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第5章 時は隔てる
第4話 女王との再会
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5-4
旅を再開して一月半が経ちました。
王国南部を抜け、やって来たのはセフィロティアが首都です。
前回はスズの事で焦っていて、景色なんて見てなかったのですが、今回はのんびり楽しめました。コスコルの操る馬車に揺られながら見た、王国の食料庫である黄金の海原や、家畜の魔物が放牧される高原。どれも簡単には全てを語れない、素晴らしく美しいモノでしたよ。
我ら日本人がソウルフード、お米については、王都の北にある山間部で作っている様で、この旅では見ることが叶いませんでした。こればかりは少し残念でしたね。
また、セフィロティアの多種多様な植物が息づく森も、今回はゆっくり見て回れました。ブランが天使という事を再確認した以外は特に何も無かったですが。
「で、なんで私たち、エルフの女王様にお待ちになられちゃってるの?」
「……そういえば言ってなかったわね」
実は、街に着いてすぐドナドナされる事になったんですが……スズ、絶対驚きます。
「ジジイがこっちに来てた話は、したわよね」
「う、うん」
「ここの女王様はね、ジジイの昔のパーティメンバー――」
スズ、目を輝かせるのは、まだ早いですよ。
「――で、妻よ」
「…………え?」
おっと、コレは。
「妻よ。ジジイの」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
スズの悲鳴が、馬車の中に響き渡ります。遮音結界を張っておいて正解でした。耳が良いブランは、先んじて耳を塞いでいます。
「えっ、お祖父ちゃんの妻!? てことはお祖母ちゃん!? いやまずお祖父ちゃんがこっちで結婚してたの!? あのお兄ちゃんと一緒で武術バカバトルジャンキーのお祖父ちゃんが!? 信じらんない!!」
ジジイ、大好きな孫娘にこんな事言われてますよ……って、今何かおかしな言葉が聞こえましたね?
「スズ? 誰がジジイと同じ武術バカバトルジャンキーですって?」
「いや、そんなみんな知ってる事は今はいいから!」
みんな!? はっ! ブランが頷いてる!?
「私が、ジジイと同じ武術バカバトルジャンキー……」
「そんな事より、続き! 子供とかいたの!?」
そんな事!? お姉ちゃん、落ち込んでるんですよ!
「いる。プリームスって言ってた」
「うっそぉ。マジかー。お祖父ちゃんにねぇ……」
「お祖母ちゃんはアルティカ」
「へぇ、教えてくれてありがと、ブランちゃん!」
ちょ、お姉ちゃんは無視ですか!? 泣きますよ!? あ、二人だけで何いちゃいちゃしてるんですか! ブラン、スズに撫でられてご満悦な顔!? ぐすんっ……。
◆◇◆
「はじめまして。スズネちゃん。私がアルティカよ」
「は、はじめまして!」
スズ、緊張してますね。まあ当然ですか。
「ふふ。そんなに緊張しなくていいのよ? アルジェちゃんから聞いてるでしょう。私はアナタの義祖母になるんだから」
その言葉で、スズも少し力を抜けたようですね。
「……あら、スズネちゃんも【強き魂】を持ってるのね。お揃い、ずるいわね……」
……何言ってるんでしょ、この女王は。
(コンコン)
「遅れました。母上」
「気にしないで」
ドアをノックしてから入って来たのは、プリームス。私たちの伯父です。
「プリームスだ。君の伯父になる。よろしく」
「はいっ!」
今度はスズらしい明るい返事……って、女王が『むぅ……』はどうなんですか。いくら羨ましいからって……。
「えと、アルティカお祖母ちゃんに、プリームス伯父さん。よろしくね!」
この順応力ですよ……さっきまで女王にはビビってたのに……。
「じーー」
なんでしょう。女王がめちゃくちゃ見てきます。
「じーーーーーーー」
「……はぁ。わかりま「わかった」……わかったわよ。お祖母ちゃん」
「それでよしっ!」
ほら、心読んで会話してくるから、スズがよくわかってないじゃないですか。
「アルティカ女……お祖母ちゃんは人の心が読めるのよ」
「えっ、じゃ、えっと、初めはごめんなさい!!」
「いいのよ、気にしなくて。うんうん、スズネちゃんは素直でいい子ね。どっかの誰かと違って」
余計なお世話です! というか、何スズを抱きしめてるんですか。まず私に許可を取りなさい!
「姉様、そっぽ向いてる……」
「……ホントに妹大好きね、アルジェちゃんは」
「え、お姉ちゃん何考えてたの?」
あ、まずい!
「何もおかしな事は考えてないわよ?」
「この子ね、今「あーあーあー!」」
「お姉ちゃん、煩い。ちょっと黙ってて」
ふぐっ!?
いや、ちょ、待ちましょう? ブランならともかく、スズですよ?
「この子、さっきスズネちゃんを抱きしめたのを見て、『私のスズを勝手に抱きしめるなー! 私の許可を取ってからにしろ!』なんて思ってたのよ」
「……へぇ?」
そのニヤニヤやめてください!? だから知られたくなかったんです‼︎
「私のスズ、ねぇ」
「そ、そこまでは思ってないわよ!」
「じゃあ許可取ってからってのは思ったんだ」
「あ、いや、その……」
ちょ、そこの女王! プルプルしてるんじゃありません! アナタのせいでしょう!?
スズは、前世、つまり『川上弘人』という兄だった頃から妹なんですよ!? 恥ずかしいに決まってるじゃないですか!?
「だからスズにはブランのように堂々と可愛がり倒してなかった、と」
「あ、人の心を読み上げるんじゃないわよ!?」
プリームスまで笑ってる!? くっそ、覚えててくださいね!!
旅を再開して一月半が経ちました。
王国南部を抜け、やって来たのはセフィロティアが首都です。
前回はスズの事で焦っていて、景色なんて見てなかったのですが、今回はのんびり楽しめました。コスコルの操る馬車に揺られながら見た、王国の食料庫である黄金の海原や、家畜の魔物が放牧される高原。どれも簡単には全てを語れない、素晴らしく美しいモノでしたよ。
我ら日本人がソウルフード、お米については、王都の北にある山間部で作っている様で、この旅では見ることが叶いませんでした。こればかりは少し残念でしたね。
また、セフィロティアの多種多様な植物が息づく森も、今回はゆっくり見て回れました。ブランが天使という事を再確認した以外は特に何も無かったですが。
「で、なんで私たち、エルフの女王様にお待ちになられちゃってるの?」
「……そういえば言ってなかったわね」
実は、街に着いてすぐドナドナされる事になったんですが……スズ、絶対驚きます。
「ジジイがこっちに来てた話は、したわよね」
「う、うん」
「ここの女王様はね、ジジイの昔のパーティメンバー――」
スズ、目を輝かせるのは、まだ早いですよ。
「――で、妻よ」
「…………え?」
おっと、コレは。
「妻よ。ジジイの」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
スズの悲鳴が、馬車の中に響き渡ります。遮音結界を張っておいて正解でした。耳が良いブランは、先んじて耳を塞いでいます。
「えっ、お祖父ちゃんの妻!? てことはお祖母ちゃん!? いやまずお祖父ちゃんがこっちで結婚してたの!? あのお兄ちゃんと一緒で武術バカバトルジャンキーのお祖父ちゃんが!? 信じらんない!!」
ジジイ、大好きな孫娘にこんな事言われてますよ……って、今何かおかしな言葉が聞こえましたね?
「スズ? 誰がジジイと同じ武術バカバトルジャンキーですって?」
「いや、そんなみんな知ってる事は今はいいから!」
みんな!? はっ! ブランが頷いてる!?
「私が、ジジイと同じ武術バカバトルジャンキー……」
「そんな事より、続き! 子供とかいたの!?」
そんな事!? お姉ちゃん、落ち込んでるんですよ!
「いる。プリームスって言ってた」
「うっそぉ。マジかー。お祖父ちゃんにねぇ……」
「お祖母ちゃんはアルティカ」
「へぇ、教えてくれてありがと、ブランちゃん!」
ちょ、お姉ちゃんは無視ですか!? 泣きますよ!? あ、二人だけで何いちゃいちゃしてるんですか! ブラン、スズに撫でられてご満悦な顔!? ぐすんっ……。
◆◇◆
「はじめまして。スズネちゃん。私がアルティカよ」
「は、はじめまして!」
スズ、緊張してますね。まあ当然ですか。
「ふふ。そんなに緊張しなくていいのよ? アルジェちゃんから聞いてるでしょう。私はアナタの義祖母になるんだから」
その言葉で、スズも少し力を抜けたようですね。
「……あら、スズネちゃんも【強き魂】を持ってるのね。お揃い、ずるいわね……」
……何言ってるんでしょ、この女王は。
(コンコン)
「遅れました。母上」
「気にしないで」
ドアをノックしてから入って来たのは、プリームス。私たちの伯父です。
「プリームスだ。君の伯父になる。よろしく」
「はいっ!」
今度はスズらしい明るい返事……って、女王が『むぅ……』はどうなんですか。いくら羨ましいからって……。
「えと、アルティカお祖母ちゃんに、プリームス伯父さん。よろしくね!」
この順応力ですよ……さっきまで女王にはビビってたのに……。
「じーー」
なんでしょう。女王がめちゃくちゃ見てきます。
「じーーーーーーー」
「……はぁ。わかりま「わかった」……わかったわよ。お祖母ちゃん」
「それでよしっ!」
ほら、心読んで会話してくるから、スズがよくわかってないじゃないですか。
「アルティカ女……お祖母ちゃんは人の心が読めるのよ」
「えっ、じゃ、えっと、初めはごめんなさい!!」
「いいのよ、気にしなくて。うんうん、スズネちゃんは素直でいい子ね。どっかの誰かと違って」
余計なお世話です! というか、何スズを抱きしめてるんですか。まず私に許可を取りなさい!
「姉様、そっぽ向いてる……」
「……ホントに妹大好きね、アルジェちゃんは」
「え、お姉ちゃん何考えてたの?」
あ、まずい!
「何もおかしな事は考えてないわよ?」
「この子ね、今「あーあーあー!」」
「お姉ちゃん、煩い。ちょっと黙ってて」
ふぐっ!?
いや、ちょ、待ちましょう? ブランならともかく、スズですよ?
「この子、さっきスズネちゃんを抱きしめたのを見て、『私のスズを勝手に抱きしめるなー! 私の許可を取ってからにしろ!』なんて思ってたのよ」
「……へぇ?」
そのニヤニヤやめてください!? だから知られたくなかったんです‼︎
「私のスズ、ねぇ」
「そ、そこまでは思ってないわよ!」
「じゃあ許可取ってからってのは思ったんだ」
「あ、いや、その……」
ちょ、そこの女王! プルプルしてるんじゃありません! アナタのせいでしょう!?
スズは、前世、つまり『川上弘人』という兄だった頃から妹なんですよ!? 恥ずかしいに決まってるじゃないですか!?
「だからスズにはブランのように堂々と可愛がり倒してなかった、と」
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プリームスまで笑ってる!? くっそ、覚えててくださいね!!
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