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第4章 輝きは交わり繋がる
第7話 光の影
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4-7
「短くはあったが、素晴らしい時だった。次は、国を案内しよう」
「はい、ありがとうございます。次はまた、時間のある時に」
翌日、ジネルウァ様と別れの言葉を交わします。
リベルティアを旅立ってから既に二週間以上。行きとは異なりショートカットは使えないため、ゆっくりはできません。国境あたりまで行けば、王都に転移できますが……。
「それでは、アルジュエロ様、ブラン殿、街の入り口までお送りします」
「ええ、ありがとう」
「ん、……ありがと」
ハイドさんに連れられて城を出、来た時同様彼が馭者をする馬車に揺られます。
この大地の裂け目から出るのに三日。そこからリベルティアまで三週間と言ったところですから、うん、間に合いますね。
焦ってはいけません。焦らず行きましょう。焦らず、焦らず…………。
◆◇◆
「これは……どういうこと?」
「町が、燃えてる……」
リベルティア軍は……、アレですね。近づいてくる軍勢が見えます。
しかしアレは領軍ですね。
ここは王国の西端に近い、小国家群との国境からそれほど遠くない位置です。まだ王国軍が来ていなくてもおかしくないです。
あそこに、紗がいるかもしれない……。
……いえ、だめ。勝手に動くより、ローズたちに協力してもらう方が確実です。
「一先ずここにポータルを設置して、ローズに事情を聞きましょう。いくらなんでも早すぎるわ」
「うん」
急ぎ王都近くに転移して街の門へ走ります。
既に王国軍は出発していたようで、一定以上の強さの気配が以前よりかなり少ないです。
街へ入るための列が相変わらず長い。
なんとか抑えてこちらへ来たというのに……!!
「姉様、大丈夫」
「っ!(すぅはぁ)……ええ、わかってるわ」
また魔力が暴走しかけていました。
ん? あれは……。
「やはりアルジェでしたかっ!」
馬どころじゃない速度で駆け寄ってくるのは、アリエルですね。
「アリエル! アレはどういうこと!?」
私も同様に駆け寄り、一応言葉を濁して問いかけます。
「……話はローズ様の所でしましょう」
「ええ、わかったわ」
「貴族用の通用門から入ります。付いてきてください」
その言葉に頷き、走り出すアリエルの後を追います。
普段私が使う門の、右手の方にある人気の少ない門を通り抜け、王城へまっすぐ向かいます。
「街中をこの速度は問題があるので、屋根の上を通りますよ!」
「いいの!?」
「緊急事態です!」
いや、それは叫んでいいんですか?
ほら、周りの方々が不安げに騒ついてますよ?
「アルジェ! 帰ってきたって事は、目的は果たせたのね?」
「ええ。もちろんよ」
例の亜空間にある部屋で出迎えてくれたのは、ローズの他王族一同。それからヴェルデです。
既に他の貴族を交えた会議は終わったらしく、ここで色々話し合っていたようです。
「それで、どこまで知ってるの?」
アリエルが急かした割には落ち着いてますね。それはまあいいでしょう。
机の上に広げてあった地図を指差しながら答えます。
「私がここの国境線を抜けた時、既に聖国軍がこの町を燃やしていたわ。それを見た時点で飛んできたの。どこかの領軍が行軍して来てるのは確認したけど、それ以上はわからない。なんでもうこんな所まで来てるのよ?」
「そう……。簡単に言えば、裏切りがあったのよ」
なるほど、裏切りですか。
「まず、聖国の出陣予定が早まったって情報が手に入ったの。そこで軍の編成を急がせて、すぐに出撃させたわ。それでも間に合いそうになかったのだけれど、あちらさんも急な決定だったみたいで編成の終わっていた部隊をとりあえず動かしただけってことだから、国軍が行くまではこの領主に時間稼ぎをしてもらうはずだったの」
ローズは一度言葉を切ります。
「でも、いざ聖国軍が来ると、このタスブル子爵、あいつらを素通しした上に物資まで供給した。あなたが見たのは、タスブル子爵と一緒に時間稼ぎをするために派遣された、隣の領主のクリスティアーノ男爵の軍ね。この町はクリスティアーノ男爵領よ」
……深呼吸です。落ち着いて。
「大体の事情はわかったわ。紗はそこにいるの?」
「黒髪黒目で双剣士の少女、その情報は入ってきてる。その子でしょうね」
紗……。
「そう……。それで、あなたたちはどうしてまだここにいるの?」
最高戦力の二人に目を向け、問いかけます。
口調がきつくなってしまったのは仕方ありません。
「聖国には、超長距離魔導砲がありますから」
「超長距離魔導砲?」
「はい。正式には『超長距離狙撃型魔導砲撃砲クリシセアータ』といい、聖国が保有する魔導兵器です」
ヴェルデの説明をアリエルが引き継ぎます。
「東大陸にある全ての国の首都を射程に収める射程と、結界を破って街ごと吹き飛ばすほどの威力があります。これを防ぐために私たち二人はここから動けないんです」
あんな事をしでかした聖国です。そんなものを持っていてもおかしくありません。
「エネルギーの供給経路は不明ですが、連発はできないはずです。ただの牽制の可能性も大きいですが……」
「撃たれる可能性があるなら、動けないわね」
辿れる元があれば、〈鑑定眼〉で情報を探れるんですが……。
「アルジェ、お主が戦場である程度自由に動くことを許可する。よいな?」
唐突なジュリウス王からのありがたい提案。
貸しは、これで無くなってしまいますね。でも、
「はい。もちろんです」
即答に決まってます!
「ブラン行くわよ」
「うんっ!」
今、迎えに行きますからね……!!
「短くはあったが、素晴らしい時だった。次は、国を案内しよう」
「はい、ありがとうございます。次はまた、時間のある時に」
翌日、ジネルウァ様と別れの言葉を交わします。
リベルティアを旅立ってから既に二週間以上。行きとは異なりショートカットは使えないため、ゆっくりはできません。国境あたりまで行けば、王都に転移できますが……。
「それでは、アルジュエロ様、ブラン殿、街の入り口までお送りします」
「ええ、ありがとう」
「ん、……ありがと」
ハイドさんに連れられて城を出、来た時同様彼が馭者をする馬車に揺られます。
この大地の裂け目から出るのに三日。そこからリベルティアまで三週間と言ったところですから、うん、間に合いますね。
焦ってはいけません。焦らず行きましょう。焦らず、焦らず…………。
◆◇◆
「これは……どういうこと?」
「町が、燃えてる……」
リベルティア軍は……、アレですね。近づいてくる軍勢が見えます。
しかしアレは領軍ですね。
ここは王国の西端に近い、小国家群との国境からそれほど遠くない位置です。まだ王国軍が来ていなくてもおかしくないです。
あそこに、紗がいるかもしれない……。
……いえ、だめ。勝手に動くより、ローズたちに協力してもらう方が確実です。
「一先ずここにポータルを設置して、ローズに事情を聞きましょう。いくらなんでも早すぎるわ」
「うん」
急ぎ王都近くに転移して街の門へ走ります。
既に王国軍は出発していたようで、一定以上の強さの気配が以前よりかなり少ないです。
街へ入るための列が相変わらず長い。
なんとか抑えてこちらへ来たというのに……!!
「姉様、大丈夫」
「っ!(すぅはぁ)……ええ、わかってるわ」
また魔力が暴走しかけていました。
ん? あれは……。
「やはりアルジェでしたかっ!」
馬どころじゃない速度で駆け寄ってくるのは、アリエルですね。
「アリエル! アレはどういうこと!?」
私も同様に駆け寄り、一応言葉を濁して問いかけます。
「……話はローズ様の所でしましょう」
「ええ、わかったわ」
「貴族用の通用門から入ります。付いてきてください」
その言葉に頷き、走り出すアリエルの後を追います。
普段私が使う門の、右手の方にある人気の少ない門を通り抜け、王城へまっすぐ向かいます。
「街中をこの速度は問題があるので、屋根の上を通りますよ!」
「いいの!?」
「緊急事態です!」
いや、それは叫んでいいんですか?
ほら、周りの方々が不安げに騒ついてますよ?
「アルジェ! 帰ってきたって事は、目的は果たせたのね?」
「ええ。もちろんよ」
例の亜空間にある部屋で出迎えてくれたのは、ローズの他王族一同。それからヴェルデです。
既に他の貴族を交えた会議は終わったらしく、ここで色々話し合っていたようです。
「それで、どこまで知ってるの?」
アリエルが急かした割には落ち着いてますね。それはまあいいでしょう。
机の上に広げてあった地図を指差しながら答えます。
「私がここの国境線を抜けた時、既に聖国軍がこの町を燃やしていたわ。それを見た時点で飛んできたの。どこかの領軍が行軍して来てるのは確認したけど、それ以上はわからない。なんでもうこんな所まで来てるのよ?」
「そう……。簡単に言えば、裏切りがあったのよ」
なるほど、裏切りですか。
「まず、聖国の出陣予定が早まったって情報が手に入ったの。そこで軍の編成を急がせて、すぐに出撃させたわ。それでも間に合いそうになかったのだけれど、あちらさんも急な決定だったみたいで編成の終わっていた部隊をとりあえず動かしただけってことだから、国軍が行くまではこの領主に時間稼ぎをしてもらうはずだったの」
ローズは一度言葉を切ります。
「でも、いざ聖国軍が来ると、このタスブル子爵、あいつらを素通しした上に物資まで供給した。あなたが見たのは、タスブル子爵と一緒に時間稼ぎをするために派遣された、隣の領主のクリスティアーノ男爵の軍ね。この町はクリスティアーノ男爵領よ」
……深呼吸です。落ち着いて。
「大体の事情はわかったわ。紗はそこにいるの?」
「黒髪黒目で双剣士の少女、その情報は入ってきてる。その子でしょうね」
紗……。
「そう……。それで、あなたたちはどうしてまだここにいるの?」
最高戦力の二人に目を向け、問いかけます。
口調がきつくなってしまったのは仕方ありません。
「聖国には、超長距離魔導砲がありますから」
「超長距離魔導砲?」
「はい。正式には『超長距離狙撃型魔導砲撃砲クリシセアータ』といい、聖国が保有する魔導兵器です」
ヴェルデの説明をアリエルが引き継ぎます。
「東大陸にある全ての国の首都を射程に収める射程と、結界を破って街ごと吹き飛ばすほどの威力があります。これを防ぐために私たち二人はここから動けないんです」
あんな事をしでかした聖国です。そんなものを持っていてもおかしくありません。
「エネルギーの供給経路は不明ですが、連発はできないはずです。ただの牽制の可能性も大きいですが……」
「撃たれる可能性があるなら、動けないわね」
辿れる元があれば、〈鑑定眼〉で情報を探れるんですが……。
「アルジェ、お主が戦場である程度自由に動くことを許可する。よいな?」
唐突なジュリウス王からのありがたい提案。
貸しは、これで無くなってしまいますね。でも、
「はい。もちろんです」
即答に決まってます!
「ブラン行くわよ」
「うんっ!」
今、迎えに行きますからね……!!
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