の体勢に入る。
しかし何だ? この引っかかる感じは。
疑念は一先ず頭の片隅に置き、宙空に作った障壁を蹴る。
更に重力に干渉して重力加速度を増し、翼で推進力を生んだ。
その様はまさに落雷だろう。
万物の母の名を関する私の剣は、分厚い地竜の皮膚を引き裂き内臓を露わにする。
「キィィィァアハッ!?」
オマケで魔法を準備する。
しかし頭上から影が迫って来たので、慌てて離れた位置へと転移した。
どうやら噛みつこうとしていたようだ。
いくら私の再生力でも、アレに噛まれたらひとたまりも無い。
「[再生]」
レテレノは〈神聖魔法〉によって腹の傷を塞ぐ。
ついでに指も治っている。
ヤツの今の魔力量は……一割減ったかどうか。
まだまだ時間がかかりそうだ。
♰♰♰
薙ぎ払われたその前脚によって何十本もの木がなぎ倒される。
「自然破壊がどうとか言ってたのはどうしたのよ……」
そんな事を呟いてみたが、やはり種としての強さ、体の大きさというのは侮れない。まともに食らえばただでは済まないだろう。
レテレノが振り切ろうとしている左脚を水蒸気爆発で押し、バランスを崩させようとする。
目論見は、成功半分失敗半分と言ったところか。
多少押し込めたから次の動作は遅らせられたが、バランスを崩したと言う程ではない。
まぁ十分だ。
その隙に走って追いついていたスズとブランが攻撃を仕掛ける。
初撃はブラン。
白と黒の二太刀はもたげられた首と胴体の付け根を斬りつける。
跳び上がりながらの一太刀目は確かにその巨体を引き裂いたが、二太刀目は上半分を覆う鱗に阻まれ、ダメージにならない。
唯一肉を引き裂いた一太刀目の傷も浅く、既に治り始めている。
それを見ていたスズは[光輝く剣]を発動してブランの二太刀目と同じ場所を切りつけた。
「カッタい!」
つけられた傷の深さは、剣の長さ程。
コレは骨が折れそうだ。
「ブラン! アナタはサポートに回りなさい!」
「うんっ……!」
次の瞬間全身を襲った悪寒。
これは、〈隠蔽〉を抜いて鑑定されている時の感覚だ。
「我の鱗を切りさくのは何者かと思って視てみれば、貴様ら、【吸血族の始祖】とその契約者ではないか! 何故人間の味方をする!?」
(ふむ……?)
「アナタと同じような理由よ!」
「フンッ戯言を!」
向かって右側、始めに魔力が集まっていた眼の隣の眼が光ると、私のいる場所に竜巻が発生した。
巻き込まれては面倒だ。転移して避ける。
あの九つの眼は全て違う能力なのだろうか?
〈鑑定眼〉で探りたい所だが、スキルではない魔眼を調べるなら少し時間がかかる。今はその余裕が無い。
転移した先は、右前脚に三本ある指の内の、その一本の真上。
本気で強化した一撃を叩き込む。
「キィィィァァアアッ!?」
流石に神話級に進化しただけの事はある。
私の愛剣はレテレノの大木三本分はある指を、その三分の二程まで深く切り裂いた。
更に小規模で[恒星の怒り]を発動する。
座標は、分断したばかりの指の裂け目。
小規模とは言え、核爆発だ。
その爆風は、辛うじて繋がるだけの指を引き千切るのに十分な威力があった。
吹き飛んだヤツの指を〈ストレージ〉に収納して即時再生を防ぐ。
粘体のように切れ端が抵抗してくる事が無いから出来る事だ。
指一本落としただけだが、それだけでもバランスは大きく狂う。これで機動面は潰せたと考えて良いだろう。
「小癪な真似を!」
そんな声と共にまたヤツの目の一つが光り、私目掛けて炎の雨が襲いかかって来た。
今度は額にある内の右の眼の力のようだ。
不思議な事だが、炎が森の木々に燃え移る事はない。
しかしこれはそういうモノだと思うしかない。体質の魔眼の力というのは世の理そのモノだからだ。
魔眼の燃費は頗る良い。殆どノーコストと言って良い。
このまま避け続けていても途切れる事は無いだろう。
だからレテレノの巨体のすぐ下に入り込み、視界から外れる。
スズとブランの姿は見えないが、気配を探る限り後ろ脚の方にいる様だ。徹底的に足を潰す気だろう。
それに協力するか。
スズ達がいるのと反対側の脚を目指して走る。
私を覆っていた影が突然消えた。
レテレノが後脚で立ち上がっていく。
そして一歩を踏み出し、尾で薙ぎ払って来た。
跳んで躱すには太すぎて、そして速すぎる。
また転移をして躱す。
スズとブランの気配が尾の進む方向に高速で移動している。
吹き飛ばされたらしい。
だが障壁で直撃は免れている筈。
そちらへ意識を向けさせない為にも攻撃を優先しよう。
転移した地点で翼を展開し、薙ぎ倒された木々のはるか上空を行く。
またレテレノの向かって右側の、真ん中の眼が光った。
暴風が私を阻む。
更にレテレノが次々と大木を投げつけて来た。
上へ下へと躱し、時には両断してレテレノに接近する。
「フッ」
レテレノの魔力が動いた。
私に向かって来ていた木々が伸び、私を包み込む。
後ろを見ると、先程躱した木が絡み合って繋がり、檻の一部となっている。
初めからコレが狙いだったようだ。
木の檻の隙間からレテレノの尾が叩きつけられようとしているののが見えた。
転移は……封じられている。木に対して転移封じの効果を〈付与〉しているらしい。
仕方がない。
脱出を諦め、回復の準備を整えながら大剣を盾に防御体勢を取る。
と、目の前で尾が逸れた。
木の檻の左半分を破壊しながら地面へと向かっていく。
魔力の痕跡を見るにブランの魔法か。
「助かったわ!」
障壁だけに関して言えば、私たち三人の中でブランが一番の使い手だ。
不安のあった魔力量も迷宮攻略で十分に伸びた。
今のブランならただ尾を叩きつけるだけの攻撃を逸らすくらい訳ないだろう。
私はレテレノ自身の手で破壊された部分から飛び出す。
その時スズが尾を連続で切りつけているのが見えた。
ヤツの脚二本を合わせたよりも太い尾を切り飛ばすには至らないが、再生にはそれなりに魔力を使う。加えて血も流すので体力も奪える筈だ。
殆ど更地になってしまった樹海の上空を飛び、更に迫る。
恐らく、レテレノのランクとしては始祖粘体皇より少し上くらい。
実戦経験のある分厄介さは格段に上だが、粘体ほどの再生力はない。
地道に削れる以上、焦らなければどうにかなるだろう。
牽制に[恒星の裁き]を放ち、その隙にヤツの胸元へと辿り着いた。
核爆発による砲撃は岩の障壁で防がれてしまったが、想定内だ。
一瞬だけ〈制魂解放〉の出力を上げ、『建御雷』の体勢に入る。
しかし何だ? この引っかかる感じは。
疑念は一先ず頭の片隅に置き、宙空に作った障壁を蹴る。
更に重力に干渉して重力加速度を増し、翼で推進力を生んだ。
その様はまさに落雷だろう。
万物の母の名を関する私の剣は、分厚い地竜の皮膚を引き裂き内臓を露わにする。
「キィィィァアハッ!?」
オマケで魔法を準備する。
しかし頭上から影が迫って来たので、慌てて離れた位置へと転移した。
どうやら噛みつこうとしていたようだ。
いくら私の再生力でも、アレに噛まれたらひとたまりも無い。
「[再生]」
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