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第3章 二つの輝き
第15話 ブランvs不死者´s
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3-15
迷宮へ本格的に潜り始めてから二週間が経ちました。
私たちは出たり入ったりしながら順調に攻略を進め、現在いるのは第四十階層です。
途中、石鹸の補充もあり、二回ほど休暇をとったのですが、ペースとしてはそこそこの早さですかね。
臭いについては、勿論解決しています。
どうやら、獣人など嗅覚の鋭い種族の冒険者用に、臭いを遮断する魔道具が普及していたようです。
他の匂いも分からなくなりますが、あの激臭の中では結局わからないので遥かにいいです。そのお値段、金貨5枚の価値はありました。
もっと安いのもありましたが、妥協できるものではありません!
余談ですが、これ、獣人相手に隠密活動する場合にも使われます。
「それじゃ、今回で踏破してしまいましょうか」
「うん。……一泊で行ける?」
「たぶん、ね」
〈魔力視〉で魔力の流れてくる方か濃い方に行けば、だいたい階段がありますから。ギルドで地図も売れてますが、ここまではそれで十分でしたね。
そうして、四十一階層へ降ります。
もちろん転移する前に、臭気遮断の魔道具を起動。これであの暴力的で悲劇的を超えて残酷な超激臭世界を超えていけます!
◆◇◆
「こっちよ」
流れはあまり無かったので、魔力の濃い方へ向かい、ブランを先導します。
瘴気の濃さ的に、出てくるのはC-からB+……いえ、Bランクといったところですね。
下級吸血鬼や中級吸血鬼が出る可能性もありますが……。うん、その時はその時です。抑えられる気がしません。
「姉様、敵。数は五……うんう、七。食屍鬼三、スケルトンジェネラル二、ウィル・オ・ウィスプが、二……」
ブランの訓練を兼ねて、索敵は任せています。
鼻が聞かず、足音の無い種や高い気配隠蔽能力のある魔物がいるここはちょうどいいんです。普段ブランが頼る獣人の優れた感覚やそれを高めるスキルが通じないので。
スキルを活用するのも大事ですが、頼ってばかりもいけませんからね。
アレです。ゲームでいうプレイヤースキルを磨いてるんですよ。
「それでいい?」
「……う、うん」
斥候役が間違う場合もあります。能力差や相性次第で。
ですから、それを信じきるのではなく、多少の疑いを頭の片隅に置いておかなければなりません。
と同時に、自信も持たなければなりません。
斥候役が不安げに言ってしまえば、要らぬストレスを仲間に与えることになってしまいますから。
私と一生を添い遂げることになるブランですが、その中で別行動をして別のメンバーで行動することもあるでしょう。昇格試験の時のように。
ですから、私は敢えてこのような意地悪な言い方をしているのです。
けっっっっっっして、ブランを虐めているわけではありませんから。そこは誤解しないでほしいですね。絶対に!
だから嫌いにならないでくださいね!? ね、ブラン!?
なんて――半ば以上本気の――コントを頭の中で繰り広げつつ、
「それじゃあ、答え合わせよ」
……まあ、今回はしょうがないですね。
「あぅ……。間違えた……」
「〈魔力察知〉がまだレベル1のあなたに、死魔霊は難しいわね」
本来魔法への適性が低い獣人です。私と繋がるまで、そもそもブランは〈魔力察知〉が出来ませんでしたからね。
「うぅ……」
訓練しだいでは、スキルが無くても殺気なんかでわかるようになりますが。
アンデッドなら怨念的な何か、とにかく気持ち悪い暗い感じの気配です。
「ほら、気づかれる前にヤってしまうわよ」
「わかった」
食屍鬼と骨将軍はC +、そして実体があります。ブランの訓練相手には不足ですね。
と言うわけで、サクッと狩りましょう。
今いる通路は、大剣を振るうには少々狭いです。可能ではありますが、火力がいる相手でも無いので刀形態で。
雑魚とはいえ、そこはアンデッド。吸血鬼どもとはまた別方向ですが、不死性を備えています。細切れにしてやってもいいですが、面倒です。
刀に魔力を纏い、神聖属性へと変化させます。見物人もいませんから。
たぶん、一番魔法らしい魔法。
他の属性のように物理現象へと影響を及ぼすのではなく、その名の通り神の力の一端を借りて概念を現実のものとする属性。アンデッドの不死という概念への効果は抜群です。……この世界の神って、いえ、考えないようにしましょう。
一振りで、やっとこちらに気づいた食屍鬼二体の首を落とし、前に出ようとした二体の骨の胴を返す刀で斬り飛ばします。
その勢いを殺すことなく、残った食屍鬼の脇を駆け抜けるついでに刃筋を立てていきます。
振り返れば、黄色い人魂二体を、ブランが気をまとった剣で一刀両断しているところでした。
あら、片方は核を外されましたね。
その事に気付く前に、側方から飛んできた火の玉を慌てて避けています。
「ブラン、残ったのは一人でどうにかなさい。できるわよね?」
「うん……!」
ブランの様子を眺めながら、ドロップした魔石を回収しておきます。食屍鬼のは……取り出すのに触れたくないです。放置で。
ふむ、やられたふりをしているウィル・オ・ウィスプの片割れが、不意打ちの機会を探っているようです。ブランはまだ気付いてませんね。
やはり、Cランクになると迷宮産のアレごときでも多少の知恵はみせてきますね。
ギリギリまで手を出す気はありません。
ほら、早く気づかないと燃やされちゃいますよ?
ブランはリッチ相手に攻めあぐねているようです。
種としては、死霊の上位にあたります。ランクはB。
個体によって差はありますが、何かしら武器を持っている事が多く、目の前のやつが持ってるのは大鎌、所謂デスサイズです。生前はなかなかマニアックな武器を使ってたんですねー。というのは迷宮以外のリッチに言うことですね。
迷宮が生み出す迷宮内のリッチとは異なり、外のリッチは元人間の魔導師です。ですから、一概に人間にとって悪者ばかりとはいえません。
まあ今は関係ないですね。
ブランははじめての、それでなくてもやり辛い大鎌相手で苦戦してるみたいです。
「むぅ……」
迂闊に踏み込めば、後ろから首をポーンってはねられちゃいます。
しかも、距離を取ればリッチお得意の魔法を撃ってきますからね。いやー、いい感じの魔物ですね!
この迷宮で生み出された魔物らしく、狭い通路でも巧みに大鎌を振ってきます。
とはいえ、当たる様子はありません。うまく避けてます。
人魂くんは……。なるほど、リッチの後ろに隠れて気配を誤魔化してますね。
「ん、いけるっ」
お、今のは上手く流しましたね。リッチに隙が出来ました。
獣人特有の強靭なバネで一気に距離を詰めて、てあらら。リッチの背後に隠れていた人魂くんが火球を放ってきました。ブランはビックリです。
ここまでですかね?
そう思って火球を打ち消そうとしたんですが、どうやら早計のようでした。〈結界魔法〉で防いでそのままリッチを斬りましたよ。
あのスキル、特化してる分展開も早いし強度も高いので、他の属性で作るより断然優秀なんですよね。『血の盟約』で私の空間属性でも使えるはずなので、結界に関してはブランの方がよほど優秀です。
とか言ってる間に人魂くんも片付きましたね。
「うん、お疲れ。ブラン。気配の察知に関してはまだまだ鍛えなきゃね」
「ふぅ……。うん」
ブランは息を整えてから振り返ったんですが、なぜかいつもより目が座ってる気がします……。
「…………やらせてくれたのは嬉しい。でも、ティーテーブル出して、紅茶を飲むのは、くつろぎ過ぎ、だと思う」
あっ。
…………てへ?
迷宮へ本格的に潜り始めてから二週間が経ちました。
私たちは出たり入ったりしながら順調に攻略を進め、現在いるのは第四十階層です。
途中、石鹸の補充もあり、二回ほど休暇をとったのですが、ペースとしてはそこそこの早さですかね。
臭いについては、勿論解決しています。
どうやら、獣人など嗅覚の鋭い種族の冒険者用に、臭いを遮断する魔道具が普及していたようです。
他の匂いも分からなくなりますが、あの激臭の中では結局わからないので遥かにいいです。そのお値段、金貨5枚の価値はありました。
もっと安いのもありましたが、妥協できるものではありません!
余談ですが、これ、獣人相手に隠密活動する場合にも使われます。
「それじゃ、今回で踏破してしまいましょうか」
「うん。……一泊で行ける?」
「たぶん、ね」
〈魔力視〉で魔力の流れてくる方か濃い方に行けば、だいたい階段がありますから。ギルドで地図も売れてますが、ここまではそれで十分でしたね。
そうして、四十一階層へ降ります。
もちろん転移する前に、臭気遮断の魔道具を起動。これであの暴力的で悲劇的を超えて残酷な超激臭世界を超えていけます!
◆◇◆
「こっちよ」
流れはあまり無かったので、魔力の濃い方へ向かい、ブランを先導します。
瘴気の濃さ的に、出てくるのはC-からB+……いえ、Bランクといったところですね。
下級吸血鬼や中級吸血鬼が出る可能性もありますが……。うん、その時はその時です。抑えられる気がしません。
「姉様、敵。数は五……うんう、七。食屍鬼三、スケルトンジェネラル二、ウィル・オ・ウィスプが、二……」
ブランの訓練を兼ねて、索敵は任せています。
鼻が聞かず、足音の無い種や高い気配隠蔽能力のある魔物がいるここはちょうどいいんです。普段ブランが頼る獣人の優れた感覚やそれを高めるスキルが通じないので。
スキルを活用するのも大事ですが、頼ってばかりもいけませんからね。
アレです。ゲームでいうプレイヤースキルを磨いてるんですよ。
「それでいい?」
「……う、うん」
斥候役が間違う場合もあります。能力差や相性次第で。
ですから、それを信じきるのではなく、多少の疑いを頭の片隅に置いておかなければなりません。
と同時に、自信も持たなければなりません。
斥候役が不安げに言ってしまえば、要らぬストレスを仲間に与えることになってしまいますから。
私と一生を添い遂げることになるブランですが、その中で別行動をして別のメンバーで行動することもあるでしょう。昇格試験の時のように。
ですから、私は敢えてこのような意地悪な言い方をしているのです。
けっっっっっっして、ブランを虐めているわけではありませんから。そこは誤解しないでほしいですね。絶対に!
だから嫌いにならないでくださいね!? ね、ブラン!?
なんて――半ば以上本気の――コントを頭の中で繰り広げつつ、
「それじゃあ、答え合わせよ」
……まあ、今回はしょうがないですね。
「あぅ……。間違えた……」
「〈魔力察知〉がまだレベル1のあなたに、死魔霊は難しいわね」
本来魔法への適性が低い獣人です。私と繋がるまで、そもそもブランは〈魔力察知〉が出来ませんでしたからね。
「うぅ……」
訓練しだいでは、スキルが無くても殺気なんかでわかるようになりますが。
アンデッドなら怨念的な何か、とにかく気持ち悪い暗い感じの気配です。
「ほら、気づかれる前にヤってしまうわよ」
「わかった」
食屍鬼と骨将軍はC +、そして実体があります。ブランの訓練相手には不足ですね。
と言うわけで、サクッと狩りましょう。
今いる通路は、大剣を振るうには少々狭いです。可能ではありますが、火力がいる相手でも無いので刀形態で。
雑魚とはいえ、そこはアンデッド。吸血鬼どもとはまた別方向ですが、不死性を備えています。細切れにしてやってもいいですが、面倒です。
刀に魔力を纏い、神聖属性へと変化させます。見物人もいませんから。
たぶん、一番魔法らしい魔法。
他の属性のように物理現象へと影響を及ぼすのではなく、その名の通り神の力の一端を借りて概念を現実のものとする属性。アンデッドの不死という概念への効果は抜群です。……この世界の神って、いえ、考えないようにしましょう。
一振りで、やっとこちらに気づいた食屍鬼二体の首を落とし、前に出ようとした二体の骨の胴を返す刀で斬り飛ばします。
その勢いを殺すことなく、残った食屍鬼の脇を駆け抜けるついでに刃筋を立てていきます。
振り返れば、黄色い人魂二体を、ブランが気をまとった剣で一刀両断しているところでした。
あら、片方は核を外されましたね。
その事に気付く前に、側方から飛んできた火の玉を慌てて避けています。
「ブラン、残ったのは一人でどうにかなさい。できるわよね?」
「うん……!」
ブランの様子を眺めながら、ドロップした魔石を回収しておきます。食屍鬼のは……取り出すのに触れたくないです。放置で。
ふむ、やられたふりをしているウィル・オ・ウィスプの片割れが、不意打ちの機会を探っているようです。ブランはまだ気付いてませんね。
やはり、Cランクになると迷宮産のアレごときでも多少の知恵はみせてきますね。
ギリギリまで手を出す気はありません。
ほら、早く気づかないと燃やされちゃいますよ?
ブランはリッチ相手に攻めあぐねているようです。
種としては、死霊の上位にあたります。ランクはB。
個体によって差はありますが、何かしら武器を持っている事が多く、目の前のやつが持ってるのは大鎌、所謂デスサイズです。生前はなかなかマニアックな武器を使ってたんですねー。というのは迷宮以外のリッチに言うことですね。
迷宮が生み出す迷宮内のリッチとは異なり、外のリッチは元人間の魔導師です。ですから、一概に人間にとって悪者ばかりとはいえません。
まあ今は関係ないですね。
ブランははじめての、それでなくてもやり辛い大鎌相手で苦戦してるみたいです。
「むぅ……」
迂闊に踏み込めば、後ろから首をポーンってはねられちゃいます。
しかも、距離を取ればリッチお得意の魔法を撃ってきますからね。いやー、いい感じの魔物ですね!
この迷宮で生み出された魔物らしく、狭い通路でも巧みに大鎌を振ってきます。
とはいえ、当たる様子はありません。うまく避けてます。
人魂くんは……。なるほど、リッチの後ろに隠れて気配を誤魔化してますね。
「ん、いけるっ」
お、今のは上手く流しましたね。リッチに隙が出来ました。
獣人特有の強靭なバネで一気に距離を詰めて、てあらら。リッチの背後に隠れていた人魂くんが火球を放ってきました。ブランはビックリです。
ここまでですかね?
そう思って火球を打ち消そうとしたんですが、どうやら早計のようでした。〈結界魔法〉で防いでそのままリッチを斬りましたよ。
あのスキル、特化してる分展開も早いし強度も高いので、他の属性で作るより断然優秀なんですよね。『血の盟約』で私の空間属性でも使えるはずなので、結界に関してはブランの方がよほど優秀です。
とか言ってる間に人魂くんも片付きましたね。
「うん、お疲れ。ブラン。気配の察知に関してはまだまだ鍛えなきゃね」
「ふぅ……。うん」
ブランは息を整えてから振り返ったんですが、なぜかいつもより目が座ってる気がします……。
「…………やらせてくれたのは嬉しい。でも、ティーテーブル出して、紅茶を飲むのは、くつろぎ過ぎ、だと思う」
あっ。
…………てへ?
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