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第19話 また、絶対!
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⑲
ともあれ、海中での初仕事はこうして幕を下ろした。持ち帰った蛸足も酒のあてに良いと好評で最終的には受け入れられ、自分も久方ぶりに美味しいたこ焼きが食べられ、トキワはホクホク顔である。
それから数日は、予定通り街を観光したり、傭兵の仕事をしたりして過ごた。楽しい毎日だ。一週間が過ぎるのは、瞬く間の事。
今、二人は借りている船室で出港の時を待ちながら、カンナヅの街での思い出話に花を咲かせている。
「楽しかったねー!」
「うん、とっても」
「地上じゃ高価なアクセサリーも安く沢山買えたしね!」
「貰ったやつ、大事に、するね?」
「私も!」
中々に微笑ましい光景だ。
シュアンとだけではなく、スタール親子との親睦も深めていた。お姉さま相手にはこれまでで一番お近づきになれたのでは無かろうか?
「他にもこんな海底都市があるんだって!」
「へぇ、行ってみたい、かな」
「うん、行こうよ!」
まあ、エルとの事に関しては、シュアンの心臓によろしくなかったのかもしれないが。
しかしシュアン的にはありがたい事に、そして駄エルフとしては残念な事に、そこが駄エルフの近づける限界だ。
「それにしてもエルさん、婚約済み、かぁ……」
これじゃあ、あまりお近づきになるのもダメだよね、と凹む姿が痛々しい。姿だけだが。
シュアン、オロオロしていないで喜んで良いのだぞ? 押さなきゃ気づかないからな? この駄エルフ。
「ほ、他にも良い人がいるよ!」
もう一声だシュアン!
「も、もしかしたら、近くにも、いるかも、だし……?」
……シュアンにしては頑張ったか?
「そう、だね……。よーし! 次だ次!」
「う、うん! そのいき!」
まあ、頑張ったな。今はコレでも良かろう。
駄エルフがさっさと気がつけば良いのだが、難しいだろうな……。彼女はこれ以上ないくらいに赤面しているというのに。はぁ……。
「さて、そろそろ出港かな?」
「うん。スタールさん達、見送りに来てくれるって、言ってたよね?」
「もういるかな? 甲板に出てみよっか」
木の床を鳴らしながら、甲板に二人が出ると、幾らかの人々が港へ向けて手を振っている。彼らに倣って、トキワとシュアンも船のヘリから顔を出した。
「んー、どこかなぁ?」
「けっこう人がいる、ね。どこだろう……?」
船の周りに集まる人の影が存外に多く、中々目的の人物達を見つけられない。そうこうしている内に、帆が開かれた。
「あっ、いた! あそこ! 後ろの水路のあたり!」
「本当だ。二人ともいる」
「エルさーん! スタールさーーん!」
二人が手を振ると、彼らも気がついたようで手を振りかえす。口が動いているのがトキワの目に映ったけれど、聞き取れない。
「なーにー? 聞こえなーい!」
また、同じように口が動いたけれど、ちょうど動き出した船からタラップが外され、その音にかき消された。
「これでどうだ!」
徐々に離れていく彼我の距離に、トキワは魔法を使う。声を届ける為だけの風魔法だ。
「また、来い……なぁっ……!」
「聞こえた! うん! また、いつか来るよ! 絶対!」
より一層大きく両手を振り、トキワ達は別れを告げる。
「また、来よう。カンナヅの街にも」
「うん、そう、だね」
何年後になるかは分からない。けれども、その未来は確実に訪れるだろう。死という絶対の摂理に阻まれる前に。
この私が保証するのだ。間違いない。
「さあ! 次の出会いを求めて、いざゆこう!」
「お、おー!」
……まったく。その眩しい笑顔に免じて、今回ばかりは下心塗れの内心は秘密にしておこう。
はてさて、世界樹のある街まで、通るべき大きな街はあと一つ。次なるは空高くにある、有翼人達の街。
一体どんな珍道中になるのやら。この二人の未来は、本当に楽しみだ。
今回はこのくらいにしておこう。
また、次回も私と共に楽しんでくれたまえ。この愛すべき駄エルフの往く道を。
ともあれ、海中での初仕事はこうして幕を下ろした。持ち帰った蛸足も酒のあてに良いと好評で最終的には受け入れられ、自分も久方ぶりに美味しいたこ焼きが食べられ、トキワはホクホク顔である。
それから数日は、予定通り街を観光したり、傭兵の仕事をしたりして過ごた。楽しい毎日だ。一週間が過ぎるのは、瞬く間の事。
今、二人は借りている船室で出港の時を待ちながら、カンナヅの街での思い出話に花を咲かせている。
「楽しかったねー!」
「うん、とっても」
「地上じゃ高価なアクセサリーも安く沢山買えたしね!」
「貰ったやつ、大事に、するね?」
「私も!」
中々に微笑ましい光景だ。
シュアンとだけではなく、スタール親子との親睦も深めていた。お姉さま相手にはこれまでで一番お近づきになれたのでは無かろうか?
「他にもこんな海底都市があるんだって!」
「へぇ、行ってみたい、かな」
「うん、行こうよ!」
まあ、エルとの事に関しては、シュアンの心臓によろしくなかったのかもしれないが。
しかしシュアン的にはありがたい事に、そして駄エルフとしては残念な事に、そこが駄エルフの近づける限界だ。
「それにしてもエルさん、婚約済み、かぁ……」
これじゃあ、あまりお近づきになるのもダメだよね、と凹む姿が痛々しい。姿だけだが。
シュアン、オロオロしていないで喜んで良いのだぞ? 押さなきゃ気づかないからな? この駄エルフ。
「ほ、他にも良い人がいるよ!」
もう一声だシュアン!
「も、もしかしたら、近くにも、いるかも、だし……?」
……シュアンにしては頑張ったか?
「そう、だね……。よーし! 次だ次!」
「う、うん! そのいき!」
まあ、頑張ったな。今はコレでも良かろう。
駄エルフがさっさと気がつけば良いのだが、難しいだろうな……。彼女はこれ以上ないくらいに赤面しているというのに。はぁ……。
「さて、そろそろ出港かな?」
「うん。スタールさん達、見送りに来てくれるって、言ってたよね?」
「もういるかな? 甲板に出てみよっか」
木の床を鳴らしながら、甲板に二人が出ると、幾らかの人々が港へ向けて手を振っている。彼らに倣って、トキワとシュアンも船のヘリから顔を出した。
「んー、どこかなぁ?」
「けっこう人がいる、ね。どこだろう……?」
船の周りに集まる人の影が存外に多く、中々目的の人物達を見つけられない。そうこうしている内に、帆が開かれた。
「あっ、いた! あそこ! 後ろの水路のあたり!」
「本当だ。二人ともいる」
「エルさーん! スタールさーーん!」
二人が手を振ると、彼らも気がついたようで手を振りかえす。口が動いているのがトキワの目に映ったけれど、聞き取れない。
「なーにー? 聞こえなーい!」
また、同じように口が動いたけれど、ちょうど動き出した船からタラップが外され、その音にかき消された。
「これでどうだ!」
徐々に離れていく彼我の距離に、トキワは魔法を使う。声を届ける為だけの風魔法だ。
「また、来い……なぁっ……!」
「聞こえた! うん! また、いつか来るよ! 絶対!」
より一層大きく両手を振り、トキワ達は別れを告げる。
「また、来よう。カンナヅの街にも」
「うん、そう、だね」
何年後になるかは分からない。けれども、その未来は確実に訪れるだろう。死という絶対の摂理に阻まれる前に。
この私が保証するのだ。間違いない。
「さあ! 次の出会いを求めて、いざゆこう!」
「お、おー!」
……まったく。その眩しい笑顔に免じて、今回ばかりは下心塗れの内心は秘密にしておこう。
はてさて、世界樹のある街まで、通るべき大きな街はあと一つ。次なるは空高くにある、有翼人達の街。
一体どんな珍道中になるのやら。この二人の未来は、本当に楽しみだ。
今回はこのくらいにしておこう。
また、次回も私と共に楽しんでくれたまえ。この愛すべき駄エルフの往く道を。
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