12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜(カクヨム版)

嘉神かろ

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第3章 二つの輝き

第4話 王都

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3-4
 ヒューズスロープを出発してから五日が経ちました。私たちは今、王都に入る検問待ちをしているところです。
 本来時間を要する峠を〈飛行〉でひとっ飛びしたので、のんびり歩いていたにもかかわらず大幅に時間短縮できたんです。
 フラグは立っていなかったようですね……。



 リベルティア王国の王都リベルティア。
 世界最大の領土を持つ大国の首都に相応しい威容と美しさを誇る街です。
 対竜種を想定したリベリアには劣れど、守りの要となる外壁は堅牢で、生半可な攻撃では傷一つ付きません。更にはそれを境界として街全体を覆う地脈を利用した魔法障壁。これを破るには至近距離から数十人の高位魔導師による儀式魔法が必要となるでしょう。
 しかし一定期間辺境に勤める義務をもつ王国軍は精強であり、そのような真似を許すはずがありません。
 まさに難攻不落。かつて未開地の目と鼻の先にあった頃の名残です。

 その圧巻の光景に惚けるブランを連れ、門をくぐれば、和と洋、中世と近現代の混じった不可思議な街並みが見えます。
 これは、この国を起こしたのが当時の【転生者】だったから。
 和と洋の其々を見れば、様々な種族に合わせた様式まで入り乱れています。
 奴隷であった多くの種族によって興された多民族、いえ、多種族国家ならではの工夫です。
 座敷が多いのは体格差のある種族が気兼ねなく交流するために初代国王が浸透させたからだとか。

 私の同胞は、当時の、この夢物語を実現させた。
 だからこそ、彼は『英雄王』と呼ばれ、今なお、王家は国民尊敬を集め続けているのです。

◆◇◆
「それじゃ、時間も微妙だし、先に宿を探しましょうか」
「うん、ギルドは明日」

 エドとセレーナにお勧めを聞いてみたのですが、行き着けの宿はあっても食事好きの私に勧められるところではないとのこと。
 エドはあまり食事には拘っていませんでしたからね。

 そういう訳で、その辺のお店で聞いてみましょうかね。そう思って目についた串焼きの屋台に近づきます。

「それ、二本もらえる?」
「へい!」

 逞しい体つきのおじさんが焼く串焼きの匂いを楽しみながら、本題です。

「ねえ、私たちさっき着いたところなんだけど、どこかいい宿知らない?」
「そうだなぁ、何か条件はあるかい?」

 串焼きからは目を離さず、そう聞いてきたので、食事が美味しくて安全な所と伝えます。

「なら、『キメラの宿』か『薬草乙女』、『竜垂庵』とかだな。『キメラの宿』はいろんな種族の伝統料理が食える。『薬草乙女』は山菜や香草料理が美味い! 『竜垂庵』は、ある程度しっかりした身分証がいる上に、他に比べて高くつくが、だいたい揃ってて全部美味い! 建国の頃からある歴史ある宿で、英雄王様は『温泉旅館』って呼んでたそうだ。安全性はどこでも保証するぜ?」

 ほうほう! 温泉旅館!

「その、『竜垂庵』はお座敷なのかしら?」
「そうそう、“和風”ってやつだ!」

 これは、そこ以外ありませんね!
 身分証?
 ギルドカードでダメならリベリアに転移して作ってもらいます!

「ええ、ありがとう、とても情報通なおじさん。、頑張ってね。ああ、そうそう、“自由な薔薇”に宜しくね」
「……おう!」

 串焼きを受け取り、満足げに頬張るブランを連れて『竜垂庵』を目指します。
 周囲を見れば、ゴミはほとんどなく、ショーウィンドウまであります。
 これは探索しがいがありますね!

「ブラン、途中気になるところがあれば寄って行きましょうか」
「うん!」

 耳をピコピコ、尻尾をユラユラさせて喜ぶ天使ちゃんです。ほんと、可愛いですね~。

 屋台のおじさんに聞いた道順をたどり、時々寄り道しながら歩くこと十分。周囲には大きな家が増えてきました。

「そういえば、姉様? “自由な薔薇”って何?」
「ふふふ、そのうちわかるわ。そのうちね」

 ブランはまったくわからないようで首を傾げています。
 あぁ、可愛いですね! バラしてもいいですが、サプライズです。
 どのように翻訳されてるかはわかりませんが、少なくとも意図は伝わってるはずです。そのうち知らせが来るでしょう。
                             
………
……

 
「と、ここね」
「……不思議な形の家」
「“和風”ってやつよ。~♪」

 あぁ、良いですね。懐かしいですね。

「さ、入りましょ」
「うん、。……姉様楽しそう」

◆◇◆
 アルジェたちが屋台を離れた後、男はいそいそと片付けを始めていた。

 そのまま屋台を〈ストレージ〉にしまい、移動を始める。
 始めは大通りを歩いていた男だが、途中で人通りのない道へ逸れ、一軒の家に入った。
 ごく普通の、何の変哲も無い家。その内装も、一見すれば王都の平均的な平民の家と変わりない。
 男は食料庫として使われる部屋に入り、灯の魔道具を操作した。
 すると、その部屋の壁が消え道が現れる。
 その隠し通路に男が何の気負いもなく入ると、また通路はふさがり、ただの壁となった。
 
………
……


「いやー、まさかバレるとは思いませんでした」
「ふふふ、流石ね」

 男は、かなり豪華であるが品のある落ち着いた内装の一室で、彼女に話しかける。
 女も突然話しかけられたにもかかわらず冷静なものだ。

「それで、彼女はいったい何者なんです? 僕、聞かされてないんですけど」
「当然よ、私が口止めしといたから」
「え、僕、それは仕事的にすっごく困るんですが?」
「知ってる」

 女の返答を聞いて、微妙な表情になる男。

「『狂戦姫』って知ってる?」
「それはもちろんって、彼女が?」
「顔は?」
「えっと、集めた情報だと時々青っぽく見える銀髪、色白、紫色の瞳、スタイル抜群な美女で特徴的なドレスを着てる冒険者……うん、何で気づかなかったんでしょう?」
「さあ? 貴方が無能だったんじゃない?」

 本気ではなく、からかい口調で言う女。

「その感じ、知っておられますよね?」
「ええ、〈隠蔽〉と〈隠密〉のレベルがかなり高いらしいわよ?」
「えー、僕らがわからないくらいですか? それ、本当にかなりですよね?」
「そうね」

 あっけらかんと言う女に、深いため息を吐く男。

「あれ? そう言えば『狂戦姫』って『吸血族』では?」
「真祖だって」
「あぁ、って、え!? なんでそんな大物がこんな所で冒険者やってるんです?」
「こんな所って……。まあいいけど、そこまでは知らないわ。できるなら調べなさい。仕事でしょ?」
「それもそうですね」
「ところで、いつまでその顔なの?」
「これ、気に入ってるですよ」

 にこにこ満面の笑みを浮かべるおっさん。
 どちらかと言えば強面なおっさんが女に向けてやると、女が顔を顰めていることもあってセクハラの現場にしか見えない。

「あ、そう。それじゃ明日か明後日あたりにでも行きましょうかね。『竜垂庵』でしょう?」
「ご名答です」

 軽く流す女だったが、男も気にせず言葉を返すのだった。

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